引退したソシャゲに異世界転移したらヒロインが全員病んでた件   作:西沢東

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※本作のジャンルはSF /コメディです。
※余談ですが、好感度9→10には通常より高いハードルがあり、最後の一押しとしてそれ相応のイベントが必要です(ゲームではアイテムを与えればすぐでしたが)。例えばウララのスープ回([拒食]に関わるイベント)など、彼女たちの状況に大きく関わるものである必要があります。なお、これは現実ですので年単位で関わることにより9→10にゆっくり上げることも可能ではあります。


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こんな決戦は嫌だ2105

 滅茶苦茶になった会議から18時間後の早朝。朝日は昇ったが生憎の曇り空、唯一の救いはいつもよりは少し涼しいことだろうか。そんな中でウララの内心は少しずつ緊張と弱気に飲まれつつあった。藍田が『統率者』ではないかという疑惑をほとんど確たるものにしたのにもかかわらず。ウララは隣に座る藍田とミハルに不安を漏らす。

 

「藍田さん、やっぱりこの作戦無理じゃないっすか?」

「いけるから大丈夫大丈夫、もし嫌なら俺一人で行くぞ」

「……それはだめっす、ついていくっす」

「藍田そりゃないだろ、ここにきて2週間のお前だけに命張らせてこっちは逃げるなんてできねえだろ」

「ミハルちゃんやめるっす、藍田さんを盾に逃げる人が今周囲にめちゃくちゃいるっすよ」

 

 固く閉ざされていた基地のゲートは開かれ、出撃準備を済ませた車両が整然と並んでいた。中央には一台のくたびれたバス。非戦闘員及び資材を運ぶためのものであり、外面は地面の色に合わせた迷彩色のカバーで覆われている、中では基地の少女たちが不安そうに外を見ている。

 

 その両脇を固めるのは4台の装甲車。そのうち3台の天井には錆びついた旋回砲座が据え付けられ、旧式の対空機関砲が鎮座していた。銃身には煤の跡が黒くこびり付いており、周囲にはオメガ流体技術を応用した冷却機構が取り付けられている。取り回しは悪く轟音によりアブラクサスの注意を引いてしまうという弱点があるものの、空を飛ぶことに特化した特異個体「飛竜」にダメージを与えるには十分な装備だ。残りの一台には、突貫で造られた射出装置が備え付けられている。そこにはナナたちが準備した「切り札」が用意されていた。

 

 さらにその周囲を8台のバイクが囲む。乗っているのはかつてはウララと共に戦っていた濁刃操者たちであり、彼女たちは実に久しぶりに濁刃を握っている。バイクには即席の装甲や支援用の兵器が取り付けられている。

 

 そして最後に、彼らの正面に。ウララとミハルの乗る装甲車と藍田の乗るバイクがあった。ウララとミハルの乗る装甲車には銃座が取り付けられてはいない。代わりに、紙に包まれた大量の何かが積まれている。そして藍田のバイクには、2本の濁刃が取り付けられていた。

 

 ──────────────────────

 濁刃 爆羅剛剣(ばくらごうけん)

 Lv:10

 ・[オメガ流体]:爆発(小)

 奥義

 ・[イグニッションブースト1]:爆発を局所開放して加速および攻撃に使用。クールダウン18秒(通常条件時) 、一時的に侵食度14%上昇

 改造パーツ

 ・[放熱ヒートシンク1] :クールダウン3秒ダウン

 ・空きパーツ1枠

 状態異常

 [パーツ老朽化]:一定確率で追加の状態異常発生

 ATK+210 AGI-20 DEF+140 DEX-30

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 藍田のバイクに取り付けられているのは全く同じ型の濁刃だった。バスに乗る少女の中にはそれを疑問に思う者もいる。スペア、というにはこの濁刃はあまりにも重すぎた。

 

 全員の作戦準備が終わり、自然と皆の視線が藍田に集まる。まだこの基地に来てから2週間かそこらの素人に。しかし、藍田の眼には他の者には無い活力と勝利への自信があった。藍田は咳ばらいをし、周囲を見渡してからゆっくりと口を開いた。

 

「ただ今より『アマテラス』討伐作戦を開始する! 作戦の詳細は事前通達した通りだ! 援護部隊各位は熱線の誘発、飛竜の引き付けを完了した時点で即座に撤退してもらって構わない!」

 

 声は確かな音量でゲート前の広場に広がる。ゲート前には有線接続されたモニターが臨時で置かれており、そこには監視塔で映し出されている光景がリアルタイムで表示されていた。

 

 荒れ果てた大地、そしてどこまで続いているか分からない巨大な割れ目。その傍に全長百メートルを超える巨体が鎮座している。赤黒く焼けただれた小さな装甲が幾重にも重なり、まるで燃え盛る山塊のように見えた。そして小さな装甲の隙間からは無数に絶えず高温の油が噴出し、地表に降り注いで炎を撒き散らす。そしてその周囲を、無数のアブラクサス達が囲っていた。

 

 通常ではありえない、災害としか呼びようのない化け物に対して藍田は宣言する。

 

「『アマテラス』への突撃は俺がする! 爆破をウララとミハルが担当、手順に従い『アマテラス』を割れ目へ突き落とし、1000m以上の落下による衝撃で即死させる! 今だけ、『アマテラス』が割れ目の側にいる今だからこそ可能性はある! 人類の為に、友の為に! 『アマテラス』討伐作戦、開始!」

 

 藍田が号令をかけると同時に、全ての車両のエンジンがうなりを上げる。少女たちは忠実に任務をこなすべく、固い表情でアクセルを踏み移動を始めた。

 

 小高い丘の上に作られた基地から『アマテラス』の下まで、直線距離では比較的近い。実際、望遠鏡無しでも『アマテラス』の炎が見えるほどだ。

 

 しかし実際に移動するには幾つかの理由で遠回りが必要だ。汚染により木々が失われた斜面は容易く崩落し、予測不可能なタイミングで車両を転倒させる。加えて遠回りした道自体も瓦礫の山などで塞がれており、簡単に直線移動するわけにはいかない。

 

 だが、バイクであれば濁刃操者としての身体能力を活かし、無理やりバイク自体を押し上げて移動することも不可能ではない。

 

「『アマテラス』は初撃で視界内に見える可能性のあるこの基地を狙わなかった。理由としては視力が悪い、どこにエサがいるか知らない等が挙げられるがいずれも長期間地下にいた『アマテラス』ならあり得る話だ。だから熱線を誘導するには、直接攻撃による陽動が最も効果的だ」

 

 移動を開始してしばらく経った時、バイクで移動しながらそう呟いた藍田の目の前で空に破裂音が響く。アマテラスから見て、基地から90度東の方角から幾つもの空を切り裂く影が現れた。白い弧を描くそれは、一瞬で距離を詰めアマテラス付近に着弾する。遠くからでも聞こえる轟音と共に爆風が土砂を巻き上げ、着弾地点周囲のアブラクサスを襲う。

 

 いわゆる迫撃砲、正式名称は「対アブラクサス三式火砲」。対アブラクサスにおいては相手が素早すぎるため当たらず、あくまで遠距離からの牽制として使用される兵器でしかない。直撃しなければアブラクサスが死ぬことはない。

 

「「「「Grrrrrrrrrr!」」」」

 

 が、直撃すれば死ぬということである。アブラクサス達は奇怪な鳴き声を上げる。それと同時に再び同じ方角から第二射第三射と砲撃が放たれる。周囲のアブラクサス達の悲鳴を聞いてか、『アマテラス』は片手を持ち上げ光を収束させる。そして熱線を解き放った。

 

 灼熱の奔流が空を駆け、山を溶断する。岩盤は白く沸騰するように崩れ落ち、一瞬で直線上を焼き払う。

 

 が、そこには誰もいない。溶け落ちたのは対アブラクサス三式火砲だけ。これはただの迫撃砲ではない。全自動対アブラクサス迎撃システムとして組まれた次世代機。置いておけば指定されたタイミングで迫撃砲を発射する、2068年に作られた兵器の一つ。

 

 そして再び、別の角度から先ほどと同じく砲撃が放たれる。先ほどと同じく。信じられないほどあっさり、『アマテラス』は再び砲弾の飛んできた方角に向かって熱線を発射した。ただし今度は、さきほど撃った腕とは別の腕で。発射後の腕は赤く輝いており、それは明らかに冷却を必要としていた。

 

「やはり『アマテラス』の熱線は連射が利かない、そして『アマテラス』に戦術眼はない。切り札であるはずの熱線を容易く撃ち切った。ここまでは想定通りだな」

 

 上々の成果に、指定の位置についた藍田はガッツポーズをする。その後ろで装甲車に乗って控えていたウララとミハルは笑みを浮かべながら次を準備する。

 

 ミハルの手には極めて長いケーブルで繋がれたスイッチがあった。そのケーブルの先は荒地をずっと伝っており、先を見ることができない。ミハルはそのスイッチを握りしめる。

 

「それでは作戦第二段階っすね! 巨大な重量物を押し飛ばす一番の方法は、より重たいものを叩きつけることっすから!」

「行くぜ、ブースター点火!」

 

 ウララとミハルの叫びと共に、スイッチが押される。指示を受けた「それ」が火を噴く。

 

 『アマテラス』の強みは超火力高耐久増殖スリップダメージ。今、超火力だけは一時的に封じることが出来た。しかしそれだけ。根本的には、人間の力であの分厚い装甲を抜く必要がある。恐らく対戦車ライフルでも打ち抜けない装甲を、電波妨害の中で、致命傷を与えられるまで。

 

 しかし、演説で藍田が述べたとおり、人間の力であの異次元の装甲を抜く方法が一つ存在した。それは重力。『アマテラス』は「飛竜」数十匹に抱えられようやく飛翔できる、移動力に欠ける生命体だ。こいつを仮に割れ目にもう一度叩き落せば、なすすべなく1000m以上の自由落下で、自重により即死する。装甲を貫き、中の臓器を尽くクラッシュさせることができる。

 

 そのためには、あの巨体を押し飛ばす必要があった。そして『アマテラス』を押し飛ばすためには2つの要素が必要である。

 

 一つは『アマテラス』より大きく重たいこと。もう一つは自ら動きぶつかること。この2つがあれば、『アマテラス』に衝突し、その背後にある割れ目に叩き落すことができる。

 

 そしてその2つを、「それ」は満たしていた。「それ」は、藍田がよく知るものであった。

 

 

 

「行け、()()()()()!」

 

 ──────────────────―

 機動補助噴射機 lv42

 スキル: [噴射性能UP(大)]

      [耐久値向上]

 状態異常:[未完成:バランス制御機構使用不可]

  [老朽化:大]

 [錆び:小]

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 藍田たちの視界の先で、低く唸るような轟音が基地全体を揺さぶった。衝撃により基地内部のガラスは悉く割れ、固定されていない小物は跳ね上がる。瞬間、大地が弾けた。基地全体がどんどん加速しながら前方へ進んでいく。鉄とコンクリートの塊が固定を引きちぎりながら、熱線を失った『アマテラス』へ進んでいく。

 

 基地を歩行させるための未完成のブースター。それを無理やり稼働させ、丘の上から基地を短距離動かして敵にぶつける。それこそが藍田の作戦。そのために昨日ミハルはブースターを修理し、基地と大地を固定する留め具を外す作業を行った。

 

 可能性としては万に一つ。どこまでいっても未完成のブースター。基地を押し出す力も十分ではないしそもそも方向制御なんてできやしないから当たるかすら分からない。だが、当たりさえすれば『アマテラス』を跳ね飛ばすことも不可能ではない。

 

 ウララは手を合わせる。どうか上手く行きますように。奇跡が起こりますようにと。

 

 

 

 

 

 

「お願いするっす、神様……!」

「さあ第二フェイズだ、藍田!」

「昨日夜中までテストした成果が、今ここに!」

「…………っす?」

 

 が、隣の二人の様子がおかしい。どう足掻いても、奇跡を祈る場面なのに。二人は『アマテラス』に基地が当たることを確信しているようであった。効果が出ることをあらかじめ知っているようであった。そもそも、第二フェイズとは何なのか。

 

 ウララや基地のメンバーが知っているのは、基地を歩行機能を使って無理矢理ぶつける、というところまでである。

 

 だが昨日夜、ミハルと藍田の間で起きた議論と試験により、奇跡は必然となる。

 

 瞬きの後、目の前の意味不明な出来事にウララは自身の正気を疑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()()

 

 あり得ない速度で、巨大な金属塊が回転していた。周囲の大地を削り破壊し、破片を巻き散らしながら『アマテラス』に向かってそれは一直線に進行する。物理法則を無視して、まるで当たることが事前に決まっているかのように。

 

 鋼鉄の独楽は砂塵を立ち昇らせながら、大地を揺らし全てを破壊せんと迫りくる。遠距離攻撃手段を持つ『アマテラス』周囲のアブラクサスは幾度も攻撃を放つも、独楽はびくともしない。

 

「しゃあっ!」

「いいぞ、行け!」

「え、何っすかあれ聞いてないっすよ基地の皆絶対呆然としてるっす」

 

 

 昨晩ミハルと藍田で話した結論は、シンプルだった。やはり基地についているのは所詮移動用、押し出すには至らない。だから、対策を考えた。

 

 荒野での移動が安定するように。

 押し飛ばせるように。

 大地の炎もアブラクサスも、まとめて蹴散らせるように。

 

 藍田とミハルは原型をこの基地で見たことがあった。滑らかな軸を中心に回り、長時間長距離を移動しても破壊力を保ち突進する存在。藍田の『ダイエット2号』を粉砕したものの強化版。

 

 そしてゲーマーとメカニックという二人の暴走は止まらず、無茶は実行された。

 

 今、その無茶はステータスという理不尽と基地オウミに死蔵されていたアブラクサス素材の山に後押しされ、遂に現実になる。

 

 

 藍田とミハルは勢い良く叫んだ。実に場違いで、ウララにとっては意味不明なことを。

 

 

 

 

 

 

「「さあ『アマテラス』、俺(あたし)とベーゴマバトルで勝負だ! チャージスピン、ベーゴマバトル!!!」」

「????????????」

 

 

 

 

 ───────────────────

 基地オウミ lv69

 スキル: [噴射性能UP(大)]

      [耐久値向上]

      [回転攻撃]

      [空力ダウンフォース(極)]

      [命中補正(極)]

 状態異常:[老朽化:大]

     [錆び:小]

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