引退したソシャゲに異世界転移したらヒロインが全員病んでた件   作:西沢東

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サクサク進めると描写不足になり、かといってじっくり書くと物語のテンポ感が滅茶苦茶になる問題、未だに答えが見えない……。


種火のおすすめ選択機能マジ感謝

 昼過ぎ。ミハルと会ってレーションを分けてもらった後、俺は戦闘教本が置いてあるミハルの作業室に案内してもらうことになった。俺の斜め前を歩いているミハルをちらりと見る。

 

 高い背丈にやたらとデカい胸。しかもツナギは適度にカットされており横乳やら脇やらがガッツリ覗ける構造となってる。あのロリコン疑惑のある友人が見たら絶叫するのではなかろうか。

 

 因みに背丈はさておくとして、服装については極めて妥当だったりする。街で目覚めた時に熱風を感じていてもしかしたら、と思っていたのだが想像通り季節は夏らしい。2105年7月11日、旧日本、それが俺のいる場所と時間である。なのでこの時期は露出が多くないと暑すぎて蒸し死ぬ、というわけだった。普通に半袖半ズボン着ろよ、というツッコミをしてはならない。

 

 なお、『ノイルコード』の世界は日本をモデルとしているが、未来の世界なので色々と異なっている。例えば季節が夏夏冬冬だったり。いやこれは元の世界も実質そうといえるかもしれないけど。

 

 一方ミハルは俺の視線に気づかない様子で、腕組みしながら俺に話しかけてくる。

 

「藍田、昨日はよく寝れたか? 冬眠者は目覚めたばかりだと冬眠の影響で肉体と精神のバランスが崩れて、色々問題が起きることもあるらしいが」

「お陰様でぐっすり熟睡元気満々。2105年の寝心地を堪能したよ」

「嫌味かよ」

「未来のベッドだからジェル状とか強制安眠機能とかあるのを期待しちゃうじゃん、冬眠者として」

「……まあそうだよな、目覚めたらこんな状況だとは思わないよな。っと、ここを右に曲がればあたしの作業室だ」

 

 ミハルの先導に従い道を進むこと数分ほど。基地の地下二階にその施設はあった。ミハルが扉を開けると、機械油と金属の錆の匂いが俺の鼻に充満した。

 

 広いコンクリートで出来た部屋の壁には数多の工具が無造作に掛けられてる。棚には濁刃用と思われる部品がいくつも並び、さらにはメンテ中と思われる分解された濁刃たちが台の上には鎮座していた。床は油汚れで微妙に光っており、様々な人々に長い期間使われてきたのだろう。

 

 でも、今ここを使うのはミハルしかいない。

 

「昔はもっといたんだがな。残念ながらもうアタシだけだ」

「ここにもまだそこそこ兵士いるんだろ、なら結構大変なんじゃないのか、仕事?」

「そんなことはないぞ。ゲートの奴らを見ただろう、戦える奴らはいても戦う奴らはいない。ウララくらいだよ、マメにメンテナンスをしに来るのは」

 

 ミハルの話に昔の父親を思い出してげんなりする。転職前の親父、部下が全員やる気なくて結局管理職の自分が全てこなさないといけない、なんて愚痴っていた記憶がある。ただこの状況を見ると部下にも言い分があると言えるだろう。希望も未来も無い状態で、頑張るなんて無理だと。

 

 まあそれはそうと、とミハルは言いながら部屋の内部にあるいくつかの扉を開く。一つ目は部品置き、二つ目は何か分からない資料や取扱説明書置き、そして三つ目がお目当てのものであった。

 

「おお……」

「これに感動する奴なんて初めてだぞ。ほい、これが戦闘教本。2070年の濁刃が本格運用された時期くらいに機関が景気よく大量に刷ったやつ。とはいっても電子データや読み回しすれば十分だし、という理由でこの部屋の片隅に大量の予備が突っ込まれてるってわけ」

「なんで作業室なんだ、他にもあるんじゃないか?」

「置き場が無くて押し付けあいをした結果、当時の作業室の管理者がじゃんけんに負けたんだ。まあ、人が多かった頃の時代の名残だな」

 

 扉の中はかなり広い倉庫になっていた。埃が積もったその場所に、大量の赤い表紙の本が敷き詰められている。ゲームでも見たことのある、戦闘教本、すなわち経験値アイテムである。

 

 戦闘教本には1から4があり、数字が大きいほど経験値量が多い……というのはゲームの話。じゃあ現実ではどうかというと、1から順に基礎的な内容を解説していっているような形であった。1では濁刃の持ち方、4ではアブラクサスとの集団戦の事例及び被害予測計算法、みたいに。

 

「あたしはこっちで自分の濁刃のメンテ作業してるから。あ、その戦闘教本はもう使う予定無いし、薪にしてもらってもいいしストレス発散に破いてもらってもいいぞ」

「あいよ、ありがとよ」

 

 作業室の奥に歩き出すミハルの背中に礼を言い、俺はステータス画面を早速開いた。

 

 

 ────────────────────────────-

 藍田ショウ

 種族:人間(異世界人)

 Lv:3 

 職業:無し

 年齢:18歳

 侵食度:0%

 保有スキル:無し(空3枠) 残スキルポイント12

 HP:27 ST(スタミナ):11

 STR:7(+1) DEF:8 AGI:14 DEX:21

 状態異常:[トレーニング(STR)] 筋肉痛発生、及びSTR上昇

 Lvアップが可能です。戦闘教本を使用しますか? (YES/NO)

 ──────────────────────────────

 

 

「おお、本当に使えるんだな」

 

 正直、経験値アイテムがそのまま使えるかは半信半疑だった。だってLvなんてファンタジーなものを普通に印刷された本で上昇させることができるだなんて思わねえじゃん。ゲームに従えば確かにそうなるだけどさ。

 

 念のため扉を軽く閉じた上で、とりあえずYESを押してみることにする。さて、これでLvが上昇するのだろうか。そう思った時、目の前で摩訶不思議な現象が起きた。

 

「!?」

「藍田、どうかしたかー?」

「何でもない! うわ、マジかよそうか、使用ってそうなるのか……」

 

 まず、YESを押した瞬間全ての本が淡く光り出した。次に、本が粒子となり流れを作り、そのまま揮発するかのように俺の胸に飛び込んできた。そして足元にあった無数の本は、一瞬にして消失していた。

 

「そういえばゲームでも一度使った戦闘教本は再利用できなかったもんな……それにしてもファンタジーすぎるだろ……」

 

 俺は改めて自身のステータス画面を開く。

 

 

 ──────────────────────────────

 藍田ショウ

 種族:人間(異世界人)

 Lv:72 (3→72) 

 職業:無し

 年齢:18歳

 侵食度:0%

 保有スキル:無し(空3枠) 残スキルポイント288

 HP:27 ST(スタミナ):11

 STR:7(+1) DEF:8 AGI:14 DEX:21

 状態異常:[トレーニング(STR)] 筋肉痛発生、及びSTR上昇

 ──────────────────────────────

 [Tips:強制LVアップ:戦闘教本を消費しLvを上げることができる。なお戦闘教本は特別に念じないかぎり基本的に全選択される]

 

 それを先に言って欲しい、とTipsを見ながら唸る。確かにゲーム内では経験値アイテムは自動選択機能しか使わないし、Lv上限まで上げることが前提だけれど。その親切をこんな所で発揮されても困る。ユーザーの要望があったにもかかわらず経験値アイテム自動選択機能を中々実装しなかった某ゲームは、もしかしたこういった事態を想定していたのかもしれない。多分違うけど。

 

 とりあえずすっからかんになった倉庫を見られると絶対にややこしいので、できるだけ隠すことを誓う。まあ隠しようがないんだけど。いざとなったら「全部食べました、美味しかったです」とでも言うことにしよう。「Lvアップに使いました」よりは現実的だし、多分信じてくれるだろう。きっと。恐らく。

 

「さて、それはそうとLvアップの恩恵だけど」

 

 そう言いながら俺は拳を構える。Lvアップしたところでステータスは変わらない。代わりにTipsにはこのように書かれている。

 

 

 [Tips:Lv:戦闘経験を数値化。戦闘経験及び戦闘教本を本画面にて消費することで上昇。戦闘時の各種行動に補正、スキルポイント獲得]

 

 

 まず恩恵の一つはスキルポイント。いきなり桁が変わったスキルポイントを使えば、山ほどのスキルを習得することができる。

 

 そして次に、戦闘時の各種行動に補正、とあるがこれが分からない。俺は心の中で、目の前に寝ている俺に消しゴムを投げつけてくる極悪非道の音楽教師(自業自得)を思い描き、内心で拳を振るう。当然拳は空を切るだけだが、いつものそれと変化を感じ、俺は目を丸くする

 

「何か洗練されてるような……?」

 

 戦闘教本の知識がデータとして頭の中に入ってきた、なんてことはなかったし、腕力が上がることも無かった。ただ、自身の動きが明らかに機敏な気がする。ジャブ、ジャブ、フック、アッパー。技の切れと踏み込みが、自然と鋭くなっていくのが分かる。

 

 恐らくこれが戦闘時の補正、というやつなのだろう。戦いのプロになる、というよりは素人のような身のこなしをしなくなるという感じというか。うーん、説明が難しい。ただ、パラメータの反対と考えれば何となくわかる気がする。

 

 すなわち戦闘技術に補正をかけるのがLvで、身体能力に補正をかけるのがパラメータなのだ。

 

「今すぐは実感でき無さそうだけど、アブラクサスと戦う時には必須そうだな。さてそしてスキルっと」

 

 実はここに来るまでの間にスキルについて考えを纏めていたのだ。というのも、スキルは選択肢が多すぎるし実際の効果も検証するのに時間がかかるからやってられない。なのでとりあえずこの3種のスキルを取ろう、と決めていたのだ。(因みにスキルはノーコストで再取得可能である)

 

 ・身体強化系スキル

 ・侵食耐性系スキル

 ・耐久強化系スキル

 

 ゲーム的には火力特化がセオリーなのだが、今の俺は素人でトレーニングによるステータス割り振りも終わっていない。となれば、身体能力や各種耐性を上げて、ひとまずはウララの隣でチュートリアル戦闘を済ませるのがベターだ、と考えたのだ。これなら行動不能になって足手纏いに、という可能性も減るしな。

 

 というわけで雑にスキルの習得を完了するとこんな感じとなった。

 

 

 ────────────────────────────-

 藍田ショウ

 種族:人間(異世界人)

 Lv:72

 職業:無し

 年齢:18歳

 侵食度:0%

 保有スキル:[身体能力向上(極)]: 全パラメータUP(極)

      :[侵食耐性(真)]: 侵食度上昇によるデメリット無効、侵食度自動減少       

      :[頑健の誓い]: 物理ダメージを75%カット、ガッツ付与

 残スキルポイント28

 HP:127 ST(スタミナ):111

 STR:107(+1) DEF:108 AGI:114 DEX:121

 状態異常:[トレーニング(STR)] 筋肉痛発生、及びSTR上昇

 ─────────────────────────────

 

 

「今回は明らかに違いが分かるぞ……!」

 

 ぴょんと飛び跳ねる。それだけで自身の身体が天井すれすれまで到達する。以前までの自分の身体能力では明確にありえない。他二つは戦場に行かなければ分からないだろうが、この時点で分かる。流石『統率者』様の能力。圧倒的な性能である。

 

 何度も飛び跳ね、虚空に向かってジャブをし、明らかな身体能力向上に目を輝かせる。素晴らしい、これがチート能力! そうやって思い上がった俺はテンションが上がったまま、次の行動に移ることにした。

 

 そう、濁刃を手に入れ、戦場に出向くのだ! 早速ミハルにお願いしてみよう! 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 

「お前、自分が何言ってるのか分かってんのか!? 濁刃が欲しいだって!?」

 

 そして今、俺は濁刃をお願いした瞬間、壁に押さえつけられ、激怒した表情のミハルに詰め寄られていた。彼女の目には涙が浮かんでいる。

 

 初めは、素人が戦場に向かうのを止められているのだと思った。だが違う。よく考えれば、少年少女を戦場に向かわせるのがこの世界。窘めることはあれど激怒、は考えづらい。

 

 そもそも俺とミハルにそんなに関係性はない、昨日出会った、それだけだ。他人を怒るなんていう心理的コストがかかることを、そんな相手にするかというと怪しい。「これだから冬眠者は」といえばそれで済む話なのだ。急にいきなり声を荒げる理由がない。

 

 俺は彼女の表情を見て、言葉を失う。何か返そうと思った。だが、もう何を言っても無駄な状態になっていた。

 

 つまり俺は、知らず知らずのうちに地雷を踏んだのだ。それも特大の。ミハルは、顔を俯かせ絞り出すように言う。

 

「もう濁刃をメンテできるのはあたししかいない、そしてあたしは、あたしは、また……!」

 

 

 

 ──────────────────────────────

 ミハル=P1694PZ

 

 種族:人間

 Lv:19

 職業:第3階位濁刃操者(だくじんそうしゃ)兼メカニック

 年齢:18歳

 濁刃:雷轟銃剣(らいごうじゅうけん)

 侵食度:29%

 状態異常

 [睡眠不足]:()()()()()()()()()()()()()、全パラメータ20%DOWN

 [不眠]:[睡眠不足]を解除不可、全パラメータ20%DOWN

 [調子不良]:全パラメータ10%DOWN

 ──────────────────────────────

 

 

 

 

 






因みに現時点では各種パラメータはウララやミハルの方が高いです。というのも藍田は一般人ですが、彼女たちはソシャゲお馴染み固有スキルを保有しており、さらに侵食度補正が乗っているためです。(特に侵食度補正が大きい)
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