SCP(SCP財団)とは、現代科学では説明のつかない怪奇な物品、生物、場所などを隠蔽・収容する架空の組織と、その報告書群を描いたホラー・SF系の共同創作Webサイトのことを指します。
この小説ではSCP財団は出てこないので、不思議な特性を持った物や不思議な現象が出てくるとだけ思っていただければそれで大丈夫です。
SCPを知らない方や興味がない方からすれば2話もその話をしてしまって申し訳ないですが、自分が書きたいと思ったので書きました。
一応前話の前書きにも同じことを記載します。
○同じ状況、同じ選択
「それじゃあ、また何かあったらいつでも連絡してねシロコ」
「うん、ありがとう先生」
先生と別れたあと、シロコは自分の生徒ではない自分のことを気にかけてくれる先生に感謝しながらとある廃ビルへと赴いていた。
なぜか、と聞かれると説明できない。
何かに引き寄せられ、気がつけば足がその廃ビルへと向かっていたのだ。
割れたガラスや崩れた床の上を歩きながら、何かを探す。
しばらく歩いていると、壊れかけの机の上に押しボタン式電話機を見つけた。
それが、自分が引き寄せられた何かだと言うのはすぐにわかった。
電話機の前まで歩みを進める。
━受話器を取り、耳に当てる
それは、ほとんど無意識での行動だった。
『はい、もしもし』
先生の声だ。
「━━先生?」
『あれ、シロコ?久しぶりだね!元気にしてた?最近忙しくてアビドスの方に全然顔出せなくてごめんね』
久しぶり?
どう言うことだろう、ついさっき別れたばかりではないか?
しかし、とある光景がフラッシュバックする。
━雨の中、静かに佇む大きな人の影
私の心がこう主張しているのだ。
この人は、
「っ!」
思わず息を呑む。
『あれ?シロコだよね?どうかしたの?』
「...先生に、お願いがある」
「先生にはこの先、どうしようもない悲劇しか待っていない」
「先生はどうにかしようと頑張るけど、その先に待っているのは虚しい現実だけ」
「だから先生━━お願い、逃げて。そして......生きて」
そう言い切る。
暫くの沈黙の後、先生が返事をする。
『それは━━悪いけどそのお願いは聞けない、かな。ごめんねシロコ』
「...そう」
わかっていた。
先生なら、そう言うって。
先生は、そう言う人だから。
「なら、これだけ言わせて欲しい」
『何かな?』
━生徒たちを......よろしく、お願いします
「先生、いつもありがとう」
『...どういたしまして』
電話は、そこで切れてしまった。
もう一度持ち上げてみたが、電話がかかることはなかった。
その電話は、受話器を持った人の命を救ったことのある人に電話がかかる物であった。
その性質上、その人がすでに死んでいた場合は過去へと電話がつながってしまう。
なので今回のシロコのようなことをしてしまうと、過去が変わってしまい、未来も変わってしまう恐れがあったが、何も変わることはなかった。
先生は、自身に待ち受ける過酷な運命を知っていながら、それでも逃げずに生徒を救うことをやめなかったのだ。
果たして、それにはどれほどの勇気がいるのだろうか。
・SCP-243-jp 恩人へ
見た目は既存のいかなるメーカーのものでもない押しボタン式電話機。
過去に誰かに命を救われた人物が受話器を持ち上げた時に、受話器を持ち上げた者の命を何らかの形で救った人物(恩人)と5分間のみ通話が可能になる。
恩人がすでに死亡していた場合は、恩人が生きていた過去に電話がつながってしまう。
○死にたい奴からかかってこい
━━栗浜アケミの前に、傷だらけの子分達が正座していた。
「申し訳ありません、姐様……!」
「突然、ペンギンが現れて……!」
「気づいたら知らない場所で殴られて……!」
その報告を聞いて、アケミは静かに飲んでいたプロテインティーを置く。
「……まあ、ペンギンが?」
腫れ上がった頬、包帯だらけの腕。
とてもペンギンにやられたようには見えないが、錯乱しているのだろうか?
しかし、その傷を負わせたのがペンギンであれ誰あれ━━
「それは随分と無粋な真似をなさる方ですこと」
━━ただでは済まさない
アケミから漏れ出た気迫に子分達が震える。
「姐様、あれはヤバいです……!」
アケミはゆっくり立ち上がる。
「私の可愛い子達に手を上げたのですもの」
微笑む。
「少々、お礼参りに伺いましょう」
廃倉庫跡地。冷たい風が吹いている。
「......」
そこに、一羽のオウサマペンギンが立っていた。
堂々と胸を張り、こちらを見ている。
アケミは足を止める。
「……あなたが?」
次の瞬間、視界が白く弾けた。
目を開けると、そこに広がっていたのは見渡す限りの氷原。
足元は硬い氷。
そして着ていた服は消えボクシングウェアに変わっており、両拳にはボクシンググローブ。
アケミは周囲を見渡す。
「……ここは一体?」
前方のペンギンが答える。
「我のメイングラウンドだ」
ペンギンが喋ったことに対し驚いたアケミは目を大きくした。
「……ペンギンが、喋っておりますの?」
「我は王様だからな。王は喋る」
堂々たる声。
アケミは小さく息を吐く。
「(...道理は通っておりませんが、威厳は感じますわね)」
「お前、強いな」
ペンギンが言う。
「まだ何もしておりませんわ?」
「見ればわかる」
氷上に円形の境界が浮かび上がる。
風が止み、ペンギンが問いかける。
「お前、名はなんという?」
「栗浜アケミと申しますわ」
「アケミ...か」
短い沈黙の後、アケミも問う。
「そちらは?」
「我の名はオウサマペンギンだ。王様の名の通り、腕がたつ」
「ご丁寧にどうも」
アケミが構える。
「では、参る」
戦い開始。
空気が裂け、ペンギンのジャブが閃く。
━━ドン。
アケミがそれをガードする。
続く右ストレート。
氷が砕ける。
踏み込みが速く、体格差を感じさせない爆発力。
アケミはスウェーで躱し、左で反撃する。
ペンギンは紙一重で避け、滑るように回り込む。
ボディへの連打。
鈍い衝撃が積み重なる。
アケミの呼吸がわずかに重くなる。
「(速さで押すタイプ...かと思えば力もある。強いですわね)」
距離を測る。
フェイント。
踏み込み。
重い右。
ペンギンは腕で受け流すが、勢いを殺しきれない。
かすめただけで、体が弾かれる。
氷上を滑り、態勢を立て直す。
「ほう」
再び接近。
連打の応酬。
ジャブ、フック、アッパー。
拳が空気を裂き、氷を砕く。
━━二十分経過。
アケミの頬が腫れており、ペンギンも息が荒い。
両者共に、限界は近い。
アケミが踏み込む。
左で視界を揺らし、右。
今度はペンギンの回避がわずかに遅れ、拳が直撃。
━━ゴンッ。
鈍い音。
ペンギンの体が浮き、叩きつけられる。
氷に大きな亀裂。
「......ガッ!」
苦しげに息を吐く。
しかし立ち上がる。
再度、打ち合い。
ペンギンは避け、滑り、打ち込む。
だが、アケミの拳が徐々に軌道を読む。
そして。
「ふっ...!」
沈み込む。
全体重を乗せた右ストレートが直撃。
衝撃波のような音。
急いでとったガードも虚しく、ペンギンが大きく吹き飛び、氷上に倒れる。
━━静寂。
数秒後、ペンギンが仰向けのまま呟く。
「見事だ」
アケミは乱れた息を整え、姿勢を正す。
「お褒めに預かり、光栄ですわ」
世界が歪む。
白い光。
目を開けると、景色が廃倉庫跡地に戻っていた。
元の制服姿のアケミが静かに立っている。
子分達が駆け寄る。
「姐様!」
「大丈夫ですか!?」
アケミは軽く微笑む。
「少々、運動をしていただけですわ」
彼女は優雅に去っていく。
皆が去って行った後、一羽の王様が仰向けになりながら空を見た。
「...まさか我を一発殴るだけでなく倒す相手がいたとはな」
ゆっくりと立ち上がる。
「これだから勝負は辞められない」
新たに降り立った
・SCP-726-JP 戦う意味とは。
見た目はただのオウサマペンギン。
半径5m圏内に入った生物を所在地不明の氷河の上に転移させることができる。
ちなみに転移させられた対象はボクシングを行うことに適した服装に服が変わる。
○陸八魔アルの計画通り
━━ゲヘナ自治区のとある場所にて
ウルフカットの少女が、迫る銃撃をかわしながら部下に叫ぶ。
「ここは私がやる。お前らはターゲットのところへ行け」
「でもボス━━」
「足手まといだ。行け!」
ボスと呼ばれた少女は迷いなくそう言い放つ。
それを聞いた部下たちは一斉に散開し、依頼人のもとへ向かう。
高所からそれを見ていたアルの眉がわずかに動く。
「(悪組織のボス同士の一騎打ち...何よそれ、めちゃくちゃアウトローじゃない!)」
しかし、ボスの部下たちは依頼人のもとに行ってしまったので、ムツキたちにメッセージを送る。
《ムツキたちはターゲットの護衛優先。急いで》
送信完了っと。
これでいい。
私は、ここでボスを止める。
アルは照準を額に合わせ、持っているスナイパーライフル━━ワインレッド・アドマイアーの引き金を引く。
━━パァン!!
しかし、弾丸は少女の額ではなく頬をかすめる。
「(よ、避けた!?)」
「いい腕だな!」
そして、それが戦いの合図であった。
━ダダダダッ!
サブマシンガンの掃射。
立っていた場所が削れ、アルは跳ぶ。
跳びながら狙いを定めるが、少女は射線を読み、迷いなく距離を詰める。
撃ち合いは一瞬で近接戦へと変わった。
強烈な蹴り、銃床の一撃。
その応酬の最中、ワインレッド・アドマイアーが弾き飛ばされる。
「くっ......!」
本当に強い。
でも、ここで退くわけにはいかない。
「自分の武器がなくても、そう簡単にはやられないのがアウトローよ!」
少女が鼻で笑う。
「へぇ、カッコつけてる余裕あるのか?」
正直、ない。
しかし、それでも演じる。
それは社長だから、それが憧れるアウトローだから。
不意に、視界の端に床に転がる黒い拳銃が映った。
誰のものか分からないが、今はこれしかない。
急いで駆け寄り拾い上げると同時に、素早く端末を操作。
《手が空いたらすぐに応援に来て》
送信。お願い、間に合って。
少女が踏み込む。
アルは黒い拳銃を構える。
「終わりだ」
「それはこっちのセリフよ!」
アルは拾った銃の引き金を引く。
━バンバンバンッ!
弾丸は確かに放たれた。
しかし━━少女は無傷のまま立っている。
「......は?」
「......へ?」
互いに動きが止まる。
え、当たったわよね?距離ゼロよ?なにこれ、不良品!?おおお落ち着きなさい陸八魔アル!顔に出しちゃダメ!
「......なるほど、そういう仕掛けね」
いや、どんな仕掛けよ。
━バクバクバクバク...!
心臓やめて!落ち着いて私の心臓!
少女も困惑している。
「今私撃たれたよな...?その銃、なんなんだ?」
私も知らないわよ!
その瞬間、壁が爆ぜる。
爆炎。
三方向からの銃撃。
「社長ー!」
「み、皆んな!」
ムツキ、カヨコ、ハルカが依頼人の護衛を終え、駆けつけた。
あっという間に完成する四人の包囲。
少女は迎撃するが、連携の差が出る。
アルはワインレッド・アドマイアーを回収し、冷静に構える。
「これが、私たちの力よ!」
四重の銃撃。
少女はついに崩れ落ちた。
「終わった......?」
「......」
反応はない。
本当に終わったようだ。
手元の黒い拳銃を見る。
一体、あの時撃った弾はどこへ行ったのかしら?
不思議に思っていると、端末が鳴った。
依頼人だ。
『もう敵を全員倒すなんてすごいな!依頼額を2倍にしよう!』
「.....,ほ、本当に!?」
「やったねアルちゃん!」
「にしても社長、敵のボスと戦いながら私たちのサポートもするなんてすごいじゃん。私たちが相手してた奴らのうち3人も倒してくれるなんてさ」
「さすがですアル様!」
「......ふ、当然よ。すべて私の計算通りだわ」
(ななな、なんですってーーーー!?!?)
私は銃をしまい、背を向ける。
「さあ皆んな、依頼の達成祝いに美味しいものでも食べに行きましょう!」
「いいねー、焼肉行こー!」
「私は別にどこでも」
「わ、私もアル様の選んだ店ならどこでも構いません!」
ふと腰を見ると、さっきまであったあの不思議な銃が無くなっていた。
あの銃ほんと何だったのよ━━!?
SCP-4465 人は1人では生きていけない
見た目は普通のグロック17自動拳銃だが、とある異常性を持っている。
それは、この銃で人を撃つと撃たれた人の大切な人が代わりに銃弾を受けるというもの。
キヴォトス人は頑丈なので、銃弾を受けても死なずに気絶するだけですが普通の人だと死にます。
○私は押収品
ヴァルキューレ警察学校公安局局長室。
「姉御ー、押収品の整理終わったっすー」
だらしなく緩めたネクタイを揺らしながら、コノカが入ってくる。
「報告書は?」
「あー...あとで書くっす」
「はぁ...今すぐ書け」
低く、鋭い声。
「……っす」
しぶしぶ机に向かおうとしたコノカが、ふと思い出したように言う。
「あ、そうだ。押収品の中から
ペンが止まる。
「……押収品の中から何が出てきた?」
「...?だから
「...お前は今ここにいるが」
「違うっす。
「だからお前だろう」
「いやいやいや、だから
ゆっくり顔を上げる。
「……どんなお前だ?」
「二枚焼けるタイプの
しばしの沈黙の後、カンナは立ち上がった。
「案内しろ」
共有キッチン。そこに、銀色に光るやけに状態の良いトースターが置かれていた。
カンナはそれを見下ろす。
「……
「っす」
「押収記録は」
「ないっす」
「製造番号」
「ないっす」
「爆発物反応」
「ないっす」
「……なるほど」
腕を組む。
「まあとりあえず」
コノカが食パンを取り出し、トースターに入れる。
「
「...何故だ?」
「なんとなくっす!」
「...そうか」
レバーが下がる。
━━チン。
完璧な焼き色。
カンナはじっと見つめる。
「……性能は良好だな、
「っすね、私」
「「…………」」
静寂。
カンナは低く言う。
「今後、
口が止まる。
「
沈黙。
「……
コノカが顔を覆う。
「もうやだ
カンナは眉間を押さえた。
「名称統制が効かない、だと……?」
「
「馬鹿な」
ちょうどその時、廊下から部下の声。
「局長ー!
聞こえた瞬間、二人が固まる。
「……何を置くと言った?」
「え?
カンナは深く息を吸い、吐いた。
「……とりあえず、
「カンナ局長をですか?
「私じゃない!
カンナは真顔になる。
「コノカ」
「なんすか?」
「
コノカは即答する。
「『私を押収』」
「意味が通らん」
「『私を設置』」
「誰が」
「私が」
「どっちだ」
「公安局備品。私二台」
「......はぁ」
・SCP-426 私はトースター
とある異常性をもつトースター。
このトースターを呼ぶ時、誰であってもこれのことを一人称で呼んでしまう。これを指し示す、書く、話すのいずれもこれを三人称で呼ぶことができない。
つまり、上の説明文は本来
私には異常性があるんだ。私を呼ぶ時、誰であっても私のことを一人称で呼んでしまうんだ。 私を指し示す、書く、話すのいずれも私を三人称で呼ぶことには失敗している 。
と言う感じになってしまう。
・SCP-243-JP 恩人へ
・SCP-726-JP 戦う意味とは。
http://scp-jp.wikidot.com/scp-726-jp
・SCP-4465 人は1人では生きていけない
http://scp-jp.wikidot.com/scp-4465
・SCP-426 私はトースター
http://scp-jp.wikidot.com/scp-426
本当はもう一つ、『ワイルドハントの七不思議』を書こうと思っていたんですが、話が長くなりすぎるので断念しました。
機会があったら新しくSCP×ブルアカの小説でも書いてみたいな