ウマ娘 星の入東風   作:ウマ侍

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第3話 北関東ダービー

『今年もこのレースがやって来ました!北関東ダービー!世代最強のウマ娘を決める重要なレースです!』

解説がノリノリで話している裏で、選手達は出走の準備を進めていた。それはもちろん、二冠を目指すイリコチ達にとっても同じだった。

「北関東ダービー……本当に出られるとはなぁ」

「トレーナーったらしみじみしてるわね……」

「悪い悪い。一度は出てみたい舞台だったから感動しちゃって」

「なるほどね。でも、感動するのは今じゃないわね」

「?」

「感動するのは私が勝ってから。でしょ?」

「……ああ、そうだな!」

二人は改めて、今回の作戦を考えることにした。前回のように逃げ切れれば良いのだが、ライバルのロマンスブライアもそれは分かっているだろう。簡単に逃がさせてはくれないはず。

「距離は2000m…スタミナは持つはずだから、後ろの猛追に気を付けた方が良いな」

「そうね。ロマンスブライアさんだけじゃなくて、他の子にも注意が必要ね」

「君の言う通りだ。他のウマ娘もどこかしらを勝ち上がっている猛者達だ。負けないように、気合い入れて行かないとだな」

「ええ。誰にも負けるつもりは無いわ」

「それでこそだ」

控え室での準備を済ませ、ターフへと向かうイリコチ。今回彼女が背負ったのは一番人気。応援席の誰もが、彼女の活躍に期待していた。今日も逃げ切ってくれるだろう。熱いマッチレースになるだろう。誰もがそれを期待していた。

『さあ、いよいよウマ娘達が本バ場入場します!』

ゲートの前に立ち、静かに発走を待つイリコチ。やがて、他のウマ娘達がゲートに収まっていくと、イリコチも順番通りにゲートインする。

「(大丈夫……行ける!)」

落ち着いた表情で、イリコチは静かにゲートが開くのを待つ。最後のウマ娘がゲートに入り、準備完了する。

────ガコン!

『スタートしました!今日は綺麗に横一線!全員が揃って好スタートを切りました!』

「(今日は逃げが居る……あまり競り合うとスタミナが持たない。ここは譲るべきか……)」

今日のイリコチは、先行集団。他の逃げウマ娘とのポジションの探り合い。無理に追わず、早めに先行集団に入ったことで、スタミナの浪費を防ぐ事が出来た。

「(この位置だと、後ろの威圧感もビンビンに伝わってくるわね)」

逃げを諦め、先行集団に入ると変わってくるのは、周りのウマ娘の存在。左右はもちろん、後ろからもウマ娘の足音が聞こえてくる。この圧力に、負けないだけの度胸がウマ娘には必要になってくる。

「(まだね……仕掛けるには早すぎる)」

ウマ娘達は第二コーナーを抜けて、正面へとかかってくる。歓声に送られながら、それぞれゴールを目指して駆け抜けていく。

「イリコチは先頭を譲ったか……先行でのレース運びが出来ると良いんだが……」

トレーナーは心配そうに彼女を見守る。イリコチとは逃げの練習ばかりしてきたので、不安になってしまった。

しかし、そんな不安を払拭するかのように、イリコチは先行で走り続けていく。周りのプレッシャーに耐えながら、自分の走りを繰り出していく。

「(第四コーナー……そろそろ仕掛け所ね……!)」

最終コーナーを曲がりながら、イリコチは最後の直線に向けて加速を開始する。それは、先程先頭を譲ったウマ娘を軽々と抜き去って、先頭に躍り出るほどに早かった。

『さあ先頭はイリコチ!このままリードを守りきることが出来るか!?』

後ろに控えていたウマ娘達も、全力でスパートをかけてくる。それでもイリコチに追いつくことが出来ない。

「凄い……!いけるぞイリコチ!」

いや。

まだだ。

 

まだ、怪物が残っている。

 

────ドバッ!

 

砂を蹴り上げて、怪物が再び前へ迫ってくる。ロマンスブライア。彼女の恐るべき末脚に、周りのウマ娘達は思わず絶望の表情を浮かべてしまう。

「次元が違う……」

他の誰をも寄せ付けない、ロマンスブライアとのマッチレース。結果的にはそうなっていた。前を駆け抜けるイリコチ。後ろから迫るロマンスブライア。

「(まだ逃げれる…前は譲らない!)」

「(まだ迫れる…先に着くのは私だ!)」

実況も観客も、大盛り上がりのマッチレース。北関東皐月賞の時のように、再び二人は並んでゴール板を駆け抜けた。

「はぁ……はぁ……」

「はっ……はっ……」

 

1着 4番 イリコチ

同着 8番 ロマンスブライア

 

掲示板に表示されたのは、なんと同着。ほんの僅かな差も無く、完璧なタイミングでゴール板を駆け抜けた事になる。

「同着…だなんて」

「驚いたね……イリコチちゃん」

「ええ……まさかここまで拮抗してるとは思わなかったわ」

二人はそれとなく向かい合い、それから固い握手を交わした。今日はどちらも1位。北関東ダービーの歴史に残る一幕がここに誕生した。

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