魔法科高校の後輩   作:パクチーダンス

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第十一話 先輩は褒めれば伸びるタイプですよね

 雫はここ数日、解体されたCADの組み立てを続けていた。イザヤはわかりやすく説明するために、ホワイトボードを使いながら教えていた。途中で雫の手が止まると、気晴らしに魔法の撃ち合いを会話しながら行っていた。最初はなかなか手が進まなかった雫も要領を得たのか、イザヤの教えなしで部品がどこの場所のものなのかだんだん把握していく。少しずつだが、雫は細かな作業を自分の中で受け付けるようになった。それは、深雪に勝つため。彼女の闘志は今も燃えているのだ。そして今日も雫は、CADの組み立て作業を行っていた。

「今日はいつもよりも早く終わりましたね、先輩」

「うん、自分でもビックリ」

雫の解体されたCADを組み立てるまでの時間が、日を追うごとに短くなっていたのだ。

「余った時間はどうするの?サイオンを抑える特訓する?」

雫はイザヤに質問する。

「そうですね、サイオンを抑える特訓をしましょうか」

「うん、今日は補助してほしい。今日で完璧にコツを掴むから」

「その意気ですよ、先輩」

そうして余った時間をサイオンを抑える特訓に使い、この日の特訓は終了した。

 

 

 

 「明後日から土日に入ってしまいますが、どうしますか?」

イザヤは横で歩いている雫の方を見る。

「もちろん、特訓はするよ」

雫は当然といった感じで返答する。

「そうですか、なら、どこか違う場所で特訓したいのですがアテはありますか?」

「…じゃあ、私の別荘は?」

「……先輩、別荘あるんですか?」

イザヤは少しの間を置いて喋り出した。

「うん、私の家は東京都小笠原の媒島にプライベートビーチ付きの別荘を所有しているの」

イザヤは、やっぱりお金持ちはすごいなー、という目をしながら

「ならそこにいきましょう、一泊二日で」

「泊まるの?二人で?」

「泊まってはいけませんか?」

「いや、そっちは問題じゃなくて、二人だけということなんだけど、、」

雫は男と二人だけで泊まることなんて今まで一度もなかったため、変に気構えてしまった。

「大丈夫ですよ先輩、先輩を襲ったりしませんから」

「いや、それは分かってる」

「なら問題ないですね、楽しみだなー媒島」

「……特訓のために行くんだよね?」

この男、本当は遊びたいだけなのでは?そんな疑問が頭に浮かぶ。子供っぽいこの男に変に身構えても疲れるだけだ。そう思った雫であった。

 

 

 

 翌日の放課後、イザヤはあずさから渡された仕事をこなしていた。泉美も同様に黙々と作業をしている。あの日以降、泉美はイザヤと会話することはほとんどなかった。話をするとしても、それは仕事の確認だけ。クラスで隣にいても一切喋らない。昼食も一人か香澄と一緒に食べる始末。生徒会室では、二人とあずさの他に達也、深雪、雫、ほのかが椅子に座って談笑している。

「そういえば、家の近くに新しいケーキ屋さんができるの」

「そうなの?」

「うん、結構大きめの建物でね、少し気になるの」

「じゃあそのケーキ屋さん、いつか行こうよ」

皆が喋っているのを泉美は聞き耳を立てている。

「ねえ、雫、定期試験が来週あるから土日で一緒に勉強していい?」

「あっ、忘れてた」

雫は失念していた。定期試験が近づくと、ほのかといつも勉強会を開いているのだ。しかし、土日には用事が入っている。

「もしかして用事があるの?」

「………いや、うん、まあね」

煮え切らない雫の言葉にほのかは「?」と首を傾げる。

(これって言ってもいいのかな)

そう思いながら、雫はイザヤの方をチラッと見る。イザヤの顔が上手く見えないのでこの話を聞いているのかいないのか、よく分からない。しかし、ほのかに隠し事をしたくないと思った雫は、

「土日は媒島に行くの」

「え?なんで?」

「それは、、イザヤと深雪を倒す特訓のため」

雫は視線を地面にそらしながら言う。

「「「え?」」」

ちなみに今の発言は深雪、ほのか、泉美である。

「土日って事は一泊するの?二人で?」

「そうなのかイザヤ?」

ほのかの疑問を直接達也がイザヤに質問する。すると、イザヤは体を達也達の方に向けて、

「ええ、本当ですよ。媒島で少し遊んできます」

「遊ぶんじゃなくて、特訓」

「はいはい、分かってますよ」

そう言ってイザヤは再び作業に戻る。ほのかは雫に近づき、イザヤに聞こえないように耳元で会話する。

「ねえ、大丈夫なの雫?彼と二人きりで」

「何も起きないよ」

「けど、、、」

ほのかは雫が心配である。雫の身に何か起こったらと思うと夜も眠れないと。

「心配しすぎだよほのか、イザヤはふざけているように見えて結構紳士だよ」

雫の中ではイザヤの好感度は高いようだ。

「そう、、わかった」

ほのかは渋々と言った感じで返答した。しかし、まだ一名、よく思っていない人間がいる。それは、、

「……何しに行くんですか?」

泉美はイザヤに小さな声で、元気のない声でそう質問する。

「特訓だよ」

「………そうですか」

泉美はどこか寂しげな雰囲気を作りながら、また作業を開始する。そんな泉美を見て、

「泉美ちゃん」

イザヤが泉美を呼ぶ。泉美はその声の主に顔を向けると、

「えいっ」

「きゃ!?」

泉美はイザヤにおでこをデコピンされた。

「何するんですか」

泉美は痛かったのか、少し涙目になってイザヤを睨む。

「君が元気のない顔をしていたからさ」

「それは、あなたが……」

泉美は口を閉ざした。

(私今、何を言おうとしていたのだろう)

あなたが私に構ってくれないから、なんて口にするところだった。

「そんな顔するなよ、来週、また一緒に昼食をとろうよ」

そんなイザヤの言葉に泉美は目を開く。なんだか無性に嬉しくなった。

「ええ、仕方ないですね、一緒に食べてあげます」

そう言う泉美の顔はとても笑顔であったと後に深雪が語るのであった。

 

 

 

 イザヤは北山家が所有しているヘリコプターで雫と一緒に媒島に向かうこととなった。なので、早朝に北山家を訪れた。インターホンを鳴らすとメイドさんが玄関のドアを開けた。

「お待ちしておりました、折紙イザヤ様。どうぞお入りください」

「失礼します」

玄関に入ると、イザヤはそのまま雫のいる部屋に案内された。メイドは雫のある部屋をノックする。

「失礼します、雫お嬢様、折紙イザヤ様がいらっしゃいました」

「入って」

そうしてメイドは扉を開けて、イザヤは部屋に入る。

「おはようございます、先輩」

「うん、おはよう」

ソファに座っている雫はまだ眠たそうなのか、あくびを殺して返事した。

「準備はもうできているから、早速ヘリコプターに乗り込もう」

そう言って雫は立ち上がり、荷物を持ち始める。

「行く前にあなたの父親の潮さんにご挨拶したいのですが」

雫にそう提案すると、

「今、旦那様もこちらに向かわれていますので、しばしお待ちください」

そう言われて、イザヤと雫はソファに座って会話を始める。

「律儀だね」

「当たり前ですよ、娘さんを、何処の馬の骨とも知らない男と一泊二日するのですから」

しばらくすると、部屋の扉が開き、北山潮が登場する。

「おはよう、雫」

「おはよう、お父さん」

雫と軽く挨拶すると、

「君が折紙イザヤ君かな?」

「初めまして、折紙イザヤです」

イザヤは北山潮に挨拶をする。北山潮はイザヤをじっと見つめている。

「君は雫の後輩だったよね?どうして媒島に行くのかな?」

「私が深雪との勝負に勝つために特訓するの」

「雫、私は今、彼と話しているんだ」

北山潮は雫の方に顔を向けるが、その目はイザヤを見ていた。

「娘さんを少しの間だけお借りします」

「何故?」

「雫さんは、今まで僕が見てきた魔法師の中でも、素晴らしい魔法の才を有しています。僕は雫さんの魔法師としての才を磨き上げたいんですよ」

「わかった。しかし、媒島に行くのは何故かな?あそこに行かなくても、特訓はできると思うがね」

「僕が教えている特訓を他の誰にも見せたくないんですよ。潮さん、たとえ貴方であっても」

イザヤはキッパリと潮に伝える。この土日で行う特訓は誰にも見られるわけにはいかないのだ。

「私にも見せられないか」

「ええ、すみませんが教える事はできません。雫さんにも着いてから特訓の内容を教えますが、誰にも話さない事を約束してもらうつもりです」

横でイザヤと北山潮の会話を静かに聞いている雫の方を見る。雫はイザヤの言葉にコクンと頷き、

「わかってる、誰にも言わない」

雫はそう返事する。

「……分かった。二人の媒島へ行く事を許可しよう」

まだ言いたいことがあるようだが、とりあえずOKを頂いた。

「お父さん、心配しすぎ。イザヤは何もしないよ」

「そう言うがね雫、父親である身としては、とても可愛い娘が知らない男と一緒に泊まるなんて気が気でならないんだ」

どうやら北山潮という男は雫を溺愛しているらしい。

「もう行こう、イザヤ。時間が勿体無い」

そう言って、雫は荷物を持ってスタスタと部屋を退室した。

「……何を笑っているのかな?」

北山潮はイザヤが笑っていることに気が付いた。

「すみません、親と子の会話というのは、こういうものかと思いましてね」

「……失礼だが、ご両親は?」

「両方ともいませんよ、気にしないで下さい。では、失礼します」

イザヤは荷物を持って雫の後を追いかける。

「イザヤ君」

北山後ろに呼び止められる。

「はい?」

「君は雫のことをどう思っているのかな?」

「そうですね、いつも無表情ですが、時折見せる笑った顔が素敵だと思いますよ」

「……なるほど、雫は君に笑顔を見せるくらい仲がいいようだ」

「ただの先輩後輩ですよ」

イザヤも部屋を退室する。そうして二人は媒島へと出発したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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