魔法科高校の後輩   作:パクチーダンス

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第十四話 司波深雪vs北山雫

 今日の放課後、私、北山雫は、司波深雪と九校戦のアイス・ピラーズ・ブレイクのソロ出場を賭けて勝負する。この時のために、イザヤと特訓を続けてきたのだ。昨日の夜も、寝る前にサイオンを抑える特訓をしていた。全ての準備は整えてきた。あとは全力を出すだけだ。

(深雪に勝つ!)

ベッドの上から起き上がる。そのままリビングに向かい、朝食を取る。顔を洗い、歯磨きをし、制服に袖を通す。そして、玄関を出ると、

「おはよう、雫」

ほのかが家の前で待っていた。

「おはよう、ほのか」

挨拶を返し、私たちは登校する。

「今日頑張ってね雫、私、応援してるから」

「うん、まかせて」

ほのかからの応援も貰い、私は今、絶好調だ。

(誰にも負ける気がしない!!)

私はいつもよりも大股で歩き、学校を目指す。

 

 

 

 教室に着くと、深雪が自分の席に座っていた。深雪は雫とほのかに気がついて挨拶をする。

「おはよう、雫、ほのか」

雫とほのかも挨拶を返す。

「おはよう、深雪」

「おはよう」

そうして各々が自分の席に座る。深雪は後ろを振り向き、雫と目を合わせる。

「雫、今日の放課後だけど、場所は実技棟で行うことになったわ。時間は午後四時だからね」

「分かった」

その後、二人に会話はなかった。今日の二人は、お互いの出場を賭けた敵同士、その雰囲気にほのかは蚊帳の外であった。

 

 

 

 昼食の時間になると、深雪は達也と共に食事をするために教室を出た。雫とほのかは、一緒に食堂へ足を運ぶ。食堂は大勢の生徒が集まっている。二人は、トレーを持ちながら、空いている席を探し始める。その時、よく見知った声が聞こえてきた。

「イザヤ君、なんで貴方は午前の授業を休むんですか!?いい加減サボるのは辞めなさい!」

泉美の声が聞こえてくる。

「だってさー、つまらないんだよね」

聞こえてきてわかる通り、泉美と共にいるのはイザヤであった。

「だっても何もありません、いくらテストで良い点を取ったとしても、先生はいい顔しませんよ」

泉美はガミガミとイザヤを叱るが、イザヤはどこ吹く風といった感じであった。

「イザヤ」

雫はイザヤに声を掛ける。

「おや、先輩たち、こんにちは」

イザヤは雫とほのかに挨拶をする。

「私たちもその席に座ってもいい?」

「ええ、どうぞ」

イザヤと泉美は席を詰めて、二人が座れるスペースを作る。

「北山先輩、イザヤ君に言ってあげて下さい。授業をサボるなって」

「そんなにつまらないの?」

雫は横に座っているイザヤにそう質問すると、

「そうですね、泉美ちゃんを揶揄って遊ぶ方が何倍もマシですね」

「……私で遊ばないでください」

泉美はジッとイザヤを睨みつける。そんな泉美にイザヤはニコッと笑い、水を飲みほす。そして、コップをトレーの上に置き、雫に顔を向ける。

「調子はどうですか?」

そう聞かれて雫は、

「バッチリ」

「なら良かったです」

そうしてイザヤは立ち上がって、トレーを持って、返却口に片付けに行った。

「ちょっと待って下さい、イザヤ君」

泉美もそれに続いて立ち上がり、後を追いかける。

(………)

雫は、イザヤと泉美が並んで歩いている姿を黙って見つめていた。

(雫!?もしかして、、、もしかしなくとも、、)

雫の顔を見ているほのかは、幼馴染の心情を誰よりも早く理解したのだった。

 

 

 

 放課後、雫は更衣室で制服から競技服に着替えていた。三十分後、深雪との試合が始まる。この試合には達也とイザヤの他にも、ほのかを含む生徒会の面々、そして二年のいつものメンバーが見にくるそうだ。

(少し、緊張してきたかも)

雫は震える手を見つめていた。しかし、そうではなかった。

(いや、これは武者震いだ。深雪との戦いを想像して、私の体は震えている)

雫は思う。私の力は今、どのくらい成長しているのだろうと。イザヤは具体的なことを言ってはいなかったが、深雪との戦いでそれがわかる。深雪は強い。そんな事は誰よりも知っている。ずっと見てきた。誰よりも近くで、彼女のスゴさを目の当たりにしてきた。そして今日、自分は全てをぶつけて、深雪と戦う。

(私、今までにないくらい興奮してるかも)

雫が自分の手を見つめて考えていると、更衣室の外から声が聞こえてきた。

「先輩、いますか?」

イザヤの声である。

「イザヤ、入ってきていいよ」

イザヤは雫の声を聞き、更衣室に入ってきて。雫の前で立ち止まる。

「………」

「………」

二人は何も言葉を話さず、お互いを見つめていた。

「……ねえ」

しばらく見つめ合ってからようやく、雫が話し出す。

「なんです?」

「この試合で深雪に勝ったら、何かご褒美が欲しいの」

「……そうですね、何がいいんですか?」

イザヤはそう聞くと、

「休日、二人で買い物に行こう」

「なんです先輩、僕とデートでもしたいんですか?」

イザヤは笑い、雫を揶揄う。しかし、

「うん、デートだよ」

雫は真剣な顔をしてイザヤの目を見る。そんな雫にイザヤは目を丸くする。そしてイザヤは、頭を下げ、顎に手を当てて考え始める。

「…………………………………」

しばらく経ったのち、イザヤは雫を見る。

「わかりましたよ先輩、荷物持ちぐらいは役に立ちましょう」

「うん、じゃあ行こう」

(今はこれくらいでいい)

そうして二人は更衣室を出て、実技棟へ歩き出した。

 

 

 

 実技棟入ると、すでに皆が雫とイザヤを待っていた。達也と深雪は、二人に近づいてくる。

「待っていたぞ二人とも」

達也がイザヤと雫に声を掛ける。

「お待たせしました、達也先輩、深雪先輩、逃げずに来たようですね」

「それはこっちのセリフだ、イザヤ」

達也とイザヤはお互いに軽口を叩き合う。そんな二人を見ていた深雪と雫も、

「雫、今度も勝たせてもらうわ」

「いや、勝つのは私」

深雪と雫は共に、相手に向かって勝利宣言をした。

「イザヤ、試合のルールは本番と同じでいいよな?」

「もちろんです先輩」

達也が試合のルールについてイザヤと話し合う。自陣営12本、相手陣営12本の氷柱を巡って魔法で競い合う。先に相手陣営の12本の氷柱を全て破壊した方の勝利。時間は無制限。

「さて、二人ともスタート位置に立ってくれ」

達也の言葉に、深雪と雫は共にスタート位置に歩いていく。達也とイザヤは、二人の戦いが一番見えやすい観客席に座る。スタート位置に入った二人を見て、あずさが声をかける。

「深雪さん、北山さん、準備はいいですか?」

その声を聞いて、二人は頷く。

「ただいまより、司波深雪と北山雫による試合を始めます!!」

カウントダウンが鳴る。ピ、ピ、ピ、ピーー。その合図の音と共に、二人はCADの操作を始め、魔法を発動する。

「深雪の方が少しだけ早かったわね」

「雫は細かい作業が苦手ですから」

エリカのその言葉にほのかは補足を入れる。

(手加減はしない、雫、最初から全力で行くわ!)

深雪は、前回の九校戦で使用した魔法『氷炎地獄』《インフェルノ》を発動した、広範囲エリアに灼熱と極寒を同時に発生させる魔法である。この時、雫はそれを読んでいたのか、自身の『領域干渉』そして『情報強化』を合わせる事で、深雪の魔法を阻害する。

「なんだと!?」

達也は声を上げて驚いていた。達也は、雫がどんなに成長しようとも最初の一撃で終わると思っていた。まさか、妹の魔法を防ぐことができるなんて思いもよらなかったのである。そんな達也にイザヤは笑う。

「先輩、何驚いているんですか。まだ始まったばかりですよ」

達也やイザヤが話している間にも戦いは続いている。雫は左手で深雪の魔法を防ぎながら、右手で拳銃形態特化型CADを取り出し、『フォノンメーザー』を放つ。その熱光線で深雪の氷柱の2本を破壊する。

(まずい!氷柱を守らないと!)

そうして深雪は自身の氷柱に『情報強化』を行い、『フォノンメーザー』の熱光線を耐える。すぐに体勢を立て直した深雪は、雫の氷柱に向けて魔法を放ち、3本の氷柱を破壊する。

(くっ、深雪、やっぱり強い。けど、これならどう!)

雫はすぐさま左手に装着している腕輪型CADを外した。その行動に深雪も、この場にいるイザヤを除く全員が驚愕する。

「え!?雫、なんでCADを外しているの!?」

「何をしているんだ!?」

ほのかやレオが雫の行動に疑問の声が上がる。それは他の皆も同じであった。

(何をするつもりだ、雫)

達也は雫の行動がわからない。一体、彼女は何をするつもりなのだと。

(おっ、もうあれをするのか)

唯一、その行動を理解していたイザヤが心の中でそう呟く。雫は、外した腕輪型CADを口に噛んで持ち、懐からもう一つの拳銃特化型CADを取り出した。両手に持った拳銃特化型CADで『フォノンメーザー』を放ち、深雪の氷柱に攻撃する。

(!?、破壊される!)

氷柱を『情報強化』して耐性を上げたとしても、一カ所に二つもの『フォノンメーザー』の熱光線を喰らえば破壊される。深雪は不意をつかれ、一気に3本の氷柱を破壊される。皆が驚く。それは、雫の戦い方である。三つのCADを使うなど今までの試合で見たことがないからだ。達也もその事について驚く。しかし、もっと驚いたのは別であった。

(雫の魔法の発動速度が速い。それに、さっき見た干渉力も深雪に引けを取らない力だ。今まではそんな事はなかった。これは雫の魔法力が上がっている証拠だ。一体、どうやって魔法力を上げるなんてことが出来るんだ!?)

驚愕しながら、達也はイザヤの方を見る。そんな視線にイザヤが気がついたのか、

「先輩、僕なんか見てていいんですか?」

イザヤは達也を見てそう質問する。

「……イザヤ、やはりお前は只者ではないな」

互いに見つめ合う二人を置いて、深雪と雫の戦いは終盤を迎える。雫の氷柱は残り5本、対する深雪の氷柱は残り3本、雫が少し有利な状況である。

「おいおい、まさか雫、このまま深雪に勝っちまうんじゃないか」

「雫、頑張って」

レオとほのかの声に皆が思う。あの司波深雪に土をつけることが出来るかもしれないと。しかし、深雪はそんなに甘くない。

(雫、あなたに何があったのか分からないけど、こんなに追い詰められるなんて驚いたわ。けどね、まだよ、お兄様が見ているんだもの、カッコ悪いところは見せられないわ!!)

深雪はCADを操作し、雫の氷柱に向かって魔法を放つ。

(操作が複雑なものから単純な魔法に変えてきた、魔法の発動速度もその分速くなる!)

雫は深雪の魔法を防ぐことができず、5本のうち2本を破壊された。

「いや、深雪も追い上げるわ!」

「どうなるんだ一体」

エリカや五十里啓がこの後の展開が想像出来ないと言った顔である。

(もう少し、もう少しなんだ!これで、全部出す!!)

雫は拳銃特化型CADを地面に放り投げ、腕輪型CADを再び装着した。そして、CADを操作する。

(何か来る!?その前に終わらせるわ、雫!)

深雪は魔法を発動して、雫の3本の氷柱のうち2本を破壊する。

(あと、1本!)

深雪は残り1本の氷柱を破壊しようとするが、その先に雫の魔法が発動される。

(あの魔法は!?)

雫が発動する魔法を誰よりも早く『精霊の眼』で確認した達也は、この日何度目かの驚いた顔をする。

(『氷炎地獄』《インフェルノ》だと!?)

雫は『氷炎地獄』《インフェルノ》を発動し、深雪の残りの氷柱を全て破壊しようとする。深雪は雫の発動した魔法に驚くが、すぐに氷柱の『情報強化』を行う。

(これを防がれたら、もう私に後がない!これで決める!)

(これを阻止しないと、負けてしまう!)

お互いが、己の全ての力を引き出す。その姿を観客席の皆が固唾を飲んで見守る。

「「はあぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!」」

全力と全力がぶつかり合い、膠着状態となった。しかし、雫は叫ぶ。

「いけえぇぇぇぇぇーーーーーーーーー!!」

雫の魔法は深雪の魔法を瞬間的に上回り、『氷炎地獄』《インフェルノ》が深雪の氷柱を襲う。そうして、深雪の残りの氷柱は全て破壊されたのだった。

「ま、負けた、私が、、」

深雪はその場に座りこむ。今まで、誰にも負けたことがなかった自分が負けたことに、信じられなかった。

その後、観客席から歓声と拍手が聞こえてきた。

「雫ーー!!やったね!!」

ほのかが雫を祝福する。

「すげーよ、あの深雪に勝っちまうなんてよ」

「おめでとう、北山さん」

「何この試合、一生のうちに見れるの?」

「すごいです、二人とも!」

次々に声が上がる。雫は意識が朦朧としながら、皆の声を聞く。

(ほのかの声が聞こえる、あれ、私、深雪に勝ったの?、わからない、どうなったの?)

そうして雫はその場に倒れ、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

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