魔法科高校の後輩   作:パクチーダンス

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第十六話 イザヤ「会場に着いたら最初に何をするかわかるかい?」泉美「…何するんですか?」イザヤ「とりあえず料理をすべて食べる」

 九校戦出発当日。達也はバスの外で選手の人数チェックをしていた。

「後来てないのは、イザヤだけか」

午前八時半に学校に集合で、そこからバスでホテルに行く予定である。今の時間は八時十分、集合時刻にはまだ早いがイザヤ以外の生徒は皆バスに乗り込んでいる。またしばらく待っていると、前方からイザヤが歩いてきた。

「おはようございます、先輩」

「おはようイザヤ、お前が最後だ」

達也は暗に「もっと早く来い」と言っているのだが、

「あれ?みんな早いですね、そんなに九校戦楽しみなんですか?」

イザヤはそんな事お構いなしである。

「みんなお前と違って、気を遣って早く来るんだ」

「あ、今の言葉は棘がありましたよ先輩、ひどい」

達也は、朝からこいつの相手をするのは疲れると思いながら、

「早くバスに乗れイザヤ」

「ええ、わかりましたよ」

そうして二人はバスに乗り、バスはホテルに向かって動き始める。

 

 

 「……イザヤ」

「なんですか、先輩?」

「イザヤ、なんで深雪の隣に座っているんだ?」

 

 北山雫 イザヤ 司波深雪 司波達也 光井ほのか

 

バスの一番後ろの席はこの五人がこの順番で座っていた。イザヤと達也は二人とも女子に挟まれた形となっていた。

「いいじゃないですか先輩、僕も先輩も両手に花ですよ。細かい事はなしにしましょうよ」

「いいや問題だよイザヤ、お前は危ない奴だ。深雪に何をするかわからない」

「僕、信用ないなー」

「パーキングエリアに着いたら、深雪と席を替える」

「いやですよ、男と隣同士なんて」

「これは必要な処置だ」

イザヤと達也は、バス全体に聞こえていた。達也をよく知るものたちは、

[ブラコンお兄様が、またなんかやってる]

イザヤをよく知るものは、

[イザヤ君、まったく何をやってるのやら]

といった感じである。

「深雪先輩、先輩は僕の隣は嫌じゃないですよね?」

イザヤは深雪にそう言うが、深雪はニコッと笑うだけであった。そんな深雪に対してイザヤは、

「まったく、この兄にしてこの妹あり、ですよ」

「イザヤ君?それはどう言う意味ですか?」

「あれ、頭の良い深雪先輩がわからないとは。簡単に言うと、ブラコン妹って事ですよ」

その瞬間、バスの中にいる全員が凍りついたような感覚を覚えた。しかし、それは一瞬で掻き消された。

「…………」

深雪はジッとイザヤを睨みつけるが、イザヤはニコッと笑い返す。そんなイザヤにハァとため息をつく深雪。

「お兄様、後で席を替わりましょう」

「それがいい、深雪。お前は賢い」

そんな二人にイザヤは、「クククッ」と笑うのだった。しかし、バスの中にいるその他の人間は、

[命が幾つあっても足りない!!]

と心の中で叫ぶのだった。

 

 

 

 パーキングエリアで小休憩を挟んだのち、バスはまた出発する。達也と深雪は席を入れ替えるのだった。

 

 イザヤ 北山雫 司波達也 司波深雪 光井ほのか

 

「イザヤ、なんでお前も席を移動しているんだ?」

「達也先輩が怖いからですよね、雫先輩」

「……同調を求められても困る」

イザヤはニコニコとしているが、間に挟まれている雫は体を丸くするのだった。

「イザヤ、雫にも迷惑をかけてどうする」

「いやいや、雫先輩は後輩に優しいので素直に替わってくれたんですよ、誰かさんと違ってね」

「何だと?」

そんな会話するをしている二人を見てほのかは、深雪に耳元で質問する。

「ねえ、深雪、達也さんとイザヤ君は仲が悪いの?」

そう聞いてくるほのかに、

「いえ、お兄様も私も、決して嫌いというわけじゃないんだけれど、なんて言ったらいいのかしら?、苦手というか」

深雪もわからないのだ。確かに、イザヤは得体の知れない人間である。しかし、自分に懐いてくれたり、達也と軽口を叩き合うなど、危険な存在とは思えない。けど、何かあるのは間違いないので、どう接して良いのかわからず、苦手という事なのだ。そんな返答にほのかは、

「けど深雪、あんなフランクに話している達也さん、今まで見た事ないかも」

「……そうね」

もしかしたら、達也とイザヤは相性が良いのかも?、そう思う深雪であった。

 

 

 

 バスがホテルに着くと、各自荷物を持って部屋に向かう。

「イザヤ、お前の鍵だ」

達也はイザヤに鍵を渡す。それは、イザヤ専用の一人部屋である。

「はい、確かにお願いは聞いてもらいましたよ、達也先輩」

イザヤとの賭けに負けた達也は、イザヤからホテルで一人部屋を取ってくれと言われていたのだ。

(少し手間取ったが、これでチャラだ。正直、こんなお願いでいいのかと思ってしまうが)

達也は部屋に歩いていくイザヤの背中を見る。

(アイツがいいと言っているのだから、これで良いだろう)

イザヤはスキップしながら、自分の部屋に入っていくのだった。去年のような途中事故もなく、全てが予定通りに進んでいる。しかし、一つ問題があるとすれば、イザヤの言っていた九校戦で何か良からぬ事が起きるというものである。

 

 

 

 前夜祭パーティーの開幕が迎え、イザヤは料理に手をつけていた。

「イザヤ君、少し食べ過ぎではないですか?」

後ろから泉美の心配する声が聞こえてくる。

「何言ってるの泉美ちゃん、食べ盛りなんだから、泉美ちゃんの方こそもっと食べないといけないよ」

そう言ってイザヤはトングを使い、料理を皿に盛り付けていく。そんな泉美を見つめていると、

「泉美ちゃんも食べる?」

イザヤは右手で、スプーンに乗った料理をこちらに差し出した。

「…………いただきます」

イザヤにあーんしてもらい、泉美の口に運ぶ。

「どう美味しい?」

イザヤはニコッと笑いながら聞くと、

「……まあ………美味しいです」

泉美の顔は少し赤くなっていた。男の人に食べさせてもらうなど、初めての経験である。

「それは良かった」

イザヤは泉美が口にしたスプーンで皿に盛り付けてある料理を食べ始める。そんな光景に、

(か、間接キス)

なんて頭で考えていた。対するイザヤは何とも思っていないようである。そんな二人の姿を見ていた香澄は、

(またやってるよ、、)

そして雫は、

(……………)

面白くないと言った顔である。そんな事も露知らず、イザヤは何か面白いものを見つけたのか、持っている皿を泉美に渡した後、

「ちょっとイザヤ君、この料理どうするのですか?」

「後で食べるよ、もし泉美ちゃんが食べたかったら、好きにして良いよ」

そう言ってどこかへ歩き出した。泉美は渡された料理にジッと見つめたのち、スプーンを手に持つのだった。

 

 

 

 イザヤが目にしたのは、達也と深雪、そして一条将輝、吉祥寺真紅朗が話しているところである。イザヤは首を突っ込まずにはいられなかった。

「先輩、何してるんですか?」

「…イザヤ」

達也が、お前何で来たんだ、といった顔をしてイザヤの方を見る。イザヤはそんな事お見通しなのか、

「なんか面白い話とかされていました?僕も混ぜてくださいよ」

ニコッと笑いながら、イザヤは輪に入れてと言う。

「司波、この生徒は何だ?」

一条将輝は達也に質問した。

「俺の後輩で、折紙イザヤという」

「初めまして、クリムゾン・プリンス、折紙イザヤです」

「……その呼び名、さっきも司波に言ったがやめてくれ」

一条将暉が顔を顰める。それにイザヤは、

「おや、もう達也先輩に揶揄われた後なんですね」

「イザヤ、俺は別に揶揄っていない」

「わざわざ、そんな仰々しい名を口にした時点で、貴方は揶揄われているんですよ、将輝先輩」

「な!?そうなのか司波!」

「誤解だ一条、それとイザヤ、もう違うところに行っていろ」

達也はイザヤに、早くどこかへ行くように睨む。そんな達也を見てイザヤはフッと笑い、

「はいはい、じゃあ僕はこの辺で」

イザヤはその場を立ち去った。泉美のところに戻って行こうとした時、

「イザヤ」

雫から声を掛けられる。後ろにはほのかもいる。

「何です?雫先輩」

「達也さんに迷惑かけちゃダメでしょ」

雫はイザヤを注意するが、

「面白いので、ついやってしまうんです」

悪びれる様子もなくイザヤは笑う。そんな時、

「雫」

「晴海兄さん」

雫の従兄が雫に話しかけてきた。その後、二人は言葉を交わしたあと、雫は深雪の方に近づいてくる。

「深雪、ちょっとお願いがあるんだけど」

「何かしら?」

「私の従兄が達也さんを後輩に紹介して欲しいって」

「お兄様を?わかったわ」

そうして深雪は達也を呼んで、その紹介したい生徒の前まで連れてきた。

「初めまして、黒羽文弥です」

「初めまして、黒羽亜夜子といいます」

二人は達也に挨拶をする。無論、達也達と黒羽双子はお互いを知ってはいるが、初対面のフリをする。これは今後、二人が達也に接触しやすくするためのお芝居である。そんな姿を遠巻きから見ていたイザヤは、

「なかなか良い魔法力を有していますね」

「ん?どういうこと?」

雫がイザヤの言った意味を尋ねる。

「あの双子は、先輩と同じく壁を破壊できる人間ということです」

「そうなんだ」

「……二人でコソコソと何を話されているんですか?」

泉美がイザヤと雫の側まで歩いた。

「秘密だよね、雫先輩」

「うん、秘密」

イザヤと自分だけの秘密を持っている、雫は少し嬉しそうだった。

「……そうですか、はい、イザヤ君」

泉美は預けられていた皿をイザヤに返す。しかし、皿の上にあった料理は全部なくなっていた。

「あれ?泉美ちゃん、僕の料理は?」

そう聞いてくるイザヤに泉美は、

「全部食べました」

 

 

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