魔法科高校の後輩   作:パクチーダンス

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第十八話 イザヤ「達也先輩、僕と一緒に踊りましょうか?」達也「……わかった、踊ろうイザヤ」深雪・雫・泉美「「「!?」」」

 九校戦もようやく終盤、最後に控えるのはスティープルチェース・クロスカントリーである。この競技に出るのは、司波深雪、千代田花音、北山雫、光井ほのかの面々である。最後の競技ということで、観客の人数もこれまで以上に多くなっている。泉美や香澄と一緒に前方の席に座りながら、試合開始の合図を待っている。

(まったく、早く終わらせて下さいね、達也先輩)

イザヤは心の中でそう呟き、それと同時につい数日前の出来事を思い出す。

 

 

 

 「雫、優勝おめでとう」

「まあ、雫の実力なら当然ね」

達也の作業車で雫の優勝を祝う夜のお茶会が行われていた。何度も祝われて雫も嬉しそうにはにかむ。

「ありがとう、みんな」

雫はみんなに感謝を伝えながら、深雪の方を見る。

「今度は深雪の番だね」

雫は深雪にエールを送った。

「ええ、私も頑張らないと」

深雪は雫に笑顔で返す。

「深雪先輩、私も応援しております」

泉美は目をキラキラとさせながら、深雪にそう伝える。そんな泉美にイザヤはフッと笑いながら、手元の紅茶を飲む。ところで、この場にいるのは、二年生女子選手全員と達也のいつメン(男子を除く)、そして一年生のイザヤと泉美である。女子比率が多いがそんなこと達也やイザヤにとってはどうでも良いことである。しかし、他の生徒から見れば、羨ましいことこの上ない。

「それにしても、エイミィの機嫌が直ってよかったよ、あのままずっと拗ねられたらどうしようかと思ってさ」

「なっ!?私、拗ねてないもん!」

エイミィは否定するが、何のことかわからない。

「何があったの?」

深雪は里見スバルに聞く。

「十三束のやつがね、、、」

その答えに深雪、ほのか、雫が「あぁ………」という感じで納得の表情を浮かべた。

「平河千秋と話している姿を目撃してね、それで拗ねていたのさ」

里見スバルはエイミィが拗ねていた理由を皆に打ち明ける。

「スバル!、七草さんや折紙君がいるのに言っちゃダメじゃん!」

エイミィはスバルの言葉を非難するが、

「いえ、私は前から気づいていましたので」

「同じく」

二人にはすでに知っていた様子であった。

「え!?」

すでに気づかれていたことに、エイミィは驚いて固まる。

「エイミィ、十三束君はダメだよ」

「何が!?」

雫の発言にエイミィはさらに声を上げる。

「十三束君は達也さんと違って鈍感だから」

エイミィは微妙な表情を浮かべる。言い返したいけど、雫の言う通りなので何も言い返せない。

「エイミィ、世の中にはね、他人からの好意を知っていながらも知らんぷりする人間や他人からの好意を理解できずにそのまま知らないでいる人間がいるの、十三束君は後者、だから、ハッキリ言わないとわかってもらえないよ」

その言葉にエイミィは下を向き、グッと手を握りしめる。イザヤはその姿にニヤニヤと笑いながら紅茶を飲む。そんなイザヤを雫や泉美は見つめていた。そして、そんな雫と泉美を温かく見つめるほのかと深雪。この場所でも、恋が交錯している。

 

 

 

 お茶会がお開きになると、イザヤと泉美は歩いてホテルに向かう。

「明日が楽しみですね」

泉美はそう言ってイザヤの顔を見る。

「まあ、そうだね」

気のない返事をし、あくびをする。泉美はまったくもうと思っていると、突然、イザヤがすこし驚いた表情を浮べた。

「どうしたしたか?イザヤ君」

「…ああ、達也先輩に伝えたいことがあったんだ、先に帰っててよ、泉美ちゃん」

「伝えたいこと?わかりました」

イザヤは泉美にそう言って来た道を戻っていく。

 

 

 

 「お兄様、ご自分がどれほどの無理をなさっているのかわかってますか!朝から夕方までCADの調整、選手の相談に乗り、夜遅くまで指導をしたり、その傍らで九島家と国防軍を相手になんて、これではお兄様のお身体が壊れてしまいます!」

「まて深雪!俺の『眼』を封じるつもりか!そんな事をすれば、お前まで魔法を使用できなくなるぞ!」

イザヤには、達也と深雪がいる場所で何かが起こっていると、自分のBS魔法で感じる事ができた。さっきまでいた場所に向かうと、深雪が何らかの魔法を発動する途中であり、達也は深雪の行動に驚いて止めようとしていた。イザヤは、自分の干渉力をこのエリア一帯に広げて深雪の魔法発動を阻害する。

「な!?私の魔法が!?」

「イザヤ!」

「達也先輩、深雪先輩の手綱はしっかりと握って下さいよ」

イザヤの登場に達也と深雪は驚く。

「イザヤ君!邪魔しないでください!」

深雪は普段の態度とは一変して、イザヤを睨みつけ、憤りを感じている。

「こんな夜にうるさいですよ、深雪先輩。達也先輩、早く妹さんを落ち着かせて下さい」

「深雪、落ち着くんだ!」

「イザヤ君、何故あなたは手伝わないのですか!?お兄様を任せっきりで、自分は高みの見物ですか!?」

深雪は達也の言葉を聞かず、どんどんヒートアップしている。そんな深雪にイザヤは、

「深雪先輩、自分が何もできないのを他人のせいにしないでくださいよ」

「!?」

「イザヤ!言い過ぎだ!」

達也の言葉を無視し、イザヤは話を続ける。

「この世の不利益は、すべて当人の能力不足です。けどね深雪先輩、あなたはそもそも一体、何をしたんですか?」

「え?」

「達也先輩の代わりに自分が何かしようと思わなかったのですか?あなたは、達也先輩に守られているだけのお人形ですか?」

「わ、わたしは……」

「…‥イザヤ、もういい」

達也はイザヤを睨みつけ、もう黙れ、と目で訴える。イザヤと達也はしばらく見つめ合うが、

「…まだまだ言いたい事がありますが、この辺でやめときます。おやすみなさい、達也先輩、深雪先輩」

そしてイザヤはゆっくりとホテルに戻っていく。

「とても不自由な人間だな」

イザヤは空に輝く星を見ながら、そう呟いた。

 

 

 

 スティープルチェース・クロスカントリーの試合が終了した。結果は、女子が深雪、男子が一条将暉の優勝で終わった。

「さすが深雪先輩です!」

「あの人、何が出来ないんだろう?」

泉美と香澄がそれぞれに深雪の凄さに感心する。

(達也先輩、お疲れ様です)

イザヤは深雪にではなく、達也に賛辞を送ったのであった。

 

 

 

 今回の九校戦も第一高校の勝利で終わった。後夜祭は、前夜祭とは打って変わり、和やかなものである。達也は、選手たちが社交ダンスをしている光景を壁にもたれながら、遠くから見つめていた。

「達也先輩、お疲れ様です」

イザヤが色んな意味での労いの言葉をかける。

「イザヤ、お前が手伝ってくれたら、もっと楽に終わったんだがな」

達也はそうイザヤに文句を言うが、

「国防軍と事を構えるつもりは今の所ないですからね、すでに目をつけられている達也先輩に任せるのが一番ですよ」

「……今の所は、か」

「ええ、今の所はです。あそこは腐ってますからね、相手するだけ疲れるだけです」

そう言って二人は、しばらく見つめ合った。そこに、

「あの、達也さん」

ほのかが達也とイザヤの方に向かって近づいてきた。

「一緒に踊りませんか?」

ほのかの提案に達也は、チラッと遠くで、同じ一高生徒と話している深雪を見た後、

「ああ、踊ろう、ほのか」

「はい!」

達也はほのかの手を取り、二人は歩いて行った。そして、オーケストラの演奏に合わせ、踊っていく。そんな姿をイザヤはニヤニヤしながら見つめていた。

「イザヤ」

横を見ると、いつの間にか雫が立っていた。

「雫先輩、どうされたんですか?」

「………」

雫は何も喋らない、イザヤから踊ろうと言ってくれる事を待っているようだ。しかし、イザヤはそんな事お見通しである。

「先輩、何か食べますか?、もっと食べないと色んな意味で大きくなりませんよ」

ニコッとしたイザヤの言葉に雫は顔を顰める。

「……もういい」

雫はイザヤの足を蹴ってその場を去っていく。深雪は雫のそんな姿を見て、イザヤの元に駆け寄る。

「イザヤ君、雫は手を取ってくれる事を待っていたんですよ」

「すみません、少し意地悪しました」

口では謝っているが、顔が謝っていないイザヤである。

「そんなことより深雪先輩、達也先輩と踊らなくていいんですか?」

「お兄様とは最後に踊ります」

深雪は、ちゃっかり達也とラストを踊る予約しているようだ。

「じゃあ、今から僕と踊りませんか?」

「………雫はどうするのですか?」

「後からちゃんと踊りますよ、さあ」

イザヤは手を出すと、ハァとため息をついて、深雪はその手を取り、ホールの真ん中へと歩き出す。そして二人は踊り始める。

「先輩、あの時はひどい事を言ってすみません」

「……いえ、私にも非があります。それに、、」

「それに?」

「私はずっと、お兄様にして貰ったばかりでした、本当はもっとお兄様のお役に立ちたいのに」

「あの時みたいに、もっと我儘を言えばいいと思いますけどね」

「‥‥ちなみに、どこまで聞いていました?」

「全部」

イザヤと深雪はダンスが終わると、バルコニー出て、また少し話していた。

「僕はね、深雪先輩、あなた達兄妹の正体を知っているんですよ」

「え?」

イザヤのいきなりの発言に深雪は戸惑った。

「…知っているって、何をですか?」

「これです」

イザヤはポケットからあるものを取り出した。それは、四葉のクローバーだった。

「!?」

深雪は驚いて声も出ない。その四葉のクローバーを表す意味を即座に理解した。しかし、何故、この男が知っているのかと。そんな二人に近づいてくる人影があった。

「深雪、イザヤ、こんな所で何してる?」

「お兄様」

自分に近づいてくる達也に深雪は耳元で喋る。

「イザヤ君は私達が四葉の人間だと知っているようです」

「なに!?」

その言葉に驚き、達也はイザヤの顔を見る。イザヤはニヤニヤと笑っている。達也は改めてイザヤに対しての警戒心を高めるのだった。

「達也先輩、深雪先輩、僕はあなた達の学校生活を壊したりしませんよ。ただ、僕に何かしようとしたならば、そのときはね」

イザヤの言葉に達也と深雪は、表情を固くする。

「達也先輩、僕は自由でいたいんですよ、それに不自由な人間を見ていると、無性に助けたくなるんです。先輩、あなた、今自由ですか?」

「どう言う意味だ?」

「周りから何もかも縛られていて苦しくありませんか?、もしそう思うのでしたら、僕が力を貸しましょう」

イザヤは達也の前に右手を差し出す。その手は救いか、はたまた地獄への入り口か、達也は手を取らなかった。

「まあ先輩、今後とも後輩として可愛がってくださいよ」

そう言ってイザヤは、中に戻って行った。

 

 

 

 イザヤが中に戻ると、待っていたのは泉美だった。

「お二人と、何を話されていたんですか?」

泉美は訊ねる。しかし、イザヤは

「なに、深雪先輩にちょっかいをかけていたら、怖いお兄様に叱られていたんだよ」

イザヤは困ったと手を挙げる。泉美はいつもの事かと思った。

「イザヤ君、ダンスは得意ですか?」

泉美はいきなりそんな事を質問する。

「君よりも上手い自信があるね」

「へえ、それじゃあ見せて貰いましょうか」

泉美は売り言葉に買い言葉で、右手をイザヤの前に差し出す。その手をイザヤが手に取って、ダンスが始まる。

「なかなか上手いね、泉美ちゃん、さすが七草家のお嬢様」

「イザヤ君も、この私と踊るのにふさわしい実力をお持ちで」

「ハハ、言うようになったね、泉美ちゃん」

二人はこうして軽く口を叩きながら、笑いながら、ダンスが終了する。

 

 

 

 イザヤはその後、香澄、エイミィ、とダンスをした。香澄はダンスが上手いイザヤに対して、「なんかムカつく」と言っていた。エイミィとは、ダンスをしながら、男の気持ちを理解するため、恋愛相談をしていた。後夜祭もそろそろ終盤に差し掛かってきた頃でイザヤは、

(あれ?どこに行ったのかな?)

イザヤは雫を探していた。どこを見渡しても見つけられないので、ほのかに聞いてみることにした。

「少し、外に涼みにいくと言ってたよ」

その言葉にイザヤは会場の外を出ると、また探し始める。

(さて、どこにいるかなー)

しかし、雫はすぐに見つける事ができた。噴水近くのベンチで座っていたのだ。噴水の流れる水をずっと見つめている雫にイザヤは声をかける。

「雫先輩、こんなところで何してるんですか?」

「………」

自分に声をかけてきた人間がイザヤと分かったのか、体がピクッと動いたが、返事が返ってこない。イザヤは雫の横に座った。しばらく沈黙が続いたのち、雫がようやく口を開く。

「さっきは楽しそうだったね」

それはダンスの事だろうとイザヤは思う。

「ええ、楽しかったですよ、深雪先輩、エイミィ先輩、香澄ちゃんや泉美ちゃんと踊っていました」

イザヤは踊った人間の名前を出していくが、最後の泉美の部分に雫はまた、体が少し動いた。

「よかったじゃん、可愛い子達と踊れて」

「ええ、幸せな時間でしたよ。だから最後は、貴方と踊りたくてね」

その言葉に雫は顔をあげる。すると、イザヤと目が合う。

「先輩には、深雪先輩との試合に勝利した事への賛辞を伝えていませんでした、遅くなりましたが、おめでとうございます」

「…遅いよ、イザヤ」

イザヤはベンチから立ち上がり、雫の前で膝をつき、手を差し出す。

「麗しいお嬢さん、この私と踊ってはもらえませんか?」

「喜んで」

雫はこの日一番の笑顔を見せ、二人はホールから聞こえてくる音楽と共に、夜空の下で踊るのだった。

 

 

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