折紙イザヤと七草姉妹は、入学式が終わるとそのまま一緒に自分のクラスに歩いていた。
「イザヤ君は、何組ですか?」
泉美がそう尋ねる。
「A組だよ、君たちは?」
イザヤが聞き返す。
「私はイザヤ君と同じA組ですね、香澄ちゃんはB組のようです」
「なんで私だけ違うのよ」
香澄は文句を言っていた。
「香澄ちゃん、こればっかりはどうしようもないですよ」
泉美は香澄を宥めている。
「お父様に言って、同じクラスに変えることはできないかな?」
香澄はそんなことを口走る。自分の父親の力を使い、泉美と同じクラスにしてもらおうと考えている。確かに、七草の力を使えばそれは可能だろうとイザヤは思う。
「こんな事で家の力を使ってどうしますか、お父様に笑われますよ」
「だってさー・・・」
などと、たわいもない話を繰り広げていた。話しながら歩いて行くと、自分たちのクラスにたどり着いた。
「じゃあ私はここで」
「はい、香澄ちゃん、また後で」
そう言うと香澄はB組に入って行った。
「僕達も行こうか」
「はい」
イザヤと泉美は、A組の部屋の扉を開き、クラスの中に入っていく。
「えーと、僕らの席はどこかな」
「教室の前に貼ってあるみたいですよ」
泉美はイザヤにそう言い、指を差す。そこには、A組であろう生徒達が自分の席がどこにあるのか知らうとして人だかりができている。程なくして人が少なくなった後、二人は自分の席を確認した。
「あれ、もしかしてお隣さんかな」
「そう、みたいですね」
なんと、イザヤと泉美は席が隣同士であったのだ。こんな偶然あるのかと二人は同時に思ったのだろう。
「妙な偶然が重なるね」
「少し驚きました」
イザヤと泉美はそのまま、指定された席に座った。オリエンテーションが始まるまで少し時間があるので二人は話をしていた。
「イザヤ君は入試試験どうでした?」
「まあまあの手応えだったかな、つまらないものだったよ」
「つまらない?」
泉美はそう問いかける。
「面白みのない試験だった。そういう意味だよ」
「試験に面白いも何もないと思いますが」
(まあ、それはそうなんだが)
イザヤは、心の中で答える。泉美は、不思議に思ったのか「?」と首を傾げている。すると、クラスの扉が開いた。先生が入ってきたのかと思ったがそれは違った。
入ってきたのは、今年の新入生総代を務めていた七宝琢磨であった。彼はクラスに入ってくるなり周りを見渡し、そして一点を見つめた。そこは、間違いなく僕の隣にいる泉美に違いない。
「君、なんかすごい見られてるけど」
イザヤは、泉美にそう言うと、
「ええ、見られていますね、すごく」
彼女も自分が見られていることに気が付いていたようだ。七宝は、彼女が自分に気がついたのを確認したのち、視線を離して自分の席を確認しに行った。
「泉美ちゃん、入学早々から男子にモテモテだね」
「なんですかそれ、やめてください。」
イザヤは泉美を茶化し、泉美はその言葉を聞くなり嫌な顔をした。
「七宝君とは何もありません、向こうもそういう風に私を見ていたのではないです」
「誰も七宝琢磨の事だとは言ってないけどね」
「……」
イザヤはさらに追い打ちをかけるが、泉美は無視した。「おーい、無視するなよ」と視線を向けるが泉美はこのままオリエンテーションまでダンマリするつもりらしい。
(少し、ふざけすぎたかな)
そう思うと、イザヤはオリエンテーションが始まるまで外の景色を眺めていた。
オリエンテーションが終わり、選択授業も一通り決めたのち、イザヤはこの後どうするのか考えていた。横を見ると、泉美はすでに帰る準備をしているようだった。
「泉美ちゃん」
「なんですか」
不機嫌な彼女の声が聞こえた。
「この後どうするんだい、僕は学校を見て回ろうと思っているんだが」
「そうなんですか、なら、そうすれば良いではありませんか」
彼女の声は冷たい。さっきのことを根に持っているようだ。
(あらら、いきなり失敗しちゃったかな)
イザヤは、彼女にさっきのことを謝るつもりは毛頭なく、この状況を楽しんでいる。
「なんでニコニコ笑っているんですか」
「ごめん、表情筋が緩いんだ」
なんてよくわからない返答をして、泉美はさらに不機嫌になった。
「そうですか、それでは私は香澄ちゃんと帰るのでさようなら」
そう言うと、彼女はスタスタとクラスを出て隣のB組の方へ歩いて行った。
(さて、どうしようかな)
とりあえず目的もなくブラブラと校内を見て回ろうと考え、歩き出した。
しばらく校舎の中を探検した後、校舎を出る。校舎の外では、上級生が新入生にクラブの勧誘を行っていた。新入部員勧誘週間はまだであるがフライングを起こしてまで、勧誘したいのだろうか。入学早々一年生を勧誘している生徒達の集団が道を塞いでいる。
早くここから移動しようと考えた。自分はどこにもクラブに入る予定はないため、巻き込まれるのはごめんだとイザヤは思い、その場を後にする。そうしようとした時、
「君、剣道に興味はないかい!?」
「いいえ、テニスに興味があるのよね!?」
なんて横から声をかけられ、自分の結末を悟った。この後、「もみくちゃにされるなー」なんて遠い目をしながら他に生徒になすりつける方法はないかと考えていると、
「一年生から離れなさい!」
なんて声が後ろから聞こえてきた。イザヤは後ろを振り向くとそこには朝方自分を起こしてくれた司波深雪が立っていた。
「げっ、氷の女王」
「やばい、氷付けにされる」
なんて上級生が震える声をあげて、一目散に彼女から逃げ出した。
「あ、待ちなさい!」
なんて声をかけるがそれも虚しく脱兎の如くどこかに走り去って行った。
「ありがとうございます、氷の女王さん」
なんてイザヤは司波深雪に感謝を伝える。
「礼には及びません。しかし、その呼び名は二度と使わないようにお願いしますね」
と、深雪は顔を笑顔にしたまま圧をかけていた。
「あー、すいません、もう言いません。」
(笑顔なのに怖いなー、この人)
なんて心の中で呟いた。
「改めて、助けてくれてありがとうございます。朝方も先輩が起こしてくださらなかったら遅刻していたかもしれません」
イザヤは笑って答えた。
「ええ、次はちゃんと起きてくださいね」
深雪はそう言うと、来た道を振り返り、
「それでは、行きましょうか」
「行く?行くってどこにですか?」
イザヤは、この美女は自分をどこに連れて行くのだろうと考えていた。
「僕、何も悪いことしてませんよね?」
そう深雪に聞くと、
「ええ、あなたは何もしていません。していませんが、今から生徒会に来てはもらえませんか?」
自分がなぜ生徒会に行かなければならないのか、その理由が分からない。いや、理由があるとすればそれはアレしかないな、とイザヤは心の中で思った。言われるがまま、深雪の後ろについて行く。
(しかし、もう見つかるとはね。行動が早いなー)
イザヤはこれから起こることにワクワクしていた。
時は少し遡り、生徒会室では、
「じゃあ、七宝君が生徒会を断っちゃったから次は次席の子になってしまいますね」
深雪は生徒会会長である中条あずさにそう言った。
「そうですね、七宝君の次は真由美さんの妹さんの七草泉美さんですね。彼女を生徒会に勧誘したいと思っています」
あずさは、そう深雪に答える。今回の入試は1位から3位まで僅差だった。
1位は七宝琢磨 2位は七草泉美 3位は七草香澄である。それに、自分が慕っていた七草真由美の妹ならば問題ないと判断したのだらうと深雪は考えた。
「しかし、今回の入試で気になる生徒がいたんです」
「気になる生徒?」
パソコンで作業をしていた達也が手を止め、あずさの方に体の向きを変える。
「ええ、順位は普通なのですが、奇妙なのが筆記の採点結果なんです」
((採点結果?))
達也がそう心の中で疑問を浮かべていると、
「全教科の点数が全て80点ぴったりなんです」
「「!?」」
達也と深雪は驚いた。
「それは、その生徒が狙ってその点数に揃えたと言うことですか?」
深雪はあずさにそう尋ねる。
「そうとしか考えられないと、私も服部君も先生方も考えています。なんせ、今回の入試で一番正答率が高かった問題を間違えて、一番正答率が低かった問題を正解するなんでありえないでしょう」
なぜそんなことをしたのか、達也達にはわからなかった。大事な入試試験でそんな遊びじみた事をするなんてよっぽど自分が合格すると自信があったのか、はたまたただのバカなのか。
「その生徒の情報を見せてもらえますか?」
深雪がそう言うと、あずさはその生徒の情報をまとめたファイルを渡した。
「お兄様」
深雪が達也に声をかけると、達也は椅子から立ち上がり、深雪のそばまで近づき、一緒にその生徒のファイルを見た。
「確かに、これはおかしいな」
入試の解答が不自然なくらいおかしかった。なぜこんな簡単な問題が解けないのに最後の難関な問題を解くことができるのか。達也も理解できなかった。この生徒は遊んでいる。そう直感で感じた。
もし、この生徒が手を抜かず全力で問題を解いてきた場合、この生徒が今年の総代になっていたのではないかと思った。
「お兄様、私この生徒見たことがあります」
深雪がこの生徒、折紙イザヤを見たことがあると知り、驚いた。
「何?どこでだ?」
「入学式が始まる前、ベンチで寝ていたんです。そして、起こした後にまた会いましょうと」
達也は考えた。なぜ深雪にまた会うと言ったのか、分からないがこの生徒には何かあるとガーディアンである自分の直感がそう言っている。
「とりあえず、七草泉美と折紙イザヤをここに呼びたいと思います」
泉美だけではなく、この生徒も呼ぼうと達也は二人にそう提案する。
「この生徒もですか?」
あずさは達也の言葉に首を傾げる。
「ええ、この生徒にも少し話を聞きたいと思いまして」
そう言うとあずさは「わかりました」と言い、二人をもてなす準備に取り掛かる。
「お兄様」
深雪が達也に声をかける。
「この生徒は何かある、そんな気がしてならないんだ」
達也は言葉を小さくして、深雪に伝える。
「何か?」
「ああ、杞憂ならいいんだけどな」
達也はイザヤの、写真をじっと見つめていた。
時は戻り、イザヤは深雪と一緒に生徒会室まで歩いていた。そのとき、
「深雪さん」
あずさが左の通路から泉美と一緒に出てきた。
「会長、泉美ちゃんを見つけれたんですね」
「はい、校門を出る寸前でしたよ」
深雪とあずさが会話をしていると、
「ほわぁ」
泉美からおかしな声が聞こえてきた。
(ほわぁ?)
イザヤは疑問に思った。
「あ、あの、中条会長そちらのお方は?」
「ええ、生徒会副会長の司波深雪さんです」
あずさがそう紹介すると、
(女神様…)
と、泉美は心の中で呟いた。泉美は今まで女神様に会ったことがなかった。もちろん、他の誰もあったことがない。しかし、泉美は、深雪を見た瞬間この世の女神にあったような顔をしていた。瞬間目を奪われていた。
「深雪先輩!!いや、お姉さまとお呼びしても!!」
(((お姉さま???)))
三人か同じ事を思っただろう。何を言っているんだと。
「泉美ちゃん、何言ってるのかな?頭おかしくなった?」
イザヤは泉美に声を掛けるが、
「深雪先輩!!私の二人目のお姉様に!!」
聞こえていないのか、聞こえていて無視してるのかわからない。
「え?えーと…泉美ちゃん?」
深雪は泉美に声を掛けるが目をキラキラさせてどこかに行ってしまっているようだ。
(なんか面白くなってきたな、すこしちょっかいかけるか)
イザヤは心の中でそう呟いた。
「じゃあ、深雪先輩、僕のお姉さまに「それはダメです!!」まだ全部言ってないよ泉美ちゃん」
イザヤは食い気味でしゃべる泉美にそう伝える。
「深雪先輩があなたのお姉さまになることは一生ありません」
「まったく、さっきの僕の言葉聞こえていて、あえて無視しただろう」
「なんのことかわかりませんね」
なんて泉美はイザヤを睨みつけて言う。
「二人とも仲が良いんですね」
深雪は二人を見てそう言った。
「よくなんてありません、こんな人知りません」
「寂しいなー、泉美ちゃん。同じ組な上に隣の席なのに」
イザヤがそう言うと、あずさが反応した。
「それはもう、運命ですね」
「そんなの嫌です」
泉美は嫌そうだ。まあ、運命かどうか知らないが奇妙な縁があるなと思っている。知らないけど。
「泉美ちゃん、あなたのお姉さまになることは出来ないけど、良い先輩後輩でいたいと思っているわ」
「はい!!」
泉美は笑顔で返事する。そうして、四人で生徒会室へ入った。
「「失礼します」」
僕と泉美がそう言うと、
「ああ、入ってくれ」
男の声が聞こえてきた。そして、生徒会室へ入ると、高校生にしては大人びた印象があり、背が高く、すらっとした生徒が待っていた。
「お兄様、連れてきました」
「ありがとう、深雪」
達也が深雪に感謝を伝える。
「泉美、会うのはあの時以来だな」
「達也先輩、あの時は失礼しました」
そう言うと、彼女は深々と頭を下げた。深雪はなんのことかと疑問に思っているが達也が目を見て後で話すと目配せした。
「そして…」
達也はイザヤと目が合い止まった。二人は数秒互いを見つめ合い、そして口を開いた。
「初めまして先輩、折紙イザヤと言います」
「初めまして、司波達也だ」
互いに握手を交わす。しかし、その手は離れることはなかった。深雪達は不思議そうに思っていると、
「達也先輩」
「なんだ折紙」
「イザヤでいいですよ達也先輩、下の名前で呼んで下さい。僕はその方が好きです」
「わかった、イザヤ。それでなぜ手を離さないんだ?」
達也が離さないのではない。イザヤの方が達也を離さないのである。
「なかなかいい手ですね。がっしりしてます。服の上からもわかるなかなかの筋肉ですね。褒めてあげますよ」
いきなり訳のわからない事を言う。なんでいきなり筋肉の話を始めたんだ。こいつ、と達也は思った。
「そう言うお前は、少し細いな。もっと筋肉をつけた方がいい」
イザヤは、達也よりも少し細い体をしている。しかし、達也もイザヤと握手を交わした時、武術を嗜んでいると分かった。少し警戒心を上げた。
「そうですね、頑張ります」
そう言うと、イザヤは手を離した。それを見ていたあずさは、
「えーとそろそろ、まず二人を呼んだ理由を伝えましょうか」
達也は本題から脱線した事を心の中で謝った。
「えーと、まず七草泉美さん」
「はい」
泉美が返事をする。
「あなたには、生徒会に入ってもらいたいんですよ」
「生徒会に?今年の総代は七宝君ではありませんでしたか?」
「いや、七宝は生徒会役員になる事を断ったんだ」
「そうなんですね」
泉美はほんの数秒考えた後、
「はい、ぜひともお願いします」
泉美はそう答え、あずさは嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます。これでやっと穴が埋まりますね」
そう言って、達也と深雪に声をかける。
「そうですね、それで一件落着ですね」
「はい」
そう言って問題の一つを解決して安堵しているようだ。
「あの、会長?私が生徒会に入るとして、イザヤ君はどうなるのですか?」
「えーと、その事なんですが…」
あずさは達也を見て言う。イザヤを呼んだのは他でもない達也なのだ。彼から話があるのだと言う雰囲気を醸し出して達也にバトンパスする。
「イザヤ」
「何ですか、達也先輩?」
「単刀直入に聞こうか、イザヤ、お前は入試試験で手を抜いたな?」
それはイザヤが予想していた言葉だった。
(何で言おうかなー)
イザヤは、一体どうすれば面白い状況を作れるのか考えていた。「ただ試験を受けるだけなんてつまらないから、ちょっと遊んでみました。」なんて、言うのは簡単だけども。
「どうして笑っているんだ?」
達也は何故か笑っているイザヤにそう問いかけた。
「いいえ、何でもないです。表情筋が緩いんですよ」
イザヤはまた、誰かに言ったようなふざけた事を言う。
「そうですね、あえて言うなら、気づいて欲しかった、ですかね」
「?」
「僕を楽しませてくれる存在に」
達也には、目の前の男が何を言っているのか理解できなかった。
「何ですかそれ?」
泉美も同様にイザヤの言っている意味がわからないでいた。それは、他の者も同じ思いであろう。
「僕のこの学校生活が退屈なものにならないように誰かと遊びたかったんですよ」
イザヤは続け様に、
「達也先輩、あなたは僕の退屈を埋めてくれますか?」
先輩に対して上から目線な発言をしておいて、その姿は堂々としていた。
「無礼者」
深雪は、無意識に魔法を発動させてしまい、辺りを凍らせていく。
「深雪先輩!?」
「深雪さん!?」
「深雪!」
「おや?怒りましたか?深雪先輩」
なんでもないようにイザヤは、深雪の方に顔を向け、
「落ち着いてください」
そう言うと、深雪による冷気の拡大が抑えられた。
「「「「!?」」」」
イザヤを除く生徒が驚いた。その中で、一番驚いているのは深雪の兄の達也であった。
(深雪の魔法を抑えることができる干渉力だと!?)
達也は、深雪はこの学校で最も優秀な魔法師であり、十師族の中で見ても深雪の魔法としての才能を超えるものはいないと考えていた。しかし、今自分の目の前にいるこの男は、容易く深雪の魔法の拡大を防ぎ、抑え続ける事ができた。誰しもが今起こったことが信じられないと思いながら、
「今日のところはこんなもんですかね、すみませんが達也先輩、僕用事があるのでそろそろ失礼しますね」
そう言うとイザヤは部屋の扉を開けて帰ろうとする。
「イザヤ」
達也に名前を呼ばれ、呼び止められる。
「なんですか?」
「用事があるのなら帰るのは構わない。だが、明日もお前に話がある」
「ふーん、わかりました。では失礼」
そう言うと、イザヤは生徒会室から立ち去った。
「あ、あの。私も香澄ちゃんを待たせているのでこれで失礼します」
泉美はその後、深雪達に頭を下げて生徒会室を後にした。しばらく、生徒会室には沈黙が続いていた。
(折紙イザヤ、奴は危険だ)
達也の中で警戒アラートが鳴り響く。
香澄が長いこと校門で待ってくれているので泉美は急足で廊下を歩いていた。
「おや、君も帰るのかい?泉美ちゃん」
先に生徒会室を出ていたイザヤに追いついていた。
「ええ、イザヤ君」
「なら、校門までは一緒に行かないかい?」
先ほどの生徒会室での出来事から、泉美はイザヤのことを警戒していた。あの時のように顔をニコニコさせて自分に話しかけている。何を考えているのか分からない。
「ええ、わかりました。行きましょう」
「そうこなくちゃ」
二人は校門にたどり着くまで一緒に帰ることが決まった。しばらく歩いた後、泉美はイザヤに話しかける。
「あの…」
「うん?」
「あなたは、何者なんですか?」
「僕が何者なのかね…、泉美ちゃんは僕が何者だったら嬉しいんだい?」
「え?」
「スーパーマン?悪党?テロリスト?百家?十師族?」
「ス、スーパーマンとか?」
すると、イザヤは声を上げて笑った。
「ハハハハハハ、僕がスーパーマンのわけないじゃん」
自分で言ってツボに入ったのか、「くくく」と笑い続けている。そんなイザヤにムッときたのか、
「じゃあなんなんですか?」
泉美は怒った口調でイザヤに言う。するとイザヤは、
「何者でもないよ、僕は。何者でもないから何にでもなれる」
「あなたの言っていることは全くわかりません」
答える気が無いのだろうと質問を諦める。
「じゃあさ、君が決めてよ。僕が何者なのかを」
「え?」
「よろしくね」
なんだかんだ話していると二人はいつの間にか校門近くまで着いていた。
「じゃあね、泉美ちゃん。また明日」
そう言ってイザヤは歩いて行った。
「なんなんでしょうか、彼は」
泉美の独り言に返事をしてくれるものは居なかった。泉美はそのまま香澄と共に家に帰った。
「七草泉美…、彼女は僕の退屈を忘れさせてくれるかな?」
イザヤは一人真っ暗な空を見上げながらそう呟いた。