魔法科高校の後輩   作:パクチーダンス

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第二十一話 イザヤ「昔の女をいつまでも引きずってて草」弘一「は?(ドスの効いた声)」

「泉美ちゃん、君の家に行くの明後日にしたいんだけど」

イザヤは横でまだ食べている泉美に何の脈絡もなくそう言った。泉美は、咀嚼している物を飲み込んだ後、

「明後日ですか?帰ったらお父様に聞いてきますね」

「ああ、お願いね」

そう言ってイザヤは食後のデザートとして杏仁豆腐を食べ始めた。イザヤは、「そうだ」という顔をして泉美を見る。

「行ったついでに、泉美ちゃんの部屋でも覗いていくよ」

「……私の部屋、何も面白くないですよ」

泉美はイザヤの言葉に少し間を置いて、自分の部屋に面白みがないことを伝える。

「君、僕と話したいことがあったんじゃないの?」

イザヤのその言葉に泉美はそうだったと、思い出した顔をした。

「ええ、そうですね。じゃあ、お父様とのお話が済んだ後、私の部屋に案内します」

イザヤと泉美は昼食を食べ終わった後、二人でクラスに戻りだした。

 

 

 

 七草家現当主七草弘一と面会する日、イザヤは、下校の際に泉美と香澄に着いて行く形となった。

「お父様、イザヤ君と何を話すんだろう?」

香澄が歩きながらイザヤと泉美に疑問を投げる。

「私もあまりよくは知りませんが、イザヤ君がどんな人物なのかを知りたいんだと思います」

「どんな人物ねぇ。泉美ちゃん、僕のことを父親に何て言ったの?」

「子供みたいな人だと」

「そんなこと言ったの泉美ちゃん」

「まあ、間違いではないよね。実際、子供っぽいし」

泉美の言葉に香澄は賛同してそれに続く。イザヤはそんな二人に肩をすくめるのだった。そんな会話を続けている内に、ついに到着した。門の前では使用人が泉美と香澄の帰りを待っていた。

「お帰りなさいませ、お嬢様方。そして、折紙イザヤ様でございますね。お待ちしておりました。どうぞ、中にお入り下さい」

泉美と香澄は先に家に入って行った。イザヤは使用人に連れられて、後に続いて屋敷に入っていく。

(しっかし大きな家だなー)

雫の家もそうだが、十師族ともなるとこんな大きな家を持つことが出来るのかと思ったイザヤである。

「御当主様はすでに応接室でお待ちしております」

使用人はイザヤを部屋に連れて行くと、ノックしてから扉を開く。

「失礼します、御当主様。折紙イザヤ様をお連れしました」

「ああ、入ってくれ」

七草弘一からの許可を得て、イザヤは部屋へと入って行く。

「よく来たね、折紙イザヤ君。初めまして、七草弘一だ」

「こちらこそ、本日は呼んでいただきありがとうございます」

二人は軽く握手を交わしながら、挨拶をする。

「さあ、座ってくれたまえ」

「失礼します」

イザヤは柔らかなソファに腰掛ける。使用人がイザヤと七草弘一の目の前の机に紅茶を置き、部屋を退室する。

「イザヤ君と呼ばせてもらうよ。君は学校で娘達とは親しくしてくれているみたいだね」

「はい、特に泉美とは同じクラスで生徒会役員なので、昼食を共にしたりします。香澄さんは友達が多いみたいなのでご一緒するのは少ないですが」

イザヤは遠回しに、泉美は友達が少ないと七草弘一に述べた。

「そのようだね、イザヤ君。今回私が君と会いたいと思ったのは、その泉美の言葉があったからなんだ」

イザヤは、彼女は何を言ったんだと疑問に思っていると、

「泉美は、十師族の中で君に勝てる人間はいないと言っていたよ」

その言葉を聞いて、イザヤは高笑いを上げる。そんな姿に七草

弘一は目を見開く。

「ハハハハハ、彼女はそんな事を貴方に言ったんですか」

「…………泉美は真面目な顔でそういっていたよ」

七草弘一のその言葉にまだイザヤは笑い声を上げた。

「ハハハハ、泉美さんは僕を買い被ぶり過ぎているようだ」

イザヤは笑いを堪えながら、向かいに座る七草弘一にそう述べる。

「しかし、何の確証も無しに泉美がそんな事を言うとは思えないんだ。だからねイザヤ君。もし良かったら、君の魔法を私に見せてくれないか」

「貴方に僕の魔法を?」

イザヤは七草弘一の言葉に少し口角を上げる。

「ああ、人に魔法を聞くのは御法度だが、君さえ良ければ、得意な魔法を見せてもらえないだろうか」

七草弘一は泉美の言葉が半信半疑であった。泉美が珍しく真剣な顔をしてそう言うので、七草弘一は少し目の前の男の素性を調べてみることにした。調べた結果、イザヤの経歴が全て嘘だという事がすぐにわかった。ちゃんと裏を取ったというわけではない。しかし、偽造されている事は、この複雑な情報が絡み合う魔法の世界に身を置く人間である七草弘一にはすぐにわかった。

「そうですね、いいですよ」

イザヤはすんなりOKを出した。

「よく見ててくださいね」

イザヤはそう言って、使用人に入れてもらった紅茶を手に取る。七草弘一は、その姿を瞬きせずにサングラス越しにジッと見ていた。すると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「弘一さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

七草弘一は驚きのあまり、ソファから立ち上がってしまった。そのまま、体が硬直して一言も喋る事はなかった。

(真夜!?)

七草弘一の目の前に現れたのは四葉家現当主の四葉真夜その人であった。しかし、それも一瞬、真夜がいつの間にかイザヤに変わっていたのだ。七草弘一は瞬きをしてはいなかった。だが、イザヤがいつの間にか真夜に変わっていた。目の前に突如として現れたのは自分の昔の婚約者。七草弘一は自分が何の魔法に掛ったのか理解できなかった。

「面白かったですか?」

イザヤが目の前で立ち上がっている七草弘一に向かってニコニコと笑いながら、話し掛ける。

「………君は……一体何をしたんだ?」

七草弘一の疑問に答えず、イザヤは変わらずニコニコとしている。すると、イザヤは紅茶を飲み干し、立ち上がる。

「貴方が見たいと言ったので、少し僕の力を見せました。けど、何が起こったのか分からないでしょうが。では、失礼ながら、僕はこれで」

イザヤは応接室の扉を向かって歩き出した。七草弘一は黙ってその様子をじっと見つめていた。すると、イザヤは何か思い出したかのように七草弘一の方に顔を向ける。

「ああ、そうだ弘一さん。貴方、周公瑾と関係を持っていますね。もうすぐ師族会議も迫っていますし、上手い言い訳でも作っていたらどうですか」

イザヤのその言葉に弘一は動揺を隠しきれない。

「…………それは、既に他家に私と周公瑾の関係が知られていると?」

「その可能性は大いにあります。では」

イザヤは応接室から退室して行った。

「…………若僧相手に冷や汗をかかされるとは」

弘一はイザヤを娘の友人ではなく、自分にとって不都合な存在と認識したのだ。

 

 

 

 応接室の扉の前で使用人が待っていたので、イザヤは、そのまま泉美の部屋まで連れて行かれる。使用人がノックをして、

「泉美お嬢様、ご友人をお連れしました」

使用人がそう言うと、部屋の扉を開く。開けたのは泉美ではなく、その双子の姉の香澄であった。

「もう終わったの?」

香澄が聞いているのは、弘一とイザヤの話の事だろう。

「ああ、だからここに来たんだ。入っていい?」

「いいよ、入って」

「香澄ちゃん、一応私の部屋なんですからね」

香澄の言葉に部屋の主たる泉美がそう言う。イザヤは香澄の許可を貰い、泉美の部屋に入っていく。イザヤはこの部屋に入って最初に目に付いたのは、大きなクマのぬいぐるみであった。その次にピンクのかわいらしいベッド。少女趣味全開の泉美ちゃんであった。

「想像していたよりも、可愛さ全開だね」

「……何か文句でもあるんですか?」

「いやいや、君にぴったりな部屋だね」

「……まあ、いいです」

泉美はイザヤに床に座らせ、香澄と泉美は小さなテーブルを挟んだ向かい側に座った。

「それで泉美ちゃん、僕に話って何?」

イザヤは無駄な話をせずに要件を泉美に聞いた。香澄も横にいる泉美が話をするのを待っている。泉美は真剣な顔をして話し始める。

「………イザヤくん、私が貴方にもらった課題の進捗状況は芳しくありません」

「課題って何?」

泉美の言葉に香澄が尋ねる。

「課題というのは、一人で『窒息乱流』を発動させ、完璧にコントロールする事だよ」

「え?」

泉美の代わりにイザヤが答える。その言葉に香澄は悲しい表情を浮かべる。

「それじゃあ、私がいる意味って、、、」

香澄と泉美は二人で一つの関係であった。片方が一人で『窒息乱流』を発動できるのであれば、一人で発動できないもう片方はどうするのか。もう二人である必要がない。香澄は、そんな事を言われた気がしたのだった。

「けど、イザヤ君が出した課題ですが一つ訂正させてください」

泉美は真っ直ぐイザヤを見つめる。イザヤは彼女に何か変化があったと感じた。

「私だけじゃなくて、香澄ちゃんもこの課題に取り組みたいと思っているんです」

「ほう、二人で」

イザヤは笑みを浮かべる。その言葉は、イザヤを喜ばせるものであった。

「私は『窒息乱流』の練習を続けているうちに、私一人が完成したとして、果たしてそれでいいのかと思いました。あの時は、貴方の挑発的な言葉を受けてしまいましたが、前提として、私と香澄ちゃんは二人で一つ。それは今後も変わりません。だから、二人がそれぞれ『窒息乱流』を完成させるんです」

泉美の言葉をイザヤは目を瞑って聞いていた。

「イザヤ君、これでよろしいでしょうか?」

泉美の言葉にイザヤは目を開け、泉美の瞳をじっと見つめる。そして、横に座っている香澄に目を向ける。彼女は泉美が話している最中、ずっと下を向いていた。

「香澄ちゃん、泉美ちゃんはこう言ってるけど、どうする?」

イザヤは香澄に聞く。お前はどうなんだと。香澄は下を向いていた顔をゆっくりと上げて、イザヤを見る。そして、

「やる、やるよ。私も、『窒息乱流』を一人で完成させるんだ!」

香澄は立ち上がり、イザヤを指差す。勝負だと言わんばかりである。香澄は、心の中では泉美の言ってくれた事が嬉しかった。最初は、イザヤの課題を聞いた時、泉美は自分一人を置いて先に行くのかと思った。しかし、私たちは二人で一つ。その言葉が香澄を熱くさせた。

「なのでイザヤ君、香澄ちゃんも合わせて、二つ命令をする権利を得るという事でいいでしょうか?」

「ああ、良いよそれで。面白くなってきたね」

イザヤはニコニコしながら、香澄と泉美を交互に見る。すると泉美が、

「これも、貴方の計算のうちですか?」

「ん?どういう事だい?」

イザヤは、泉美の言葉を理解できないフリをする。しかし内心、泉美を誉めていた。

「私が、香澄ちゃんも一緒に貴方の課題に取り組むと言うことがですよ」

泉美の言葉にイザヤはさらに口角を上げ、不気味な笑顔を作る。

「「!?」」

イザヤのその顔に香澄と泉美は一瞬、恐怖を感じたのだった。そして、イザヤはゆっくりと話し始める。

「あぁ泉美ちゃん、よくわかったね。そうさ、僕は最初、君だけにこの課題を出したんだ」

「……………何故ですか?」

未だ不気味な笑顔のイザヤに、泉美は少し間を置いて疑問を投げる。

「もしこのまま、泉美ちゃんが『窒息乱流』を一人で完成させたらどうなると思う。片方はできても、もう片方はできない。君は香澄ちゃんとの間に亀裂が入るだろう。双子であるが故に、君たちは消えない傷を負うことになる。それが、どうなるのか見たい気持ちがあったんだ」

香澄と泉美は目の前の男に戦慄を覚える。入学してからこれまで、仲良くしていた自分達に、これほど酷い考えを持っていた事実に。

「でもさ、早めに気付けて良かったね、泉美ちゃん。香澄と仲が悪くならなくて、よかったよかった」

イザヤは悪びれる様子は全く無い。いや、自分は悪いとは思っていない。自分以外の人間は自分を楽しませてくれるただのオモチャでしか無いと今も昔もそう考えているのだから。

「…………………………」

泉美は思う。折紙イザヤがとても危険な存在だということ。自分達など彼の掌の上で踊らされている存在だということ。この男を知れば知るほど、自分を破滅の道に近づけること。しかし、捨てられないのだ。折紙イザヤに向ける自分の誰にも言えない特別な感情を。

 

 

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