魔法科高校の後輩   作:パクチーダンス

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第二十二話 泉美「クズ、外道、鬼畜」イザヤ「全てが褒め言葉」香澄「うわぁ…」

 結論から言うと、周公瑾は達也達に追い詰められた後、自決したので捕縛することができなかった。その後、達也と深雪、水波は論文コンペ当日、九島光宣のプレゼンテーションを見て、第一高校に戻ったのだった。日が暮れた時間に生徒会室に戻ってくると、達也達を待っていたのは、

「お帰りなさい、深雪先輩、水波ちゃん、そして司波先輩」

「お疲れ様です」

泉美とイザヤであった。

「二人ともこの時間まで待っていたの?」

深雪は生徒会室の時計をみると、午後五時を過ぎていた。

「ええ、ほのか先輩が熱を出したみたいで早めに帰ったんです。なので、後の仕事を私とイザヤ君で片付けていました」

「そうか、二人ともご苦労だった」

達也はほのかを心配しながらも、二人を労うのだった。

「論文コンペの片付けは、俺たちがやっておくから、先に帰ってくれて構わない」

「はい、お言葉に甘えます」

「わかりました」

達也の言葉に二人は従い、二人で生徒会室を出ようとする。しかし、イザヤがドアノブに手を掛けると、達也の方に顔を向ける。

「用事は済みましたか?」

突然のその言葉に泉美は首を傾げるが、達也はその言葉にこう伝える。

「ああ、用事は済んだ」

「そうですか」

イザヤは扉を開けて生徒会室を出ていく。泉美は達也達に一度礼をしてから、続けて退室した。

 

 

 

 イザヤと泉美は二人並んで歩いている。二人の間に会話はない。ただ、車が走る音と自分達の歩く足音が耳に入るだけだ。泉美は横で歩くイザヤの顔をチラチラと見ている。会話のないこの状況が苦しかった。泉美の視線に気がついたイザヤは、横目で泉美に話しかける。

「何か言いたそうだね、泉美ちゃん」

「…………何でなにも話さないんですか?」

「それはお互い様じゃないかな」

ニコッとしたイザヤの顔を見て泉美は視線を逸らす。何か話題をつくるため、泉美はイザヤにすこし踏み込む。

「そういえば、イザヤ君の家は何処なんですか?」

「そうだね、今の場所から二十分くらい歩いたところのマンションに住んでいるよ」

イザヤはあっさりと答える。いつもの秘密主義はどうしたんだと泉美は思う。

「僕が住んでるところを教えたのが驚いた?もし良かったら、このまま僕の家に行くかい?」

泉美は「何を企んでいるんだ」と心の中で思いながら、イザヤをじっと見つめる。そんな泉美にイザヤは、

「何もしないよ、少しお茶するだけだよ」

「お茶をする時間でもないですけど、、」

時間は午後五時半近くなっていた。お茶と言うには、時間が遅すぎる。

「なら、夕飯を食べていくかい?帰りは迎えに来てもらってさ」

その提案に泉美は立ち止まり、しばらく考える。イザヤも立ち止まって、何か考えている泉美の顔を見る。

「……そうですね、そうしましょうか」

泉美はそう言うと、カバンから携帯を取り出して誰かにメールを打っている。それが終わると、

「じゃあ、家に案内してください」

「行こうか、泉美ちゃん」

泉美はイザヤの後ろをついて行き、イザヤの住むマンションに向かうのだった。

 

 

 

 マンションに着いたイザヤと泉美は、自動ドアを抜けると、そのままエレベーターに乗り込む。

(至って普通のマンションですね)

泉美は心の中で呟く。厳重過ぎない、非魔法師の一般家庭が住むようなごくごく普通のマンションであった。エレベーターは七階に到着すると、ドアが開く。泉美はエレベーターから降りて、イザヤの後をついていく。少し歩くと、イザヤは705と書いてあるドアの前に立ち、ポケットから鍵を取り出した。そして鍵を開けて、

「どうぞ」

「……お邪魔します」

男の家に入るのは初めての経験であるため、泉美は少し緊張しながらも、家に入っていく。靴を脱ぎ、短い廊下を歩いて行くと、リビングに案内された。

「なにか飲む?」

「…………じゃあ、紅茶で」

泉美はベージュの色のソファに座り、イザヤのリビングをキョロキョロしていた。そんな姿にイザヤは、

「何も面白いものは無いよ」

そう言ってイザヤは笑う。泉美は自分の姿がイザヤにどう見えていたのか分からないが、少し恥ずかしさを覚えた。

「はい、紅茶」

「ありがとうございます」

泉美は机の上に置かれた紅茶のカップを手に取り、口に運ぶ。リビングには特に面白いものは見当たらない。何もやましい事はありません。そう言っているように思えた。

「何食べたい?」

「何でもいいです」

「なら、チャーハンにするよ」

泉美の少しそっけない言葉にもイザヤはニコリと笑い、キッチンに向かい、準備を始める。待つのは暇なので、泉美も立ち上がってキッチンに入る。

「何か出来ませんか?」

「じゃあ、米を炊いてよ」

「…………どうやるのですか?」

泉美はお嬢様である。お米を炊く事なんて今まで一度もした事がなかった。恥ずかしそうに呟く。

「そうだね、まずはー」

イザヤは優しく泉美に教え、泉美もその指示に従って進めていく。そして、チャーハンを完成させると、皿に盛り付けてテーブルに運ぶ。泉美は、食器棚からスプーンを取り出して机に並べる。二人は床に座り、小さなテーブルを囲って食事を開始する。

「「いただきます」」

食べている間は会話はなかった。二人はチャーハンを黙々と食べ進める。泉美は絶妙な味付けをされたチャーハンに舌を唸らせると同時に、

(料理、覚えよう)

そう決意するのだった。

 

 

 

 夕食を食べ終わり、泉美は、家に迎えの連絡を済ませて待っていた。その間、二人はテレビを見ていた。テレビでは、中国・四国地方における人間主義を掲げる団体が、デモを拡大させているとの事である。ここしばらくは、暴動が止まないだろう。

「彼らの行動には辟易します。そうは思いませんか?」

泉美はテレビに映し出されているデモ活動を行う人々に対して、イザヤは共感を求めてくる泉美に告げる。

「君、非魔法師を見下してるよね?」

「見下してるとは少し違います。私は、こんな活動をしている人間に対して、嫌気がさしているだけです」

泉美はイザヤの言葉を若干の否定をするが、イザヤは言葉を続けた。

「こう思ったことはないかい?私には、お前たちを一瞬にして消し去る力を持っているんだぞ!この力を使わないだけでもありがたいと思え!とか」

「………」

イザヤのその言葉に泉美はすぐには反論できなかった。それは少なかず、自分がデモ集団に対してそう思っているからである。

「僕は見下してるよ、非魔法師をね。今もテレビに映るデモ活動をしている彼らも、街ですれ違う人間たちを。可哀想に、魔法が使えない哀れな生き物ってね」

「………私はそこまで思っていません。それこそ、哀れだなんて、、、」

泉美は視線をイザヤからテレビの方に移す。テレビはデモ活動を報じるニュースが終わり、明日の天気予報を報じていた。

「じゃあ君は、魔法を使えない自分を想像できるかい?魔法が使えない君は、一体何をしているんだろうね?さっきのデモ活動の集団の中に居たのかも」

「………」

「同じ赤い血でも、彼らとは異なる種族なのさ」

そう言葉を締め括り、テレビのリモコンで電源を消して立ち上がった。

「さあ泉美ちゃん、そろそろ迎えが来る時間だよ。フロントまで行こうか」

イザヤの言葉に泉美も立ち上がって鞄を持つ。それを見て、イザヤは玄関の方に向かって歩き出す。それを泉美の声が止めた。

「イザヤ君」

泉美がイザヤを呼ぶ。その声は、顔を見なくても真剣さが伝わってきた。イザヤはゆっくりと泉美の方に顔を向ける。二人が見つめ合う。

「イザヤ君」

また名前を呼ぶ。

「何かな?」

「貴方は、悪い人です。それは間違いありません」

「それで?」

「だけど、私は貴方のそばから離れませんから」

それはある種、告白のようなものであった。泉美はその事に気づいていない様子だ。イザヤはいつものように笑うのではなく、泉美のその言葉に珍しく無表情で聞いているのだった。二人だけの空間にしばらくの沈黙が流れる。そして、口を開いたのはイザヤであった。

「君が何を思って、突然そんな事を言い出したのかわからないけど、君がそうしたいのなら、可能な限りそうするといい」

「はい、そうします」

その後、二人の間にはフロントに着くまで会話が一切なかった。

「では、イザヤ君。また明日」

「ああ、おやすみ」

泉美が迎えの車に乗り込む。そして走っていく車に、イザヤは手を振って見送るのだった。車が見えなくなってから、イザヤはマンションの中に入っていく。その背中は、少し寂しさを感じられた。

 

 

 

 そして、少し時は流れ、第一高校は三学期に突入する。それと同時に、驚くべき事実が日本の魔法界に伝えられる。それは、司波深雪が四葉家次期当主に指名されたこと。司波達也を四葉真夜の息子として認知すること。司波深雪が司波達也と婚約したこと。

 

 

 「なんか面白くなる予感がする」

イザヤは新学期が楽しみでしかたがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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