魔法科高校の後輩   作:パクチーダンス

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第二十四話 イザヤ「とりあえず廻しを締めましょうか」達也「ああ」パンツ一枚になる達也 深雪・ほのか[バタンッ!]泉美「二人が倒れました!」

 ここは、四葉本家の四葉真夜の部屋である。

「葉山さん、崑崙方院の残党が日本でテロを企てているそうよ」

四葉真夜は、USNAのヴァージニア・バランス大佐からメールを受け取り、その内容を執事の葉山忠教に伝える。

「それは一大事でございますな」

「一大事?相手は帰る家を失った野良犬よ」

真夜が崑崙方院から受けた仕打ちは葉山も知っている。真夜の声には侮蔑がこもっていた。

「しかし、USNAから盗んできた小型ミサイルで一体何ができるというの?」

「奥様、魔法師といえど無防備な状態でミサイルを撃ち込まれれば、死に至ります。もしくは弾頭のみ取り外して、爆弾として使うかもしれません。現に群発戦争当時は、そのような自爆攻撃が各地に見られました」

葉山のその言葉に、真夜は対処の必要性を否定できなくなった。

「わかりました。ジード・ヘイグこと顧傑(グ・ジー)を探させましょう。師族会議も控えているから、あまり人員は出せないけど」

「このお話を他家には?」

他の十師族、師補十八家に協力を求めないのかという葉山の問いかけに、真夜は少し考えて首を横に張る。

「情報の出所を詮索されたくないわ……魔法師を標的とするテロリストが国外から侵入しているという噂を流しておいてください」

「では、そのように」

葉山は真夜の言葉を受けて行動に移そうとするが、真夜は言葉を加える。

「後、達也さんを負かしたという折紙イザヤという生徒を少し調べてもらえないかしら?」

真夜にとっての本題はイザヤのことであった。

 

 

 

 リーナはバランスに説得されて、日本行きを諦めた。リーナの代わりにベンジャミン・カノープスが向かうこととなった。リーナはカノープスが任務をしくじる事など無いと考えながらも、何もしないでいる事に我慢ができなかった。リーナは、達也と深雪に電話をする事を決めた。ただの警告を伝えるだけ、そのつもりであった。

「まあ、リーナ!お久しぶりね」

電話には約一年ぶりのライバルの姿が映し出されていた。

(あ、相変わらずのすごい美貌、、、)

深雪の美しさにリーナは後ずさる。

「ハ、ハイ、ミユキ。お久しぶり、元気だった?」

「ええ、お陰様で。リーナは少し痩せたんじゃないかしら?お仕事が忙しいの?」

「体重は増えているのよ、筋肉がついちゃったし」

「ふーん……ますますシェイプアップしたわね、羨ましいわ」

「ミユキ……あなたがそういう事を言うと、嫌味にしか聞こえないんだってば」

約一年ぶりの会話でリーナもつい嬉しくなっていた。深雪もリーナとの会話にを楽しんでいる。リーナは本題を忘れそうになる。

「あ、ミユキ、ちょっと大事な話があるの」

「……お兄様を呼んだほうがいいかしら?」

「ええ、お願い」

深雪は達也を呼ぶために、一旦画面を暗くする。時間は三十秒にも満たないうちに、深雪と達也がディスプレイに映し出された。

「リーナ、久しぶりだな」

「ハイ、タツヤ、お久しぶり」

久しぶりに見る達也の顔はあまり変わってなかった。かわったところがあるとすれば、少し身長が伸びたくらいか。

「リーナ、大事な話とは何だ?」

「…ミユキ、タツヤ、七賢人のことは覚えている?」

「ああ、七賢人から何か情報が手に入ったのか?」

達也はレイモンド・クラークの顔を思い浮かべながら、リーナに尋ねた。リーナは七賢人の正体を知らないはずだ。

「ええ、七賢人の情報によれば、日本で大漢の残党によるテロが計画されているわ。首謀者の名前はジード・ヘイグ。別名は顧傑。崑崙方院の生き残りで、ヘイグの目的はヨツバである可能性が高い」

「なるほど」

「リーナ、心配してくれてありがとう。あなたの情報、役に立ったわ」

「ええ、二人とも気を付けてね」

リーナは達也と深雪に手を振って、電話を切る。

(ジード・ヘイグ、何をするつもりだ、、)

四葉と崑崙方院の因縁は深い。深雪が直接狙われる可能性がある。達也はまだ見ぬ敵に警戒をするのだった。

 

 

 

 午後十一時。イザヤは夜の町を歩いていた。今夜は人と会う約束をしていた。場所は決まっていない。向こうから自分を見つけてくれるのを待っているのだ。二月にもなって、夜は少し寒くなっていた。イザヤは黒のパーカーのフードを深く被り夜に溶け込む。しばらく歩いていると、前方から男が歩いてきた。そして、イザヤの前で止まる。

『お待たせしました』

「いえ、僕も今来たところですよ」

イザヤと男は簡単に挨拶を交わす。

『二月四日、師族会議の場所は箱根一番の高級ホテルの会議室です』

淡々と喋る男の目は、どこか虚である。実はこの男、三矢家現当主の三矢元の側近である。何故そんな男がこんな時間にイザヤといるのか。それは、彼の魔法のしわざに他ならない。

「なるほどわかりました。お疲れ様です、もう帰っていいですよ」

『はい』

イザヤの言葉に男は返事をすると、トボトボと来た道を戻って行く。イザヤも家に帰るために来た道を戻る。

(何か面白い事起きないかなー)

イザヤは頭はそれでいっぱいであった。

 

 

 

 達也と深雪がリーナから電話をもらってから、一週間が過ぎていた。達也も真夜の他の者もカノープスでさえもジード・ヘイグの捜索に進展は見られなかった。今日は二月四日。今日から二日間の予定で師族会議が開かれる。師族会議は日本魔法界のサミットである。魔法師たちの関心は否が応でも高まっていた。第一高校の生徒たちも朝からソワソワしている。彼らは高校生の身分であるが、いずれ魔法師として身を立てていく者にとっては無関心ではいられない。

「おはよう。雫、ほのか」

深雪はいつも通りクラスメイトかつ友人である二人に挨拶をする。しかし、

「深雪!?何でここにいるの!?」

友人であるほのかから返ってきたのは、悲鳴にも似た声であった。

「何でって今日は平日じゃない。高校生が学校に来るのは当たり前よ。それとも私、いじめられているのかしら?」

深雪の言葉にほのかは慌てて誤解を解こうとする。雫は、ほのかの後ろで困惑した表情をしていた。二人の姿を見て、深雪はクスリと笑った。

「冗談よ、私が欠席すると思ったんでしょ?今日から師族会議だから」

ほのかと雫はウンウンと頷く。

「深雪は行かなくていいの?」

「だって、呼ばれてないもの」

笑いながら答えた深雪のその言葉に、雫やほのかのみならず、聞き耳を立てていたクラス全体が「え?」と言う視線を送る。

「師族会議の開催場所は出席者以外秘密なのよ。二日目の選定場所に出席する師補十八家の皆様も、今日の時点では大体の場所に聞かされているだけで、具体的にどこで行われるかは知らないのよ」

「な、なるほど」

「私も何が話されているか気にならないわけじゃないけど、場所を知らないのだから、行きようがないわ」

「それもそうだね」

 

 

 

 同じ頃、二年E組でも同じ様なことが起きていた。

「あれ!?達也くん、学校に来ていいの?」

「エリカ………何で俺を欠席させたがるんだ?」

 

 

 

 泉美はクラスにに着くと、自分が座っている横の席を見る。

(イザヤ君、今日はお休みでしょうか?)

 

 

 

 ここは師族会議の真っ最中。十師族の現当主たちが、様々な議論を重ねて日本の魔法界全体の安定と調和を図る話し合いが行われている。しかし、挙げられている議題は少し異なったものであった。

「私が申し上げたいのことは単純です。司波深雪殿と司波達也殿の婚約を取り消すべきです」

現在、深雪と達也の婚約についての話し合い(真夜と弘一のみ)が行われていた。弘一の挙げている問題としては、近親婚が魔法師の資質にどの様な影響を与えるのか分からない。よって、従兄妹同士の結婚であっても避けるべきだと主張している。毎度毎度、師族会議になると弘一が真夜に噛み付くのは、いつもの事である。そんな二人を、他の当主達は「またか」と思っていることだろう。

「申し訳ない、口を挟ませていただいてもよろしいか?」

二人の高まった緊張感に水を差したのは一条剛毅である。

「貴家の将輝殿と深雪の婚約の件についてですか?」

「はい」

真夜は気怠げにため息をついた。

「将輝殿は一条家の次期当主ではなくて?深雪も当家の次期当主と定まった身です。婚約が決まったと申し上げたところに別の婚約話を持ち出すのは非常識です。そもそもお話自体が成り立たないでしょう」

弘一、真夜、剛毅、三人の会話は、続いていく。それは、他の当主達を巻き込んで一つの終着点へと向かう。達也と深雪の婚約は解消しない。ただし、将輝が深雪にアタックし続けることを認めると。深雪を達也から奪い取れるかどうか、男将輝の器量に賭けられたのだ。だが、そんな事は万に一つもあり得ないのだが。その決定に弘一は付け加えて、娘の真由美と達也をくっつけようと図るのだった。皆がその言葉に疲れてを見せ、一旦休憩となった。

 

 

 

 「さて、僕も休憩するか」

師族会議が行われている会議室の横の部屋でイザヤはそう呟いた。

 

 

 

 ところ変わって、ここは第一高校の生徒会室である。

「泉美ちゃん、今日はイザヤ君は居ないの?」

「はい、先生に伺ったところ、イザヤ君は今日は休みだそうです」

「そうなの」

「………」

深雪と泉美の会話を達也は、黙って聞いているのだった。師族会議が行われる日に限ってイザヤが休んだ。達也は、何かがある気がしてならなかった。

 

 

 

 師族会議二日目。一日目の休憩の後に真夜が、弘一と周公瑾が関係を持っていた事について議題に挙げる。他の現当主たちが弘一を非難する中、途中で会議室から入室してきた九島烈によって弘一をかばい、九島家現当主の九島真言もまた、周公瑾と関係を持ち、便宜を図ったとして九島家は十師族の座を退いた。その後、空いた十師族の席をどうするか考えた末、真夜が七宝家を推薦し、皆がそれに同意したのだった。その後、七宝家現当主の七宝拓巳が加わり、会議の議題は、一日目に真夜が、伊豆方面にてUSNAが所有するクルーザーが観察していた不審船についての事である。

「四葉殿が指摘されていた貨物船ですが、魔法師の反応は見られませんでした。船内には武器弾薬も残っていませんでした」

「船内には?」

弘一の言葉に真夜は首を傾げる。

「爆薬が輸送されていた可能性があります」

「USNAの動向はどうですか?」

今度は十文字克人が弘一に尋ねる。

「USNAに寝返った連中は見つかりましたが、大した練度ではありませんね。到底、USNA本国から任務を任されたとは思えない」

その言葉に他の当主達も次々と口を開く。

「つまり…狩人は別にいると」

「問題は国内に侵入したかもしれないテロリストだろう。一体、何が目的なのか」

「そうですな、いるという確証は無いが、いないという確証も無い。どこに潜んでいるのやら」

「案外、この師族会議を狙っているやもしれませんぞ」

全くの偶然だった。その言葉の直後だった。激しい音と振動が会議室を襲った。

 

 

 

 「まったく、こんなタイミングに来るか普通」

イザヤは悪態をついていた。十師族が居る会議室を襲った爆発音は、イザヤの部屋にも届いていた。イザヤはソファから立ち上がり、魔法によってホテル全体を把握する。

(会議室に十師族の皆さん、ホテルに泊まっている一般人、そして廊下や非常階段に操られている人、いや死体か。しかも、体には爆弾が付けられている。テロリストは死体で遊ぶのが好きらしい)

このままじっとしているわけにはいかないので、イザヤは部屋から出て、非常階段から屋上へ目指す。しかし、そこには行手を阻む死体人形が、

「邪魔」

イザヤは加重力魔法を発動する。死体人形の頭は、まるで上から圧力をかけられたかの様に、押し潰されて倒れていく。イザヤはそのまま非常階段を駆け上がって、屋上に通じるドアを開ける。

(まったく酷い奴だね。そろそろ警察や消防が到着するだろうから、さっさとトンズラするか)

イザヤがそう思っていると、非常階段から駆け上がってくる音が聞こえて来る。十師族の当主達も屋上から外へ出るつもりであるらしい。

(さて、見つからないうちに逃げるか)

イザヤは屋上から飛び降り、その姿を消した。

 

 

 

 一条剛毅を先頭に、十師族の当主達は屋上へと目指していく。しかし、非常階段には既に倒れている死体たちが、それと開けられている屋上の扉。誰かが既に非常階段から上がった痕跡があるが、その人物は一体誰なのか。

(私たち以外にあの会議室の階に誰かいたのか?)

弘一は考える。このホテルには自分たち以外に一般の客も利用している。しかし、師族会議が行われている階は貸切状態であったはずだ。にも関わらず、廊下や非常階段には操られた死体どもが倒れている。

(十師族の警備を掻い潜り、尚且つ当主である我々にも気付かれないように潜伏していた、という事なのか)

そんな事があり得るのか。もし、これが本当だとすれば、師族会議での内容が全て聴かれていた可能性がある。そして、その人物は、自分達を容易く殺す事ができたのでは無いか。そう考えてしまう。

(……まさか……いや、考えすぎなのか)

一瞬、脳裏にチラついたのは、以前家に招いた娘の友人。折紙イザヤ。そう考えたのはほんの数秒であったが、弘一は、何故かイザヤの顔が頭から離れなかった。

 

 

 

 箱根の高級ホテルを襲った爆弾テロの被害者は、最終的に死者二十二名、負傷者三十四名という大惨事になった。なお、この事件で無傷だった者達は全員が魔法師であった。そのため、自分たちの身を守ることのみに汲々とした魔法師の態度として、世論からは非難を浴びていた。

 

 

 

 

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