魔法科高校の後輩   作:パクチーダンス

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第二十五話 達也「ほら塩だ」イザヤ「ぎゃーー目がーーー!!」泉美「一向に進まない、、、」

 箱根のホテルで大規模な爆弾テロが発生した。授業中にその知らせを受けた達也、深雪、水波、香澄、泉美、琢磨の六人はすぐに現場に向かった。到着した達也達が最初に聞いたのは、悲鳴と怒鳴り声であった。焼け落ちたホテルから運び出される怪我人や死者。駐車場で座り込んで痛みに顔を歪ませている人々。未だに止まない爆発音。消防士は既に火事の消火に当たっている。

「あそこにいらっしゃいます」

深雪は現当主たちの一団を見つけた。

(なぜこの場に止まったままなんだ?)

達也のその疑問はすぐに解消される。現当主たちの近くには、私服警官と思しき人間いたからである。どうやら、事情聴取を受けているようだ。

「お父様!」

泉美が七草家現当主の七草弘一の方へ走って行く。

「ちょっ、待ってよ泉美」

「あれは、警官か?」

香澄は泉美を追いかける。琢磨も追いかけるが、周りの状況を冷静に見えているようだった。

「お兄様」

深雪が達也の顔を見る。後ろに控えている水波も達也の言葉を待っている。

「泉美たちを放っておくわけにはいかないな」

達也達はすぐに三人を追いかける。特に泉美は冷静な思考ができないでいる。下級生の暴走を止めるのも上級生の役目である。

「なぜお父様達が警察の尋問を受けなければならないのですか!?お父様達は被害者ですよ!」

案の定、泉美は警官に食いかかっていた。普段のお淑やかに反して、何とも怖いもの知らずなことだ。

「泉美、止めるんだ」

「司波先輩、なぜ止めるんですか!?」

泉美は肩に手を置いた達也の手を振り払った。しかし、達也は振り払った手を掴んで引き寄せる。

「頭を冷やすんだ。警察の方は職務を遂行されているだけだ。それに、この場にイザヤがいたら、お前は笑われているぞ」

前半の言葉よりも後半のイザヤの部分に泉美は特に反応した。

「それは…嫌ですね」

達也の言葉を聞いた泉美は、すぐに冷静になり警察に頭を下げる。達也達はそのまま一旦離れる。そんな姿を、真夜を除く十師族の当主達は興味深そうに見つめている。達也の後ろをついて行く泉美だが、彼女の視界の端に、

「あれ?」

「どうした?」

泉美が声を出して立ち止まるので、達也は後ろを振り向いて尋ねる。

「今、あそこにイザヤ君がいた気がしたのですが………」

泉美が見ている方向は、道路を挟んだ向かい側の二つのマンションに挟まれた暗くて細い道。達也も泉美と同じくそこを見るが、誰もいない。

「……気のせいだ、行くぞ」

「……はい」

 

 

 

 ようやく警察の事情聴取から解放された十師族の現当主達は、ヘリで魔法協会関東支部は向かった。その場所の会議室を借りて、当主達は円卓の席に座る。

「無意味な前置きで志願を無駄にはしたくありません」

現十師族の中で最年長の二木舞衣が誰よりも先に口を開く。

「マスコミを抑えるのは難しいでしょう」

マスコミの扱いに長けている七草弘一は悲観的な言葉を述べる。

「だからといって手をこまねいているわけにはいかないでしょう」

五輪勇海が腕を組みながら発言する。

「いや、当面は静観するのが良いのではありませんか?性急に対処しようとすると、大衆に見透かされる可能性がある」

三矢元が消極的な発言をするが、

「マスコミ工作は無駄でしょう。その点は七草殿に賛成です。」

「では、何もしない方が良いと?」

八代雷蔵の発言に克人を首を横に振る。

「いいえ、小細工はせず、堂々と我々の立場を主張すべきでしょう。具体的には、魔法協会にテロを非難する声明を出させるのです」

「さらに、犯人逮捕まで全面協力するという宣言を付け加えましょう」

真夜が克人の発言に補足をつける。

「我々の手でテロリストを捕らえるべきだと?」

「テロリストを放置するわけにも参りませんから」

一条の発言に真夜が当然と答える。

「では、テロリスト捜索には誰を向かわせましょうか?」

六塚温子の言葉は真夜だけでなく、この場にいる全員に言ったものである。

「当家からは、達也を出します」

「将輝にその任を与えよう」

真夜の言葉に対抗するかのように一条剛毅は息子の将輝の名を出す。

「お待ち下さい、四葉殿、一条殿。お二人のご子息はどちらも高校生ではありませんか。十師族の務めとはいえ、高校生の身分で学業を長時間犠牲にするのはどうかと思いますが……」

四葉真夜と一条剛毅の発言に二木舞衣は常識として、二人に反論した。

「なら、当家の智一に指揮を執らせてはもらえませんか?長男は既に学業を終えた身であります。……もし、私を信用できないのであれば、十文字殿を責任者とし、智一を補佐とする形でも結構です」

他の当主達は互いに顔を見合わせる。皆は弘一の真意を測りかねていた。

「それで罪滅ぼしをしたいという事ですかな?」

三矢元が七草弘一に真意を問いただす。

「もちろん、これで皆様の信用を取り戻せるとは思っていません。ですが、汚名を洗う第一歩にしたいと考えております」

その後、十文字克人を責任者として、七草智一が指揮を執り、テロリストの捜索に当たる事となった。しかし、この場にいる誰も、とてつもなく重大な事を置いて話している。

「テロリストの件については一旦区切りがつきましたので……みなさん次のお話に参りましょうか」

二木舞衣が他の当主たちを見渡して、そう口を開く。その声は少し重たい感じである。二木舞衣が何を言おうとしているのか、分からない当主達ではない。

「……皆さん既にわかっていると思いますが、あの爆発があったホテルに、私たち以外に『誰か』がいました。非常階段に倒れていたテロリストの人形と屋上の扉が開いていた事が何よりの証拠となります」

二木舞衣のその言葉に他の当主達も頷く。自分たちがいた階は貸し切りであったはずなのだ。警備もその階には上がっていない筈。では誰なのか。

「テロリスト本人でしょうか?」

五輪勇海が弱気な声をだす。

「それでは自分の駒を倒す理由がない。それに、私がホテルを魔法で感知した時、あの階には私たちしか反応が無かった」

一条剛毅が反論する。

「……問題なのは、警備を潜り抜け、我々でも気付くことができなかった事だ」

「私たちの会話を聴かれていた可能性が高いな」

八代雷蔵が目を瞑り腕を組む。六塚温子は師族会議での内容が盗聴されていた可能性を挙げる。

「…恐ろしいですな。今頃になって冷や汗をかいてしまいます」

「ええ、まったく」

三矢元と七宝拓己が顔を見合わせ不安な表情を浮かべる。皆が『誰か』について話をしている時、七草弘一は一人、テーブルの上で手を組んで、下を向いていた。そんな姿を見た四葉真夜が、弘一に声を掛ける。

「七草殿、先程から俯いてますが何かあったのですか?」

珍しく声を掛けてくる真夜の声に弘一は顔を上げる。

「いえ、四葉殿、何でもありませんよ」

「そうでしたか、私はてっきりその『誰か』に心当たりでもあるのかも思いまして」

真夜の言葉に、他の当主たちは弘一に視線を向ける。「まだ何か隠しているのか」そんな目で彼を見る。

「…………」

「七草殿、四葉殿が言った通りその『誰か』に心当たりがあるのなら、今のうちに打ち明けた方がよろしい。また、貴方の信用が落ちぬうちに」

三矢元が七草弘一に向けて強い口調で問い詰める。皆の視線を一身に受けた弘一は重い口を開ける。

「……みなさん、折紙イザヤという人間をご存知でしょうか?」

 

 

 

 テロ現場に駆けつけた達也、深雪、水波は自宅で一息ついていた。とりあえず、真夜が無事だった事に安心した達也だったが、明日から魔法師の厳しい逆風が吹く事を懸念していた。犠牲者の方々には哀悼の意を表している。だが、深雪標的にならなかった事に安堵しているのも事実である。達也は命令がない限り、深雪のそばにいると誓っている。そんな思いも束の間、自宅の電話のコールが鳴り響く。

「ご当主様からのお電話です」

水波の言葉を聞いて、深雪と達也はリビングに向かい、映し出されたヴィジホンの画面に向かって頭を下げる。

「お待たせしました」

「いえ、こちらこそこんな夜遅くにごめんなさいね」

「まだ、勉強中でしたので」

達也の言葉に真夜は笑い出す。

「達也さんでも夜遅くに勉強する事があるのね」

「自分はまだ学生なので」

「……そうね。学生の身であるけれど、専念させてあげられないのは残念ね」

真夜のその言葉に、達也は自然と上司から命令を聞く姿勢へとなった。

「達也さん、貴方に本日のテロ首謀者捕縛の任を与えます」

「捕縛ですか?抹殺ではなくて」

「ああ、私の言い方が悪かったわね。テロリストの生死は問いません。見つけ次第、無害化しなさい」

「了解しました」

達也は真夜に一礼した。その姿に真夜はふふふと笑う。

「捜索は師族会議の決定です。責任者は十文字殿ですが、実行部隊は七草家が出ます」

「では自分は七草家の指揮下に入ると?」

「いいえ、あなたは十文字殿の指揮下に入ります」

「…わかりました」

「それと、一条将輝さんも十文字殿の下でテロリスト捜索に当たります」

「一条さんがですか!?」

達也の横で控えていた深雪が驚いて声を上げる。深雪ははしたない声を上げた事に赤面し、真夜に頭を下げる。

「失礼しました」

「いいえ、驚くのも無理もありません。それでは、無力化すべきテロリストの名前と素性を後で送っておきます」

「はい、わかりました」

達也は内心驚いていた。既にテロリストの情報を掴んでいた事に。

「それともう一つ、折紙イザヤという人間についてです」

真夜からイザヤの名が出た時、達也だけでなく、深雪や水波も目を開く。

「イザヤがどうしましたか?」

達也は四葉の次期当主を決める日に、イザヤの事を真夜に話していた。自分がイザヤに負けた事。イザヤが得体の知れない人間である事。

「どうやら、あの爆破テロがあったホテルに現当主達以外に『誰か』が同じ階に居たみたいなの」

「『誰か』?」

「その『誰か』が、十師族の警備を出し抜き、現当主である私達にも気付かれずに会議の内容を盗聴された可能性があります」

(((!?)))

三人は声には出さなかったが、顔は驚きの表情を浮かべていた。師族会議が行われる場所は極々一部の人間にしか話されていない。もし、場所を特定したとしても、警備の目を欺き、あまつさえ同じ階に潜んで会話を盗み聞きする事が果たして可能なのか。

「……その『誰か』がイザヤだと?」

「達也さん、貴方はどう思いますか?折紙イザヤにそれができると思いますか?」

真夜に問われると達也は目を瞑る。イザヤにそれが出来るのか、それは達也が一番よく知っている。

「可能だと思います」

「……そうですか、わかりました」

「しかし何故、イザヤの名前が出て来たのですか?」

達也は純粋な疑問を深夜に尋ねる。

「七草殿がその『誰か』が折紙イザヤではないかと発言したからです」

「………そうですか」

イザヤは七草の双子、特に泉美と仲がいい。七草家の家にイザヤを招いた可能性がある。そこでイザヤと現当主が接触があり、何らかの理由でイザヤの力を見たのだろう。達也はそう推測した。

「達也さん、これは今回のテロリストの件よりも極秘事項です。師族会議の内容を盗聴されていたなどと他の者にバレてはなりません。テロリストの無害化が第一目標ですが、折紙イザヤについても探りなさい」

「…了解しました」

達也は少し間をおいて返事する。真夜からの電話が切れる。イザヤの魔法が未だにどんなものなのか分からないが、これを機に奴との接触を深めていこうと考える。

 

 

 

 七草弘一が家に帰ると、娘達が弘一を出迎えた。

「おかえりなさいませ、お父様」

三人の中で酷く心配していた泉美が真っ先に声を掛ける。

「ああ、出迎えてくれてありがとう。泉美そして香澄、早速だがお前達に話があるんだ」

「お話ですか?」

泉美はその言葉に首を傾げる。香澄も同様である。

「お父様、泉美ちゃんと香澄ちゃんに何のお話があるのですか?」

呼ばれていない真由美が弘一に疑問を投げる。

「折紙イザヤ君について二人に聞きたい事があるんだ」

「「え?」」

予想もしていなかった弘一の発言に泉美と香澄は疑問浮かべる。だが、泉美は何か感じ取ったのか、すぐに冷静になる。

「わかりました、香澄ちゃん行きましょう」

「う、うん」

弘一は双子を連れて自室に入る。真由美はその姿を後ろからジッと見つめた後、部屋に戻った。弘一は自室に入ると、ソファに腰掛ける。

「座りなさい」

弘一の言葉で香澄と泉美は弘一と向かい合って座る。弘一重苦しい雰囲気が部屋を覆う。泉美は意を決して口を開く。

「お父様、先程の発言はどういう事ですか?」

「………」

弘一は泉美の声を聞いているが、喋らない。ただ、腕を組んで黙っているだけ。二人は不思議に思ったのか、互いを見つめ合う。

「……今日、折紙イザヤ君は学校に来ていたのかい?」

弘一はさっきの泉美の疑問に答えず、二人に尋ねる。

「いえ、今日は欠席してました。というか、昨日も彼は学校を欠席してます」

同じクラスである泉美はそう答える。それに対して弘一は、

「そうか」

それだけである。二人はますますわからない。

「イザヤ君が今回のテロに関係しているんですか?」

香澄はテロとイザヤに関係があるのかと聞く。

「いや、今回の爆破テロとは関係がないだろう。他の十師族の当主達とそう推論付けた」

「他の十師族と?」

「師族会議の内容を『誰か』に盗聴されていた可能性がある」

「「!?」」

香澄と泉美は驚いて目を見開く。師族会議を盗み聞きする命知らずがいるなんて。

「十師族の警備に見つからず、尚且つ当主である我々にも気付かれずに犯行に及んだ」

「……その『誰か』がイザヤ君であると?」

「二人はどう思う?折紙イザヤにそのような事が出来ると思うか?」

疑問文に疑問文で返された香澄は、しばし考える素振りを見せる。しかし、泉美は弘一のその疑問にノータイムで答える。

「出来ますね、イザヤ君なら」

泉美はイザヤから可能だと堂々と答える。その言葉に弘一の目は泉美を捕らえる。

「出来るか、彼なら」

「はい、何の根拠もありませんが、イザヤ君なら笑ってやってのけると思います」

「………わかった。二人とも、もう寝なさい」

弘一はソファから立ち上がる。そんな弘一を泉美は呼び止める。

「待ってください、お父様。何故イザヤ君の名前が出て来たのかわかりませんが、イザヤ君がその『誰か』であると決まったわけではないのですよね?」

泉美は逃さないと言わんばかりの目で弘一を見る。

「ああ、まだ可能性の話だ」

「………わかりました」

そうして話はこれで幕を閉じる。香澄と泉美はそれぞれの部屋に戻り、ベッドに入る。泉美は天井を見つめ、やがて目を閉じる。

(イザヤ君、今度は何をしたのですか?)

泉美は何故か、胸が苦しくなっていた。

 

 

 

 「はっくしょん!」

イザヤは自室で大きなくしゃみをした。

(誰か、僕の噂でもしているのかな?)

 

 

 

 

 

 

 

 

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