魔法科高校の後輩   作:パクチーダンス

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第二十六話 深雪「それでは審判は私が務めさせていただきます」イザヤ・達也「女が土俵に上がるな!!」深雪「ヒェ」

 テロから一夜明けた今日。達也はいつも通りに九重寺へと足を運んだ。寺の門を入ったすぐのところに、師匠である九重八雲が立っていた。

「おはよう、達也くん」

「おはようございます、師匠」

日が昇る前から稽古が始まる。最近の達也の実力は、九重八雲と拮抗している。九重八雲もいい練習相手ができて非常に満足している。

「達也君、昨日は大変だったね」

戦いながらも喋る余裕を残している九重八雲は、昨日の爆破テロの件について触れる。

「はい、当主の皆様にお怪我がなくてよかったです」

達也は嘘偽りのない気持ちを吐露する。

「わかっていると思うけど、これから魔法師に対しての風当たりが強くなるから、十分に気を付けたまえ」

特に、人間主義を掲げる団体がこの事件をきっかけに、さらにデモが拡大することは目に見えている。一般市民に多数の死者が出ているのに、魔法師は誰一人として負傷者もいない。一般市民を救う事をせず、我が身可愛さで逃げた魔法師だと非難が浴びるだろう。

「テロリストの正体はわかっているのかな?」

「はい、ご当主様から首謀者の情報は受け取っています。一ヶ月もかからないと思います。問題は……」

「折紙イザヤ君かい?」

「……………」

その情報は極々一部の人間にしか伝えられていないはず。何故、九重八雲が知っているのか、どこで嗅ぎつけたのかわからないが、やはり師匠も油断ならないと、達也は改めて認識した。

「…はい、イザヤはいまだに正体不明です」

「僕も返り討ちにあっちゃったからね」

九重八雲は、イザヤとの戦いを思い出す。完全に遊ばれている様だったと振り返る。あの日以降、イザヤを探る事は止めている。

「彼の事は、テロリストの件よりも骨が折れるね」

「……そのようです」

達也は稽古を終えるとすぐに自宅に戻り、シャワーで汗を流した後、学校へ深雪と水波と一緒に登校するのだった。

 

 

 

 学校では、昨日の師族会議を襲った爆破テロで話は持ちきりだった。クラスや廊下など場所を問わず。皆が不安の声が上げる。前代未聞の事件であるが故に。泉美と香澄はいつも通り学校へ登校した。香澄とはクラスが違うので途中で別れて自クラスに入る。泉美は扉を開けると、クラスの皆からの視線を集める。泉美は気にせずに自分の席に着く。周りからの視線が少し鬱陶しくなるが、チャイムが鳴るまでジッと待っていた。

(今日も来ていない、、)

イザヤは今日も姿を表さない。まだ、授業が始まるまで三分ほど余裕があるが多分来ないと考える。これで三日連続の休みである。泉美は、イザヤと会えない事への寂しさと、昨日、父親から聞かされた話で心配が募る。物思いに耽っていると、チャイムが鳴り、授業が始まる。

 

 

 

 昼休みには、達也達は久しぶりに、いつものメンバーで食堂で食事をしていた。だが、食堂の大型ディスプレイが緊急ニュースを流し始めた。

「テロリストの犯行声明?」

エリカが眉を顰めて呟く。ニュースキャスターはテロリストの声明を読み上げていく。

 

 ー昨日、箱根のホテルを襲ったテロを実行してのは自分たちである。

 

 ー自分たちは魔法という悪魔の力をこの地から一掃するために戦う者である。

 

 ー十師族は卑劣にも、一般市民を盾にして逃げ延びた。

 

 ー自分たちは魔法師というミュータントから人々を解放するために戦い続ける。

 

 ー日本人が魔法師を追放しない限り、犠牲者は増え続けるだろう。

 

「なんで自分の命よりも他人を優先しないといけないのよ」

エリカは、ニュースの中の魔法師を非難している政治家やニュースキャスターに悪態をつく。

「地位や職業柄で他人の命を優先する時はあるけど、それを当然のことの様に語られるのは非常に不愉快だ」

幹比古が強い口調で嫌悪感を露わにする。その後も魔法師を非難する政治家のコメントが続く。嫌気が差した達也達はそれ以上何も喋らずにただ耳を傾けるだけで、食事を進めるのだった。達也は、ふと視界の端に泉美を見た。泉美は香澄と水波と一緒に食事をとっている様だ。しかし、その中にイザヤの姿は無い。達也は、イザヤと泉美が普段から一緒に食堂で食べいることを知っている。

(あいつ、今日も休みなのか)

イザヤのことが気になるが、まずはテロリストの捜索が第一だと自分に言い聞かせるのだった。

 

 

 

 ジード・ヘイグの犯行声明は、多くの魔法師が懸念していた通り、世論を沸き立たせるのだった。マスコミは魔法師の非難一色。一高生徒達は明らかに浮き足立っていた。休み時間になると、ニュースをチェックする者があちこちで見られている。一高生の反応としては、魔法師を悪者扱いされて怒りを示しているのがほとんど。後は、魔法師を敵視する風潮が強くなることを恐れている者。放課後の生徒会でもニュースを流している。普段は作業の邪魔になるからと言って音楽すらつけないのだが、やはり皆気になるのか、チラチラとテレビを見ていた。生徒会室には、来月に予定されている卒業パーティーの打ち合わせに招いた前生徒会会計の五十里啓とその婚約者である千代田花音がいた。明日からテロリスト捜索のために生徒会をしばらく休むつもりである達也は、黙々と自分が休む分までの作業をテキパキとこなしていく。しかし、そんな達也の手を止めたのは、平気で聞き逃すことのできない発言が耳に飛び込んできたからである。

「あーあ……それにしても十師族がヘマしてくれたお陰で、あたし達までとんだとばっちりよね」

千代田花音が肘をつきながらニュースを見て呟く。その言葉に不快感を露わにした泉美は千代田花音に顔を向け、

「千代田先輩は、私たちが悪いと仰るのですか?」

達也は上級生として、泉美をたしなめなければならない立場であったが、たとえ深雪が同じことをしても何も言わなかっただろう。花音の言葉は泉美を怒らせるのに十分であった。

「そりゃあ、悪いのはテロリストだけど、十師族の対応が不味かったのは確かでしょ」

「…何がいけなかったと仰るのですか?」

泉美は熱くはなっていなかった。淡々と醒めた表情で、冷ややかに問いかけるのだった。花音は興奮して椅子から立ち上がる。泉美の態度が相手を軽蔑しているものだと理解したのだ。

「同じ場所にいた一般市民を一人も助けなかったなんて、非難されて当然でしょう!」

花音は泉美を睨みつけるのだったが、泉美の反撃が始まる。

「一般市民、ですか?一般とはどういう意味でしょう?」

「どういう意味って……」

「文民という意味ですか?それとも公職にないという意味ですか?もしそういう意味であるならば、十師族当主の皆様は軍人も公務員もいらっしゃらないので一般市民に該当しますが…」

「何が言いたいのよ」

花音がさらに強い口調で攻める。泉美はひるまない。

「いえ、一般市民が自分の非難よりも、他の一般市民の避難を何故優先すべきかと疑問に思いまして……」

泉美が左手で口を隠す。花音は泉美に嘲笑われたと感じたのだ。

「貴方ねぇ!」

「花音、落ち着いて!」

今にも泉美に襲い掛かろうとする花音を必死に止める啓。

「泉美ちゃん、申し訳ないのだけれど、購買で全員分の飲み物を買ってきてくれるかしら。お金はこれを使ってね」

花音と泉美の口論を黙って聞いていた深雪は、生徒会用のマネーカードを差し出してそう命じた。つまり、頭を冷やしてこいと言うことである。

「はい、わかりました……」

泉美は大好きな深雪に怒られてシュンとして、立ち上がる。

「私もお手伝いします」

水波も立ち上がり、泉美に同行することを申し出る。

「ええ、お願い」

泉美と水波は生徒会から退室する。

 

 

 

 泉美は購買で飲み物を買いに行くために廊下を歩いている。花音に言ったことや敬愛する深雪に怒られたことを深く反省していた。泉美の淀んだ顔を見て、水波は泉美を励ます。

「大丈夫ですよ、泉美さん。帰ったらちゃんと謝罪すれば、深雪お姉様もいつもの様に接してくれます」

「水波さん、、、」

落ち込んでいる自分を気遣ってくれる水波の存在が泉美は、嬉しく思った。

(これではイザヤくんに笑われてしまいますね)

爆破テロの時もそうだったが、冷静な判断ができず、さっきの様な陰湿な態度をとってしまう自分を恥じた。最近なんだが調子が悪いと思う時がある。それはいつも自分のそばにいる存在が居ないから。

(一体いつから、私はこんなにも弱くなってしまったのでしょうか?)

泉美は自分がわからなくなった。泉美の好みの男性像に、イザヤはかけ離れていた。双子の片割れである香澄が、泉美は結婚できないと言うほど少女趣味が足を引っ張っている。顔は爽やかで男らしい人、性格は優しく自分を包み込んでくれる存在、いわゆる王子様系の男性を泉美は昔から求めていた。しかし、イザヤは子供っぽく、いつも泉美を揶揄って遊ぶ。平気で人を傷つける言葉を吐くし、いつもニコニコしていて気味が悪い。だが、

(私は何故、こんなにも彼に惹かれているのか、、)

購買に買いに行く途中、泉美と水波は食堂を通る。食堂に用はないが、食堂を通り抜ける方が購買への近道となるからである。だが、泉美と水波は足を止めてしまう。二人が同じ方を凝視している。二人が見たものとは、

「イザヤ、このショートケーキ美味しいよ」

「それは当然です、いいとこの店で買ったケーキなんですから。僕のモンブランも食べます?」

「うん、あーん」

イザヤと雫がイチャイチャ、ではなく二人でデザートを食べている姿である。

「え?」「は?」

水波は何故、イザヤがこんなところにいるのかと疑問の声を上げるが、泉美は今まで出した事のないとても低い声が出た。二人に気づいたイザヤが手を振って話しかける。

「あれ?泉美ちゃんに水波ちゃん。こんな所にどうしたの?」

イザヤのニコニコとした様子に、泉美はスタスタとイザヤと雫の方に近づいていく。何か悪い予感がした水波は遅れて泉美を追いかける。そして、

「あなたは!一体何をしているんですか!!」

机をバンッと叩き、食堂全体に響き渡る大きな声を上げた。イザヤと雫は咄嗟に耳を塞ぐ。

「ちょっとどうしたの泉美ちゃん?もしかして、泉美ちゃんも欲しかったの?ケーキ」

「…………」

イザヤの呑気な声に泉美は大きく右手を振りかぶった。そんな様子に水波は後ろから止めに入る。

「お、落ち着いてください!泉美さん!」

「離してください!この男の顔を殴れません!!」

泉美と水波の様子に、当のイザヤはニコニコと笑いながら、モンブランを口にする。その行動に泉美はさらに怒りを買うことになる。

「このクズ!外道!卑怯者!」

泉美の罵倒にイザヤは全く効いていない。その後、泉美の怒りは収まることはなく、水波が泉美を羽交締めしたのち、ようやく落ち着きを取り戻したのだった。

 

 

 

 イザヤと雫のテーブルを挟んだ向かい側に泉美と水波は座る。水波は疲れた様子を見せるが、泉美はいまだに物凄い顔でイザヤを睨みつけていた。鬼の形相とはこの事かとイザヤは思った。

「……泉美ちゃん、僕のモンブラン食べる?」

イザヤは自分が食べていたモンブランを、そっと泉美の方へ移動させた。泉美はイザヤから視線を落とし、モンブランをじっと見つめてフォークを手に取った。そしてモンブランを口にする。それは憎たらしいぐらい美味しいものであった。

「いつ、学校に来たのですか?」

イザヤに問いかけたのは、泉美ではなく水波であった。

「つい一時間前さ、雫先輩を怒らせてしまったお詫びにデザートを買ってきたのさ。あとほのか先輩に」

「ほのかの仕事が終わるまでここで待ってた」

イザヤと雫がそれぞれ口を開く。

「なんで生徒会に顔を見せなかったのですか?」

水波はさらにイザヤに問いかける。そもそもイザヤは生徒会役員であるのにも関わらず、仕事を放棄をしているのだ。

「それについては謝るよ。今度、生徒会のみんなにお詫びの品を持っていくよ」

「今まで何をしていたのですか?」

今度は泉美から質問が飛んできた。

「休んでる間?家でゴロゴロしてたよ」

「嘘ですね」

イザヤの言葉に泉美は嘘と断じる。

「家でゴロゴロだなんて、時間を無駄にする行為をイザヤ君がするはずがありません。どこで何をしていたのですか?」

言い逃れることは許さないという目で、イザヤを見る泉美。

「それは言えない」

「何故です?」

「秘密だよ」

キツくイザヤを睨む泉美に、イザヤは全く怯まない。むしろ、この状況を楽しんでいる節がある。泉美は深く踏み込む。

「イザヤ君、貴方は爆破テロがあったホテルに居たのではありませんか?」

「何の事かわからないよ、泉美ちゃん」

「居たんですね」

「僕は何も言っていないよ」

「知りません。私はもう、あのホテルに居たとして話を進めています」

イザヤは自分を無視して話を進める泉美に面白くない顔をした。

「……泉美さん、そろそろ生徒会に戻らないと、深雪お姉様も心配します」

水波もイザヤがどこで何をしていたか知りたい気持ちはあるが、生徒会に戻ることを提案するが、

「水波さん、すみませんが先に戻ってて下さい。私は、イザヤ君と大事な話があります」

泉美は水波の方を見ずに言葉を返す。水波はどうしようかと迷っているが、二人の会話を聞くため、ここに止まることにした。雫は何の話をしているのか分からないため静観している。

「泉美ちゃん、水波ちゃんが言った通り、生徒会に戻ったら?」

「その時は、イザヤ君も一緒に生徒会に来て下さい」

「いや、今日はもう帰るよ。用事があるしね」

「用事とは何ですか?」

「それを君に言って何になるの?」

言葉の応酬が続いている。どちらも一歩も引くことはない。泉美はさらに切り込んでいく。

「師族会議が行われた日、貴方は会議の内容を盗聴していたのではないですか?」

「「!?」」

驚いたのは水波と雫である。二人の反応として、水波は、それをここで話すのかという驚きである。一方雫は、横に座っている男が、そんな怖いもの知らずな行為をしていたという驚きである。

「あのさ泉美ちゃん、さっきから言っていることは、僕は何も分からないよ。そもそも僕がやったって証拠でもあるの?」

「盗聴していた人間の正体は未だに掴めていません」

「そうかい、じゃあ僕を問い詰めるのはお門違いだね」

「でも、私は貴方がやったと思っています」

(どうしたものかな)

イザヤは、目の前の泉美が自分を絶対に逃がしてくれないだろうと思った。師族会議の日に休んでいたのがより一層、泉美に疑念を抱かせたことだろう。イザヤはハァとため息をつく。

「もし仮にだけど、その盗聴していた人間が僕であった場合、君は僕をどうするの?」

「どうするかは私ではなく、十師族の当主の皆様が決める事です。ですが、仮にではなく絶対貴方がやったと思っていますが、、、」

「そう思う根拠は?」

「師族会議を盗み聞き出来る人なんてイザヤ君しかいないからです」

「それって褒めてるの?」

「褒めてません。呆れています」

どこまでも平行線を辿る両者。そんな時、食堂の入り口から歩いてくる生徒がいた。

「泉美ちゃん、水波ちゃん、どこで油を売っているの?」

深雪がいつまでも帰って来ない二人を心配して様子を見に来たのだ。

「深雪先輩、こんにちは」

「イザヤ君、それに雫も」

「深雪先輩、良ければ僕の隣に座りますか?」

「いいえ、深雪先輩は私の隣です」

深雪はいまだに困惑して状況を掴めていない。この四人がテーブルを囲んで座っているのか。

「深雪お姉様、申し訳ございません。今しばらくお時間を下さい」

水波が深雪に頭を下げる。何かを悟った深雪は、視線を水波からイザヤに移すと、そのまま泉美の隣に座った。横にいる泉美がいつにも増して真剣な表情に、深雪は目を開く。

「イザヤ君、貴方がやった事は重罪ですよ」

「僕がやったと決めつけるのは良くないよ」

「他に見当がつく人がいないからです。だからお父様もイザヤ君の名前を私や他の十師族の方々の前で話されたのです」

(!?)

深雪は、話がそこまで進んでいたのかと驚愕するが、声には出さなかった。

「なるほど、弘一さんの仕業か。だけど、僕があの人に見せた魔法だけで、僕が師族会議を盗聴したと断定するとは思わなかったな。少し意外だ。甘く見ていたのかもしれないね」

「やったと認めるのですね」

「やってないよ。そもそも何で泉美ちゃんは僕に突っかかってくるの?」

「貴方のことが知りたいんです。私はそうしないと気が済まないんです」

貴方のことが知りたい、それはある種告白の様であると後に深雪は語ったのである。

「参ったな、想定していたよりも泉美ちゃんがしぶとい」

まるで他人事の様に呟くイザヤに泉美は追い詰める。

「さぁ、話してください」

「悪いけど、用事があるのは本当なんだ。今日はここで終いにしよう」

イザヤはそう言うと立ち上がる。

「逃しません」

「残念、遅いよ」

イザヤがそう言った瞬間、床に円形の穴が空いた。

「「「「え!?」」」」

イザヤを除く四人が空いた穴に落ちていく。穴は底の見えない暗黒となっていた。

「「「「きゃゃああああ!?」」」」

体が自由落下していく四人は、共に悲鳴を上げる。コンクリートの床に突然と穴が空くなんてありえない。しかし、事実として自分達は暗い穴に落ちている。

「どうなってるの!?」

「底が見えません!」

「これは魔法に違いありません!」

「イザヤ君、貴方の仕業ですか!?」

泉美は唯一落ちていないイザヤを見上げてそう叫ぶ。下に落ちている泉美たちから見れば、イザヤは空中に浮いている椅子に座りながら、こちらを見て笑っていた。

「また明日会おう、バイバイ」

こちらに手を振るイザヤが段々と遠くなっていく。落ちていくスピードが速すぎてイザヤは点となって見える始末。終わりの無い落下。一体いつまで続くのか。

「どうしましょう皆さん!」

「どうするって魔法で減速しましょう!」

「待って!これは現実じゃないわ!私達が、ここが現実じゃないと強く意識する事よ!」

兄の達也から、幻術の対処法を以前に聞いたことがある深雪は皆にそう伝える。

((((ここは、現実じゃない!!))))

四人が強く意識することで、底の見えない暗闇の中に光が見えた。その光は次第に強くなり、四人の体を覆い尽くす。皆は眩しい光に反射的に目を瞑る。そして目を開けると、

「あれ?ここは……」

「……食堂ですか?」

「どうやら、戻って来れたようね」

「死ぬかと思いましたよ、イザヤ君」

いつの間にかイザヤの幻術に戻って来れた四人は辺りを見渡す。どうやら自分達は、ずっと座っていた様だ。側から見れば、自分たちはどんな風に見えていたのだろう。椅子に座りながら穴に落ちていくと、訳のわからないことを叫んでいる集団に見えただろうか。幸いにも、食堂には誰もいないと分かりホッとする一同。

「イザヤ君は?」

「……もう居ないみたいですね」

座っていた場所にイザヤの姿は無かった。

(一体いつから……私が来た時から既に魔法が仕掛けられていたのかしら?)

深雪は魔法発動の瞬間が、一体いつなのかわからなかった。そして改めて認識する。イザヤは底知れない力を有していることを。

「深雪!」

達也が食堂へ走って入ってきた。深雪の心の揺れを感じたせいだろう。生徒会室から全力で走ってきた達也の顔に心配が見える。

「お兄様、大丈夫です。イザヤ君に遊ばれまして」

「イザヤがここに居たのか?」

達也は『精霊の眼』を使い、辺りを詳しく探すがイザヤの反応はない。既にどこか遠くに行った様だ。

「イザヤ君、明日来たら覚悟してて下さいね」

泉美はここに居ないイザヤに向けてそう呟いた。

 

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