魔法科高校の後輩   作:パクチーダンス

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少ないよ


第三話 昼食タイム

 生徒会室で色々あった日から翌日。折紙イザヤは、授業が始まる一時間も前から学校に到着していた。何故こんなにも早く登校しているのか、理由なんてない。ただ早く起きてしまっただけのことである。

 

自クラスに行って席に座っているだけでは暇なので昨日と同じく学校を探検することにした。しばらく歩いていると、体育館の方から大きな声が聞こえてきた。誰にも気づかれずに中を覗くと、そこでは剣道部が朝練をしていた。

 

(剣道なんて興味ないけど、どんな人がいるかなー)

 

イザヤには剣道なんて微塵も興味がない。しかし、自分を楽しませてくれる人間がいるのかどうか『目』で見て探していく。剣道部の中には腕立つものが沢山いる。沢山いるがイザヤを楽しませてくれる人間は見当たらなかった。

 

(やはり、そう簡単には見つけられないか。あーあ、おもちゃでもいいから早く欲しいなー)

 

人間をおもちゃと例えるのがこの男、折紙イザヤである。彼は常に自分を楽しませてくれる人間を探している。

 

(今のところ、達也先輩、深雪先輩、泉美ちゃんしかいないからなー。もっと沢山見つけないと学校生活が退屈になってしまうよ)

 

イザヤはその場から去り、違う場所へ移動しようとした時だった。

 

「何してるの?」

 

体育館とは違う建物から少女の声が聞こえてきた。イザヤは振り向くと、その少女と目が合った。

 

(おー、これはなかなか)

 

『目』で見て分かった。この小さな少女には、他の一科生の生徒とは、比べるのも馬鹿馬鹿しいくらいの素晴らしい魔法の才覚があるということが。

 

(彼女は確か…)

 

イザヤは去年の記憶を掘り起こす。それは、夏の九校戦まで遡る。

 

「あなたは、北山雫先輩ではありませんか?」

 

「ん、私を知ってるの?」

 

「ええ、確か去年の九校戦のスピード・シューティングで優勝されていましたよね?」

 

彼女は、スピード・シューティングで優勝、アイス・ピラーズ・ブレイクにて深雪先輩に敗北し、惜しくも2位の結果となったが、それでも素晴らしい成績を納めている。さらに、アメリカでの留学経験もあるとか。

 

(深雪先輩には及ばないが、それでも十師族に負けないくらいのポテンシャルがある。面白いなこの人)

 

可哀想ながら北山雫は今この時、折紙イザヤに目をつけられてしまった。

 

「あれは、私の力だけじゃない。私の調整を担当していた達也さんのおかげでもある」

 

「そうですか。だけど、あなたは素晴らしい魔法師のようだ。見てすぐにわかりましたよ」

 

「そんなに煽てても何も出ないよ」

 

雫は無表情を崩さないが、どこか嬉しそうであることが分かった。

 

(ふーん、彼女もっと伸びるな。もしかしたら、戦略級魔法も使えるぐらいまでに)

 

イザヤは、雫の将来性に大きな期待を感じていた。しかし、このまま普通の学校生活を送っていてはその可能性も低い。そう考えていたところ、

 

「あなたの名前、聞いていない」

 

雫からそんな言葉が聞こえてきた。

 

「おっと、自己紹介がまだでしたね。僕の名前は、折紙イザヤです。先輩はなんでこんな所に?」

 

「私、風紀委員なの。その見回り」

 

「こんな朝早くからですか?」

 

「あと、生徒会の手伝いもあったから」

 

「なるほど」

 

たわいもない話をしていると、二人の後ろから、

 

「雫、ここにいたの。探したよ」

 

そう声をかけてきたのは、

 

「ほのか、どうしたの?」

 

北山雫の幼馴染である光井ほのかであった。

 

「一年生ですか?」

 

ほのかがそうイザヤに尋ねると、

 

「ええ、はじめまして折紙イザヤです。雫先輩とはさっきまでおしゃべりに付き合ってもらっていたんですよ」

 

「そうなの雫?」

 

「うん、そう」

 

雫はほのかに答える。

 

「では僕は失礼します。また会いましょう。雫先輩」

 

イザヤは二人に頭を下げた後、そのまま校舎の方に歩いていく。そんな彼を二人はじっと見つめていた。

 

「…」

 

「雫?彼と何を話していたの?」

 

「彼、私のファンかも」

 

「え?ファン?」

 

 

 

 いつの間にか結構時間が経っていることが分かった。登校してくる生徒の姿がちらほらと確認できる。そろそろ教室に行ってもいい頃合いだろうと思い、校舎の中に入っていき、教室へと向かう。その途中、

 

「おはようございます、イザヤ君」

 

後ろから泉美が挨拶をする声が聞こえてきた。

 

「おはよう、イザヤ君」

 

香澄も後に続いて挨拶をする。

 

「やあ、おはよう。お二人さん」

 

イザヤも二人に挨拶を返す。

 

「二人とも登校するのが早いね」

 

イザヤが来た時からだいぶ時間が経っているとはいえ、まだ授業が始まるには時間があった。

 

「ええ、そうなんです。深雪先輩に早く会いたくて、いつもより早く起きてしまいました!」

 

泉美は目をうっとりとさせながら、自分の世界に入ってしまった。完全に深雪先輩の虜となってしまったようだ。香澄はイザヤに近づき、

 

「泉美、昨日家に帰ってきてからずっとあの調子なんだよ。一体、何があったの?」

 

「さあ、それは僕にも分からないな。けど、何かに目覚めてしまったようだけどね」

 

「まあ、泉美には少女趣味があるから。じゃあ、わたしこっちだから後よろしくね」

 

なんて会話をしながら香澄は自分の教室に入っていく。まったく、面倒なことを押し付けられたようだ。イザヤは泉美を正気に戻すために、

 

「あ!あんな所に深雪先輩が」

 

イザヤは、後ろの方に指を差す。

 

「どこ!?どこにいるのですか!?」

 

泉美は顔を右へ左へ振り、深雪先輩を探している。しかし、深雪先輩の姿が見られない。

 

「嘘だよ、それに二年生の教室は違う階だし、そんなことも忘れちゃったの?」

 

イザヤは泉美を揶揄うように言う。すると泉美はにっこりと笑い、

 

「イザヤ君、今度、深雪先輩の事について嘘の発言をした場合はそれ相応の罰を受けていただくことをなりますよ」

 

泉美は笑っている。だが、目がまるで笑っていない。私怒っていますというオーラを纏っている。泉美に対してイザヤは、

 

「すみません」

 

素直に謝るのだった。

 

 

 

 授業が始まると、イザヤは暇そうに窓から外の景色を眺めている。イザヤの席は教室の窓側の席であり、前から五列目に位置する。横を見ると、泉美が先生の授業に耳を傾けている。今日の授業は、系統魔法の中の加速魔法についての授業である。

 

皆が真剣に聞いている中、イザヤはとても退屈であった。確かに、先生の授業は分かりやすく、説明も理解できる。しかし、イザヤはそんなの予習済みである。故に、授業の時間は縛られている感じがして嫌になる。

 

(明日からサボろうかな)

 

そんな事を思いながら、今日の自分のスケジュールについて考える。

 

(さて、今日の放課後はまた達也先輩のところに行かないといけないのか)

 

昨日、達也はまた自分に用事があるようだった。自分が警戒されていることは理解している。警戒されている中で、達也がどのような行動をするのか楽しみであるイザヤであった。あれやこれやと考えていると次第に時間が過ぎていき、チャイムが鳴り、授業が終わった。

 

今日の授業は昼までである。この後、一年生達はお昼を食べてから、興味のあるクラブを見て回るのだろう。例年、この時期は色々と問題が起こり、風紀委員や生徒会が忙しくなるという。教室の生徒が立ち上がり、皆が動き始める中で、

 

「イザヤ君、一緒に食堂で昼食をとりませんか?」

 

「ああ、いいよ。じゃあ、B組に行って香澄ちゃんを呼んでこようか」

 

「いいえ、香澄ちゃんは新しくできたお友達と一緒に食べるそうです」

 

「へえー」

 

この短期間にもうそんな友達ができたのかとイザヤは関心する。確かに香澄は、簡単に人との距離を縮め、誰とでも仲良くしているのが想像できる。

 

対して泉美は、誰であっても同じような接し方をしそうなんので関係を深めるのは容易なことではない。まあ、深雪先輩は例外であるが。

 

「分かったよ。じゃあ、行こう」

 

そうして二人は食堂へ行くこととなる。

 

 

 

 食堂には、大勢の生徒達がいた。時間が時間なのでそれも仕方がない。

 

(さて、何を食べようかな)

 

イザヤは大きく貼られたメニュー表を見て考える。どれもありきたりな定食やランチであるが故に決めるのに時間がかかってしまう。しかし、一番下には本日の限定メニューという文字が書いてあった。

 

(本日の限定メニュー…天津飯に卵のスープ、デザートの杏仁豆腐)

 

イザヤの今日の食べる昼食は確定した。

 

「泉美ちゃん、食べたいものは決まったかい?」

 

「はい、イザヤ君も決まったのなら並びましょう」

 

二人は食券を買うために並ぼうとする。しかし、食券の前には多くの生徒が並んで自分が買う番を待っていた。

 

(本日の限定メニュー、無くなってないといいけど…)

 

そんなイザヤの願いも虚しく、本日の限定メニューは売り切れとなっていた。ため息をつきながら、仕方なくイザヤは無難な唐揚げ定食の食券を買い、また長い列に並ぶのだった。

 

「本日の限定メニューを食べたかったのですか?」

 

泉美は横から聞いてくる。

 

「まあね、限定と書いてあったら、買いたくなるのが人間の性じゃないかな」

 

「気持ちはわかります」

 

そうして定食を受け取ったイザヤと泉美は座れる席がないか辺りを見渡す。しかし、何処もかしこも席が埋まっているようだ。

 

「先に席ととったほうが良かったかな」

 

「そのようですね」

 

二人でどうしようかと悩んでいた時、

 

「あら、泉美ちゃん、折紙くん」

 

「あっ!深雪先輩!」

 

泉美が声の主である深雪に近づき、

 

「深雪先輩!ご一緒させていただいてもよろしいでしょうか!?」

 

なんて目をキラキラさせ、顔を近づけながら泉美は深雪にお願いする。

 

「え、ええ、いいわよ」

 

泉美に深雪は若干引いているようだ。

 

「ありがとうございます!!」

 

そうして泉美は深雪の横の席を颯爽と座る。相変わらずの泉美の行動にイザヤはため息を吐いていた。そこに、

 

「イザヤ、お前は座らないのか?」

 

深雪と共に座っていた達也がイザヤに話しかける。イザヤは断る理由はない。

 

「僕もご一緒させていただきます」

 

そうしてイザヤは達也の横に座った。その時、深雪の横を座っている生徒がイザヤのことをジッと見つめた。

 

「達也先輩、あちらの女性はどなたですか?」

 

「俺と深雪の従妹の桜井水波だ」

 

「そうなんですね、よろしく水波ちゃん」

 

「…はい、よろしくお願いします」

 

水波はゆっくりと頭を下げる。その動きはとても綺麗な所作であった。

 

(従妹と達也先輩は言っていたが、僕には使用人の感じがするな)

 

実際のところ、彼女が従妹だろうが使用人だろうがイザヤにとってはどうでも良いことである。大事なのは、この少女が自分を楽しませてくれる存在かどうかである。

 

              水波

 

         達也   深雪

 

         イザヤ  泉美

 

というテーブルの席で食事をとる事になり、五人がそれぞれ手を合わせ、昼食を食べ始める。そんな時だった。

 

「イザヤ、昨日の言った事を覚えているか?」

 

横の達也がイザヤに声をかけてきた。

 

「ええ、僕に用事があるのでしょう?昼食を食べてから一緒に生徒会室までいけばいいですか?」

 

「ああ、そうしてくれ」

 

達也からの返事が帰ってくる。

 

「泉美ちゃん、あなたもこの後生徒会室に来てもらえないかしら?」

 

「はい!喜んで深雪先輩!誠心誠意お仕えします!」

 

「ええ」

 

深雪が泉美にニコッと笑って返す。イザヤには深雪と泉美の中は深まっているように思える。水波は二人の会話に入らず、黙々と昼食を食べている。それに対して、自分と達也は会話はただの確認でしかない。イザヤは達也の食べているものをジッと見つめた後、

 

「達也先輩、僕たちも二人みたく会話に花を咲かせましょうよ」

 

「なに?」

 

「達也先輩が僕に警戒心を持っていることは重々承知しているつもりですが、少しぐらい会話したっていいじゃありませんか」

 

「……分かった。イザヤ、何か聞きたいことはあるか?」

 

「では、達也先輩の好きな女性のタイプなんですか?」

 

達也は予期しなかった質問であった。深雪は泉美と対話を弾ませながら、イザヤの言葉に耳を傾けていた。

 

「なんだその質問は?」

 

「いやー、僕ら高校生ですよ。好きな女性のタイプを語り合うぐらいなんて自然なことでしょう」

 

「自然なことなのかもしれないが、なぜ今なんだ?」

 

「咄嗟に思い浮かんだからです」

 

イザヤはニコッと達也に笑いかける。それを聞いていた深雪も

 

「知りたいですね、お兄様の好きな女性のタイプは」

 

深雪も達也に笑顔を見せる。しかし、その笑顔が少し怖いと思ったのは言わないでおこう。

 

(コイツ、絶対わざとだ)

 

達也は心の中で舌打ちした。達也は横の水波を見ると、彼女も自分のタイプが気になるのかジッとこちらを見つめていた。

 

(助けてくれてもいいのに)

 

なんて思いながら、

 

「それを言うには、イザヤ。まず、お前から言うのが筋なんじゃないか」

 

達也はイザヤにお前が言えとバトンを渡す。

 

「そうですね、僕は深雪先輩のような人がタイプですね」

 

「「「「え!?(なに!?)」」」」

 

イザヤ以外の四人が同時に驚いた。深雪もまさか自分が言われるとは思っていなかったので、不意をつかれた。

 

「イザヤ、お前は深雪が好きなのか?」

 

この瞬間、達也のイザヤに対する警戒度がMAXまでに上昇した。さすがのブラコンお兄様である。

 

「ええ、もし可能であるならばお付き合いしたいぐらいです」

 

「深雪はお前にはやらん」

 

「お兄様!?」

 

お前に娘はやらないという父親のような発言を達也はイザヤに言った。その言葉に深雪は顔を赤くする。

 

「ハハハ、こんな妹大好きお兄様がいたら、他の男どもは手を出すことさえ不可能ですね」

 

「お兄様、私のことをそんな風に思っているだなんて」

 

深雪は顔に手を立てて体をクネクネし出した。

 

(これは重症だな)

 

イザヤはそう結論付ける。

 

「イザヤ、お前に話すことが増えたようだ」

 

(こっちも同じか)

 

その後、また色々あって食べ終わったのが席についてから三十分後であった。

 

 

 

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