魔法科高校の後輩   作:パクチーダンス

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少な


第八話 とある休日 七草姉妹の場合

 とある休日、七草三姉妹は渋谷副都心でショッピングをしていた。彼女達の年頃になると、お化粧やお洋服にも興味が湧いてくる。出掛ける事になったのは、最近できたばかりのファッションビルに行って、お洋服を見てみたいと真由美が言ったのが発端である。

 

そして今、三姉妹は水着売り場で真由美に合う水着を選んでいた。本当は、風通しの良いカジュアルな服を見て回るつもりだったのだ。しかし、三姉妹はの一番下によって、いつの間にか布面積が少ない服を選ぶように誘導されていた。

 

(まったく、泉美ちゃん策士だわ)

 

真由美は試着室の中で泉美の策略にまんまと嵌ってしまったと思った。

 

「お姉ちゃん、まだかかるの?」

 

試着室の外から香澄が催促する声が聞こえてくる。

 

「ちょっと待って、香澄ちゃん。もう直ぐだから」

 

「お姉さま、次は黒の水着を着てください」

 

外からもう一人の妹、泉美の声が聞こえてくる。

 

(完全に私、着せ替え人形ね)

 

自分が遊ばれている事を実感しながら、たまにはこうして、姉妹仲睦まじく買い物できる事が嬉しく思う。去年は、真由美が三年生で生徒会長をしていた事もあり、あまり時間を作る事ができなかった。

 

加えて、『灼熱のハロウィン』、横浜中が戦場と化した歴史的事件。あの事件のせいで一時期、まともに外出する事もできなくなった。

 

(だから、今この瞬間を楽しまなくちゃね)

 

そんな事を思っていると、なんだか外が騒がしくなっていた。香澄や泉美が何やら騒いでいる。

 

「二人とも、何を騒いでいるの?」

 

何を騒いでいるのか分からなかった真由美は、二人を叱るべく扉を開けた。するとそこには、

 

「………お久しぶりです、七草先輩」

 

司波達也が立っていた。

 

「達也くん、え?、なに?、どうして?」

 

達也に水着姿をはっきりと見られている状態である真由美、そのことを理解したのか、

 

「なっ………え………と………」

 

「落ち着いてください、七草先輩」

 

真由美は勢いよく扉を閉めて、

 

「きゃーーーーー!!!」

 

試着室の中で大きな叫び声を上げたのだった。

 

 

 

 ところ変わって、ここはファッションビルの中にある喫茶店。テーブルを囲んで座っているのは、司波達也、司波深雪、七草真由美、七草香澄、七草泉美。

 

「何があったのかと思いました」

 

「ごめんなさい、お騒がせしました」

 

深雪の言葉に真由美は身を小さく丸めて謝罪を述べた。

 

「私がお兄様をあのような場所に連れて行ったばかりに、とんだご迷惑を」

 

「いや、謝らないで、深雪さん。何も‥裸を見られたわけじゃないのに。あんなに悲鳴をあげてしまって……ごめんね達也くん」

 

この場合、彼女が傷付かず無難な言葉としては、

 

「いえ、無理もない事だと思います」

 

達也にはこれしかなかった。しかし、一人だけ不服を感じている者が一人いる。七草香澄である。香澄はいまだに達也を軽く睨んでいる。達也が真由美に羞恥心を抱かせたことに怒っていた。一方、泉美は深雪に夢中であった。

 

(ああ、深雪先輩、今日もお美しい)

 

それに気がついたのか、深雪は泉美にニコッと微笑む。

 

「深雪先輩、この後、どうされる予定ですか?」

 

「もう少しお洋服を見て回るつもりよ」

 

「なら、ご一緒してもいいですか?」

 

いつもの冷静な思考がどこか遠くて飛んでしまっている泉美が買い物の同行を求める。しかし、

 

「泉美ちゃん、余所の邪魔をしてはダメよ」

 

真由美は泉美を注意する。それぞれのプライベートがあるのだからと。姉に叱られて、泉美は冷静さを取り戻す。

 

「すみません、深雪先輩」

 

「いいのよ、泉美ちゃん」

 

深雪は泉美にそう返答する。

 

「それでは、俺達はこの辺で」

 

そうして、達也と深雪は喫茶店を出ようとした時、客が一人扉を開けて入ってきた。

 

「いらっしゃいませ、お一人ですか?」

 

店員がその客を近づいて、客に尋ねる。

 

「ええ、一人です。奥のテーブルいいですか」

 

その客は座りたい席を指さして店員にそう聞くと、そのままテーブルに案内された。

 

「イザヤ?」

 

達也はその客の名を呼んだ。

 

「え、達也先輩?それに深雪先輩も、泉美ちゃんと香澄ちゃん、それに七草真由美さんまで」

 

イザヤは達也達がいた事に驚いていた。

 

「みんなで仲良くお茶してるんですか、僕も混ぜてもらってもいいですか?」

 

イザヤそういうと、自然と泉美の横に座り、アイスコーヒーを注文した。

 

「あの、あなたは?」

 

唯一、イザヤと会った事のない真由美が尋ねる。

 

「ああ、初めまして七草真由美さん。僕の名前は折紙イザヤです。あなたの妹さんにはお世話になっていますよ、特に泉美ちゃんの方に」

 

「そうなの?泉美ちゃん?」

 

「ええ、いつも振り回されています」

 

真由美は泉美が、この折紙イザヤという男には何処となく気を許している、そんな感じがしていた。

 

「イザヤ、俺と深雪はもう喫茶店から出て行くつもりなんだ」

 

深雪も達也同様イスから立ち上がり、帰ろうとする。

 

「え?もう帰るんですか、そんな寂しい事言わないで下さいよー、もう少し僕とおしゃべりしましょうよ」

 

イザヤは達也と深雪にイスを指さして座ってくれとお願いする。

 

「いや、俺たちはこの後用事があるんだ」

 

「その用事よりも、もっと面白い事があるんです。だから、少しお話ししません?」

 

達也はイザヤの言葉に訝しむが、数秒悩んだ後に

 

「わかった、少しだけだぞ」

 

達也と深雪はそれぞれさっき座っていたイスに座り直した。

 

「それで、話とはなんだイザヤ?」

 

「……そろそろ、九校戦が始まる頃ですよね?」

 

イザヤはそう達也に告げる。

 

「……そうだな、毎年八月に魔法科高校同士の対抗戦が行われる。それがどうした?」

 

「その九校戦に良からぬ事を企んでいる人がいるんですよ」

 

「良からぬ事だと?」

 

イザヤの言葉に達也は眉を顰める。それと同時に、この話を七草姉妹がいるこの場所で話していい物なのかどうか、達也は真由美達の方を見る。

 

「良からぬ事とは、どういうことですか?イザヤ君」

 

泉美は横からイザヤの言葉を聞いて、そう質問する。

 

「具体的な事は僕もわかんないんだよねー、ただその良からぬ事と九校戦に出場する生徒をぶつけるようです」

 

イザヤが注文したアイスコーヒーが届き、グラス半分まで飲んだ。

 

「……それは、何処の情報だ」

 

達也は少し踏み込んだ話をする。その情報源は何処からなのか。彼の後ろには誰がいるのか。

 

「僕ですよ、僕が調べました」

 

「……」

 

達也はイザヤの目をじっと見つめている。

 

「あ、その目、信じていませんね。やだな、僕が嘘をつくわけないじゃないですか」

 

「いや、平気で嘘つきますよ、イザヤ君は」

 

横の泉美がイザヤに反論した。

 

「ちょっと泉美ちゃん、少しだけお口チャックしててね」

 

イザヤはニコッと笑い、泉美の口の前に親指と人差し指を持っていき、何かをつまむ形で線を引くように横にスライドした。

 

「!?」

 

泉美は上唇と下唇がピッタリとくっついて、喋ることができなくなった。

 

「……今のは、魔法か?」

 

「ええ、僕のBS魔法です。なかなか面白いでしょう?」

 

口に手を当てながら、モゴモゴと言っている泉美を放っておいて話を再開した。

 

「なぜ俺にその情報を伝えるんだ?」

 

「どうせ先輩、深雪先輩に危害が及ぶのなら、平気でどこへでも首突っ込んで対処するでしょう?だから、あらかじめに教えておいたんですよ」

 

「………そうか」

 

もし深雪に何かあったら、達也は自分を許せなくなる。自分はガーディアンとして深雪を守らなくてはならない。もちろん、ガーディアンとしてだけではなく、たった一人の妹のために兄は頑張るのだ。

 

「情報提供に感謝する、イザヤ」

 

「あまり中身のない情報でしたけどね」

 

そう言って達也と深雪は今度こそ喫茶店から出ようとする。

 

「お会計は俺が出します」

 

「いえ、達也君。私が出すわ」

 

「それには及びません。ここは俺が奢らせてください」

 

「……わかったわ。ありがとう達也君」

 

「先輩、ゴチです」

 

お会計を済ませたのち、達也と深雪は喫茶店を後にした。

 

「さて、もうしゃべっていいよ。泉美ちゃん」

 

そう言ってイザヤは泉美の口の前に親指と人差し指を持っていき、さっきと同様な動きを見せた。

 

「イザヤ君、よくも私の口を塞いでくれましたね!」

 

「そんなカリカリしないでよ、泉美ちゃん」

 

「もう、あなたという人は!」

 

泉美はイザヤにひどくお冠である。

 

「ねえ、イザヤ君。イザヤ君は何しにこのファッションビルに来たの?」

 

今まで黙って聞いていた香澄がようやく口を開いた。

 

「服を見に来たに決まってるじゃん。なに香澄ちゃん、僕が先輩達を待ち伏せてたとでも言いたいの?」

 

「まあ、そんな感じ」

 

「さっきも言ったけど、本当に偶然だったんだよ。嘘じゃないさ」

 

イザヤはニコッと香澄の方に笑いかける。

 

(なんか胡散臭いな)

 

香澄はイザヤに疑いの目をかける。

 

「そんな目しないでよ、僕悲しいな」

 

イザヤはシクシクと泣き真似をするのだった。

 

「あの、イザヤ君」

 

さっきまでお冠であった泉美が落ち着きを取り戻し、イザヤに尋ねる。

 

「さっき言っていたことは、大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫さ、問題ない。達也先輩に任せておけば全て済むよ」

 

そう言ってイザヤは、残ったアイスコーヒーを全て飲み干した。

 

「あの、折紙君」

 

「イザヤでいいですよ、真由美さん」

 

「もしよかったら、イザヤ君と妹達はどうやって知り合ったのか、少し聞きたいわ」

 

「ええ、時間がよろしければ少しお話ししましょう。あれは、泉美ちゃんが僕に平手打ちをした時から始まりました」

 

「……そんなことしていません」

 

イザヤの冗談から始まり、七草三姉妹と談笑を開始した。

 

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