月星陰り、空晴れり   作:ハイカスカス

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周年、始まりましたね。ケイちゃんがみんなと笑って過ごしてるだけでもう…感無量なんじゃ…
本作時空におけるデカグラ?うーん、現状だとヒマリとリオのケセド攻略がかなりガチ寄りになるぐらいですかね?ヨウコの怪我の原因はあの辺に押しつければいいかって考えてるので。

アンケートは終了しました。みんなアサルトライフル好きすぎない?あと個人的に火炎放射器に6票も入ってることが驚きなんだけど。
設定とか練った結果、予定通りにいけばあと4話ぐらいで終わる可能性があります。というかこの作品、終わるんですかね?



明星は落日と消えた

 

「“わざわざありがとう、ヒマリ。行ってくるよ”」

「ええ。この程度であれば私にお任せください」

 

手を振って訪ねてきた先生を見送った。今ヨウコが居るのは一般病棟なので大丈夫だと思いますが、一応、というやつです。

…さて、今日もヨウコのお見舞いに行きたい所ですが、今日は別件で行かなければならない場所があるのです。

防寒着を一応車椅子に積み込み、早速校舎を離れます。

一度公道の方に出ればいつもと変わらぬミレニアムが広がっている。空に浮かぶ広告に、地面を走る車。橋を渡るモノレール。この景色を破滅から守った…と言えば聞こえはいいでしょう。

しかし…いえ、今考えるべきはそれではありませんね。今は、とにかく目的地へと向かいましょう。今、どうにもならない感傷に浸るのは、その時でも充分です。

 

そうして上の空のまま街中を走っていると、見覚えのある後ろ姿を見た。そのまま速度を上げて話しかける。

 

「この辺りで見るのは珍しいですねトキ。お散歩ですか?」

「まあ、そんなところです。見たところヒマリ部長はお見舞い…ではありませんね。病院は反対側ですし」

「今日はゲーム開発部の子達がお見舞いに行くそうですから。今日は別件です。トキも一緒に来ますか?」

「では折角ですし行きましょうか。付き添いをするのも立派なメイドの仕事です」

 

そのまま先導して目的地へと向かう。右へ、左へ。直進、静止。頭の中の道案内に沿って進む私についてくる内に、トキも私の目的地が分かったようで横に並ぶようになりました。流石に、分かってしまいますよね。

 

ああ、これも仕方がないことなのです。いくつかの雑談を交わしている内に、こんな邪な考えが頭の中で浮かんでは消えていくのも、仕方がないことなのです。

こんな澄み渡った青空が広がるいい天気で。こんなに鬱陶しい喧騒が広がるこの街道で。こんなに美しい花が咲き誇る花壇の横で。

…こうして私の隣で歩いているのが、トキではなくヨウコ。あなたであればいいなと、思ってしまうのです。

 

不埒な考えです。とても浅はかです。しかし、私はずっと、こうして誰かと誰かを重ねてしまうのです。私と向かい合うのなら、偏屈で面倒で、それでいて私のライバルである彼女のことと。私の隣で歩くのなら、人一倍優しくてお人好しで、それでいて私とあの女を繋ぐ架け橋のようであった彼女のことと。

 

本当にいけないことです。今居る人間に、既に居ない人間を重ねるなんてことは。

少し手を撫でるように動かせば、2人の頬の感触が簡単に思い出せます。少し耳を傾ければ2人の声が聞こえてきます。瞬きよりも一瞬長く目を閉じれば、2人笑う姿が見えます。

全てが嘘です。全てが過去です。…いつまでも続くと思っていた、戻ることのない虚構です。

 

分かっていても、止められない。そういうもの…と、今の私にはそう受け入れるしかないと考えることとしています。

もはや何度も繰り返しいたちごっことなった思考に切りをつけて顔を上に向ければ、トキの思案顔。何かあったのかときょとんとしていると、一言。

 

「先程から俯いてばかりですが、体調は大丈夫ですか。優れないようであれば介抱しますが…」

「いえ、大丈夫です。少し昔のことを思い出していただけですので」

「ふむ…そうでしたか」

 

であれば私と同じですね、と繋げて私達の間にはまた静寂が横たわってしまいました。

 

ああ、ただ気不味いです。そんな空気感のまま、目的地まで進んでいきました。

 

 

 

 


 

 

 

 

「着きました」

「リオ会長のセーフハウスの一つ…ですね。それもヨウコ先輩が収容されていた」

「ええ。遺品探しといったところです。彼女のことですし、回収できる物は回収しているでしょうが。破棄…はさすがにしていないでしょう」

 

以前、ヨウコのことを回収した元セーフハウス。最初に入った時以降に足を踏み入れた人物はおらず、本格的な探索をするのは事実上私たちが初めてとなる。

ドアを一度開けばあの時と同じような景色が広がっている。とはいえあの時は若干錯乱していましたし、いつの間にか眠ってしまっていたので記憶が不確かではありますが…

 

「やはり、身元、居場所が分かりそうな物は大方回収されていますね。間取りは頭に入っていますが、この調子だと物資保管庫などはもぬけの殻でしょう」

「おや、トキはこちらに来た経験が?」

「はい。基本的に世話は機械が行っていましたが、時折私がここに来て介助をしていましたね。機械だけでは限界もありますし」

 

なるほど、と口から漏れるとともに、思案顔になる。

まさかトキは、こうなる前からヨウコのことを知っていた…?

 

「友人関係でしたよ。勉強を教えてもらうこともありました」

「ナチュラルに思考を読んでいませんか?」

「読んではいません。ただこんなことを考えていそうだな、と思っただけです」

 

あ、そこ段差危ないですよ。と続けて注意を促すトキの後ろを付いて歩く。やはり定期的にここに訪れていたというのは嘘ではないらしい。

追従をしながらも周りを見渡せば、やはり生活感が無い。回収された…というよりも、置く必要が無かったのだろう。ここで生活していた人間は、眠り続ける麻空ヨウコただ1人しか居なかったのだから。

 

「…おや?」

 

ふと横に目を向けると、この空間で一際異彩を放つ物品が置いてある。本来、普通の部屋であれば置いてあってもあまり違和感を感じないような物が。

…ハンガーにかけられた血まみれの制服。そして、その横にて立てかけられている銃。本来かけられるべき高さよりも少し低くしているのは、車椅子の関係で少し目線が低い私の目に留まりやすいようにといういらない気遣いからでしょうか。…そんな気遣いがなくとも、私がいの一番に気づくことなんて分かり切っていたでしょうに。

 

車椅子をそちらに動かして制服を手に取れば、懐かしい温もりがどこかから感じられた。

…しかし、痛々しい。制服も無事な場所を探す方が難しいのではないのでしょうか。

彼女が自慢してきた真っ白な制服のシャツは、焦げるか赤いか。焦げて黒いのか血が乾いて黒いのか、もう見分けがつかない。上着として好んで着ていた黒い制服は、もう服としての体を成していません。そのどちらも背中側は血溜まりに倒れていたのか赤黒いままで、袖も乱雑に引きちぎられたのかボロボロです。

…今思えば、ユウカが黒い制服を着ているのも、ヨウコの影響を多少なりとも受けているのかもしれませんね。

 

一度ため息を吐いて視線を銃に移します。やはり、そちらは見慣れているもの。少し特徴的な形状でブルパップ方式のアサルトライフル。一見無骨なように見える塗装の中には差し色として私達3人の色が入れられています。緑、青、赤。しかし記憶の中にあったはずの赤色は、綺麗に消されていました。…決別の証、とでも言うのでしょうか。ええ、気に入らない。本当に気に入りません。勝手に自分1人が抜けようとしていることも、何も知らないはずの友人のことを考えない出奔も。全てが気に入りません。

そこ以外はしっかりと手入れはされていたからか、制服のように血がべっとり付いたままではないです。塗装は丁寧に磨かれ、誤作動が無いようにしっかりと点検されています。主人がいなくてもこの磨かれよう。やはり、リオが手入れをしていたのでしょうね。

 

懐かしいです。エンジニア部が作った暴走機械をこれ片手に制圧したり、3人で武器の手入れをしたり。今思えば、戦闘はヨウコに任せっぱなしでしたね。私はこの身体ですから戦闘は御法度ですし、リオはお世辞にも運動神経がいいとは言えませんから。…ええ、忘れられるはずがありません。あんな楽しかった思い出をそう簡単に捨てられたなら、苦労はしないのです。

 

「あなたも、頑張ったのですね」

 

銃の背を少し撫でる。きっとこの銃も、主人を守るため最後まで戦ったのでしょう。それが実ったかどうかは別の話ですが、彼女の隣で精一杯やっていたはずです。

 

Intermediary(仲介者)。私達の関係を皮肉ったのかそう名付けられた銃は、今の私とリオの関係をも写し出しているように見えてしまう。

いけない。 変な方向に思考が向かってしまう。

 

それにしても、ヨウコの使っていた銃はもう一丁あったはずなのですが見当たりませんね。…まあ、いいでしょう。ああも色々と余計なものが入ったものがあっては、私がどうなるかも分かりません。きっとリオが処分してしまったのでしょうが…少し、悲しくなってしまいます。

 

「おや…また、懐かしいですね」

「トキですか。何か他にめぼしい物はありましたか?」

「いいえ、特には。おそらくその銃と制服しか遺っていないかと」

「…そうでしたか」

 

少しの静寂の後、トキはまた口を開きました。その口調は昔を懐かしむようです。

 

「あの時、いつも通りにリオ様の下へ向かった私は、少し特殊な指令を受けました。とある荷物を特定のセーフハウスへ運んでほしいと。そうして受け取ったものは、人の背丈ほどの大きさのある一般的なコンテナでした」

 

流れるような口調で、語り続けていきます。

 

「輸送は無事に終わりました。独自にミレニアム全域へと張り巡らされた交通網がありましたので。…指令はそこまででした。あとはAMASで作業を引き継ぐから、帰還してくれて構わない、と。しかし、私は好奇心に負け、開いてしまいました」

 

 

「パンドラの箱を…ですか?」

 

 

「…はい。あの時は、まだ施術が終わってすぐでしたので、生々しい傷跡が目立っていました。あの人の私は、激情を抑えられず…」

 

「もう結構です。それ以上を無理に声に出す必要はありませんよ」

 

泣き始めてしまったトキを宥める。背中に手を回し、ゆっくりと優しく抱きしめるようにします。トキもそれに合わせて膝立ちになってしまいました。私のブランケットに顔を埋め、声を上げて泣き始めてしまいました。

……当然といえばそうなのでしょう。お世話になった先輩の変わり果てた姿なんて、見たくないに決まっています。増してそれを一年も見続けて、ほとんど泣くことも許されなかったとなれば、今ここで感情が爆発してしまうのも当然。

………かくいう私も、この事実を突きつけられた時はわんわんと泣き喚きましたから、トキが泣くのも当たり前です。

 

 

トキの頭を撫でながら、改めて制服を見遣ります。穴だらけ、血だらけ、煤だらけ…その痛みを思えば、苦痛を思えば…なぜ私がのうのうとミレニアムでの生活を謳歌できていたのか、疑問だけが残ります。その一端でも私が味わうことができればどれだけ救われることか。自分勝手な考えで、ヨウコがそんなことを望んでいないと分かっていても思ってしまうのです。

誰か、私を罰してください。親友に何もできない私を。親友の命の危機にすら気づけない愚かな私を。対等な人を2人も失ってしまった私を。

…何もできない、私を。ヨウコでも、リオでも、チーちゃんでも、先生でも。誰でもいいのです。誰か、ここで止まっているしか能のない私を、誰か裁いてくれませんか。

私が背負った重い重い十字架は、一体全体どこに下ろせばいいのでしょうか。

いつか、この重荷を下ろせる時が来たのならば…その時はきっと、ヨウコが目を覚ました時なのでしょうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トキが元の調子に戻って解散した後、自宅に戻り今日の成果の整理を始めました。整理といっても、ぼろぼろの制服とヨウコの愛銃だけ、ですが。

制服は畳んでしまい込み、銃は磨いてラックに立てかける。これで十分です。

 

窓際に車椅子を寄せ、なんとなく空を見上げる。空一帯は雲に包まれてしまいました。夕方までは晴れていたはずなのですが…まあ、自然というのは得てしてそういうものです。

一度自分の爪を見て、また空を見上げる。そこには空も星も見えず、美しい朧月だけがぼんやりと輝いていました。





Intermediary
モデル/ステアーAUG
武器種:AR
仲介者の名を冠する麻空ヨウコの愛銃。ペイントは比較的落ち着いたものではあるが、ヒマリの水色、リオの赤色、そして彼女自身を表す緑色の塗装がそれぞれ差し色として施されていた。現在リオを表す赤色は調月リオが消したためか無くなっている。

本話で描写された制服は、ユウカのような黒いタイプのスーツとシャツ、水色のネクタイが近いと思ってください。リオのは微妙にデザインが違うので。


作者がお絵描きを始めたので、練習を兼ねてヨウコのビジュを出す…かも?
また、それに伴い第二話の麻空ヨウコの身体描写を変更しました。
『義眼が嵌め込まれていない方の目を見れば、きっと美しいブラウンが出迎えてくれるだろう。』

『義眼が嵌め込まれていない方の目を見れば、きっと美しいグリーンが出迎えてくれるだろう。』

亜麻色の髪+ブラウンの眼はあまりに地味すぎてな…会長と全知の間に挟むと見劣りしそうな感じがしたんや…申し訳ないやで

あと割とマジでヨウコの処理に困ってる。一体全体どうしたものか。

過去、麻空ヨウコが使用していた武器種は?(お気軽にどうぞ)

  • AR(アサルトライフル)
  • SR(スナイパーライフル)
  • HG(ハンドガン)
  • SMG(サブマシンガン)
  • MG(マシンガン)
  • SG(ショットガン)
  • RL(ロケットランチャー)
  • GL(グレネードランチャー)
  • RG(レールガン)
  • FT(フレイムスロワー)
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