月星陰り、空晴れり   作:ハイカスカス

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お久しぶりです。
遅れた理由ですが、軽い気持ちでブルアカの広告パロを作ってようつべに投稿したらバカみたいに伸びやがりましてそれ関連で色々やってたら遅れました。ハサウェイの映画見た後深夜テンションで作った動画があんな伸びるなんて思わんやん普通。




新月は群雲とともに

 

私が各地のセーフハウスを転々とするようになって、大体1ヶ月。トキが居なくなってAMASの駆動音だけが私の居場所に響くようになって、大体1ヶ月。

薄暗い部屋は出入り口から光が漏れ出ており、慣れていなければ不気味さが感じられるだろう。

 

物寂しく感じていたこの静けさも慣れてしまえば案外悪くないもので。かちゃりかちゃりと自らの愛銃を手入れしながら思考を回していた。

 

トキは置いていってしまったけれど、元気にやっているかしら。ヨウコに取り付けていた機器の手入れはきちんとされているのかしら。チヒロ、随分思い詰めていたみたいだけど大丈夫かしら。ヒマリ…は、まあ元気にやってるわよね。

 

弾倉、スライド、銃口、セーフティ。一通りチェックして組み立て直す。そのままホルスターに仕舞い込んで、おしまい。そのままもう一丁を取り出して机に出す。

 

そう、もう一丁。キヴォトスにおいてサブアームを持つというのは比較的珍しい。基本的に自分の愛銃というものは一つであり、それ以外はもしも壊れた時の予備という考え方の生徒が多く。私やヒマリのように戦闘が本分ではない場合はそもそもそういった物すら持っていないという者も少なくない。

そう、これは私の物ではない。ではこの銃は誰の物か…はっきりと言ってしまえば、ヨウコの物だ。なぜ、これだけは私の手元に置いておきたかったのか。

…多分、これだけは渡したくないという私の醜いエゴなのだと思う。そうやって自罰的になっていないと狂ってしまいそうだから。

 

汚れも故障も起きるはずが無いのに、こうして分解してしまうのは何故だろう。誰も使わないのに。私以外に誰も触れることはないはずなのに。何も、あの時から変わらないはずなのに。

 

本当に、分解して、戻すだけ。拭き取るほどの脂分はついていないし、稼働はオイルを刺さなくても問題はない。

 

多分、時間が欲しいんだと思う。過去に浸れる時間が。こうして、あの時に戻った気ができるこの作業をしているとあの人達が近くに居てくれる気がして。横からあの人が声をかけてくれるような気がして。

 

そんなはずはないのに。

 

『ねえ、リオ』

 

あるはずが、無いのに。

 

『どうして、私を見捨てたの」

「っ!?」

 

隙間から光が漏れ出ている扉が開き、影が見える。輪郭が定まらない。ああ、だがこれは、間違いない。あれは、朝空ヨウコだ。

 

「なにを…!」

「じゃあ、どうしてリオは私をヒマリ達に押し付けたの?ヒマリなら、ウタハなら、チヒロなら…あなた以外の誰かなら、できると思ったの?」

「あなたは、誰…?」

「それで、負債を押し付けて自分はここでのうのうと生きていて…なんというか、お気楽だねえ」

 

こちらに近づきながらゲラゲラとノイズ混じりの笑い声を上げている。

 

「私だって、あなたのことを」

「どうにかしようとしていた…でしょ?1年丸々1人でやろうとして?私の可愛い後輩も巻き込んで?それでいて結局どうにもできず、なんて」

 

顔も見えなかった影の輪郭が、段々と崩れ始める。

 

「そう。お前(自分)が悪いんだ』

 

視界が歪む。空間が解らなくなる。ここがどこだったのかすら、目に入らない。

 

『私がこんな姿になったのも、大切な青春を奪われたのも、ぜんぶぜんぶ、ぜーんぶ』

 

右目が転げ落ちる。左腕が砕け散る。左脚が溶け出す。ねじれて腹が裂け、人の形がおかしくなっていく。

あの時廃墟で、見た…

 

『ああそうさ。お前が悪いんだ。私が苦しんで苦しんで苦しんだ分…お前も苦しめ』

 

「っ、!!」

 

手元にあった銃を抜いて、1発、2発、3、4、5…がちゃりがちゃりと弾切れの音が鳴るようになるまで一心不乱に撃っていた。いつの間にか、黒い影は消えていた。

 

狭くなりきった視界で辺りを見回す。そこには、いつも通り変わらぬセーフハウスと新しく五つの抉れた…いや、貫通してできた穴が空いた扉があった。

 

未だに震えが止まらない脚で、扉に歩み寄る。穴の向こうは、廊下から漏れ出る光でよく見えない。でも、そこに彼女が居ないことだけは確かな事だった。ドアに寄りかかるようにして座り込む。

 

静かだ。ついさっきまで銃声が響いていたとは思えないほどに。あの不快な声も、もうしない。その静けさと孤独感が、ただひたすらに心に刺さっている。

 

「…もう、いや」

 

私を責め続けていたあの声ですら、この場所では欲しくなってくる。

未だに銃口から煙を上げ続けているヨウコのリボルバーを見ながら、ただただ黄昏ていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「リオー、たすけてー」

「藪から棒にどうしたの。課題は終わったって昨日言ってたけど」

「ちーがーうー。設計とかそっちの方だよ。リオはそっち方面は得意だったし教えてよー」

「はいはい。分かったわ。椅子を用意してくるから待ってなさい」

 

「…あら、ヨウコ。どうかしましたか?また何か分からない場所でも?」

「お、ヒマリじゃん。…でも、今聞きたいのはヒマリの専門外なんだよね」

「なるほど。理解しました。だからこそリオが来るのを待っている、と」

 

「待たせたわね…あら?ヒマリは機械工学は専門外だった記憶があるのだけれど」

「ふっ、何をいうのですか?この超天才清楚系病弱美少女に“専門外”などという言葉は無いのですが…」

「だとしても私が教えた方が合理的よ。そもそも貴女がこういった物を作り上げた記録は無かったはずなのだけれど」

「あーもう2人とも落ち着いてって!とりあえずこれ終わらせてからにしてー!」

 

 

 

 

 

 

「終わった…」

「お疲れ様。あとは提出すれば終わりね」

「ええ、それに関しては遅れないように…さて、本題です。こちらをどうぞ」

 

「おお!まさか、誕生日プレゼント!?」

「リオ“が”どうしても贈りたいと言うので…」

「…ヒマリも割とノリノリじゃなかったかしら?」

「だまらっしゃい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、いたいなあ。なんでこんな場所にいるんだっけ。

 

もう、わかんないや。

弾、残ってない。身体、ぼろぼろ。もううごけそうにない。

声を出したら、誰か助けてくれるかな。いたいの、やだなあ。もう、楽になった方が、いいのかな。

 

「だれか、たすけて。リオ、ヒマリ…ウタハ、チーちゃん…たす、け」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後、AMASが到着した。

 

 

 





Triangle
モデル/RSh-12
麻空ヨウコが誕生日プレゼントとしてリオとヒマリから贈られた拳銃。サブアームとして携帯しており、あまり使われる機会は無い。しかし、この銃は彼女達3人の間に確かな友情が存在していた証左であった。
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