異世界で百鬼夜行とスローライフをしたかった〜妖怪が絡むなら行きますけど人絡みは辞めてください〜 作:紡縁永遠
「男爵家以上の子弟は助けてあげましょう。それ以下の騎士家の子弟に興味はありません。亜人の奴隷も同じです。もちろん、この飛行船も船員も必要ありません」
ずいぶんと、加減しているな。まぁ貴族がいれば人質としては十分だろう。けど周りはだめだな、己の保身で手一杯みたいだ。
大半が絶望した表情をする中、安堵しているのはAクラスの生徒たち、亜人種たちは何か文句を言いたそうにしていた。
その中で女子の一人が、
「ま、待ってよ! 私の専属使用人は助けてよ!」
そんな女子に使者は侮蔑した態度で答える。
「ならば貴方は愛人と一緒に沈みなさい。奴隷付きの人質など面倒なのでね。まぁ、貴族としての心意気を見せるのなら、ここで沈んだ方が良いでしょうけどね。もっとも、腑抜けた王国の貴族では無理でしょうが」
ずいぶんと嫌なことを言う、自分とそのおまけなら自分を撮るのが一般だろうに。
「待ってください!」
「なっ?!」
なんで、グラディウスは止めなかったのか?
「誰です?」
「リコリス・ヘラ・ジュピター名前、いえ、家名ならあなた方も知っているでしょう」
止めていなかったのか……ミドルネームあったんだな。けどまずいな、最悪大半の貴族が切り落とされる。
「まさか第一皇女が乗っておられるとは……王国は本当に間抜けですね。そんな大事な人物を護衛もなしに旅に出すなんて」
「おい!武器から手を離せ!」
「……」
使者、一名、その護衛三名、コイツラは殺れる、あとはリコリスさんと使者の間の距離をどうするか。
「武器を下ろしなさい!フェイト・ストレンジ、ならびにエリス・ストレンジ」
「断る!」
「友人ですか?」
「護衛です……これは命令です、武器を下ろしなさい!」
「……ちっ!!」
なんで止められなきゃならない、ここでの行動一つで何人死ぬかわからないんだぞ……
「さて、そんな貴方がどうして名乗り出たのでしょう? もしかして、私たちがその名にひれ伏すとでも?」
「そうは思いません」
「「…………」」
ああ、この状況で名前は意味をなさない、
「随分反抗的な目ですね、黙らせておきなさい」
とんだクズどもだな、まさか敵国の言いなりになるとは、少しでも動けば拳が飛んでくるな。
「相手国の王族に価値はないとは言わせません、私一人を人質にし、皆の命を助けなさい」
「良い心がけです。まぁ、後は戻ってからお話ししましょう」
作ったような笑顔気持ち悪いな。最悪だ生きて帰れたとしても首が飛ぶな。
「お前らのせいで全部無駄になるところだっただろうが」
「この成り上がりの馬鹿貴族が」
「おい、船員。こいつを牢屋にでもぶち込んでおけ」
本当にバカかよ、コイツラ、ビオラさんとグラディウスは多分後で来るな。管狐で連絡は取り合えるからいいとして、後はどう脱出するかか、
―――――――――
「久しぶりね、といっても、互いに挨拶しかしていないけど」
「……今回の一件、ただでは済みませんよ、王国と小競り合いをするなら覚悟をしてください、国力差を理解していないわけではないでしょう」
毒の無い紅茶、煌びやかな部屋、貴賓室ね。それでもかなりの騎士の数、脱出は無理、それでも王国と公国にある国力差はかなりのもの、ここ数ヶ月で噂がたったなら、互角にはできないはず。ストレンジ家の警戒心は高すぎるから。
「あら、外を見て気づかない?国力差なんて今は関係ないのよ」
「魔物を操る術……それだけで勝てるとお思いで?」
不敵な笑みが余計に不気味ね。何を考えているのかわからない。
「勝つわね」
断言したということはそれだけの力をつけているの……
「殿下、それよりもあの豪華客船ですが」
「あぁ、そうだったわね」
「私の身柄で見逃すはずでは?」
「それも考えたのだけど使者は見逃すと入っていないわ」
やっぱり他の家も人質に取るのね。多ければ管理も大変だけど抑止力にはなる……
「考えたのだけれど、貴方一人で十分ではないかしら?」
「――な!」
なんて暴論を…けどより私を傷つけれないはず。こちらもある程度の抵抗を視野に入れて。
「貴方が連れ去られるとき、抵抗したのは二人だったそうね? なんと薄情な貴族の子弟たちかしら。貴族としての気概もなければ正義もない。そんな者たちは必要かしら?」
「あ、貴方はは何を言って――」
「リコリス、貴方には全てを見て貰いましょうか。ここから王国が滅ぶ様を――」
死を伝えに使者が向かった……武器はない、けど騎士が持っている槍である程度は、武器を選ばないあの二人はやっぱり異常ね。
―――――――――
「……姉さん、いつ動く?」
「さぁ?どうせ使者がもう一度来るからそこから決めればいいんじゃない、」
姉さんと今後について話していると、グラディウスとビオラさんがこちらに来る。
「ストレンジ、先ほど使者が来た」
「待ってました、なんて?」
「人質は一人で十分、覚悟を決めろってさ」
「そうか…で何をしてほしいんだ?」
卑屈そうな目と期待の目いくらなんでも都合が良すごやしないかね。
「俺と君達で突破口を…「断る」なぜ!」
「なんで?たった三人であの包囲を抜けられるわけがないだろ。それになんで行かせたんだ?王国を憎んでいるアイツラに、現王位継承権第一位の皇女を渡せば、王国に対しての切り札に確実になる、それ以外の貴族はおまけにもなる、それに気づけなかったのはお前らだろ」
「それでも!」
まだ食い下がるか、
「……あぁ、そうだな。何も出来ない私たちは沈んで大地ではなく海に還るべきかも知れない。だが、それでも私はお前に頼みたい。可能性があるのはこの方法だ。頼む……私たちを助けてくれ」
「戦う気がないヤツらをお守りするほど、俺達はお人好しじゃない!」
「……すまなかった。邪魔をしたな」
去っていく二人の背中を見て僕は声を掛ける。
「お前一人で戦っても駄目だ。僕と姉さんとの三人でも駄目だ。だったら、全員でやるしかないだろうが」
「無理です、皆絶望して戦う気では」
「だったら説得しろ、さっきも言ったが、戦わないやつは置いていく」
使えないから頭を下げるだと?人の上に立つ人間なら、動かせ、使えない道具は切り捨てろ。
「全員纏めれば抜けられる」
「……わかった、いいだろう」
「方針は決まったね。じゃあそこどいて」
ガシャンっ
「いや、これ意味あるか?」
「しらん、蹴り一発で壊れる牢屋にも問題がある」
グラディウスが呼びかけて、船に乗った全員が集まった。僕と姉さんは、武器を持って動きやすい私服に着替えてある。軽いストレッチをしながらグラディウスの演説を聞く。
「今俺達が勝つには全員の力が必要と判断した。みんな力を貸してくれ!」
「五月蝿え!一年が指図すんな!」
「そうよ!だいたいアンタ平民に負けてた雑魚でしょ!」
明らかなる糾弾か、まぁ背で得力がなければそうなるよか。
三年生から一年生までいるこの状況、しかも、これから死ぬかも知れないのだ。普段の序列など何の意味もないと、あからさまな態度を取る奴もいる。普通クラスの男子たちが笑っていた。
「戦うだってよ。上級クラスの男子様は偉そうだよな。命令すれば誰もが言うことを聞くと思っているのか?」
「偉そうに命令しやがって」
「そもそもさぁ……そいつ、廃嫡されて何の権限もないよね?」
反論も多いし、こっちの話を聞いてない女子も多いし。奴隷と揉めてんのか。まぁこの国は奴隷という名の使用人の側面が強いからな。そこまで束縛力はないか。
「ちょっと言う事聞きなさいよ!」
「五月蝿い!さっき俺を見捨てただろ!」
さっき見捨てられた奴らか醜いな。
「グラディウス、もういいよ、説得する時間の無駄だ」
一気に視線が集まる。そりゃそうだ、生徒の中では今権限は誰よりも高いと言える。
「王位継承権第一位の皇女が向こうに行った時点で気づかない奴らにこれ以上何かを言う必要はない、せいぜいが騒いで野垂れ死ねってだけだ」
「ふざけんな!お前らの抵抗がなければこうならなかったかもしれないんだぞ!」
「そうか?正直この人数の貴族と皇女一人、皇女一人の方が抵抗された時のリスクも低い、それにな、宣戦布告されて自分だけ生きたいとか言ってんじゃないよ」
「偽物が何言っても知らねぇぞ!成り上がりが!」
「そうだな、成り上がりだ、俺は貴族として歴史も何もない偽物だ、でも、王国の騎士は貴族は、戦争で王家に貢献した者のだろう?今は戦争だ、戦争で活躍した貴族の血を引くはずのお前らが、守られているだけの人間の血を引く俺達より、臆病である理由はなんだ!
「貴族である誇りはないのか?
「ああ、それともお前らは貴族ですらないのか?」
こんだけ煽ってない動かないなら、見捨てる。切り捨てる。守る価値はない。
「貴族ですらないですって!それは最大限の侮辱とみなすわよ!」
「なら行動で示せ!口先だけの貴族ならここにゴロゴロいる、でお前は誰だ?」
「なっ?!私の名前を知らないですって?」
「知らないね、それに、今のお前に価値はあるのか?どんな名前であり、どの地位をかはしらんが、人質にされなかったお前に価値はあるのか?」
この状況で反抗する貴族、ビオラさん達の顔を見るにそれなりに地位が高いことはわかる、後は先導してくれればいい。
「我が伯爵家は公国相手に最前線で戦い、浮島も多く発見してきた伯爵家!名門中の名門の家!そこになおれ!無礼は許さないわ!」
「それはすごい、けどそれは過去だ、今はどうだ?かつて抵抗していた国に対して下手に出ているお前は先祖と対等と言えるのか?かつて優位にしていた国に対して怯えているお前らは!先祖がかつてしていたことをしていないと見える。俺は結果に尊敬はするが、それにすがるだけの人間は尊敬できないね!
「さっき、剣聖子息であるグラディウス・ゼウ・エクエスを廃嫡さらた権限のないものと罵った者のがいたな、公国と戦う意思を見せた!それに対してどうだ!皇女が身代わりになると効いて安堵して、それが一変、殺されるとなると分かれば、罵った。なんだ?何もしてないやつが何を言っている、我儘だなお前らは、」
「取り消しない!我儘であるなんて!」
「嫌だね!今は戦争だ!生きたいだけの人間は泣いてすがりつけばいい、どうせ捨てられるがな!
「生きたいなら戦え!戦いたくないのなら死ね!二つに一つだ!我儘なままに先祖に泥を塗り続けるだけのお前らと、戦う意地を見せた者!公国の使者は正しかったようだ、貴族としての気概もなければ正義もない、我儘しか言わない、最低な奴らだ!
「そういえば夏休みに、冒険者として名を聞いた者は片手で数えるほどだったな。それも全て廃嫡された者たちだ。
「さて、ここまで言われてまだ文句をいうか?狙うは敵の旗印、かつての先祖はそれを実現した!今の甘えらができないとは言わせない!できないというなら野垂れ死んで笑われろ!意地を見せる奴はいないのか!」
人を動かす時、理屈と誇りそして、動くだけの道理を作ればいい。先祖を敬愛し、尊敬し、冒険者として、戦争で生き残り今を作ってくれた騎士を、受け継いできたコイツラが黙っていられるはずはないよな。
「ふざけんな、この糞野郎が! お前に言われなくても俺は戦っていた! おら、武器を渡せ!」
1人が声を上げる。そうすれば、他の男たちも意地を見せる。プライドとはそういったものだ。
「普段からダンジョンで稼いでいる俺たちを舐めるなよ。お前はサボっていたけどな!」
「やってやるよ。こんな所で死ねるかよ!」
「お前よりも活躍してやるからな!」
「……ちょっと、なんで女子は誰も声を上げないのかしら?」
おお、やっぱり最初に反論しただけはあるな、女子の方はこいつに任せるか。
「さて、これだけ言ったのだから方法はあるのよね?」
「人質を取ってくるなら同じことをする、あっちは継承済みの人間だ、それなりに制限がこっちより大きい、正面突破で引きずり出すから、それまで船の警護をしてくれ」
「正面突破?!あなた正気?!」
「それ以外だと、この船を破壊して下で受け止めるって方法があるけど、飛行系統の守護獣はそこまでいないから無しだな、」
「……それ私達が戦わなかったら」
「実践してた、グラディウス、名を売り立場を復帰するチャンスだ。武器は貸してやる、最前線で守れよ?」
「ふんっ!言われるまでもない」
よし、餓者髑髏の骨で武器は作れる。持ち手は女郎蜘蛛の糸で補佐すれば即興の大量武器だ。
「ビオラさん、弟頼みますね」
「でも…」
「……家訓なんでしたっけ?」
「王家を守る気高き炎の翼たれ」
「なら飛べるよね?」
「それじゃあ叩き落とすぞ!」