あさぎりゲンの虚偽申告(フェイクトーク)   作:しづごころなく

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地雷グリコさんのアイデアをいただいています。よろしくお願いします。


自由律大富豪とトリコロール

 

 「自由率大富豪?」

 

 カジノが大流行する科学王国では、新しいゲームが日夜のように開発されていた。投資者は流水。

 

 「そうそう。せっかくだし僕もやろうかなって」

 

 どうでも良さそうな顔でコップを煽るゲン。ひょいひょいと視線が高速移動する。

 

 「まあそう言わずにさ。僕と対戦しようよ。君とは一回勝負してみたかったんだ、ゲン」

 

 あはは、と笑いながらテーブルにトランプの箱を乗せる羽京。帽子の下から不敵な笑みが見える。

 

 「いやー、ムリムリ。ただのマジシャンだよぉ?羽京ちゃん頭いいじゃない」

 

 「コーラ奢るからさ」

 

 石化したように体の動きを止めるゲン。一度石化しただけあって再現度が段違いだ。

 

 「…………マジシャンがこんな面白そうな話乗らないわけないじゃーん!羽京ちゃんってば冗談よ、冗談」

 

 先ほどとは打って変わってバサリと服をはためかせ、トランプを開封するゲン。やはり爆速でシャッフルをしている。早すぎて手元が見えない。羽京は今この瞬間にも仕込みをされているのではないかと邪推する。

 

 「まあ、君はきっと細工をするだろうからね。細工をされようとも勝てるゲームにしてきたよ」

 

 「では、私が審判を致しますね。自由律大富豪であれば、必要でしょうから」

 

 グラスを瀟洒な立ち方で拭きながら、フランソワが横槍を入れる。日常的にこういったゲームを仕掛ける様子を見ているため、フランソワはとっくにディーラーとしての技量を高めていた。

 

 「ああ。ありがとう、フランソワさん。信頼できるね」

 

 両者はテーブルにつき、同額のコインを叩きつける。

 

 「では、ルールを説明いたしますね。自由律大富豪は、基本のルールは大富豪通りです。しかし、参加者の持つカードの中で、2枚だけ、オリジナルの効果を設定して良い、という特殊ルールが存在します」

 

 「今回は1対1ということで、初期手札は18枚とさせていただきます。そしてお二人には、今から紙に自分で考えたカードの効果を記入していただきます。その紙を私が受け取りまして、ゲームが成立すると判断した場合、そのまま普通の大富豪を始めます」

 

 カードの記入例は、たとえば「このカードを切った時、同時にもう一枚カードを切っても良い」などである。「持っていれば勝つ」のような、無法なカードはディーラーに止められる、というわけである。

 

 「残りのカードはフランソワちゃんが持っててよ。僕の近くにあると何かと羽京ちゃんもやりづらいでしょ」

 

 「随分協力的だね」

 

 「いやあ、面白いゲームはイカサマなんかせずやりたくない?」

 

 「……説得力がないよ」

 

 「ジョーカーは2枚ございます。配られるかはわかりませんが。そして、効果が発動したとしても、私からは何も申し上げませんので、そのほどよろしくお願いします」

 

 フランソワがゲームに関係のないダミーカードを除き、トランプをシャッフルし始める。ゲンはゲームの内容に感心していた。

 

 「ふ〜ん、羽京ちゃんってば、面白いゲーム持ってくるじゃん」

 

 「ちなみに8切りあり、2がジョーカーを除き最大、革命ありだね」

 

 「数字の同時提出はナシがいいな。すぐ終わっちゃうし」

 

 「分かった。ナシで行こう」

 

 両者が紙に文字を起こす形で効果を設定する。フランソワが効果が書かれた紙を受け取り、確認していく。

 ゲンのカードを受け取った瞬間、フランソワの顔が一瞬歪む。しかし何事もなかったかのように、トランプを配り出した。残りのカードはフランソワが手に持っている。

 

 設定した効果を、今から15枚のカードの内2枚につけるのだ。

 

 「じゃあ僕は、これとこれで」

 

 「これとこれ。いいよね?」

 

 相手に見えない形で設定したカードをフランソワに開示し、ゲームが始まった。

 

 先行はゲン。

 

 「しょっぱなから飛ばそうかな〜」

 

 ゲンはスペードの9を繰り出した。最初から強気な切り方である。

 

 「ふうん…?」

 

 羽京は怪しみながらも、ハートの10を出す。ゲンが軽口を飛ばしながらゲームを進めるので、自分のプレイが正しいのか一瞬分からなくなる時がある。

 

 「じゃあ、こうしちゃおっかな〜?」

 

 ゲンはスペードのQを出す。羽京はダイヤの2を出し、場は流れる。両者の手札は残り13枚。

 

 「うーん…こうかな」

 

 ハートの6をゲンが出す。羽京はそれに対し、クローバーの7を出す。場が流れた。

 

 「…羽京ちゃん、もしかしてやってるね〜?」

 

 「何のことかな?…ダイヤの3だよ」

 

 場が流れた。やはり異常である。

 

 「ハートの5」

 

 場が流れた。

 

 「クローバーの4」

 

 ゲンは躊躇なくハートの7を出す。羽京はハートの9を出し、ゲンがダイヤのJを出す。

 

 「…随分と、強いカードばかり切ってるね。手札の偏りが凄いんじゃないか?」

 

 羽京がダイヤのQを出す。ゲンがクローバーの2を出し、場が流れる。

 

 両者の手札は残り9枚。ゲンは依然としてハートのJを出す。羽京はハートのKを出した。場が流れる。

 

 「あ〜さっすが羽京ちゃん。強い効果だねぇ」

 

 余裕そうな表情はそのままに、羽京を褒めるゲン。今まで不自然な流れ方をしたカードは7、3、5、K…そして、ジョーカーの確認が行われなかった、2。共通するのは、素数である。

 

 つまり、羽京の効果は、「素数のカードは8切りと同じ効果を持つ」である。実際は強すぎるため、2回以上の連続使用が禁止されている上、8は8切りの効果を失っているのだが、ここではゲンの預かり知らぬところである。

 

 両者残り8枚の手札であるが、ここでゲンの手札を紹介しよう。とある2枚を除いて、面倒なので記号も排除して。

 

 2、3、3、4、5、5、6

 

 これが8枚のうちの内訳6枚。強いカードばかり切っているのだから当然であるが、これで勝てるわけがないのだ。しかし依然として、あさぎりゲンはその剽軽な態度を崩さず、軽口を交わし続けている。

 

 「じゃ、ダイヤの4」

 

 羽京が4を繰り出す。ゲンはスペードの6を出した。これを見た羽京は、今が好機とカードを切る。

 

 クローバーのA。

 

 カードの効果が発動し、自身の手札からカードを3枚捨てた。捨てたのは5、8、8。

 

 羽京が設定した効果とは、6以下のカードを相手が捨てた後にしか切れない代わりに、直前に切られたカードの二分の一の枚数、カードを捨てることができる、というもの。8切りとしての効果を失った8を2枚切った。これで、羽京の残りカードは3枚。内訳はJ、K、Aである。

 

 ここでゲンがパスをすれば、JKAと捨てれば羽京が勝利する。なぜならJKは素数であるから。最大使用回数の2回にもピッタリである。

 

 これをゲンが2を切り、止める。

 

 ターンが入れ替わる。

 

 あさぎりゲンは笑う。

 

 「羽京ちゃんってば、そこそこにバランス考えてるじゃない。自分の効果」

 

 口角が悍ましいほど上に上がる。恐ろしいまでの気迫だ。今にも負けそうな人間がする笑顔ではない。

 

 「でもねえ、惜しかったね。今から羽京ちゃんのターン、ないから」

 

 手札から2()()のカードが提出される。

 

 その2枚は、トランプにおいて通常数えられない天才肌なハズレ枠。科学王国においては司と千空の絵が描かれているカード。

 

 JOKER。

 

 「待ってくれよ。カードの複数枚提出は、禁止されて……」

 

 「()()()ね♪JOKERは数字じゃないよ。羽京ちゃんはもっと、人の言葉尻を気にした方がいいよ。素直なだけじゃダメなんだから」

 

 フランソワは何も言わない。確かに、同時提出を禁止されたのは、数字だけである。JOKERはその例外となる。

 

 しかし、それにしても、54枚のカードの中でたった2枚を同時に引くなど、あり得ない確率である。

 

 「フランソワさん、彼は本当に細工をしてないんですよね?少なくとも僕は見逃しましたが…」

 

 「ええ。していませんよ」

 

 動揺する羽京をよそに、一度場は流れ、ゲンは5を提出する。それに対しKを出そうと乗り出した羽京を、フランソワが止める。

 

 「出せません」

 

 「は?????」

 

 空間が止まる。亀裂が入る。羽京の汗が一気に増える。出せません??出せませんって何だよ、明らかに数字が上だろう。大小関係だ。常識だ。出せるに決まって…

 

 「言ったでしょ、羽京ちゃん。もう羽京ちゃんのターンは来ないって」

 

 ずず、とゲンの気迫が増す。押さえつけられるように羽京は椅子に座り、次の手を見る。

 

 5。

 

 Kを出そうとする。

 

 「出せません」

 

 「…………どう、なってる」

 

 「あなたの数字の方が、小さいんです」

 

 フランソワの容赦のない通告。

 

 何を言っている?5と13だぞ。13の方が大きいに決まっている。そんな、数字の逆転現象が起こるなんて、大富豪のルールだと………

 

 「まさか」

 

 汗を拭うように、手をひたいに当てる羽京。目を大きく開き、声を震わせながら呟く。

 

 「革命……?でも、どうやって」

 

 「ルールを改変した。()()()()()()()()()()()()()J()O()K()E()R()2()()()()()()()()()()()()()()()()ってね」

 

 「1番最初に切った、スペードの9にか」

 

 「ま、何でもよかったけどね、カードは。出来るだけ引いたカードに関係なく勝てるゲームにしたくてさ〜」

 

 そんな話をしているうちにゲンは、4、3とカードを切り、いつの間に残り1枚になっていた。

 

 一番最初に切られたスペードの9の効果は、「このカードが場に捨てられている限り、このゲームにおける革命は、JOKER2枚の提出によってのみ実行できる」である。

 

 「でもな〜んかおかしいよね、羽京ちゃん。普通、2枚しかないカードを手札に呼び込めるのはバイヤーな運の持ち主だけ。俺はどうやって、この2枚のジョーカーを引いたと思う?」

 

 「……シャッフルで、イカサマしたのか」

 

 「ぶぶー。今回俺は、シャッフルをしてません。カードの細工もやってません」

 

 「………私です」

 

 白状するように、フランソワが言う。

 

 「は!?」

 

 「とあるカードの効果でね♪ゲンの初期手札に、JOKERを2枚とも含めるっていうのを作ったんだよ」

 

 「いや、それは、おかしい。…だって、効果を付けたのは、配られてからで…」

 

 「付けたのはね。設定したのはもっと前でしょ」

 

 「言葉尻を気にするって…ゲン…君はまさか…」

 

 「さっすが羽京ちゃん♪全部気づいちゃったみたいだね〜」

 

 ニコニコと最後の1枚のカードを見せつけるゲン。そのゲンに対し羽京は、声を張る。

 

 

 

 「フランソワさんが持っているカードに、効果を付けたっていうのか!?」

 

 フランソワが手に持つ、確実にゲーム外にあるカード。ダミーカード。何も書かれていない、ただの白紙のカード。そのカードに、効果を付けたというのだ。

 

「今回は1対1ということで、初期手札は18枚とさせていただきます。そしてお二人には、今から紙に自分で考えたカードの効果を記入していただきます。その紙を私が受け取りまして、ゲームが成立すると判断した場合、そのまま普通の大富豪を始めます」

 

 これがフランソワのセリフである。両者もこのルールに同意した。ここではやはり、「カードの効果を書く」としか言われていない。ダミーカードも、立派なカードである。

 

 「ゲンの初期手札に、JOKERを2枚とも含める。また、このカードの付与先はダミーカードとする」

 

 これがゲンが加えた効果。また、フランソワはこうもいった。

 

 「では、ルールを説明いたしますね。自由律大富豪は、基本のルールは大富豪通りです。しかし、参加者の持つカードの中で、2枚だけ、オリジナルの効果を設定して良い、という特殊ルールが存在します」

 

 そう、設定先は「参加者の持つカード」でなければならなかった。だから最初に、イカサマを理由に残りのカードをフランソワに持たせたのだ。彼女はダミーカードを持っている。否、持たされた。

 

 「君は、全部最初に考えついていたのか…!!」

 

 「ほら、羽京ちゃんってば耳がいいからさ、怪しいカードのいじり方とかしたら分かっちゃうでしょ。だから俺じゃない人にイカサマさせることにしたのよ」

 

 「………完敗だよ。僕の負けだ。その最後のカードは、3だろう?見なくともわかるさ」

 

 「そのトーリ。9で初めて3で締める。サンキュー、ってね♪」

 

 勝つためなら審判の発言すら利用する。これがあさぎりゲン。スラリと椅子を立ち上がった彼は、コーラを美味しそうに飲むのだった。

 

 あさぎりゲンの虚偽申告は、今日も絶好調である。

 

 

 




ゲンって一人称「俺」なんだ…一番驚いたわ。細かいところのミスはごめんな。

評判が良ければ続くので、感想お待ちしてます。
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