私と貴方。これまでに色々な衝突(デュエル)を繰り返して、傷付いて、まるで輪廻の呪縛かの様にまたここで相見える―――。正直、戦う理由なんて私には皆目不安定で不明瞭で。もう馬鹿みたいに言っちゃうけど正直解らないの。でも、それでも私と貴方のこの意味の無い戦争ごっこに意味があるのなら、きっとこれでしか、そう、決闘(デュエル)でしかその答えを得られない。そうでしょう?なら、今ここで世界の命運を、そして私と貴方の闘う意味を義を見定め思い切りぶつかり合いましょう、路是(ロゼ)―――。
今日の朝焼けは本当に、、、
本当に息を吞むくらいにオレンジ色の綺麗な景色で美しすぎて、神々しくて。
もしこれがお互いの国獲り合戦なんてモノじゃなかったなら、出来る事ならばずっと目の前に居る貴方、路是(ロゼ)と2人でまだ視えない明るい将来の展望について語り合いたかった。
こんなにも光り輝く美しい世界で、あなたと楽しい決闘をしたかった。
そうして私は自分で嫌でも自覚できるくらいに眉を下げ、唇を嚙み締める。
「零(レイ)・・・。何を、ぼーっとしているの?」
私は数秒だけ必死に眼を逸らして頑張っていたが、そんな現実逃避には抗えずに路是(ロゼ)に、真っ直ぐすぎるくらいの視線を送ってその問いに応える。
「路是(ロゼ)と闘う意味が解らないから。」
「・・・・・。」
路是(ロゼ)は私の甘い答えに一瞬、顔をしかめたが直ぐに柔らかく目を閉じて私を真っ直ぐに見つめ直してきた。
「・・・・それは同意。私だって、零(レイ)と闘う意義が解らない。1ミリも。」
「じゃ、じゃあさ、もう止めちゃおうよ。戦争!こんな事しても何も意味が無い!私たちが二分割された国同士に訴えかければきっと!きっと――――・・・・。」
「きっと、なに?」
「・・・・。ううん、何でもない。忘れて。これはただの私のうわ言。空想だから。」
「零。泣いてる。」
「え・・・?」
確かに、私はいつの間にか無意識に泣いていた。右目と右頬に熱い何かが伝い続ける鼓動が聴こえる。そうして私は反射的に右手で自分の目元を拭って、心なしか視界がいつもよりワンランククリアになった世界で路是の姿を視界に捉えた。
「・・・路是も、泣いてる。」
「・・・うん。」
路是は一見いつもの無表情に見える顔で居て、しかし左目と左頬に熱くて悲しみが凝縮されているであろう涙の曲線を描き続けていた。
「苦しい。苦しいの零。」
「私も。怖い。怖いんだよ、路是。」
しん、とした冷たい空気と相反する温かいオレンジ色の朝焼けに抱きしめられた私たちは互いの気持ちを繋ぎ合わせる。
「「あなたを失いたくないから。」」
この闘いは二分割された世界の血みどろの戦争の終焉談。勝者は片方のみ。そして、片方の国が世界の全てを支配し蹂躙し従える最終戦争任務。
そうして、ヒュウ、と乾いた区切りの一風が私たち決闘者の想いと闘争本能を撫で、眼を醒ませと言わんばかりに2人の前髪と制服は軽く空に舞う。
それを皮切りに、私は意を決して口を開く。
「きっとこの不毛な争いに意味も意義も無い。そう言いたいけれど、きっと今まで過去の❝世界❞はそうして築かれてきた。私たちがこの世に生を受ける前から、古代の王様も支配者も殿様も、近代の世界の暗躍者も権力者も国のトップも、そして今のこの世界の仕組みも争いによって構築された道理の世界。きっと私たち、いつの次元に産まれてもこうして戦わなきゃいけない運命だったんだよ。」
そうよね、路是と、私はかつて初めて試乗した純白色の相棒機の「SKY」の空圧、Gに耐え切れなかった時の意識が揺らぐ感覚を覚えながら心の中でそう呟いた。
「ああ。そうだな、零。だけれど運命とかそういう戯言は撤回してもらおうか。これは必然だ。」
路是は私と初めて知り合い仲良くなる前の精神にキリッと方向転換をし、もう後には引けないと言わんばかりに自分の相棒機である漆黒色の「END」に目を向けた。
もう、相変わらず嘘が下手だね。路是ちゃん。
人の事、言えないけれど。
私たちはどちらから提案したでもなく、眩い朝焼けに照らされた巨大空母の離陸路でお互いに至近距離で近付き合い、そして数分間お互いを見つめ合ってその瞳に残酷な闘志の炎を照らし合う。そしてザッ、と互いの片手に掴み差し出された運命の山札・カードデッキを交換し合い、徹底的にシャッフルを交わし合う。
本来ならば手渡しと手作業でシャッフルをしなくても、己の持つ相棒機内コックピットにカードデッキを装着すれば自動的にシャッフルが行われるのだが今日だけはそうはしたくなかった。
事前にそういった打ち合わせをしたんじゃない。
ただ単純に、決闘者の血が、空中決闘の魂が物理的に、己の手で未来を切り開いて飛べ、そう言っているように感じた。それだけだった。
デッキをシャッフルし終え、私たちは再び相互の想いをクロスさせるようにして持ち主のデッキを片手で受け取り合った。
「路是。どうせ最期なら、2人で最高の悔い亡き闘いを。」
「勿論。後世、いや、地球が無くなるその日まで語り継がれる最高の決闘をしよう、零。」
私たちは自然に口角を緩めて友達関係のままで微笑み合いながら、急いでお互いの愛機に搭乗する。
「さぁ、行きましょう、SKY。私たちの最高の未来へ。」
「さぁ、共に往こう、END。私たちのまだ視ぬ結末へ。」
起承天 零と結起天 路是は同時のタイミングでそれぞれの愛機のコックピット内にカードデッキを装着し、それにより虹色のまるでDNAの螺旋階段のような光が瞬間的に両機の機体を包み込む。
次の瞬間、それが起爆剤になったかのようにして両機は豪速で離陸路を並行して滑走し、空に舞い上がり、まるで神話のイカロスの翼の模倣犯かのように、そのまま行ってしまえば太陽にその身を焼き尽くされてしまうかの勢いで高空に突入し、機体を斜めから平行状態にしながらも相も変わらずに豪速で並行して空を飛び続ける。
「「決闘!!」」
起承天 零 LP4000
結起天 路是 LP4000
零と路是の芯からの叫びが、朝焼けの美しいオレンジ色の空とお互いのコックピット内に高らかに共鳴し合う。
最早、誰にも彼女らの熱き殺し合いは止められないのだ。
「バーチャル・コイントス・システムの結果により私、零が先行を貰うわ!ドロー!私は手札から爽快戦闘機 ブルースカイを攻撃表示で召喚!カードを2枚伏せてターンエンド!」
爽快戦闘機 ブルースカイ ☆4【水属性/機械族・効果】 ATK1500/DEF1000
「私のターン、ドロー。私はステルスガールA-1を攻撃表示で召喚。そしてA-1の効果発動。相手フィールド上に伏せられたカード1枚をめくりその効果を確認する。」
路是はA-1の効果により、零の伏せたカードのうち1枚を確認する。
「・・・・!」『●●●●・・・・。』
零は伏せカードを確認した路是の数秒にも満たぬ驚きの表情と、声を発さずとも空いた口から漏れ出たであろうそのカード名をコックピット越しから決して見逃しはしなかった。
「さらにA-1の効果は続く。このカードの効果の発動が成功した時、デッキ・手札からステルスガールB-2を自分フィールド上に特殊召喚する。そしてカードを4枚伏せてターンエンド。」
ステルスガールA-1 ☆1【風属性/機械族・効果】 ATK500/DEF500
・ステルスガールとの名の付くモンスターの効果と特殊召喚の効果はそれぞれ自分のターンに1度しか使用できない。①相手フィールド上の伏せカード1枚を選択してその効果を確認することができる。②このカードの①の効果が成功した時、デッキまたは手札よりステルスガールB-2を自分フィールド上に特殊召喚することができる。
ステルスガールB-2 ☆2【風属性/機械族・効果】 ATK1000/DEF1000
来たか。と、私はただ一つだけそう思った。
これは路是ちゃん特有のステルスガールコンボ。効果が発動する度にステルスガールは同胞をサーチし、レベルと攻撃力を上げ、最後には完成形のステルスガールZが召喚される。それだけは何としてでも阻止しなければならない。
「私のターン、ドロー!私は手札から空挺ユニコーンを攻撃表示で召喚!そして、」
空挺ユニコーン ☆4【風属性/獣族・効果】 ATK1900/DEF1700
路是のフィールドに伏せられているカード4枚、あれは間違いなく罠だ。だけど、行動しなきゃ、突撃しなければ、今この時代は動かせない!
「爽快戦闘機 ブルースカイでステルスガールA-1に攻撃!蒼海斬撃!」
「罠発動。緊急潜空。自分フィールド上のステルスガールモンスターが攻撃対象になった時に発動。自分のデッキ・手札よりステルスガールと名の付くレベル4以下のモンスターを自分フィールド上に特殊召喚し、バトルフェイズを終了する。」
「その効果は無効化される!何故なら、ブルースカイの効果は相手の魔法・罠カードの効果を受けないから、バトルは続行されるわ!」
爽快戦闘機 ブルースカイ ☆4【水属性/機械族・効果】 ATK1500/DEF1000
・このカードは相手の魔法・罠カードの効果を受けない。
「詰めが甘いよ、零。」
「なっ・・・!?」
「永続罠発動。デス・ハッキング。このカードの効果により、ブルースカイの効果は発動不可能になり攻守は500ポイントダウンする。」
デス・ハッキング 【永続罠】
・フィールド上の機械族モンスターの効果が発動した時に発動できる。このカードがフィールド上に存在する限り指定した機械族モンスター1体の効果は使用できなくなり、攻撃力・守備力は500ポイントダウンする。この効果を無効にすることはできない。
爽快戦闘機 ブルースカイ ATK1500/DEF1000→ATK1000/DEF500
「デス・ハッキングの効果が貫通した事により、緊急潜空の効果は継続。私はデッキからステルスガールC-3を特殊召喚する。さぁ、どうするの、零。」
ステルスガールC-3 ☆3【風属性/機械族・効果】 ATK1500/DEF1500
「・・・私はカードを1枚伏せて、ターンエンド。」
「・・・分かった。私のターン、ドロー。私は自分フィールド上のステルスガールB-2の効果を発動。相手フィールド上の伏せカードの種類を言い当て、それが正しかった場合そのカードを破壊する・・・。私が破壊するのは―――」
ステルスガールB-2 ☆2【風属性/機械族・効果】 ATK1000/DEF1000
・ステルスガールとの名の付くモンスターの効果と特殊召喚の効果はそれぞれ自分のターンに1度しか使用できない。①相手フィールド上の伏せカード1枚を選択し種類を言い当てる。当たっていた場合、そのカードを破壊する。間違っていた場合、自分は1000ポイントのダメージを受ける。②このカードの①の効果が成功した時、デッキまたは手札よりステルスガールC-3を自分フィールド上に特殊召喚することができる。
そして想定通り、路是は最初のターン、ステルスガールA-1の効果によって確認済みであった私の文字通りキーカードを破壊した。
やっぱりいつも、どんな時でも路是は抜け目という物が在りはしない。私もその強さを見習いたいものだ。
「更に私は手札から魔法カード、トライアングルフォーメーションを発動。」
トライアングルフォーメーション 【通常魔法】
・このカードは自分フィールド上にA~Zまでの正式なアルファベットの並び順からなる異なる3体のステルスガールモンスターが存在する時のみ発動できる。自分のバトルフェイズ時、ステルスガール3体の攻撃力・守備力を合計した数値で1体のモンスターとして扱い攻撃をすることができる。
「3体のステルスガールを合計した数値により、攻守は共に3000。そして私は空挺ユニコーンに攻撃。行け!三角爆撃炎!!!」
そうしてステルスガールABC達はまるで地上にうろつく獲物を狩り取るかのように、一糸乱れぬ三角のフォーメーションを組んで自身の持つ鉄の翼から爆撃弾を並行して発射する。
「ユニコーン!」
私は思わず反動でコックピット内で手の届かない空挺ユニコーンに手を伸ばして叫んだ。
三位一体なステルスガールの爆撃により、空挺ユニコーンは跡形も無く消し飛ばされ破壊される。
「空挺ユニコーン、撃破。これにより零の残りライフは4000から2900に・・・?」
「・・・・・。」 起承天 零 LP4000
「なって・・・ない?どうして・・・」
「ユニコーンのお陰なの。私の子供時代の相棒の、お陰・・・・。」
空挺ユニコーン ☆4【風属性/獣族・効果】 ATK1900/DEF1700
・このカードは機械族としても扱う。自分が相手のカードの効果または戦闘によってダメージを受ける場合、1ターンに1度のみそのダメージを0にすることができる。
「――っ、ターン、エンド。」
路是はそう言って、苦虫を嚙み潰したような顔でターン終了の宣言をする。私はその真意を解っている。長年の付き合いだから、彼女の透き通るような優しさ故の葛藤と苦悶の表情なことくらい、私は見通している。
「・・・私のターン、ドロー。」
私は以前より少し覇気の抜けた声でデッキからカード1枚引き抜く。そして、愚鈍な空気を壊す想いで自らの手札に命を込めて全身全霊で向き合った。
「来た。」
新たなる風が、空が、世界が私を待っている。
この現世の為に、そして未来の私の国の世代の為に、私は負けられない!
その筈、なんだ。
「私は手札から魔法カード、空中融合を発動!」
空中融合 【通常魔法】
・自分フィールド上に「戦闘機」と名の付くモンスターが存在するときに発動できる。そのモンスター1体と手札またはデッキから融合素材として正しいモンスター1体を選択して墓地に送り、融合モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。
「私は空中融合の効果により自分フィールド上の爽快戦闘機 ブルースカイとデッキからサイボーグ・ホースをそれぞれ墓地に送り、サイボーグ・ライダーを特殊召喚する!」
サイボーグ・ライダー ☆8【地属性/機械族・融合・効果】 ATK3000/DEF2500
・「サイボーグ・ホース」+「サイボーグ・ジョッキー」
このカードが戦闘またはカードの効果によって破壊される場合、自分の墓地・手札・デッキに存在する「サイボーグ・ホース」と「サイボーグ・ジョッキー」1体ずつをそれぞれ任意の表示形式で特殊召喚できる。
「更に私は伏せカードを発動!クラウドメッセージ!」
クラウドメッセージ 【通常魔法】
・自分がコントロールする「戦闘機」モンスターがフィールド上から離れた場合に発動できる。デッキからレベル4以下の「戦闘機」モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。
「ブルースカイが私のフィールド上から離陸した事により、私はデッキから新たに柔空戦闘機 クラウドスカイを攻撃表示で特殊召喚する!」
柔空戦闘機 クラウドスカイ ☆4【風属性/機械族・効果】 ATK?/DEF?
・①このカードの攻撃力・守備力は自分が指定した相手フィールド上のレベル4以下のモンスター1体と同じ数値となる。②このカードが相手モンスターの攻撃対象となったバトルフェイズ時に発動できる。このカードの攻撃力・守備力はそのモンスターと同じ数値になる。
「クラウドスカイの効果により、私は路是のフィールド上に存在するステルスガールC-3を選択!クラウドスカイの攻撃力・守備力は1500になる!」
柔空戦闘機 クラウドスカイ ATK?/DEF?→ATK1500/DEF1500
「そして私は2枚目の伏せカードを発動!グラビティ・ゼロ!」
グラビティ・ゼロ 【通常罠】
・このカードは自分のターンのみにしか発動できない。このカードが発動した時点から自分のターン終了時まで、お互いのプレイヤーはカードの効果を一切発動できない。
グラビティ・ゼロは未だに路是のフィールド上に残り続け圧倒的な存在感と威圧感を掲げ続ける、2枚の伏せカード対策だ。これで私の迎撃準備は整った。
「攻撃!まずはサイボーグ・ライダーでステルスガールC-3を攻撃!爆風乗馬!!」
私のエースモンスターの1体、いや、2体で運命共同体とも言えるサイボーグ・ライダーはお互いが機械同士にも関わらず人間と何ら変わりのないアイサインと歩幅で勇敢に相手モンスターへと突進していく。
私はその後姿の勇士と二人の関係性を見て、戦争とか望まない形のデュエルとか全部放棄していた頃の、ただただ純粋で単純だった頃の路是との暖かい友情と愛、慟哭にも似た互いの気持ちを分かち合えたあの喜びの日々を思い出し、焦れ、うっ、と嗚咽を嚙み殺すようにして誤魔化し飲み込んだ。
サイボーグ・ライダーはC-3に爆風の如く突進し、ホースはC-3を天空高く蹴り上げて、C-3は儚く散る桜のようにしてその容姿相応の幼気な少女の悲鳴を上げ、爆発してオレンジ色の爆炎と黒煙を巻き散らして消えていった。
「ぐっ・・・!」 結起天 路是 LP4000→LP2500
「・・・・。二度目の攻撃、柔空戦闘機 クラウドスカイでステルスガールB-2を攻撃!」
クラウドスカイのミサイル発射口から、外見こそ雲のような柔らかい見た目をした煙を纏ったミサイルが発射され、B-2に着弾してようやくその牙が開花したかのように爆散しB-2もまた空にその身を散らしていく。
戦争
この2つの言葉と響きとしての四文字が、私の身体を支配した。
私が求めていたのは、こんな決闘だったっけ?
私が飛びたかったのは、こんな嘆きそのものな空だったのか?
私は全身が寒くなる。どうしようもなく、手をこすり合わせて自分の幼心に会いに行こうと、逃げようとする。
「B-2、C-3・・・大丈夫、また、逢えるから・・・・。」
結起天 路是 LP2500→LP2000
私は、はっ、と路是ちゃんの消え入りそうな悲しみの声に自己を取り戻し、現実に帰ってきた。
「相変わらず優しくて格好良くて、でも芯があるから強いね、零ちゃんは。」
「路是、ちゃん。」
しばらく見えてなかった優しい路是ちゃんのその顔に、私はただ呼び掛けでしか答えることができなかった。
「でも、」
路是はそう言って、何かを未練がましく、しかし吹っ切るようにして言った。
「お願い零。私を断ち斬る為だけ飛んで来て。きっと今はそれが私たちの在るべき姿。」
「解った。じゃあ路是も私を断ち斬る為だけに飛んで来て。きっとそれでしか、分かり合えない心があるのだから。」
私たちはオレンジ色の朝焼けに照らされ、並空飛行を続ける愛機のコックピット越しに頷き合って、2人ぼっちの戦争を再開した。
「私の攻撃は終了、そしてターンエンド。」
「零、行くよ。私のターン、ドロー。私は自分フィールド上に伏せていた2枚の伏せカード、四次元捕縛装置と輪廻編成をそれぞれ発動。」
四次元捕縛装置 【通常罠】
・相手フィールド上に存在する攻撃力の1番高いモンスターとこのカードをゲームから除外する。
輪廻編成 【通常魔法】
・自分の墓地に存在する「ステルスガール」と名の付くモンスター1体を選択する。そのモンスター名のアルファベットの並び順(1つ前か1つ後に限る)に関するステルスガールモンスター1体をデッキまたは手札から自分フィールド上に特殊召喚する(レベル4以下のみその場で特殊召喚可能。それ以上のレベルの場合、自分の手札に加える)。
「四次元捕縛装置と零のフィールド上のサイボーグ・ライダーをゲームから除外する。この効果は除外なのでサイボーグ・ライダーの分離効果は不発に終わる。」
路是がそう告げ終わると、私のフィールド上に突如として次元を切り裂くようにして現れたベルト状の機械のような無数の触手がサイボーグ・ライダーを丸ごと飲み込み、巨大な球体状となってその場で光の粒子となって消え去っていった。
「そして私は輪廻編成の効果により、自身の墓地からC-3を選択し、その1つ後のアルファベットに従いデッキからステルスガールD-4を特殊召喚する。」
ステルスガールD-4 ☆4【風属性/機械族・効果】 ATK2000/DEF2000
「そしてさらに、私の墓地に眠るC-3の効果を発動。自分のデッキからカードを2枚ドローする。」
ステルスガールC-3 ☆3【風属性/機械族・効果】 ATK1500/DEF1500
・ステルスガールとの名の付くモンスターの効果と特殊召喚の効果はそれぞれ自分のターンに1度しか使用できない。①このカードが自分の墓地に存在する場合、自分のデッキからカードを2枚までドローできる。②このカードの①の効果が成功した時、デッキまたは手札よりステルスガールD-4を自分フィールド上に特殊召喚することができる。
「新たに引いた2枚のカード、ステルス・リボーンとステルス・リベンジの効果を発動。」
ステルス・リボーン 【速攻魔法】
・自分の墓地に存在する「ステルスガール」と名の付くモンスター1体を選択し、自分フィールド上に特殊召喚する。
ステルス・リベンジ 【速攻罠】
・自分フィールド上に存在する「ステルスガール」と名の付くモンスターが相手モンスターとの戦闘によって破壊された場合(ターン経過数は問わない)に発動できる。破壊された「ステルスガール」と名の付くモンスター1体を選択し、自分フィールド上に特殊召喚する。その後、選択モンスターを破壊した相手モンスターを破壊する。
「ステルス・リボーンにより私はC-3を墓地から自分フィールド上に特殊召喚する。そして、ステルス・リベンジによってB-2も私のフィールド上に復活し、B-2を破壊した柔空戦闘機 クラウドスカイは破壊され墓地に送られる。」
路是は淡々とそう言って、まるで私への挑戦とステルスガールズ達のリベンジマッチと言った形で容赦なく効果を連続して発動してくる。
ふと横に目をやると、私のフィールド上に存在するクラウドスカイがフラフラと怪しい動き、素人目戦で見ても何か内部で異常があったかのような軌道を描いて私のデュエルディスクあるいは愛機のSKYの横側に留まった。
するとクラウドスカイのコックピット後部から何処からかB-2の最期の置き土産といったような形でミサイルが突き破るように顔を覗かせ、そのまま私の目の前でクラウドスカイは爆散して破壊された。
私はその光景にただ得も言われぬ残酷さを感じてしまった。
獲る側もいつかは喰われる。それが世の中の循環だとしても、そこには人である以上、情が介在せずにはいられなかった。
「零。最後に久しぶりに本気で闘えて嬉しかった。だから私は、私が出せる最大級の全力で零に勝つ。それが親友として、そして、愛している零の為の最大級の手向けだから・・・・、」
路是はそう言って、今までに私が見たこともないくらいの泣き顔を浮かべてコックピット内で涙の粒を宙に浮かせた。
「路是・・・・。」
来る。
路是の全力が、最大級の想いを込めた引導が、私に渡されようとしている。
「私は、自分フィールド上に存在するステルスガールA-1、B-2、C-3、D-4を選択し、儀式魔法・黒空への離陸を発動する!」
黒空への離陸 【儀式魔法】
・黒空の離陸に必要。合計でレベルが10になるように自分フィールド上に存在するモンスターを墓地へと送り、その後、自分の手札またはデッキから黒空を1体儀式召喚する。
「今こそ、私の紡ぐ未来の為に離陸し降臨せよ!黒空!」
路是は声高らかにそう宣告をし、デッキからそのカードを重く引き抜いて自分のコックピット内にあるデュエルディスクに装填をした。
その瞬間、とてつもなく重い存在が、天空に居るから掛かる重力あるいはGとは比べ物にならないくらいの重圧が私の全身を支配し、私と路是の愛機の存在地点より遥か上空からその存在は全貌を露わにした。
人間が搭乗するよりも遥かに巨大な何色にも染まらぬといった漆黒のステルス型戦闘機。その機械的で無機質な機体の後方にはまるで龍の尾のような、黒くて鋭利な膜のようなものが付いており、果たしてこれは意思を持った生命体なのではないかと思えるほどの不思議な風貌であり、尚且つ少したりともその機体に近付けば命は無いと刻み込まれるような恐怖感と威圧感を感じるその姿。
私は何度も路是のこの切り札、黒空を間近で見てきたが、未だにその堂々たる姿に圧倒され慣れないのであった。
黒空 ☆10【闇属性/機械族・儀式・効果】 ATK5000/DEF4000
・黒空への離陸により降臨。①このカードの攻撃力・守備力は自分フィールド上または自分の手札から機械族モンスターを生贄に捧げることによって500ポイントずつアップする。この効果は1ターンに1度しか使えない。②このカードのレベルが13になった場合、このカードは相手の魔法・罠・効果モンスターの効果を一切受けない。➂このカードが破壊される場合、自分のライフポイントを1000支払い発動できる。自分と相手の全ての手札・フィールド・墓地・除外のカードをこのカードの下に重ね、「黒空」という名の新しいカードゾーンを設置する。
「零・・・・・さようなら。」
「・・・・・。」
「・・・・ぁ・・・っ・・・こ、黒空で零に直接攻撃!撃てっ!穿て!黒き閃光の流星群達よ!」
私はとうとう、攻撃宣言をしてしまった。
長年の相棒でもある黒空の勇士からはいつ片時も目を離さぬつもりだったけど、今回ばかりは黒空から放たれる黒い流星群のような流弾が大好きな零の身体を貫く姿を直視出来なかった。
本当は戦争なんかしたくなかった。
馬鹿ばかりのお祭り騒ぎで、国の偉い人やその裏側に居る悪人のためにデュエルなんてしたくなかった。
ごめんね、零。
きっと私、地獄に堕ちちゃうね。
それでいい。その方がいい。だって、あの世で零の居る場所になんて私、行けないし、私は零と顔を合わせる価値も無いから。
「ごめん・・・ごめんなさい、零・・・・」
私はもう並走出来ずにそのまま地上へと崩れ落ちていくであろう零の機体を恐る恐る薄目を開けていきながら確認した。するとそこには。
「え・・・・」
「まだ終わってない。終わってなんかいないよ、路是ちゃん。」
零はコックピットのガラス越しに古典的なグッドサインを掲げて私を安心させるかのようにして笑って見せてくれた。
「私は手札から速攻魔法、コントラスト・ライフを発動してたの。だから私の残りライフは1000。まだ路是と本気の決闘を楽しめる。生きててこんなにも嬉しかった日は無いよ。」
コントラスト・ライフ 【速攻魔法】
・このカードの効果は自分のライフポイントが相手モンスターの攻撃力より下回っている時のみ発動できる。相手モンスターからの直接攻撃によるダメージ計算後、自分は直接攻撃してきたモンスターの攻撃力と直接攻撃される前の元々の自身のライフポイントの差分だけライフポイントを回復する。
起承天 零 LP4000→0→1000
「零っ・・・!」
私は今日何度めか解らないくらいに、自分が兵士であることすらも忘れて喜びのエモーショナルを親友、そして世界で愛すべき人のために指し示してしまった。
「黒空の攻撃はこれで終了。私はターンエンドする。」
ああ、1分1秒でもいい。その時間に満たない刹那の断片的な時間でもいい。だから神様お願いだ、どうかまだ零と、共にこの綺麗な空を拝ませてほしい。頼むから。
「頼むから・・・・、」
「うん!私のターン、ドロー!」
もしかして今、路是の心からの声があなたに聴こえたのだろうか。そんな、私の柄でもないロマンチックな想像をしてみる。
私は国の為に闘うのか?友のために闘うのか?他人の為に闘うのか?零の愛に答えるために闘うのか?色んな感情がまるでクレヨンや絵の具を乱暴に搔き混ぜこんだ渦のように私を流し、ぐっちゃぐっちゃになっていく。
それでも零、私はあなたに出会えて本当に良かった。
そして、私の黒空を乗り越えられる、あるいは乗りこなせるか?でも、彼女のことだ。これまでに幾度となく人間の限界を超えた奇跡で私を魅せ、救ってくれた零ならきっと―――。
「私は手札からリマインシースを発動!この効果により、私は墓地からカードを1枚、自分のデッキの1番上に戻す!」
リマインシース 【速攻罠】
・自分の墓地に存在する魔法・罠カード1枚を選択して自分のデッキの1番上に戻す。
「更に、さっきドローしたカードの効果を発動!未来からの贈答品!お互いの手札が6枚になるようにデッキの1番下から順にカードを手札に加える!」
未来からの贈答品 【速攻魔法】
・お互いのプレイヤーは手札が6枚になるように自分のデッキの1番下から順にカードを手札に加える。
!・・・また、あの切り札・・・・・。
零はいつもあの奇妙な性質を持つカードを愛用していた。普通の規則に従えば、デッキからカードをドローするのは1番上からだと決まっていると思っていた私の常識を破壊したあのカード・・・零はいつだって掴めない。掴めないからこそ、面白い。
心が惹かれる。
起承天 零 LP1000
【手札】「パーフェクト・クリスタル・ドラゴン」「クリスタル・ソース」「残留支援」「クリスタル・ドルフィン」「クリスタル・ディア」「メッセンジャーバード」
結起天 路是 LP2000
【手札】「キラードローン」「ステルスガールZ」「自壊の念」「黒空からの解答」「▼キャット」「ゲーム・オブ・メモリー」
「私は自分のターンを続行する!自分のフィールド上にカードを1枚セットし、手札からクリスタル・ソースを墓地へ送る。」
クリスタル・ソース 【通常魔法】
自分のターンにこのカードを手札から墓地へ送る。このカードが自分の墓地に存在し続ける限り、自分の墓地のモンスターは全て光属性・岩石族となり、モンスター名は全て「クリスタル・〇〇〇」となる。
「クリスタル・ソースにより、私の墓地のモンスター4体は全てクリスタル・モンスターに変化を遂げる!そして、召喚条件を満たしたことにより手札からパーフェクト・クリスタル・ドラゴンを特殊召喚する!!」
「うっ!・・・・、」
私は零のモンスター召喚の宣言後、閃光弾でも稲妻の光でも敵わない、いや、そんな地上の光とは比べ物にすらない激的な光の射光に思わず目をしばらくの間瞑り続け、ようやく目を開け、しかしまだ目が焼き尽くされるようなその神々しい絶対不変の虹色のクリスタルの輝きを纏う龍の顕現を目の当たりにした。
私のエースモンスター、黒空が闇を司る新世代の申し子だとするなら、零の従えるエースモンスター、パーフェクト・クリスタル・ドラゴンは旧世界から成る光の創造主であろう。
身体の全てがクリスタルで構成されている無機物のはずなのに、生命よりも生命らしいその動きと七色以上の千差万別に光り輝くその龍の鱗。
私たちが今生きるこの腐った世界。血で血を争い純粋なままに手を取り合えない世界。そんな世界をまるで達観しつつ、嘆くなど弱みを見せずにただ人類をその虹色の奇跡の反射で見守り導く、言うならば即ち「神」のようなその姿―――。
正に、その使用主である彼女、零に相応しい、誰よりも平和を愛し本当は戦争なんか望まない真の優しさを体現した零に相応しいモンスターであった。
私は幾度も零のこの切り札、パーフェクト・クリスタル・ドラゴンを間近で見てきたが、未だにその堂々たる姿に圧倒され慣れないのであった。
パーフェクト・クリスタル・ドラゴン ☆8【光属性/岩石族・効果】 ATK3000/DEF3000
・このカードは通常召喚できない。自分の墓地に眠る「クリスタル」との名の付くモンスター4体以上と自分の手札またはフィールド上に「クリスタル」との名の付くモンスター2体以上が存在するときのみ特殊召喚できる。①自分の手札またはフィールド上に存在する「クリスタル」モンスターをこのカードの下に装備する(装備後、このカードをパーフェクト・クリスタル・ドラゴン1体として扱う)ことにより、このカードの攻撃力・守備力は装備モンスター1体につき500ずつアップする。この効果は1ターンに2度までしか使用できない。②このモンスターの攻撃が3回成功した場合、自分のデッキまたは墓地から「クリスタル」と名の付くモンスター・魔法・罠カードを3枚まで自分の手札に加えることができる。➂このモンスターが戦闘によって破壊された場合、自分のダメージは0となり、その後バトルフェイズ中であればバトルフェイズを終了する。④カードの効果による自分へのダメージを0にする。この効果はデュエル中に1度しか使用できない。
「私はパーフェクト・クリスタル・ドラゴンの1番目の効果を発動!自分の手札に存在するクリスタル・ドルフィンとクリスタル・ディアをドラゴンの輝きへと導く!」
パーフェクト・クリスタル・ドラゴン ATK3000/DEF3000→ATK4000/DEF4000
「そして私はパーフェクト・クリスタル・ドラゴンで黒空を攻撃!」
「そんな!私の黒空は攻撃力5000。1000の差があるのにどうして、零まさか、」
「違うよ路是!私は負けに行くんじゃない、私と路是が創る新たな世界に飛び立ちたいだけ。更に龍の舞は続く!伏せカードオープン!残留支援!」
残留支援 【罠カード】
自分の墓地に4体以上のモンスターが存在する時のみ発動できる。自分のモンスターが相手側に攻撃する場合、そのモンスターの攻撃力は自分のターン終了時まで1000ポイントアップする。
パーフェクト・クリスタル・ドラゴン ATK4000/DEF4000→ATK5000/DEF4000
「クリスタルの輝きを身に纏う聖なる龍よ、今こそ私と路是ちゃんの核なる運命へと導くために力を貸して頂戴。そしてこの世の全ての闇と悲しみを照らし屠れ!クリスタルオーバー・ライトジャスティス!!!」
零の覚悟を決めた未来への開戦宣言にも似た咆哮が私の鼓膜に轟き響いて、胸の内の内の鼓動をどうしようもなく滾らせる。
ならば、と。私もその愛に全力投球で答える。
「黒空よ、今こそ我と共に森羅万象全てを貫け!そして零とのまだ視ぬ高空を私に示せ!目標、パーフェクト・クリスタル・ドラゴンを撃破せよ!闇夜と世界を次元ごと切り裂き、新時代の覇者と成れ!撃て!穿て!黒き閃光の流星群!!!」
零のパーフェクト・クリスタル・ドラゴンの口から直視する事すら難しい眩しいクリスタル色の破壊光線が、
路是ちゃんの黒空のミサイル発射口から見る者全てを威圧し少しの呼吸や瞬きすら許さないような漆黒の流星群のような流弾が、
≪≪ 私達の攻撃が、交炸する。 ≫≫
2人の決闘者のそれぞれのモンスターから放たれた白色と黒色の直線は、やがて同時に接触をし、押し合う事も対消滅する事も無く、クリスタル色の破壊光線は漆黒の流星群のような流弾を爆破させ蹴散らしながらただ黒空へと進み、漆黒の流星群のような流弾はクリスタル色の破壊光線の影響を全く受けずにただ破壊あるのみとパーフェクト・クリスタル・ドラゴンへと進む。
白い軌道には黒い軌道が、黒い軌道には白い軌道が混ざるが、不思議とどちらの軌道の色も混ざり合った歪な色にはならず、ただただ純粋な交錯故の色がそこには在った。
やがて直ぐに、2体のモンスターは同時にお互いが放った攻撃によってその身を真っ直ぐに貫かれる。
そしてその瞬間、天空で途轍もない空を二分割してしまうかのような爆発が起こった。
「「ぐっ・・・!」」
零と路是はそのモンスター同士の衝突による衝撃波と爆風に愛機を持って行かれないように、一度は不安定になった機体を立て直す事に成功した。
パーフェクト・クリスタル・ドラゴンはその長身な身体のクリスタルで出来た心臓部分である急所を黒空の複数の黒い流弾に貫かれて、キュウウウウウ、と苦しそうに透き通った鳴き声をあげると同時に、クリスタルで構成された全身の身体部位にも大きくヒビが現れ続けて、ゆっくりと光の粒を上昇させながらその命を散らしていく。
黒空はパーフェクト・クリスタル・ドラゴンのクリスタル色の破壊光線によって機体の主要部分を破壊され大きな空洞が空き、静かに、しかし最期までその威圧感ある佇まいを優雅に崩さずに機体炎上を続けて下降していきその任務を終えようとしていた。
「まだだ!このまま終わってたまるものか!私は黒空の3番目の効果を発動する!自分のライフを1000支払い、お互いの全ての手札・フィールド・墓地・除外のカードを「黒空」へと収監する!」
結起天 路是 LP2000→LP1000
私が黒空の第三の能力を発動し、ライフポイントを零と同じ1000に下げたのは、別に親友だからとか心の揺らぎとかそんな甘いような言い訳では一切無い。そんなことは全身全霊を駆けて私と決闘をしてくれている零にとって失礼だ。
ただ単に今後のデュエルの展開を考えると、私のエース機の1体である黒空が破壊された今、「黒空」という名の新たな場所を展開すればまだ勝機があるとの見込みをした上での計算。
黒空はその身を空に散らしても、「黒空」という名の新たな世界に生まれ変わることによって多数のサポートカードが利用出来るようになるし、私のデッキにはそれらの❝可能性❞がステルス機のように眠りを潜めている。
「私たちはまだ闘える。そうだよね、零。」
「うん。まだこれから、私たちは闘いの誓はここから始まる気がしてるの、路是。」
下降しきって見えなくなっていた黒空は満身創痍な機体状態のままで雲の下から再度その姿を現し、機体を急速に上昇させて太陽の前に覆い被さってその機体をただただ真っ黒なブラックホールのような虚空の穴へとフォルムチェンジをした。
路是が新たなるフィールドゾーン「黒空」を開設した事により、デッキを除くお互いの全てのカードが、もう1粒の光となっていたパーフェクト・クリスタル・ドラゴンが、そして私の手札に1枚だけ残されていたカード「メッセンジャーバード」が、とにかく全てが「黒空」にあっという間に飲み込まれ、「黒空」の黒い穴はまるで最初から存在していなかったかのようにしてその姿を消した。だが、このデュエルにおいて墓地や除外には分類されない新たな場所が造られた事実は紛れもない真実であった。
「私のターンはまだ終わっていない。私は・・・メッセンジャーバードの効果を発動し、デッキからカードを2枚ドローする・・・・。」
メッセンジャーバード ☆2【光属性/鳥獣族・効果】 ATK200/DEF0
・このカードが自分の手札またはフィールド上から離れた時に発動できる。自分のデッキの上からカードを2枚ドローし手札に加える。
私はそのまま自分のデッキからカードを2枚ドローし、やっぱりこのカードを使うことになったんだと、自分の運命や直感や人生や選択・・・序盤でステルスガールB-2に破壊された後、リマインシースの効果で迷うことなくこのカードを選択して私のデッキの1番上に戻した自分を心の中で酷く苦く嘲笑した。
私は手札を持ったまま、体を震わせる。
「・・・・・。」
「・・・・・零?」
路是の私を心配するような幼い声が、私という存在の全てを溶け去っていこうとして、私はそれに抗った。
「ねぇ、路是。」
「何、零・・・?」
「きっとこれは運命じゃない。私と路是、2人が似ているのも表裏一体なのも過去、あるいは未来の記憶が私達を苦しめているのも、そして、今居るこのいかれた世界で私たちが闘う理由も全て―――宿命。」
「宿命・・・・。」
「そう、宿命。だから逃げられない。明日は来ない。私たちは、1つへと成れない。」
「・・・・零。そんな悲しいこと、言わないでほしい。私たちはずっと一緒、縛られるものなんか何一つも無く、自由にこうして空を飛び合い1つになることが出来る。」
「もちろん、それも解ってる・・・解ってるんだよ、路是ちゃん・・・・。私はこのままターンエンド。だから来て。路是ちゃん。」
「うん。」
路是ちゃんはただひと言、私たちがまだ全ての不条理さを知らなかった頃の、幼かった頃のような口調で私にそう言ってくれて。たったそれだけの言葉で私は救われた。
もうきっと、喜びも悲しみも怒りも憎しみも狂気も静寂さも路是と感じ合えない。幼い日に2人きりで語り明かした将来の夢も、大きくなってから通じ合えたあの愛の喜びもきっと、消失してしまう。
だけれど、私はそれでも。
それでも路是と今を飛んで、まだ生きて居たい。
「・・・・私のターン、ドロー。私は、」
路是の口が、止まる。その間、数秒間だったが、目に何かを投影してそのまま続ける。
「・・・・私は、「黒空」に存在する私のカード、黒空からの解答の効果を発動。」
黒空からの解答 【通常魔法】
・フィールド上に「黒空」カードゾーンが存在する場合またはこのカードが「黒空」カードゾーン内に存在する場合に発動できる。自分のデッキの上からカードを3枚ドローし手札に加える。
「デッキからカードを3枚ドローする。・・・・・!」
路是は自身のデッキから新たに引いたカードを確認していく中で視線を止め、目を釘付けにさせて、何かを受信したかのようにほんの少しだけ目を瞑ってから空中の平行線を見定めるかのように目を見開いた。
「行くよ。零。」
「うん。」
私は路是ちゃんが私にそう返してくれたように、穢れの無い純粋な幼い頃のような真心を込めた返事を短く返した。
「「速攻魔法発動!開戦の義!」」
私達はそれぞれに口を揃えながらその宿命のカードを発動する。
開戦の義 【速攻魔法】
・自分のデッキからレベル4以下の「閃刀姫」と名の付くモンスター1体を自分フィールド上に召喚する。
「「私は自分のデッキから閃刀姫-レイ/ロゼを召喚!」」
私のフィールド上には私の容姿に瓜二つな、いや、正に生き写しのような閃刀姫-レイが召喚される。
そして路是のフィールド上には路是の容姿に瓜二つな、いや、正に生き写しのような閃刀姫-ロゼが召喚される。
開戦の義は幕を開け、第二の真実の闘いが始まりを告げる。
私と路是は変わらず並行して空を飛び続ける愛機のコックピット越しに鋭い視線と表情を送り合い、形容しがたい想いを胸に秘めてどこまでも果てしない蒼穹の青空を飛んで行く。
そして私と路是のフィールド上に存在するレイとロゼもまた、鋭い視線と表情を送り合い、カチャッ、とそれぞれが所有する武器である「刀」の音を蒼穹の青空に確かに響き渡らせた。
私と路是は誰から言うでも、アイサインを送るでも無く、遺伝子に刻み込まれた言の葉を2人同時に叫んだ。
「「起動せよ!」」
そして私はまるで走馬灯でも視るかのように、此処に至るまでの路是との過去や人生をフラッシュバックさせるのであった――――。