アンキングダム   作:ラクらる

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013:「キミの全てを差し出せ! 命もな! ※主人公」

 みなさんこんにちは。

 言語の壁を越えるのは、偉業なのだと理解した風鈴です。

 

 ガイン族を下してからはや一年以上経過しています。

 槐村は人口が爆発的に増加し、元々五千だったのが今では一万を軽くこえるほどの人口になっちゃいました。

 

 ええ、すっごい問題が発生しまくって、ぶっちゃけとっても疲れてます。

 なのでそこの書類を抱えてる辰行(留守番統括)さん。

 こっちに近づかないで?

 近づいたら斬り殺すよ?

 

「鈴様。こちら付近の治水工事に関するものです。そしてこちらは住居建設に関する費用。そしてこちらは武器工房。こちらは各支店の報告書、そして総監の報告書、あと一番下のこちらは」

「それ、全部?」

「ええ、そうですが。これらに印を押していただきたく」

 

 今の辰行(留守番統括)さんは正気じゃないって。

 一旦落ち着いて考えて欲しい。

 私十七歳。年齢は大人だけど、社会的にまだガキ。

 

 いくら参謀ちゃんがいるとはいえ、文字を見ること自体が苦痛な私的には、とってもやりたくないことなのだ。

 

 〈別にマスターが目を通すわけでもないのですし、我儘が過ぎるのでは? 〉

(違うの参謀ちゃん! 文字を見るのが苦痛なの! あのQRコードとミミズのハイブリッドみたいな文字列、見る方が頭おかしくなっちゃうよ!)

 〈それでもマスターは現代人ですか。そろそろ私のサポートなしでも文字を読めてもいいのでは? 〉

(やだ! 見捨てないで参謀ちゃん!)

 

 参謀ちゃんが翻訳しなかったら、ガイン(エッチ大魔王)と会話できないし、辰行(留守番統括)さんの持ってくるよくわからない文字列解読する前に、私の所領の経済がオワコンになるし!

 だから見捨てないでください本当にお願いします。

 

「では、私は追加の分を持ってきますので」

「まだ、あるの?」

「ええ、鈴様がお戻りになられたと思ったら、一月ほど姿をくらませたせいで、私どもは非常に困っているのですよ?」

「……うう」

「では、失礼いたします」

 

 なんかあの、すごいやつれた顔なのになんで眼光はそんなに鋭いんですかね。

 ごめんって。

 流石に仕事ほっぽらかしてどっか行ったのは悪かったって思ってるよ。

 

 はぁ、じゃあこの書類整理やっていくかぁ。

 じゃあ参謀ちゃん、頼んだよ!

 

 〈はぁ。まあ構いませんけど〉

 

 なんや感や言っても、しっかりとやってくれる参謀ちゃんは好きだよ!

 さて、陰晋攻略戦に連れて行った私の私兵で満足に動かせるのは五百ほど。

 大体半分近くがお星様になってしまった計算である。

 

 はぁ、まあそもそも部隊員全員を私兵で構成するってのが、普通な観点から見れば、異常だからね。

 

 普通戦争で率いる軍を起こす場合、秦国中央上層部から徴収兵を支給される。

 この場合、徴収兵を養うためにお金を払う必要はないし、むしろ便宜を図れる人間が中央にいるなら、管理費用としてお金をもらうこともあるのだ。

 

 ただまあ徴収兵を使う場合、徴収兵を好きに動かすことは固く禁じられている。

 徴収兵というのは国の所有物である。

 大王の命令以外で徴収兵、さらにいえば貴士族で構成される正規軍を動かすことは、即死刑になるほどの重罪である。

 

 逆に私兵は、養育費や管理費は全部自腹である。

 その代わり、私兵は私の所有物であるため、大王の命令なしに動かすことができる。

 

 それぞれメリットデメリットが存在するが、私が選択したのは後者である。

 何せ、人員は好きに選ぶことができるし、勝手に動かしても何も文句を言われない。

 

 そのおかげで、私兵の半分を失った私はすっごい困ったわけだけどね!

 それに今思い返せば、彼らの甲冑代もバカにならない。

 武器も軍馬もすごい量失ったわけだし、少しだけ辰行(留守番統括)の後ろ姿が哀愁漂う感じになってる。

 

 まあそれもこれも、大きくなったガイン族を丸々吸収できたわけだし、モーマンタイ!

 彼らは元から力が強いわけだし、これからさらに続々と成人していく人数も増えるだろうから、今後の戦力面でもかなり期待していたりする。

 

 と思っていた矢先に、言語が通じないなんて問題が発生したけどね!

 流石にまずいと思って、とりあえず既に喋れるガイン(エッチ大魔王)含む十人くらいが教師役となって、数十人に平地の言葉を叩き込んでいる。

 

 ただそれもかなり時間がかかるだろう。

 はぁ、最低限言語が通じなきゃ、軍として動くことができないんだから、早く学習して欲しいところだけどね。

 

 はぁ、そうなると私がとっても暇になってしまう。

 何をすればいいんだろうか。

 ぶっちゃけ私は私で鍛えたいんだけどね。

 

 陰晋攻略戦で少し思ったのが、私はタイマンならかなりやれると思うんだけど、多数戦だとどうにも輝けていないと思う。

 いや、そこらの将よりは強いと思うよ?

 

 ただ、部下たちの成長具合も考えると、私もうかうかしてられないんだよね。

 特に蛮兒とガイン(エッチ大魔王)がバッチバチに張り合っちゃってるせいで、メキメキと互いに武力が成長しちゃってるんだよね。

 

 キミら、一体どこまで成長するつもりんだい?

 レイオーの(まさかり)よりも強くなっちゃって。

 一体何を目指しているんだろうね?

 

 ということで、ぶっちゃけ私も書簡の整理だけじゃなくて、鍛錬をしたい!

 体動かしたい!

 こちとらまだティーンエイジャーやぞ!

 動かし足りないんじゃ!

 

 〈……では、いい考えがございます〉

(ほんと?)

 〈はい。丁度付近の領主から賊討伐の依頼が来ております。ミスったらリョナられて人生終了ですが〉

(……まあそのくらいデメリットないと、鍛錬にならないか。けど書簡整理はいいの?)

 〈ええ。マスターがのんびり現場の確認をしている際に、すべての書簡の確認と分配を終わらせておきました〉

 

 有能すぎ。

 そんな有能すぎる参謀ちゃんのおかげで、鍛錬することができる私ってすごい幸せ者だね!

 よし、じゃあ待ってろよ賊ども!

 風鈴ちゃんが全員ぶち殺して、首を街道に並べてやるからな!

 

 ……ハッ!

 なんか最近蛮族みたいな思考になっちゃってる気がする。

 気をつけなくっちゃね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰か止めろォ!」

「この、クソがグヘェッ」

「な、あ、あいつ化け物だ!」

「笛ならプベッ」

 

 うーんクズみたいな連中の多いこと多いこと。

 私が旅人のように歩いているので、鴨だと思ったのか襲ってきた彼をしばき、軽く足をグリグリとしてあげれば、まあ喋る喋る。

 

 地形的にもそこら辺に族の根城があることは、参謀ちゃんが予測していたのでそのまま根城へレッツゴー。

 そうするといるわいるわ。

 髭をぼうぼうに生やし、イカつい刺青をした男たちがゴキブリのようにいますね。

 

 まあ彼らも彼らで、食うに困ってこういうことをしているわけでして、少しばかり同情する部分はもちろんある。

 けど、ごめんね?

 私も強くならなくちゃだし、あなた達は私たちとは違う意味で道を踏み外している。

 

 今更私たちに混ざることもないだろうし、ここで確実に殺させてもらうよ。

 けど、安心して。

 しっかりと痛くないようにとどめをさしてあげるから。

 

「……大丈夫。安心してね」

「何言ってんだイカレ野郎ッ! 全員で囲んで叩きつぶせッ!」

「オオッ!」

「死ねやゴラッ!」

 

 まあそうなるよね。

 当然彼らは生きるために賊に身を落としているわけだし、無抵抗というわけにはいかないよね。

 けど本当に死にたくないと、本心から思ってるのかな?

 そこだけが気になるけどね。

 

 ほら、奥で虎視眈々と私の動作を見つめているキミ。

 キミは本当にこの場を生き残りたいと思ってるの?

 思ってるなら今すぐ逃げるべきだよ。

 

「ば、化け物かよ」

「コイツぜってェヤバイ奴だよ! (ぴん)の頭! どうしやすかッ!」

「クソッ! テメェ、何が目的だッ! いきなり俺たちを殺し始めてよッ!」

「……目的はあなた達全員の首」

 

 なんか突然理由を聞いてきた。

 ……あーこれ時間稼ぎか。

 もしかしてこの後に何かがある感じかな?

 ならしっかりと待ってあげよう。

 

 まだ百人しか相手取っていないんだ。

 流石にこれじゃ多勢に無勢とは言い難い。

 パッと見た感じ、残っている彼らはそこそこに強いけれど、人数は二十人程度なのだ。

 

 そんな数じゃ、私に傷ひとつ負わせることはできない。

 けど、時間稼ぎをし始めたってことは、この状況を覆す何かがあるってことでしょ?

 うんうん。しっかりと待ってあげるよ。

 

「と思ってたけど、奥のキミ。キミには少し興味がある」

「……俺か?」

 

 そう!

 キミだよキミ!

 (ぴん)の頭とか言われていたキミだ!

 さっきから口調は焦っているけど、雰囲気は異常な程に落ち着いているキミだよ!

 

 キミの目は嫌いじゃないよ。

 むしろ好きな部類だ。

 

 確かにキミの雰囲気的に、キミはクソみたいなことをしてきたんだよね?

 他者をいたぶって、ゴミのように扱って、それでいて優越感を感じるマジのクズ。

 それだけなら、周囲にいる奴らと同じだ。

 

 けど、キミはそれだけじゃないよね?

 私にはわかるよ。

 キミは、()()()()()()

 

「キミの夢は何?」

「ああ? ……そりゃ極上の女抱くことだろ」

「それだけ?」

「はぁ? あとは酒を浴びるほど豪遊。ってか唐突になんだよッ!」

「ねぇ、本当にそれだけ? 本当に、それが夢?」

「ッ!」

 

 あ、動揺した。

 うんうん。そうだよね。

 キミはそれだけじゃない。

 そんな一般的な、一市民が考えるような浅薄なものじゃないはず。

 

「クソが、ほんとテメェは何モンだよ気色わりィ……」

「別に、どうだっていい」

 

 そう、私が何なのかなんて、どうだっていいじゃない。

 さて、珍しく私が会話をしてあげているんだけど、なかなか逆転の切り札がやってこない。

 うーん、もう時間稼ぎに付き合うのはいいかな?

 

「ッ! 構え」

「遅い」

 

 ああ、やっぱりキミは持ってるじゃん。

 まあ遅いけど。

 ということで一気に接近して一振りで前衛の三人を切り捨て、そこからさらに奥へと踏み込む。

 剣を構えて体を守ろうとしてるけど、初動が明らかに遅いのに、私の剣を防ぎ切れるとでも?

 

 そのままノーガードの腕を切り落とし、崩れたところで首を切り落とす。

 左右から振り下ろしてくるけど、そんな力任せじゃだめだよ?

 ふんっと剣を弾き返して、晒された胴体を両断。

 

 その後ろにいた二人に対処するため、姿勢を低くして、機動力の源である足を切断する。

 すると姿勢を呆気なく崩すので、サクッと首を刈り取る。

 

 いつの間にか生き残っている賊は(ぴん)ただ一人。

 試すつもりで軽く剣を振るうと、しっかりと受け止めてくれる。

 うん、武力の方は合格ラインかな。

 

「バケモンがッ!」

「待ち人は、来なかったね」

「なぜそれをッグホッ……」

 

 ちょっと臓器が少しだけ逝っちゃったかもしれないけど、今後の生活には全く支障がない程度だから、気にしなくていいよ。

 それよりもさ。

 

「ねぇ、私のものに、なる気はない?」

「誰が、テメェの下にッ!」

「けど、また乾いた、生活に戻るの?」

「……ッ!」

 

 キミはまるで、食事を知らない飢えた子供だ。

 生きる意味を見出せず、ただ淡々と目の前の暴力に縋ることしかできない、そう言う人間。

 キミは、どうしようもなく、生きることに乾いている。

 

「だけど、安心して。私の側は、たのしいよ」

「何が楽しいだッ! テメェからは死臭しかしねぇぞ!」

「それの何が問題なの?」

「大アリだッ!」

「大アリじゃない、よね。死が怖い? それは、あり得ない。だって生き残りたい割には、キミの動きは派手」

「……」

 

 そう、この(ぴん)と言う男は、動きがすごい派手なのだ。

 別の言い方で言えば、あえて怒りを買うかのような、挑発的な行為を好んで行う。

 そうすれば、より多くの人間を怒らせ、そして恨みを買い、いつかは地獄に叩き落とされてしまうだろうに。

 

「本当は、こんな野盗ごっこをしたいわけじゃない」

「やめろ」

「ここに転がってる、キミの部下達も、ただの数合わせ」

「やめろ」

「私がきてから、キミは動揺したように見せて、その実」

「やめろッ!」

 

 へぇ、起き上がるんだ。

 結構キツめに叩き込んだはずなのに、腹を押さえながらもキミは立ち上がるんだね。

 けど、もう動揺は上辺だけじゃなくなってるよ?

 

「キミは私のために死ぬの。そしてそれは今この場で、私に殺されても、私の物になって後で死んでも、変わらない」

「……だからなんだよ」

「どのみち私のための死ならさ、せめてもっと派手に死にたくない?」

「はは、テメェの頭はイカれてんのか」

 

 うわ、すっごい直球にディスられちゃったよ。

 鋼のメンタルな私でも、傷つくものがあるなー。

 

「その割には、笑ってる」

「あ? ……チッ。いいか、俺の気に入らねぇってのは、アンタだ。それでも俺を下につかせたいかよ」

「笑止。キミに私は殺せない」

「はっ。言ってろ」

 

 そう言いつつ、手に持つ剣を地面に放り投げる(ぴん)

 どうやら私の下につくらしい。

 だけど私を見つめる瞳だけは、気を抜いたらテメェを殺す、って言ってる。

 

 うーんその諦めない闘志は気にいるけど、キミはそれだけじゃないでしょ?

 って思ったけど、どうやら本人も自覚していないらしいし、後々でいっか。

 じゃあ改めて、ようこそ! 最高な世界へ!

 

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