アンキングダム   作:ラクらる

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014:「参謀ちゃんにかかれば、知将ムーブも余裕よ!」

 さて、あの後(ぴん)を槐村に連れて帰って、さらにわちゃわちゃとした一波乱があったけど割愛させていただく。

 

 だってなんか男同士の友情的な感じで解決しちゃったんだもの。

 拳で殴り合えば解決的な感じ。

 いやどこの少年漫画の人間だよ。

 

 けど私が(ぴん)を下した状況も、実質殴り合いみたいなのを経て仲間にしてるし、突っ込める立場にいないのは分かってるけどさ!

 

 さて、現実に話を戻そう。

 あの後も色々賊滅活動を続けていたんだけど、一部の人間がすっごい私に感謝してきてさ。

 いや、私は当然のことをしたまでです的な、超当たり障りのない言葉を羅列してなんとか取り繕ったけど、あれは大変だった。

 

 もし私がそんなこと言われたら、うわ紀元前なのにそんなこと言う人いるかよ! って思って危険人物リストに迷わず放り込むけど、その人達は私の返答にとても感動したらしい。

 

 いかん、絶対色々危ない人たちだってのを察した私は、すぐにその場から立ち去ったけど、どうしてもお礼がしたい彼らは、なんと私の軍位を二千人将から三千人将に引き上げやがった。

 

 なーにしてくれとんじゃぼけ!

 まあ他から見れば昇格したからいいじゃんって思うかもだけど、私からしてみればふざけんなの一言である。

 何せ、やっとガイン族の千人が私兵といい感じに連携取れようとしてるんだよ?

 

 そう思ってたのに、さらに千人の部隊要員を確保してねって、無理だよ?

 普通に無理だからね?

 

 〈今私兵は二千人ほどに膨らんでいます。なので最悪槐村に残しておく兵士を五百人にまで減らし、私兵千五百人とガイン族の戦士千人、合わせて二千五百ほどの軍を作れます〉

 

 そうなると徴収兵五百を絶対押し付けられるじゃん!

 しかもさ、私兵全員の軍馬の調達もまだじゃん?

 確かにガイン族は軍馬を多めに持ってるけど、あれは彼らが乗るにふさわしいものであって、平地の私兵達は私兵達で、平地の馬に乗らせるべきでしょ。

 

 えっと二千五百の軍容は?

 

 〈ガイン族の騎馬隊一千、蛮兒が率いる騎馬一千二百と歩兵が三百です〉

(だよね。そして騎馬に超かたよってるね)

 

 歩兵がいる時点で機動力は落ちるし、かといって歩兵置いて行って騎馬隊動かすって言っても、そもそも騎馬隊の熟練度は陰晋攻略戦よりも上ってだけで、まだまだ満足するほどじゃないんだよね。

 

 そんな状態でお荷物の徴収兵五百もついてくる?

 うーんこの徴収兵五百の使い所に迷っちゃうよね。

 はてさてどうしようか。

 

 〈では思い切って、ガイン族の戦士二百、私兵からは騎馬三百。合計五百のみを率いるのはどうでしょうか〉

(え、それってつまり)

 〈はい。思い切って主力を徴収兵で固め、ガイン族を強襲部隊、私兵は要所要所の修復部隊として扱う、と言うものです〉

 

 うーん?

 つまりそれって私が表立って戦うことができないってことだよね?

 却下で。

 

 〈また突撃をするつもりですか? そう言うことをすれば摎サマに再び指導を受けますよ? 〉

(うっ)

 〈それに、秦国が、陰晋攻略戦の失敗によって損失した兵力は十万以上です。そのため、使える人間は秦国上層部が全て正規兵として召抱えてしまっています〉

 

 確かに。

 一年以上かかって補充できた私兵は千五百ほど。

 あまりにも少ない。

 まあその理由は、秦国上層部が、「お前税をたくさん納めてるから私兵を大目に見てるけどあんま調子乗んなよ」と睨んできてるから。

 

 最近私に挨拶に来る人はすごい多いし、影響力は日々増している。

 ただ、その分政治的な根回しのために、お金や人手が費やされていて、私兵を確保するために労力をさけることができないのが現状だ。

 

 〈今後も増やすことのできるかわからない私兵を無理に浪費するよりも、使い潰せる徴収兵を前面に出すべきです〉

(うーん。すっごい鬼畜な思考に脱帽しちゃうね!)

 

 つまり参謀ちゃんは私の私兵達がしっかりと鍛わるまで、徴収兵を使って時間を稼ごうってことだね!

 うーんなも知らない人の命を使い潰す前提の提案をする参謀ちゃんは、しっかりとえぐいね!

 おっけー。

 

 確かに私が主に戦うことができない、って言うのはすごい辛いけど、可愛い私の部下のためだしね。

 

「ガインのところから二百、槐村から騎馬三百」

「予定ハ確カ千騎ダッタ筈ダガ」

「予定は未定。蛮兒も分かった?」

「ハッ。では早急に見繕います」

 

 ガインはやっぱり不服そう。

 まあ彼らはより過激な戦場を求めて、私の下についたわけだしね。

 蛮兒も問題ないように見えて、やっぱり不服そう。

 

 まあけど私は去年学習したんだよね。

 キミ達を消費しすぎると、いざという時に決定打に欠けてしまうってことをね。

 だからキミ達はなるべく消費しないようにしなきゃならない。

 

 もちろん全く働かせないなんてことはないよ?

 もちろんすっごく働かせるつもりではあるけど、まあ序盤からフルスロットはなるべく控えるってだけだね。

 

 ちょっと一悶着ありながらも、ガイン族の最上位の戦士達二百と、私兵の最古参兵三百を引き連れて、私は魏国との国境地帯に到着した。

 

「風鈴三千人将でしょうか!」

「ん」

「本日より風鈴様の指揮下に入ります、千人将の黒剛(こくごう)と申します」

「同じく千人将の角栄(かくえい)です」

「「風鈴様に拱手!」」

 

 どうやら正規兵で構成された軍が私の隊に入るらしい。

 つまりどっちも貴士族の連中だね!

 うーん特権階級の連中だから気に入らねぇ!

 

 とは言え、私も特権階級だし、中央から刺客を送られるくらいには権力持ってるし、私の方が偉い! はず!

 

 さて、そんな貴士族な黒剛(こくごう)は一言で言えばハゲ。なんか豪雷と似たような雰囲気があるから、きっと突撃馬鹿なんだろうね。そして、やっぱり鎧はかなりいいものを使っている。

 というか結構重装甲なのね。それじゃ動きづらそう。

 

 まあ返事は元気いっぱいだし、目を見てもだいぶ素直な人間なのがわかる。

 とは言え、私を侮ってる目をしてるから、後でオハナシをしなくっちゃね!

 

 そして角栄(かくえい)の方は……うーん私のことを若干見下してはいるけど、それは私の方が圧倒的に若い故の、経験不足を心配しているかのような目だ。

 だから彼にはオハナシは特に必要なさそう。

 

 ただ、うーん、なんだか頑固な雰囲気をビンビンに感じるから、扱いやすさは黒剛(こくごう)の方が扱いやすい……かな?

 

 そして残り五百の徴収兵は予備兵として私預かりとする。

 本当は黒剛(こくごう)角栄(かくえい)に押し付けたかったけど、一応の予備として私預かりとなりました。

 

 さて、これにて風鈴隊は騎馬一千百! 歩兵一千九百の計三千人の部隊になりましたー!

 やったね!

 まあ部隊の火力は千人の頃とあんまり変わってないけど!

 

「出迎え、ごくろー。じゃあ指示出すから、移動の準備をしておいて」

「も、もうですか?」

「風鈴三千人将は到着されたばかりですので、休息を……」

「いらない。と言うわけで、詳しい命令出すから、二人はついてきて」

 

 とりあえず困惑している二人を、簡易テーブルに敷いた地図もどきまで引き連れてく。

 あとは参謀ちゃんのお仕事だ。

 参謀ちゃんが言うことを、私はそのまま口に出しながら説明する。

 

 黒剛(こくごう)の見た目は脳筋って感じのおじさんなのに、参謀ちゃんの指示を驚いた表情をしつつも、しっかりと理解しているみたい。

 ガイン(エッチ大魔王)も、蛮兒(部下一号)も特に難色示すわけでもなく、オッケーみたいな表情してる。

 

 え、理解できてないのって、私だけ?

 いやだって、小隊をなんでその位置に配置するのか、そこから後方のその場所に狩場を作るのか、全く理解できないんだけど。

 

 チラリと角栄(かくえい)の表情を盗み見れば、当然のように理解している感じだ。

 やばい、今まで突撃とちょこっとの指示しか出してこなかったからまだいいけど、本格的に参謀ちゃんなしじゃ風鈴隊は動かすことができなくなりました。

 

 よし、今後もいっぱい参謀ちゃんに媚を売ろう!

 とか考えているうちに、なんか作戦の説明が終わった。

 うーん流石参謀ちゃん。しっかり要点を押さえつつ、五分で軍議を終わらせるとかすごい。小並感。

 

「……質問があるのですがよろしいでしょうか」

 

 お、なんか角栄(かくえい)が質問あるらしい。

 こらガインと蛮兒は睨まないの。

 別にいいでしょ、質問くらい。

 なになに?

 風鈴ちゃんがなんでも答えてあげる!

 

「いいよ」

「は。確かに作戦自体は非常に良いものと感じました。しかし、貴女様の直下兵は本陣の守りですか?」

 

 あー、つまりなんで角栄(かくえい)黒剛(こくごう)の軍しか使わないのかってことね?

 あーうん。それは肉壁にするためです!

 なんて言えないよねぇぇぇぇ!

 やばい! 言い訳どうしよう!

 助けて参謀ちゃん!

 

 〈気になる? けどそれは秘密。あなた達は作戦通りに動けばいいよ〉

「(おけ!)気になる? けどそれは秘密。あなた達は作戦通りに動けばいいよ」

「しかし……」

 〈安心して。勝つから〉

「安心して。勝つから」

「……は。差し出がましい真似を失礼しました」

「いいよ」

 

 おー!

 流石参謀ちゃん。

 けどなんかゴリ押しに感じるのは私だけでしょうか。

 まあそもそも何を言えばいいのか全く思いつかなかった、私がとやかくいうことではないけどね!

 

 ということで千人将の二人には前進してもらって、ちょろちょと活動している魏軍にぶつかってもらいます。

 情報では、ここら辺一帯に五千人くらいの魏軍が散らばっているらしく、その殲滅が今回のお仕事だ。

 

 魏軍は五百単位で行動しており、それぞれが国境沿いの村を襲撃しているらしい。

 まあ村はいくらでもあるから秦国にとってはどうでもいいことだけど、それでも自国民が殺されるとその分労働力が減るわけだから、仕方なく私たちを派遣したっていうのが、今回の経緯。

 

 だからまずは散らばっている敵部隊をある程度集合させなくちゃいけない。

 ということで二人の千人将には、魏国の小さな城邑を攻め落とすように指示した。

 これで侵攻している魏軍も反転して再集結するでしょ! きっと!

 

 さて、貴士族二人に侵攻を任せている間、私もそれなりに準備をしなくてはならない。

 別にこのまま遊んでいてもいいんだけど、せっかく前線地域にまできたんだから、だらだらするなんて勿体無い!

 

 はい、というわけで徴収兵の皆さん。元気ですかー?

 あれ、返事が小さいですよー。

 ちょっとガイン、気合注入しちゃって。

 あーそれはやりすぎ。ケチャップみたいなのが口から吐き出しちゃってるじゃん。

 

 はい、気を取り直して元気ですかー?

 うん、いい返事だね。

 じゃあ練兵、しよっか♡

 

 彼ら徴収兵は基本的に農民で構成される。

 というか国民の半数以上が農民みたいなもんだから、農民で構成されるのは当たり前なんだけどね。

 農民といっても畑を耕すだけではなく、商人じみたことを行う輩もいるけど、それらも総じて農民だ。異論は認めない。

 

 話を戻して彼ら徴収兵だが、彼らは農民であるが故に体つきがしっかりとしており、何より頑丈である。

 もちろん貴士族と比べると武は圧倒的に劣るが、生命力はいい勝負をするものも多い。

 

 つまり、だ。

 彼らはタフであるため、多少無茶な練兵を行ったとしても、ギリ耐え切れる程度には強いのである。

 そもそも徴収兵として参加している農民達は、基本的に力に自信がある連中が多いというのもある。

 

 というわけで練兵開始から一週間ほど。

 ナヨナヨとした当初の彼らの表情をご覧ください!

 今ではそこらの貴士族にも劣らぬ精強な顔つきへと、変貌しました!

 まあ雰囲気のみ正規兵っぽくなっただけで、強さ的には私の私兵の数十分の一以下だけどね。

 

「風鈴様。先遣させていた二隊に関して報告です」

「ん」

「ハッ。二隊は十の集落、そして一つの城邑を陥落させております。それに伴い発生した捕虜はそのまま処刑しました」

「ん」

 

 捕虜を処刑だなんて残虐であり、非道な行いだと思うかもしれないが、これは中華では当然である。

 民間人への陵辱や略奪は行わないように厳命しているしね。

 むしろ戦争の醍醐味は虐殺であるっていうのが中華の常識である。

 

 特にその傾向が強いのが秦国だ。

 秦国はここ数十年間、何かに取り憑かれたかのように対外戦争を続けており、住民の虐殺などは中央が把握できないほど起こりすぎている。

 

 そのせいで末端はヒャッハーとばかりに生首の鑑賞会を行うのが、半ば常態化しているとかいう世紀末。

 まあそもそも世紀なんて概念すら、この世には存在しないんだけどね。

 

 その点私は現代人であるため、()()()()()()()()絶対に行わない、すごい良心的な人間なのだ。

 そこらの野蛮人とは一緒にしないでほしい。

 

 捕虜も民間人と同じ扱いじゃないのか、と思うかもしれないが、彼らは死ぬ覚悟で戦う決意をした人達だ。

 そんな彼らに生き恥を味合わせるよりも、慈悲ある処刑をした方が彼らのためだよね。

 

 って理由もあるけどやっぱり今の私たちには捕虜を取る暇なんてない、というのも一番大きい。

 ただでさえ攻め落とした城邑や集落で人手が割かれているというのに、捕虜の手間にまで労力を向かわせる余裕はない。

 

 それに彼らは解放すれば、再び戦力として復帰するだろうしね。

 逃がした彼らに足元を掬われるなんて、すごい滑稽なお話でしょ?

 

 ということで、戦場に出てきてしまった己を恨みながら死んでください。

 まあそもそも、殺される覚悟もない奴が、戦場に出ること自体がおかしいんだけどね。

 もし捕虜殺害に関してギャーギャー言ってくる人がいたら、戦場をあまり舐めてくれるなよって言いたい。

 

「そして、予定通り、転進してきた魏軍の先遣隊を待ち伏せ。おおよそ一千ほど削れたとのことです」

「ん」

「ハッ。魏軍本隊は別動態を捻出し、進軍を開始。別働隊の動きも風鈴様の予測通り、左右から後方に回り込んできましたので、仕掛けておいた罠のおかげで突けば簡単に潰せたとのことです」

「ん。続けて」

「ハッ。魏軍本隊はこれにより警戒度を上昇。軍の足を止めております」

「ん」

 

 スッゲー。

 他にも色々罠を仕掛けるように参謀ちゃんが指示を出してたけど、ほとんどハマったらしい。

 魏軍本隊の数は?

 え、三千五百しかいないの?

 千五百も削ることができたんだ。

 

 え、さすが風鈴様って? いやこれ参謀ちゃんのおかげなんだけどねー。けどそんなこと言えねー。

 さて現状を整理すると、魏軍本隊が私に背を向けている状態ってだけだね。

 もう、是非とも奇襲してくださいって言っているようなものじゃん?

 

「蛮兒、ガイン」

「「ハッ」」

「出るよ」

「「ハッ!」」

 

 すでに騎馬隊の出撃準備は終わっているらしく、蛮兒が連れてきてくれた春に跨って、進軍を開始する。

 半日ほど馬を走らせれば、はい見えてきましたね魏軍本隊。

 うーん。一応後方に予備隊が百くらい見えるけど、それが何って感じだよね。

 ということでお邪魔しまーす。

 

「!? き、騎馬隊だ!」

「なぜ奴らが後方から来るんだ! 物見は何をやっていた!」

「前方の部隊は動いていません!」

「何!? まさか元から兵を伏せていたのか!」

 

 なんだかガイガイ喚いている武将の首をポンと跳ね飛ばし、そのまま殲滅を命令する。

 そう思って周囲を見れば、すでに生き残っている魏軍の兵士は少ない。

 どうやらガイン達がはしゃぎすぎたみたい。

 

 彼らの周囲には夥しいほどの肉片が散らばっているし、多分フルスロットで暴れたんだろう。

 そのせいか彼らの目は血走っており、息遣いも荒い。

 

 あ、まって、そっちの部隊は味方だから。

 一応正規兵だから殺しちゃダメっだって。

 

 興奮しすぎて、黒剛(こくごう)の兵士を殺そうとしたガイン族の戦士を、軽く吹き飛ばす。

 黒剛(こくごう)は愕然とした表情をしてました。

 うんうん。黒剛(こくごう)からの侮りの視線は無くなったかな?

 

「ガイン、キミ達はしゃぎ過ぎ」

「スマナイ。久シブリデ興奮シテイル」

「ふん。所詮は獣か」

「ア? 文句アルカ?」

 

 はい蛮兒もガインも喧嘩しないの。

 ということで黒剛(こくごう)。逃亡しようとしている魏兵の追撃頼んだよ。

 

「は、ははぁっ! 行くぞお前ら! 追撃だァ!」

「オ、オォ!」

 

 うーん。こういう感じに理詰めすると、それをすると相手がすごい弱くなっちゃうんだね。

 なんか消化不良。

 ねぇ、このまま魏国に浸透して軍と戦うってダメなの?

 

 〈これ以上軍を進めると、私物化ということで首を刎ねられますが〉

(おっけー帰ろう!)

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