アンキングダム   作:ラクらる

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最新巻出ましたね!
ヨコヨコがッ、イメージとッ、違ったッ! 誰だお前ッ!!


018:「捕虜? 何それ美味しいの?」

「早く拠点を潰せェ!」

「た、盾兵何をしている! さっさと潰さぬかァ!」

「ギャァァ」

「は、班長ッ!」

 

 二千程度だと思っていた敵の兵士が、なぜか五千もいた件について。

 狭い壁上だと言うのに、魏兵でぎゅうぎゅう詰めになってしまっている。

 

 そんな状況で君たち戦うことができるの? と、疑問に思っちゃうけど、そのせいで私たちも戦い辛いし、間違っていないのかも。

 

 人が多すぎるわけだし、ひょいと鋸壁の上に立ってみれば、うーんパッと見ただけでもこっちが押せ押せの状況だね!

 まあどんなに兵士が城内にいようが、壁上に配置できる兵士の数には限りがあるわけだしね。

 

 けどそれでもこの光景は少し意外でもあった。

 私の部隊、騎馬隊はすっごい強いけど歩兵はいまいち強くない。

 何せ私の部隊の歩兵のほとんどが、中央から支給された正規兵で構成されている。

 

 そりゃここ数ヶ月の間に死ぬほど練兵をした。何人か実際に死んだ。

 そのくらいきつい練兵を重ねてはいるけれど、やっぱり私の部隊が重視しているのは騎馬隊な訳で。

 

 そうなると歩兵に関してはイマイチてこを加えることができていない。

 って思ってたのに、現実の歩兵戦闘では押せ押せの状況だ。

 うーんどうしてかなーって思ったけど、まあ歩兵もそこそこ強くなっているってことが分かっただけでもいいか。

 

「アンタもう登ってきたのか。つかそこ狙い撃ちにされるから降りた方がいいぜ」

 

 ん? 

 誰だろうと思ってチラリと横を見れば、半月の分厚い刀を肩にポンと置きながらこちらを見つめる……。

 ……。

 ……キミ、誰だっけ?

 なんか見覚えがあるんだよねー。

 私好みの雰囲気を纏ってるし、忘れることはないと思うんだけど、うーん?

 

 〈(ぴん)ですよ。以前野盗を賊滅した際に拾った野郎です〉

(んー? あー! あの子か!)

 〈あの子という年齢ではないと思いますが〉

(いーや! 私の部下は全員私より地位が下だしね! 年齢は関係ないのだよ!)

 〈特殊性癖? 〉

(違うから!)

 

(ぴん)、おひさ」

「おひさってアンタ……まあいい。まーなんだ、そのな」

 

 ん?

 なんか頬をぽりぽりと掻いてどうしたのだろう?

 何か伝えたいことでもあるのかな。

 うーん、なんだ?

 

 〈まあ順当に活躍を見て欲しいとかそういったことでしょう。この男、精神年齢幼いですね。22だと言うのに〉

(あーなるほど。じゃあ頑張れって感じのこと言えばいいのね。ありがと参謀ちゃん!)

 

 ふふ、参謀ちゃんは本当に頼りになるね!

 私人間関係の構築はすっごい苦手だから、参謀ちゃんがいなければ部下とのコミュニケーションもまともに取れないよ!

 

(ぴん)、派手にやっちゃえ」

「! おう、派手に、だなッ!」

 

 どうやら当たりだったみたい。

 うーん、なんか子供みたいな感性の持ち主だね!

 まあある意味純粋ってことでいいでしょ。

 

 せっかく梯子を登ったんだし、少しくらいは部下にファンサしようかなー。

 と言うことで秦軍の旗をパタパタと振ってみれば、周囲にいる部下達がいきなり発狂し始める。

 というか熱気がすごい。

 さっきまで殺し合いの場だったのに、もうアイドルのコンサート会場のような盛り上がりだ。

 いやー、ここまで部下達に好かれているなんて、私的にもびっくりだよー!

 

「風鈴様ッ!」

「おぉ、風鈴様だ!」

「風鈴様ッ! 風鈴様ッ!」

「前進だァ! 我らが風鈴様の敵を駆逐せよッ!」

「オォ! 進めェ゛! 進め゛ェ゛!」

「な、なんだコイツらッ!」

「い、いかん! 穴の修復が追いつかぬッ!」

 

 おぉ、さっきまで押せ押せだったけど、今はもう粉砕って感じだね。

 なんで騎馬突撃じゃないのに魏兵が吹き飛んでるんだろ。

 彼ら全身に鎧を着込んでるから、そうそう吹き飛ぶことはないと思うんだけど。

 

 まあいいや。じゃあ、私も剣を振りに行きますかねー!

 

 そのままの勢いで階段まで突破した私達は、階段にひしめく魏兵を突き落としながら門の裏側にまで進撃。

 

 サクッと門を内側から開いてあげれば、待ってましたと言わんばかりに黒剛が率いる騎馬隊が城内に侵入。

 内部にいた弓兵は抵抗することもできず、吹き飛ばされていく。

 

「ま、待て! 投降させてくれッ!」

「頼むッ!」

「いかがなさいますか」

 

 そうなると、もうこの城を防衛することは不可能だ。

 何せ壁という圧倒的なアドバンテージがあるにも関わらず負けたのだ。

 平地線であれば勝ち目などない。

 門を開けられた時点で防衛戦は失敗している。

 

 だから、こうやって諦めた兵士が投降をしてくる時がある。

 うーん、それでも軍人?

 後ろに守るべき民がいるというのに、その前の前で武装解除するなんて正気じゃない。

 お前らに支払われている給料は、今この時のためじゃないのか?

 

 いつも正規兵にはそれなりの特権が認められているのは中華共通だ。

 お前らが兵士である以上、その義務を果たしたまえよ。

 

「ん。殺せ」

「御意」

「ひ、ひぃッ!」

「か、金ならあうグッ」

 

 うんうん。

 臆病者には死を。

 戦いっていうのは、一度始まったらどちらかが死ぬまで終わることができないんだよ、普通は。

 まあ民間人は、まあ、うん。

 私は現代人なわけだしー?

 不必要な殺生は好きじゃないしね。

 

 え、投降した兵士の殺害は不必要なんじゃないかって?

 いやいや、なんか前にもいった気がするけど、彼らは兵士だよ?

 兵士はいつか戦場で死ぬために生きているような輩だし、むしろ殺してあげるべきだよね。

 

 あと普通に男の捕虜なんて、奴隷でもそこまで高く売れない。

 確かに労働力としては魅力的ではあるけど、秦まで運送している間の食費とかリスクとかを考えると、ここで殺した方が何かと安上がりではあるしね。

 

「風鈴様、馬をどうぞ」

「ん。ありがと」

 

 気がつけば蛮兒が横で私の馬を持ってきてくれていた。

 

 ……キミ本当に仕事ができるね?

 

 

 ♢

 

 

「急報ですッ!」

 

 城を攻め落としてから約一週間。

 食料が結構多めに保管されていたおかげで、一週間ずっと美味しいご飯が食べれてホクホクな私に嫌なことを言い始める伝令。

 

 殺そうかな?

 殺せば私のこの天国を守れるよね?

 ってできたらいいけど、この伝令は私の部下だし、流石に殺すのはないかな。

 ふん、命拾いをしたな!

 

「風鈴様、物見からの報告ですッ! こちらに迫ってきている軍勢があるとのことですッ!」

「具体的に」

「はッ! 数は五万ッ! 周辺の城邑から兵士を吸収しており、数を膨らませている模様ですッ!」

 

 んーなるほど。

 けど周辺の城邑で兵士を徴収しているってことは、相当軍の足が鈍くなるでしょうに。

 今彼らがするべきことは、真っ先に雲原中に散らばって行動している摎軍へ強襲することじゃない?

 

 〈怠慢ですね。もしくは、寄せ集めなために駆けつけようにも駆けつけれない、という可能性もあるでしょうが〉

(んーなるほど。まあ傲慢であっても烏合の衆であっても、さすがに二千程度じゃ何もできないし、おとなしく摎サマの元にまで合流するべきかな)

 〈それがよろしいかと〉

 

「さらに、率いている将軍は魏火龍七師の一人、晶仙であるとのことですッ!」

 

 え、魏火龍?

 まーた魏火龍が出しゃばってきちゃったの?

 しかもそこまで名前を聞かない相手がまた送られてきちゃったよ。

 

「魏火龍の首、二つ。これは摎サマも、昇進待ったなし」

「……ハッ。誠に」

「うん。じゃあ、畳むように」

「ハハッ! 伝令を出せ! 軍を畳ませろ!」

「御意!」

 

 うんうん。

 魏火龍の首を二つも取るんだ。

 これは摎サマ昇進するでしょ!

 そして私もその分昇進するし、報酬もガッポガポ。

 そして報酬でいろんなことをするんだー!

 

 〈まあそのためには魏火龍を討ち取らねばなりませんがね〉

(うーん。やっぱり私たちだけで戦う感じ?)

 〈雲原で摎軍のみであったため、今回もそうなるかと〉

(うへーまじか)

 

 けど兵士を徴収しながら進んでるから、多分戦う時は七万ほどにまで膨れ上がると思う。

 摎軍は全体で二万二千ほど。

 前回の戦いでしっかりと六千もの兵士を失っている。

 まあ倍ほどの相手に、よく六千程度で済ますことができたと思う。

 

 だけど、今回は三倍以上の相手だ。

 これは流石に戦力差がありすぎる。

 無謀としか言えない。

 そんな無謀な戦いを制してこそ、大将軍ってやつだよね!

 

 〈マスター、今回の戦いは長期化すると思われます〉

(その心は?)

 〈やはり敵の数が問題です。先の戦いのように四万を貫いたとしても、無傷の三万に圧殺されて終わりです〉

(んー)

 〈私達は問題ありませんが。摎軍全体の勝利は不可能と言っていいでしょう〉

 

 うん。

 多分私達はきっとギリ生き残れると思う。

 まあほとんどの部下を失うことになるだろうけど、それでも私と蛮兒ガインコンビは生き残ることはできるだろう。

 

 ただ、摎軍はきっと全滅どころか壊滅するっていうのもなんとなくわかる。

 そしてそれは私にとっての負けと同じ。

 戦いっていうのが大事なくらい、摎サマのことも大事だからね!

 流石に摎サマ死んじゃったらご飯が美味しくなくなっちゃう。

 

 〈そしてそれは摎サマも理解していることです。ゆえに〉

(長期戦になるってこと?)

 〈はい。逆に相手は数に物を言わせて、短期戦を仕掛けてくることが予測されます。そのため序盤にどれほど被害を出さずに削り取れるかが重要です〉

 

 序盤で出来る限り魏兵を刈り取る。

 どうやら摎サマは広域戦をしようとしているらしい。

 まー摎軍の幹部達は、それぞれが独立して戦えるくらいには強いわけだし、問題なさげに思えちゃう。

 けど、調整すっごい大変じゃない?

 

 〈まあ摎サマなら大丈夫ですよ。何気に私の予測を超える結果を、稀に叩き出す人ですし〉

 

 へー摎サマってすごい賢いんだね。

 さっすが私を従わせてる人だね!

 

 ……え、まって参謀ちゃんを超える時がたまにあるの?

 化け物じゃねーか。

 

 〈まあ摎サマは伊達に最速で将軍になったわけではありませんから。……それにしても、わかっていたことではありますが、軍の足が遅いですね〉

(んー、まあ千人の頃と比べちゃうとどうしても遅く感じちゃうよね)

 

 軍が迫ってきているから、摎サマと合流しようと移動していた私だけど、やっぱり歩兵が多いのもあってか昔ほどのスピードが出ない。

 今回は負傷者も引き連れているし、尚更だね。

 

「風鈴様、偵察していた兵士からの報告です。魏軍の先行軍一万がすぐそばにまで迫っているとのことです」

「んー」

「……負傷者を切り捨てますか?」

 

 摎サマ化け物じゃーんとか言ってたらどうやら一万くらいの軍がすぐそばにまで迫ってきているらしい。

 え、なんでそんな近くにまでいるんですかね。

 それと負傷者は切り捨てないよ?

 流石に現代的な倫理観はまだ捨ててないからね?

 

 まあ足手纏いになるのはわかってたし、楽にしてあげるっていうのも考えたけど、今回の戦いは長期戦になるってわかってるし、少しでも戦力が欲しいからね。

 切り捨てることはしないよ。

 

 ということで、少し無理してでも軍の足を早めようか。

 

「気合い、入れよっか」

「ハッ! おい、気合い入れてこい!」

「御意!」

 

 ……見せしめに殺したりとかは、しちゃダメだからね?

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