アンキングダム   作:ラクらる

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数話前の時点で長平が数十年前って、ちょっと時系列が発狂してしまうので修正しました。(見切り発車の弊害)
今から長平事案発生させます。白起さんが。(倒置法)


上司が大将軍編
021:「韓、グッバイ!」


どうも、戦争でびっくりするくらいの戦果を稼いだ風鈴ちゃんだぞ!

第二次雲原攻略戦で二人目の魏火龍七師を摎サマ自ら打ち取ってくれたおかげで、魏軍は全面的に撤退。

私たち秦国が雲原を獲得することができた。

 

とは言え被害は相当なものだ。二万八千もいた摎軍は、終戦時には一万六千にまで数を減らしていた。

 

貴重な弓騎馬の被害は軽微ではあるものの、豪雷(金棒のおじさん)俊哲(似非軍氏)それぞれの部下達はだいぶ減ったらしい。

 

五千で二万の相手をしていたって言っても、相手はほとんどが徴収兵、つまり民兵に毛が生えた程度の烏合の衆である。

豪雷(金棒のおじさん)俊哲(似非軍氏)の率いる部隊は、熟練の正規兵で構成されているからそこまで被害は出ないでしょって思ってたけど、戦線復帰が叶わない兵士が二割を超えるらしい。

 

乙ニダ〜。

 

〈マスターの部隊は七割以上が再起不能になっていますが〉

(……まあ角栄と黒剛は生きてるし、別にいいでしょ)

 

そう、なんと黒剛と角栄は生き残った。

とは言え彼らの指揮する部隊はそのほとんどが討ち取られてしまうほどの被害を叩き出してるし、黒剛に至っては片目を失う怪我をしている。

 

具体的に言えば、角栄が率いる歩兵部隊で生き残ったのはわずかに二百、黒剛率いる騎馬隊で生き残ったのは百ほど。戦争前は二千もいたというのに、生き残ったのは一割程度。

戦争の悲惨さが良くわかるね!

 

〈まあ猛禽兵団相手に生き残っただけマシでしょう〉

(そうだね。中途半端な実力しかない連中を削ぎ落とすことができたって考えると、むしろプラスかも?)

〈絶対プラスではありません〉

 

ちなみに私が率いていたガイン隊と蛮兒隊混合の五百は三百にまで数を減らしちゃいました。

ガイン族は数十人しか死んでいないらしいから、半分以上が平地の人間で構成された私兵達だね!

ガイン族の戦士達はタフで使いやすいってことがわかったから、どんどん異民族を吸収していくのが今後の目標かな。

 

〈それがいいでしょう。最終的に数万ほどの住民を抱え込む予定です〉

(おーじゃあ異民族だけで構成された軍とかもいずれ作れそうだね!)

〈はい。まあ十年以上の長い時間がかかりますが。いずれはそうする予定です〉

 

それは楽しみ!

けどそれ以上に嬉しいことはさ、あれだよねあれ!

 

「……それほど嬉しいのですか」

「……もちッ」

 

辰行(留守番統括)さんが疲れた顔をしてため息をはいているけど、私にはそれが理解できない。

私たちの上司が昇進したんだよ?

秦国でも六人しかいない大将軍に!

 

大将軍、あの大将軍だよ?

部下の私としてはとっても嬉しいよね!

私をクソガキとか言って睨んでくる豪雷ですら、素直に笑顔で私とお酒を飲むくらいだ。

 

そのくらい喜ばしいことなのに、辰行(留守番統括)さんはなーんで額に手を当てているんだろうか。

もっとテンション上げてこうよ!

 

「もうあれから一ヶ月経過していますが……」

「嬉しいものは、嬉しいの!」

 

嬉しいんだから仕方がないでしょ!

何を言っているんだか。たかが一ヶ月経過したからって、この熱が冷めるものか!

 

「まあ幸せそうで何よりですよ……。あ、こちら新しい書簡です。確認をお願いします」

「……んー」

 

幸せの絶頂期だというのに、容赦無く拷問をしてくる辰行(留守番統括)さん、ドSすぎる。

まあこれを確認するのは参謀ちゃんだし、別にいんだけどね。

ぱぱっと参謀ちゃんの言われるがままに色々指示を出しておく。

 

「最後に、これも中央に送るように、指示しておいて」

「かしこまりました。……ああそれと蛮兒から伝言を預かっておりました。どうやら準備が完了したようです」

「……ん」

 

おー。

蛮兒には私兵部隊とガイン族部隊の選出をしておいてって伝えてたから、多分それが終わったってことなのかな。

まさか一ヶ月もかかるなんて思いもしなかったよ。

 

〈前回、ドタキャンで連れて行かなかったメンバーを中心に、志願者で溢れていましたから。選別試験だけでも大変です〉

(そういえば先週、寝ずの演習試験を三日続けたのに一割しか脱落しなかったとか言ってたね)

〈ええ。彼ら本当にしぶといです〉

(いっそのこと部隊数を超過して全員組み込んじゃえばいいのに)

〈それをしますと、中央に睨まれることになりますが……〉

(あーそう言えばそんなこと言ってた気がする!)

 

確か数ヶ月前にも同じような会話をした気がする。

私の脳みそはとっても小さいから許して欲しいな♡

そんな感じで参謀ちゃんと無駄話をしながら移動すること少し。

 

何やら熱気を感じるその場所に足を踏み入れると、立っていた兵士たちが一斉に跪く。

みんなが一斉に跪いたせいで、すっごい熱気と共に気持ちの良いほどの鎧がぶつかる音がする。

文字で表すなら、ザッ!って感じ。

 

「風鈴様、ガイン族から一千、平地の私兵から二千。合計三千の選出が完了しました」

「……ん。ご苦労」

「ハッ!」

 

おーここには三千人もいるんだ。

どうりで熱気がすごいわけだ!

……あれ、なんかガインと蛮兒がじっと私を見つめてる。

何か言いたいことでもあるのかな?

 

「……どうしたの」

「ハッ! ……我儘なことではありますが、この二つの部隊に名を授けていただければとッ!」

「我ラ戦士達モ、主カラ新タナ名ヲ授カリタイ」

 

え、それだけなら良いよ。

じゃあ蛮兒の部隊は赤鈴隊、ガインの部隊は青鈴隊ね。

そう伝えたらすっごい喜んでくれた。

もうなんとなく私の苗字をぶち込んで色分けをしただけだけど、そんなに喜んでくれるなら私としても嬉しいよ!

 

赤鈴隊騎馬二千、青鈴隊騎馬一千の合計三千!

うーんバッチバチに騎馬しかいないね!

歩兵はどこなの歩兵は!

 

一応角栄隊が歩兵重視にシフトチェンジしたって言ってたけど、黒剛は逆に騎馬重視で行くとか言ってたから、騎馬に偏重なのは変わりなしだね!

平地戦だと問題ないけど、森とか攻城戦とかではちょっと真価を発揮しずらいかも。

 

〈一応歩兵の方も育成をしているようです。しかし今はやはり少数精鋭であったほうが良いですし、何より風鈴様の戦い方は機動力あってこそ絶大な効果を発揮します〉

(じゃあ今のままでいっか。けどいずれは歩兵もしっかり用意しなきゃだね)

〈はい。全て抜かりなく〉

 

まあいずれ歩兵部隊もしっかり用意するならいいや。

とりあえず次の戦争をしっかりと乗り切らなきゃね!

……そう言えば次の戦争ってどこだっけ?

 

〈次の戦争は魯陽……つまり韓国方面ですね。朝鮮半島の韓国ではありませんよ。あそこは未だガチ原住民の巣窟です〉

(韓かー。なら魏と趙の二カ国を相手取らなきゃいけないのね。大変そ)

〈特に魏火龍を二人も失った魏国は落ちた名声を回復するために、何がなんでも韓を守る軍を派遣してくるでしょうね〉

 

へー。

それはなんとも……楽しみだね!

 

……。

うん……。

 

私が赤鈴隊と青鈴隊を発足させてから約二ヶ月もの時間が経過した。

そう、あれから二ヶ月私たちは最前線に立つことなく、紛争地隊で敵軍を蹴散らすことしかしてなかった。

 

理由として大きく二つある。

 

まず一つに、秦国の国境が現在進行形で大きく変動しているからである。

もっと具体的にいうと、六代将軍の一人である白起大将軍が韓の城を馬鹿みたいに陥落させているからである。

 

そのせいで私たちは前線地帯だというのに、練兵すらできるほどの余裕があった。

白起さんぱねぇ。

一応趙国と魏国が援軍を送って阻止しようとしているらしいけど、その援軍には他の大将軍が対応に当たっているせいで、私たちには一切関係ない。

 

そして二つ目に、そもそも摎軍は軍としてまだうまく機能できてないというところが大きい。

何せ、豪雷(金棒のおじさん)俊哲(似非軍氏)俊力(ポニテおじさん)の各五千人将が将軍になってしまったのだ。

 

半分以上が新顔ばかりであり、高度な連携を主軸とした作戦を立案する摎サマにとって、互いの理解度の低さは致命的になりかねない。

 

たった数ヶ月前に五千人将になったばかりのペーペーがいきなり将軍とかおかしいと思うけれど、何やら色々と権力が動いてこうなったらしい。

一体何があったんですかね。

 

私はまだ五千人将なのに。うう。私彼らと違って魏火龍の首も取ったんだよ?

そんな私が五千人将止まりなのは納得がいきません!

 

〈いや、そもそもマスターの五千人将も早すぎますけど。それに彼ら三人は摎サマの腰巾着と見られていましたからね。ここ一年でだいぶ評価が変わってきたおかげで、晴れて長年の苦労が報われたというわけです〉

 

うぐ。つまり私の功績が足りないってことらしい。

まともすぎて反論できない。

確かに私は二十歳にもなってないのに、将軍一歩手前にまで昇進している。

前世で表現するなら、高校生なのに自衛隊の高級幹部になってるってことだよね。

 

一つの作戦の責任者くらいの地位ってことだね。

うーん高校生でそれはえぐい。

まあ摎サマも将軍一歩手前だったっていうし、そこまで天狗にはなれないけど。

 

さて幹部が昇進したせいで新顔が増えた摎軍は、空白地帯で練兵中ってことで、暇を持て余した私はせっせと周辺の韓軍残党を蹴散らしているのが今の現状である。

 

「風鈴様、第三赤鈴隊が予定通り裏を取りました」

「……ん。じゃあ一気にぐしゃっと、しちゃって」

「ハッ! 」

 

韓軍の方向に腕を向けて、紙を握り潰すようなジェスチャーをしてみる。

たったこれだけで、なんか頭のいい知将のような雰囲気を出せるよね!

 

「投降兵はいかがいたしますか」

「……斬り捨て」

「ハッ! 角栄と黒剛に合図を出せ! 殲滅だァッ!」

「御意ッ!」

 

捕虜はいらぬのじゃー。

身代金を要求してもいいんだけど、ぶっちゃけ手続きがめんどいしね。

実際やるのは参謀ちゃんだからいいじゃんって思うかもだけど、それでも面倒くさいものは面倒くさいんだよね。

 

ということで斬り捨てるように指示を出す。

すると時をおかずに左右から展開した角栄隊と黒剛隊がゆっくりと包囲網を縮めていって、中央に韓軍が密集したところで、ガイン率いる青鈴隊が正面から突撃し韓軍を粉砕する。

 

後ろに逃げようとしても赤鈴隊が待ち構えているから、彼らに逃げ場は存在しない。

どんまい。

ふーこれでここら一帯の残党狩りは終わったかな。

参謀ちゃん曰く、そろそろ摎サマから戻ってこいっていう命令がくるらしい。

お、なんか連絡係の人がこっちに近づいてくる。

 

「風鈴様、本隊より伝令です!」

「……ん」

「掃討が終了次第、摎軍本隊に合流せよとのことです!」

 

おー。さっすが参謀ちゃん。しっかりと言い当てるのすごいよね。

よし、それじゃあこのチマチマとした小競り合いをさっさと終わらせて、愛しの摎サマと合流しなきゃだね!

 

「……ん。殲滅急いで」

「ハッ! おい、予備も突撃させろッ! あのクソ共を今すぐ消し去れッ!」

「御意ッ! ン突撃だァァァ!」

 

いってらっしゃい。

 

 

 

 

「ん。来た」

「おいクソガキ。いい加減まともな言葉喋れねぇのかよ」

「うるさいハゲ」

「殺すぞ」

 

相変わらず豪雷(金棒のおじさん)はうるさくて元気だ。

もう少し心穏やかにすることはできないんだろうか。

私を見習ってほしい。

ほら、摎サマも苦笑しながら豪雷(金棒のおじさん)を見ているじゃん。

 

「……つまり俺達は白起大将軍が担当してた戦線を引き継ぎゃいいってことだよな?」

「そーなるな」

「あら豪雷、理解できたの?」

「お嬢、流石に理解出来ますって……」

 

ふむふむ。

どうやら破竹の進撃を続けていた白起大将軍が、別の戦場に移ってしまうらしい。

うーん、どこに移動するんだろうね?

 

〈多分長平ですね。韓が停戦交渉を行うために割譲を申し出た場所です〉

(へー? じゃあなんでそんなところに白起大将軍が派遣されるの?)

〈まあ深くもない話があるんですよ〉

 

参謀ちゃんが言うストーリーは以下の通りだった。

 

まず白起大将軍が韓を侵攻。

それにより韓北部である長平一帯が孤立。

韓はここを秦に上げるから戦争やめましょうと提案。

長平一帯の領主達大激怒&趙に援軍を求める。

秦慌てて長平に軍を送る。←今ココ。

 

ってことらしい。

うーん風鈴ちゃんにはわからないね!

とりあえず白起大将軍が抜けた枠を私たちが埋めるってことね把握。

 

「趙の騎馬隊はつえーらしいからな。白起さん大丈夫かねー」

「あ? そんときゃお嬢の出番だろうが!」

「いやいや、常識的に考えて、白起さんが負けた相手に俺たちはちょっときつくねー?」

「何ひよってんだ。いけろだろそんくらい!」

 

豪雷、なんか最近すっごい脳筋になってない?

いや別にいいんだけどさ、なんか黒剛と雰囲気似てるからちょっとやめて欲しいんだけど。

 

黒剛も片目失ってから、「風鈴様、一番槍はこの我に任せてくだされ!」とか言ってヒャッハーしてるんだよね。

お前そんなキャラだっけ? って思いながらまあ練兵になるかと思って突撃させてるけど、あれ格上相手には危険だからそろそろ大きな失敗しそうだよね。

 

「目下の目標は韓の陽城を目指すよ」

「……え、お嬢それマジで?」

「おっほ、さすがうちらの大将だなー」

「練兵には、ちょうど良いかも知れぬが……」

 

……。

なんか側近の将軍三人衆は結構ざわめいているけど、私にはなんのことやらさっぱりですわ。

なんでこんなにざわついてるの?

 

〈マスター、陽城は韓の中でもトップクラスの都市です。陽翟城と言うのが正しい名前であり、これは韓の旧王都ですよ〉

(え、旧王都を陥落させるの? まじで?)

 

あーそれはやばいわ。

旧王都とはいえ元々首都だったんでしょ?

 

つまり今の日本で言うところの京都を攻め落としまっせーってことでしょ?

すごい大仕事だよね。

 

それに旧王都ってことは、絶対守りやすいところにあるじゃん。

そこを攻めるのはだいぶ大変だろうし、大将軍級にしか任せることの出来ない案件だろう。

 

どうせ陽翟城の周囲にはそれを支えるための支城があるわけで、そこをまず攻め落とさなきゃいけない。

これは一年以上ずっと戦い続けることになるのは間違いないね。

 

……めっちゃ楽しみなんだけど。

えやっば! さすが摎サマ! ここ数年どでかい戦いがなくて溜まってたんだね! 私と一緒ー!

 

〈一年ほど前、秦は大規模な軍事作戦をしたじゃないですか〉

(んー? けど結局レイオー殺せてないしノーカン)

〈さようですか……〉

 

そんなこんなで六大将軍の第六席、摎サマが本格的に始動!

周囲で野営していた軍勢は早急に身支度を整えると、進軍を開始した。

 

私は摎サマの護衛ってことで前の方にいるからわかるんだけど、うーんすっごい大部隊。

遠く後ろの方にまで続く軍勢は、まるで黒い絨毯のようだ。

 

合計六万って、えげつないよねぇ。

待ってろよ韓!

来年には戦国七雄を戦国六雄にしてあげる!

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