唐突だが、軍隊は左にいるものが有利である。
その理由は盾を左手で持つからだ。盾は左手で持つので、横一列に並ぶと左にいる兵士は体の右半分と左半分を盾で守ることができる。だが、右にいる兵士はそうではない。自身の盾は左半分と隣の兵士の右半分を守るために使われている。つまり右半身を晒すことになるのだ。
そういうわけで戦場では盾で全身を守ることができる左に弱兵を、右半身をさらしてしまう右側に強兵を配置するのが一般常識である。
話を戻して、
そんな
まあ味方から見て丸わかりってことは、敵から見ても
体が大きいせいで狙いやすい
ただまあ
んで、そんな
〈予測では、敵左翼の将軍である軒峰が襲撃に仕掛けてくるかと〉
(あー答え言われちゃった。楽しみにしてたのに……)
〈現場で驚かれては困ります。マスターはまだか弱いですから油断大敵ですよ〉
(く、悔しい!)
いや私そこまで弱くないんだけど。自分で言うのもなんだけど、そこらの将軍の直下兵なら五十人相手でも負けない自信あるよ?
〈いえ、マスターの主装備は剣です。多対一ではどうしても捌ききれない事案が発生するかと〉
(うぐぐ。いつかは一人で千人斬り達成するから! 絶対強くなる!)
〈いえ、別に私が戦場ではサポートするので無理に戦わなくていいのですよ? 〉
(やだ!)
〈はぁ……〉
だって私から剣を取り上げたら何が残るのよ。何にも残らないよ? マジで。
それに剣は私に希望をくれたものの一つだ。手放したくはない。
さて、気持ちを切り替えてですね。今私は持ち場を離れて左側で敵兵を吹き飛ばしている
パッと見たところなんか、ゴツイ体を持つ人に矛で体を真っ二つにされそうになってた。え、結構クライマックスじゃん。途中で馬をゆっくり進ませすぎたのかもしれない。
〈いえ、これでいいんです〉
「(いや、絶妙に間に合わないよ!? あーもう!)……
「ハッ!」
私の少し後ろで駆けていた
困った時の
けどなんかその槍、
と思ったら
わーお。威力は凄まじいね。と言うかゴツい敵兵、何か察知したのか豪雷から離れて、じっとこっち見てる。そのままとどめ刺してたら豪雷と一緒に串刺しにされてただろうし、賢い判断だね。
「クソガキ……」
「ん。来ちゃった」
全身なぜか傷だらけの
まあ私は別に睨んでなんかないけど、相手がすごい睨んでくるから仕方なく、殺すぞ的な視線を送る。
〈マスター、そいつが軒峰です。敵左翼の将ですね〉
(へー結構ゴツいんだね。っていうか前面中央で摎サマが爆進してるけど、大丈夫なのかなこの将軍)
〈敵の目的は長期戦です。まず左の支えである豪雷を殺し、左を蹂躙。救援に摎サマがやってくる前に主力は引いて、摎サマのいなくなった突出している前面中央を叩く予定かと〉
(まあ摎サマはここがピンチでも救援には来ない気がするけど、それはそれで左が壊滅して後方の柔らかい部分がヤバくなるってだけか)
〈ええ。そうならないために摎サマはマスターを後ろに配置してたと思いますよ〉
ほえー。できた上司だよね摎サマって。さすがは私にこの人のためならって思わせる人だよ。うんうん。つまり私は摎サマに期待されてるってことだよね。じゃあ頑張らなくちゃね!
「クソガキ、持ち場ァどうした」
「ん。そんなものない」
「あるわボケェ」
周囲では軒峰さんの直下兵と私の可愛い部下たちが殺りあってるけど戦況はとっても優勢。何故なら元々軒峰さんの直下兵は
それに私の部下達は、蛮兒みたいに見た目超イカツイ人たちばかりで、実力もしっかりあるから、このままなら多分問題なく敵をすり潰せる。
だから一番の問題は。矛をこれでもかと握りしめながら私を超睨んでる魏軍左翼の将軍、軒峰さんだ。彼は
そんな彼だけど、豪雷をここまで追い詰める程度には強い……のかな? なんか豪雷の方が全然強そうなんだけど。
まあ豪雷の傷的に、多分軒峰さんの直下兵が結構横槍を入れてた感じするけど。うん。その程度なら問題ないかな。これは豪雷が多対一が苦手だったからこんなことになったのか。まあ今は私の部下が他者の介入を防いでいるから、一対一の状況だね。ということでさっさと終わらせよう。
「貴様、何者だ……」
「……」
「チッ、話す気がないとは、舐められたものよ!」
「あ、おいクソガキ!」
どう言う感じで自己紹介をしようかもよってると、舐められたと思ったのか軒峰さんがすごい形相で馬を走らせてくる。え、せっかく名乗ろうとしたのに……。
まあいいや。きっと相手も早く仕事を終わらせたかったのだろう。私にとっても好都合であるし、何より相手がかなり焦っているというだけで十分な収穫だ。焦って冷静じゃない相手ほど、殺りやすいものはない。
振り下ろされた矛をそのまま剣を添えながらいなすと、ガラ空きになった軒峰さんの喉元をスパッと切り裂く。血で汚れたくはないからそのまま馬を進ませて振り向くと、案の定首からすごい量の血を吹き出しながら、地面へと崩れ落ちてく軒峰さん。
いやうん。強かったよ。確かに一撃で終わらせたけど、正直剣でいなした時、腕関節がイカレるかと思ったくらいには、芯のある矛だった。まあその後首元がガラ空きだったのが残念だけどね。あそこを対応されたら、その時はちょっと不味かったかも。まあ結果は見ての通りだけどね。
「将軍ンンンンン!?」
「軒峰様ァ!」
「おのれ! 軒峰様の仇を取れェい!」
「させるかよ」
おーなんか軒峰さんの直下兵のみなさんブチギレてるじゃん。けどもうちょっと周囲を見てごらん? 私の可愛い部下達がだいぶ君たちの仲間を片付け終わったようだけど。
周りそっちのけで私に突撃しようとした軒峰さんの直下兵は蛮兒に斬られて、地面へ叩き落とされる。投降を薦めたいのだけど、この雰囲気はちょっと無理そうだ。
なんか相手は死兵になってるし、言葉を理解するためのリソースは残されてなさそうだった。
じゃあ私が出せる命令は一つだよね。
「ん。じゃあ殲滅で」
「ハッ! 殺せェェ!」
「オォォ!」
「死ねィ!」
「こっちのセリフだボケェ!」
戦術的にもここで敵の使える兵士を潰しておくのは重要である。こういう作業を怠ると、後々痛いしっぺ返しを喰らうものだ。短期決戦を仕掛けている今なら尚更ね。さてと。今の危機は去ったし、
あー後ろから下腹部を突き刺された箇所が結構ひどそうだ。まあ顔色的に大丈夫そうだけど、感染症に罹ったら結構まずいと思うし、一旦
別に私は
「
「……余計な気遣いしてんじゃねーよクソガキ」
ですよねー。そうなりますよねー。知ってたからこそ虚しく感じられる。
結構真面目なお願いなんだけどな。いやまあ戦いこそが人生の全てだ、とか
「
「ハッ。このままぶち抜くぞ! 突撃態勢!」
「オオォ!」
じゃあ私は偉い子なので、さっさと戦果拡大に勤しみますかね。と言うことであらかた強者を喰らい尽くした部下達に号令をかける。今部下達はそこそこ興奮しているからね。きっとおかわりが欲しいんだと思う。私も軒峰だけじゃなんだか物足りないしね。
と言うことで今から風鈴が行きますので待っていてくださいね摎サマ!