妖怪・カイザー好き好き黄金裔   作:カイザーの椅子

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途中から細かいことは気にせんでいいやとなりました。
オンパロスに竹もあればそうめんもある。


第11話

「──っし、これで完成」

 

 エラポスは竹を半月状に加工してそれをいくつか組み立てレーンを製作していた。

 今日は三馬鹿で集まって流しそうめんをしようと、役割分担を行い、各々作業を行っていた。

 

「おお、完成してるじゃないか!」

「これだけでもテンション上がるよな」

 

 必要なモノの買い出しに行っていたファイノンが戻ってくると、完成した流しそうめん器を見ると彼は興奮していた。

 いくつになっても、こういうアクティビティは男子の心を掴んで離さないのだ。

 

「こちらは食材の準備ができたが……お前達、水を流す用意はできているのか?」

 

 二人が盛り上がっているところに、モーディスが茹でたそうめんを乗せたザルを即席のテーブルの上に置く。

 

「モーディスママ……」

「殺されたいか?」

「変なこと言ってないで僕らも準備しようか」

 

 モーディスの言動があまりにも夕飯ができたのに遊んでいる子供達に小言を言う母親だったため、エラポスが反射で言葉を返すと殺意で返された。

 死んだところで死にはしないので、エラポスはノーダメージだが、ファイノンはそうはいかないため普通に命の危機である。

 モーディスに促された二人がセッティングを行い、あとは水を流せば始められるようにした。

 

「じゃ、水流すぞ」

 

 ファイノンが持ってきたホースと水を入れた樽を接続して、流しそうめん器に水を流す。

 三人とも思わず「おお」と口を開いてしまい、しばらくそうめんを流さずに水が流れるのを見守ってしまう。

 

「そろそろ麺を流そうと思うんだけど……これ、誰が流すんだい?」

「……じゃんけーん!」

 

 どうせ理由を捏ねて、各々食べる側に回りたがるのだから、さっさとじゃんけんで最初にそうめんを流す係を決めた方が早いと判断して、じゃんけんを強行する。

 

「いや、俺かよ」

「言い出しっぺの法則ってやつだね」

「早くしないと水が切れるぞ」

 

 どや顔で自分のつゆ鉢に好みのつゆを注ぐ二人を尻目にエラポスは片手にザルを持って、流しそうめん器に麺を流す。

 

「行ったぞー」

 

 麺は気を抜いたら取れず、とはいえしっかり見ていれば取れる。程よいスピードで流れていき、二人の間を通ろうとする。

 

「はあぁっ!!」

「くぅっ……!!」

 

 ファイノンとモーディス。二人の箸が同時に麺を掴もうとして激突する。

 お互い辛うじて取れたの麺を自分のつゆ鉢に通して啜る。

 

「いや、譲れよ。そういう勝負じゃねぇから!」

 

 無駄に白熱して最初から麺が受け皿に少量だけ貯まってしまうのを見てエラポスは勿体ないと思いながら次の麺を流す。

 

「ふんっ!」

「やられた……!」

 

 次に流れて行った麺は、モーディスが腕をレーンの奥に伸ばすことによって全部取りきり、つゆ鉢に麺をつける。

 

「その程度か。救世主?」

「次は取る!」

 

 勝ち誇った顔で麺を啜るモーディスに、ファイノンは歯噛みする。

 それからはローテーションで麺の供給役を変えつつ、三人が五分五分の戦いを繰り広げる。

 

「薬味があるとはいえちょっと、味にも飽きてきたな」

「まだ半分近く残ってるぞ」

 

 キロ単位で茹でられた麺はまだまだ残っている。

 大食い勝負のつもりでいた三人はまだまだ胃袋の限界は越えていないが、味には飽きが来ていた。

 

「……メーレで流してみる?」

「それだ」

 

 アホが三人揃っても文殊の知恵には程遠い。

 

 水を流していたホースを酒の樽に繋ぎ直した辺りで、金の糸によってオクヘイマの中の出来事を把握している黄金裔が、溜め息を吐きながらある人物に連絡を入れた。

 

「うっすら酒の味がする……」

「……ない。これはない」

「ない、な」

 

 普通に味を損なったため、一度ホースを外し、受け皿に置きっぱなしになって酒とそれを浴びた麺の消化にする羽目になった。

 勢いのまま行動して微妙な気持ちになり、それを共有するのもまた良き思い出の一つである。

 

「貴様達、何をしている?」

 

 大の男三人が何とも言えない表情で大量のそうめんを囲んで啜っている現場に三馬鹿の監視を要請されたセイレンスと、たまたま、暇だったから、気まぐれで、何となく、彼女に着いてきたケリュドラがやってきた。

 

「この大量のそうめんは何だ? ワタシもいただいてもいいのか?」

 

 三馬鹿の中心にある大量のそうめんをセイレンスは物欲しそうに見つめる。

 落ち着いた雰囲気に反して宴が好きな彼女は、これの状況を大食い大会と勘違いし、胃袋の許容量も凄まじくこれで足りるだろうかという心配さえしている。

 

「箸とつゆ鉢はこれ、薬味もご自由にどうぞ」

「ありがとう。いただくとしよう」

 

 エラポスに箸とつゆ鉢を渡され、セイレンスがそうめんの囲いに加わると、その外側でぽつんと一人立たされているケリュドラはジト目でそうめんの囲いと流しそうめん器を交互に見て溜息を吐く。

 

「いや、貴様達は流しそうめんをしていたのではないか?」

「あまりにも……ずずっ、そうめんが多過ぎて一々流していると効率が悪くて……」

「これなら三人同時に箸を進められる。水に着けているとはいえ、ずずっ……時間が経てば味が損なうからな……」

 

 ファイノンとモーディスが箸を止めずにケリュドラの指摘に返答すると、ハッとした表情でエラポスが彼女の方に顔を向ける。

 

「もしかして、カイザー。流しそうめんがしたかったのか?」

「いや、そうではないのだが……」

 

 流しそうめん器を片付けてからにしろと言おうと思ったが、この空間でツッコミ役に回ったら色々と良くないことになりそうだったためケリュドラは四人を止めることを諦めた。

 エラポスはケリュドラが流しそうめんをしたいのかと勘違いしたまま、そうめんの山から何束分か取り分けて、ホースを再び水の入った樽に接続する。

 

「カイザー、箸とつゆ鉢はこちらに……つゆと薬味はお好きなものを」

「うむ」

 

 なんだかんだで悪くはないと思ってしまったケリュドラは竹樋の下流の方に待機して、麺をセットしに行ったエラポスの背中を見つめる。

 その背中に少しだけノスタルジックな気分にさせられながら、流れてくる麺を待ち、目の前に来たと同時に掬い上げてつゆにつけて啜る。

 

「……悪くはないな」

 

 味もそうだが、ヒュペルボレイオスに居た頃のことを思い出して、たまにはこういうことも悪くないと思ってしまう自分がいた。

 それからしばらく流しそうめんを楽しんでいると、噂を聞きつけたヒアンシーが通り掛かった。

 

「皆様こんなところで何を……流しそうめんをやってるんですか? やってないんですか? 何ですか、この絵面は?」

「流しそうめんとそうめんドカ食い?」

「エラポス先輩、こういうことやるならわたしも呼んでくださいね……あと何人か呼んでまいります」

 

 少人数で大食いするよりか、大人数で分けた方が良いだろうと、ヒアンシーが知り合いを呼びつけ、さらに駆けつけた者が人を呼ぶ。気が付けば数十人も集まった人々が流しそうめん器を囲んでいた。

 

「カイザー! 折角ならカイザーがそうめんを流す……いや、征服された方が皆喜ぶかと思うのですが……」

 

 大人数になり、もはや流れた麺を取れずとも宴のようになってしまった流しそうめん会に参加しているだけで満足している者も居る。少し食べて満足したケリュドラは離れて見ていたのだが、その場を一度他の者に預けたエラポスが麺の流し役をやらないかと提案してくる。

 

「ここまで高まった興を盛り上げるのも僕の役目。か……良いだろう。乗ってやる」

 

 エラポスが人混みを掻き分けてケリュドラの道を開いて、竹樋の上流まで案内され、踏み台の登ると参加者の視線が集まる。

 ケリュドラの横に控えるエラポスがそうめんの乗ったザルを程よい高さまで持ち上げて彼女が麺を流しやすいようにする。

 

「皆の者。この度は急な宴になってしまったが、よくぞ集まってくれた。好きに楽しんでくれたまえ」

 

 ケリュドラの音頭と共に面が流されると同時に歓声が上がり、その日の夜まで流しそうめん会が始まった。

 




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