妖怪・カイザー好き好き黄金裔   作:カイザーの椅子

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今日はちょっと用事あるので短めでぱぱっとって感じです。


第6話

「王子。今日こそ決着を着けようか」

 

 サウナの中で腰にタオル一枚巻いただけの姿のエラポスはいつになく真剣そうな表情で、黄金裔の一人にして、『不死』の祝福をその肉体に与えられた戦士、モーディスに勝負を挑んでいた。

 エラポス本人はモーディスのことは嫌いではない。むしろ、生真面目で面倒見の良い性格である彼のことを評価している。

 

「勝手にしろ」

 

 しかし、死ぬことが無い不死の祝福に勝手に対抗心を燃やしている。

 エラポスの蘇生とモーディスの不死が被っていると言って、こうして何かにつけて絡んでいた。

 ほぼ全員の人間からは勝手にやってろと言われて呆れられているが、お互いに根っこの部分は負けず嫌いのためしょうもない勝負が延々と繰り返されている。

 

「二人はまたやっているのかい?」

 

 たまたまサウナにやってきたファイノンが二人を見てまたやっているのかという視線を二人に向けるが、彼も人のことはとやかく言える立場ではない。

 どちらかと言えばモーディスといつも張り合う側であるため、この三人が揃うとエラポスかファイノンが誰かを煽り、最終的に三人揃って何かを競っていることが主である。

 そうなることがわかっているモーディスはファイノンの姿が見えた瞬間に溜息を吐いた。

 

「今日こそは勝つ」

「……既に汗だくだけど?」

「整ってんだよ……」

 

 涼しい顔をしてまだ余裕そうなモーディスとに対して、エラポスは既に大粒の汗を垂れ流し周囲にもその後が見受けられる。

 どうせ脱水で死んだとしても死にはしないので、忠告だけするに留めておくが、一時間後くらいの未来が鮮明に頭に浮かんでくる。

 

「そうかい。じゃあ僕は普通に楽しませてもらうとするよ」

「お、逃げるのか? 負けるのが怖いか?」

「救世主もその程度なのか?」

 

 冷静に本来の目的通り程よく汗を掻こうとするファイノンをエラポスとモーディスが煽る。

 

「は? 僕がいつ負けると言った? 負けないが???」

「そう来なくっちゃ面白くなってきた」

 

 登場人物全員アホ。

 エラポスがゴング代わりに熱された石に桶の中に入った水を豪快にかけて、サウナの温度が数段上がる。

 タオル一枚の男三人が汗だくなっているという光景をあまり直視したくないのか、また温度が上がり過ぎて耐えられなくなったのか大半の人間がサウナから出ていった。

 

「二人とも、ギブアップするなら今だぞ?」

 

 元々我慢強いモーディスと後から入ってきたファイノンはともかく、既に脱水が進んでいたエラポスは痩せ我慢をしながら二人に降伏勧告を出す。

 

「抜けるなら死ぬ前に出ろ」

「死に過ぎて我慢弱くなってきたんじゃないか? そんなことでカイザーの臣下が務まるのかい?」

「やったろうじゃねぇかよ……!」

 

 煽って良いのは煽られる覚悟のあるやつだけだと、エラポスの頭の中のイマジナリーケリュドラが囁く。

 どちらかと言えば、やるならカイザーの威光に賭けて死んでも勝てと言うだろうが、臣下として勝利は前提である。

 また水をかけて温度を上げていくと、三人の顔が険しくなっていく。

 

「……」

「…………」

「………………」

 

 無言で玉のような汗を掻き続ける。

 いくら黄金裔といえど危険な域にまで達しているが、ここで音を上げれば三人の中で一番下が自分になってしまう。

 それだけは避けたい。

 

 くだらない漢の意地の張り合いは終わる気配を見せない。

 

「……しゃべる余裕すら、無いようだな」

「はぁ? カイザーの可愛いとこ百個とか噛まずに言えるけど、聞くか?」

「それは勘弁して──」

 

 一番余裕のあったモーディスですら早く終われと思い始め、煽ることで誰かを落とそうと画策するが、エラポスに謎のスイッチが入り失言だったと後悔しかけた瞬間サウナに大量の水が扉から津波のよう、いや、津波そのものが三人を襲った。

 

「愚か者ども。頭を冷やせ」

 

 津波の正体はセイレンスが操った噴水の水だった。

 サウナで黄金裔三人が馬鹿をやっていると聞き、呆れながらも事態の収拾にやってきたのだった。

 

 サウナの中で発生した水流から外に流され、うつ伏せで横並びした尻丸出しの三馬鹿に冷淡な視線を向ける。

 

「これで良いか?」

「はい! ありがとうございます! もう大丈夫です」

 

 セイレンスを呼び出した張本人。ヒアンシーが眉間に青筋を浮かべながら彼女に礼を述べる。

 看護師として馬鹿げた真似をしている三馬鹿はケリュドラに纏めて処刑されれば良いとすら思う。

 

 この事はケリュドラに報告せずともキツめお灸を据えてくれるだろうと、ヒアンシーに任せてセイレンスはその場を去った。

 

「死ぬかと思った……」

「実際、死んでいたのではないか?」

「これは一番最初に流されていったメデイモスが一番下で一番最後に流された僕が──」

「そういうの、後にしてもらってよろしいですか~?」

 

 近くに流れてきたタオルを腰に巻きなおした三人が、やいのやいのと勝負の判定で騒ぎ始め、どこぞの暴君より恐ろしく見えるいつもの笑顔のヒアンシーが制止する。

 

 

 日が暮れるまで、ヒアンシーの説教は続き、ようやく解放された頃には三人揃って冷えて凍えそうになっていた。

 

「……で、結局今回は誰の勝ちなんだ?」

「貴様……まだそんなことを」

「これ以上はやめておこう。この後また別の勝負が始まるだけだ」

 

『やめておこう』

 

 服を着た三人が今回の勝ち負けを論じようとしたが、冷静になってそれなりに疲弊したため、その場で解散となった。

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