学園生活部と銃マニアの女子高生   作:三坂

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第11話 冷えた身体を暖めて

 

 

 巡ヶ丘市内、巡ヶ丘高等学院と並ぶ形で有名な高校として知られている巡ヶ丘工業高校。その名の通り工業系の学校であり、市内で最も就職に強い高校として知られている。

 そんな所から少し離れた場所、徒歩圏内で通える場所に存在している住宅街の一角に、その工業高校に通う高野優乃の住む一軒家が存在していた。

 

 家自体はガレージが併設された何処にでもありそうな外観をしているものの、屋根には大きめのソーラーパネル、更には雨水を貯水出来るタンクが家の裏に備わっており、災害に備えたであろう設備が伺えられる。

 

 

 だが結果的にその災害に備えた設備が今回の件で活かされる形となり、今でこそ使えている電気や水が使えなくなった場合でもある程度は問題なく籠城出来る形にはなっているらしい。

 そんな家の内部、1階にあるお風呂場の浴槽には家の持ち主である優乃ではなく、ついさっきやってきた警察官である美乃里の姿が

 

「〜♪」

 

 

 というのも彼女がこの家に入る前、自衛隊のトラックからものを運び出す際に濡れてしまい、身体は拭いたもののそれでも身体が冷えて風邪を引いてしまったのだ。

 そのため優乃に提案される形でお風呂を使わせて貰うことにしたらしく、こうして温かい湯船に浸からせてもらっているのだ

 

 ちなみに瑠璃は濡れていなかった上に、長時間車で過ごしていた疲れが響いてか1階のソファで爆睡しており、優乃はその付き添いといった形だ。

 

 やっぱお風呂はいいかも…そんなことを思いながら気持ちよさそうに浸かる美乃里だったが、ふと騒動前の記憶が脳内に過ぎる。

 こうなる前はよく妹の由紀と一緒にお風呂入ってたな…そんなことを懐かしみながら、同時に安否が全く分からない現状に少し心細い気持ちが過っていく。

 

ー…やっぱお風呂はいいねぇ…身に染みるほど身体が温もる…『ねーお姉ちゃん!一緒にお風呂はいろ!』…そう言えば騒動前はよく由紀と一緒に入ってたのを思い出すなぁ…ー

「……無事…なのかな」(独り言)

 

 今までは仕事に追われすぎてそんなことを考える余裕すらなかったのだが、こうして落ち着ける時間ができた途端に色々と考え込んでしまうのかもしれない。

 

ー…今までは仕事に追われすぎてそんなの考えられなかったけど……、こうしてゆっくりしてると…色々…ねー

 

 現状何処かに行く当てもないため、もし2人が問題なければ妹が通う高校に一度行ってみるのも有りかな…そんなことを内心考える。

 

ー…それに現状何処かに行く当てもないし…、もし2人がいいって言うなら…あの子の学校に行くってのも…ー

 

 もしそれで無事が確認出来ればいいのだが、もし感染者となって目の前に現れたことを考えると、思っていても行動に移しにくいというもの。

 だが安否を確認したいという気持ちも強く揺らいでおり、どうすれば…という表情で湯船に相変わらず浸かっていた。

 

ーでも…もし感染者として現れたことを考えると……、かといって見に行かない選択肢が思い浮かばない…。はぁ…どうすれば…ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私立巡ヶ丘学院高等学校、それは巡ヶ丘市内に存在する主要高校の1つでありながらも同時に唯一の私立高校だ。

 就職に強いとされている巡ヶ丘工業高校と比べ「学生の自主独立」を校風としているため、施設が充実しているのが大きな特徴となっている。

 

 太陽光、水力を併用した高度な発電設備、地下水を利用した浄水設備、充実した購買部、学食などの設備、更には菜園まであり、校内の設備だけでもある程度の自給自足が可能。なので災害時には避難所としての機能が期待されていたのだが…

 

 …まあそんな学校も爆発的に感染が広がったパンデミックには勝てなかったようで、今やこ子に通う生徒や教員のほとんどが感染者に成れ果ててしまい、建物も校内外を含め荒廃した世界に生まれ変わっていた。

 

 

 やはり人が集まるという場所である学校と感染症が相性が悪かったたのだろう、もはや人すら残っていないような雰囲気を醸し出していたのだが……

 どうやら僅かながらも生きながらえている生存者がいるようだ。

 

「くそっ!!」ダッダッダッ

 

 2階廊下を先頭に突っ走っていた胡桃は、シャベルを両手に握りしめながら焦りの表情を露わにしていた。

 騒動が発生してからというもの、3階の一部安全エリアで生徒会室の食料や屋上の菜園で食料を上手く食いつないでいた。

 

 しかしそれも尽きてしまい、食べ物を求めて2階にある購買室に向かったのまでは良かったのだが、外の土砂降りが影響してか運悪く校内へ押し寄せてきた感染者の大群に遭遇。

 現在進行系でその感染者の群れに追われており、時折前に出てきた感染者をしばき倒しながら、胡桃は最後尾にいる慈に後ろはどうかと尋ねる。

 

「このっ!邪魔ってんだ!(ドス!)めぐねぇ!後ろはどうだ!」

「相変わらず来てる!というか数がさっきより増えてる…!!」

 

 まあ案の定後ろからは列をなすように感染者の群れがよろけながらもこちらに迫っており、距離こそは離れているものの逃げ場所の限られる校内では焼け石に水。

 とはいえ逃げ道は確保出来ているため、とりあえず3階の安全圏に逃げ込めればどうにかなる…そんなことを思っていた胡桃だったが…

 

ーだーくそ!食べ物探して2階に降りたのが不味かったか!?いや今はそんなこと言ってる場合じゃねぇ、逃げ道が確保されてる間に3階のバリケードまで逃げn…!?ー

 

 そう上手くことが進むはずもなく、本来上がろうとしていた正面階段からも感染者の大群が上がってくるのが目に入った。

 自分と同じ3年生で騒動前は園芸部出身の若狭悠里も気づいたようで、正面から来てると思わず悲鳴混じりの大声を上げていく。

 

「…ちっ!」

ーくそっ!こっちからも来てんのかよ…!!流石にこれは私でも厳しいぞ…!ー

「せっ先生…!!正面から…正面からも…!!」

 

 完全に前後の逃げ道を挟まれてしまいこのままでは逃げることも出来ずみんな仲良く奴らに襲われてしまう…そう思った慈は、動揺する心をなんとか抑えながら必死で頭をフル回転させる。

 その近くでは彼女の右腕に抱きついて心配そうな表情を見せる胡桃達と同じ3年生の丈槍由紀の姿も…

 

「……」

ー落ち着いて…考えるのよ私…!このままじゃ生徒どころか私ですらも…!!ー

「…めっ…めぐ…ねぇ?」

 

 既に廊下には彼らの大群がうようよと群がっており戦闘が可能な胡桃だけでは突破が不可能、窓から飛び降りるという選択肢も候補にすら入らない。

 だが何処か籠城出来る部屋さえあれば…そう思った慈がふと視線を上げた先に、丁度いいと言わんばかりにドンと構える放送室の扉が…

 

ーあの数じゃ胡桃さんだけで倒すのは無理……ってことは廊下を使って逃げるのは不可能…、かといって窓から飛び降りるのはそもそも選択肢に……っ!そうだ、何処か籠城出来そうな部屋があれば…!ー

ガバっ

 

『放送室』

 

 

 幸い扉も頑丈そうなので、ここしかないと踏んだ慈は扉を開けながら生徒たちにこの中へ入るように指示。もちろん3人も先生の指示に従う形で胡桃を先頭に、悠里がその後に続く形で入っていく。

 

ーこの重厚そうな扉なら…いや…!ここしか安全な場所はない!ー

ガチャ!

「みんな、この放送室に!早く!」

「あっあぁ!」

「はい…!」

 

 2人が入り後は自分と由紀だけ…そう思っていた慈であったが、彼女の背後から何処からともなく現れた感染者が混乱に乗じて襲いかかろうとしているのが目に入る。

 

ーよし…2人は入った…後は丈槍さんと私d…ー

「…!?」

 

 本人は気づいておらず、いまから警告を出したとしても間に合わない…かといって自分は護身用の武器を持っていない上に、シャベルを持っている胡桃は既に室内。

 だがこのままでは彼女が襲われてしまう、そう思った慈は反射的に駆け出して庇うように由紀に被さっていく。

 

ーいっいつの間に…!ってこのままじゃ丈槍さんが…!っ恵飛須沢さんはもう中…、いまから呼んでも…っ!ー

ガバっ

 

 もちろん何が何だか分からない由紀は突然の行動に驚きながらどうしたのかと尋ねていくが、胡桃は2人の背後から襲いかかろうとしている感染者に気づいたようで声を上げながら駆け寄ろうと走り出す。

 

「ふぇ!?めぐねぇいきなりどうs…」

「っ!めぐねぇ、由紀!」ダッ

 

 しかしこの距離では由紀を護れても慈を襲うとしていゆ彼らを阻止するのは到底間に合わない。それでもなんとか間に合せようとしていた胡桃だったがもう駄目だ、そう直感した悠里は咄嗟に目を逸らす。

 

ーくそっ!この距離じゃ由紀は護れてもめぐねぇまでは…!!ぁあもう!ー

「…!っ」

 

 このままではやられる…この場にいた由紀以外の誰もがそう思った直後、突如感染者や外の土砂降りに負けないほどの声が廊下一帯に響き渡った。

 

「佐倉先生!!伏せてください!!」

 

 その声に胡桃と悠里は驚いてハッとした表情を浮かべていたものの、慈は聞き覚えがあったのか咄嗟に由紀を押し倒すように地面へと転がり込む。

 直後爆発音のような音が複数回聞こえたと思った直後、2人を襲おうとしていた感染者の頭部を生々しい音と共に何かが貫いた。

 

「…っ!」ドス

「わわっ!?」

パララララ!!

「ゔ…ぁ゙…」

 

 すると何かに頭部を貫かれた感染者は、抜けたような声を上げながら頭部から出血しつつ壊れたブリキのおもちゃのように踊りながら倒れ込む。

 助かった…内心そう思っていた慈は押し倒した由紀に怪我をしていないかと確認していき、本人からも大丈夫だと告げられると思わず安堵した表情を浮かべる。

 

ドスン

ー助かっ…た、はぁ…ー

「由紀さん怪我はないですか?」

「あっうん…!ちょっとびっくりしたけど…全然…!」

「そうですか…」

 

 その後爆発音のようなものと聞き慣れた声がした方に視線を向けると、先ほどまで目の前を塞ぐように立ち塞がっていた感染者達が血を流しながら倒れており、その後奥にはこちらに駆け寄ってくる少女の姿が…。

 

ー…嘘、あんなにいた奴らが…。…あれっ…あの子って…ー

「はぁ…はぁ…!」

 

 手には銃らしきものを持っており、どうやらこれが爆発音のような音の発生源らしい。

 だが巡ヶ丘学院の制服に茶髪ショートの少女、そしてこれほどまでに銃が似合う生徒など彼女の中で知りうるのは一人しかいない。

 

ー手に持ってるのは…銃?なるほど、奴らが倒れてるのも……それにあの制服に茶髪のショートヘアって…。いや…そもそもあんなに銃が似合う生徒なんて私の知る限り一人しか…ー

 

 そんなことを思いながらゆっくりと立ち上がった慈は、色々と溢れ出しそうな感情を抑えながら89式小銃を両手で持ちながらこちらへ駆け寄ってきた生徒、雨宮椎名の名前を口にしながら再会を喜ぶ。

 もちろんそれは椎名も同じ気持ちであり、先生がご無事で何よりです…!と安堵した表情を見せていくのであった。

 

「…まさか、こんな形で再会出来るとは思ってもみませんでした。雨宮椎名さん…」

「佐倉先生もですよ…!ご無事で何よりです…!」

 

 

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