学園生活部と銃マニアの女子高生   作:三坂

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第12話 ゆっくり出来ない再会

 

 

 

「…まさか、こんな形で再会出来るとは思ってもみませんでした。雨宮椎名さん…」

「佐倉先生もですよ…!ご無事で何よりです…!」

 

 まさかこんな形で再会出来るとは思ってもなかった慈は思わず瞳から涙をこぼしそうになるのを堪えながら、精一杯の笑みを浮かべる。

 もちろん椎名も生存者を求め学校に向かったとはいえど、もう会えないんじゃないかと思っていた先生と出会えたことに喜びを見せていた。

 

 

 だが由紀は初対面なので、この人は?という表情で首を傾げながら尋ねていくのだが、胡桃は知っているようであぁ!と声を上げていく。

 

「…?めぐねぇこの人は…?」

「…ん?あぁ!雨宮って名前…!まさかお前が陸上部でも有名だった優等生のミリタリーオタクか!?」

 

 どうやら彼女のドが付くミリタリーオタクは優等生ということもあって陸上部を含めた学校全体で、それなりに有名だったらしい(悠里も知っていた様子)。

 当然隠すつもりのない椎名は少し照れくさそうにしながら、まさかここまで広まっているとは…とそんなことを口にする。

 

「そう言えば…、園芸部でもそんな話が…」

「あっあはは…、まさかこんなに有名だったとは……」

 

 とまあそんなことを話していると慈は、何故彼女がここにいるのか…そしてどうやって生き延びてきたのかと色々と質問しようとしたのだが、それを遮るように感染者達のうめき声が廊下に響き渡っていく。

 感動の再会もさせてくれねー奴ってか?とそんなことをぼやきながらシャベルを両手に廊下に飛び出しながら、胡桃は戦闘態勢に入った。

 

「でも雨宮さんどうしてここに、確かあの日は体調を崩して家n…『ヴァぁぁ!!』」

「ったく…どうやら感動の再会もさせてくれねーって奴か?」

 

 最初に比べれば彼女が一斉射で感染者の数を減らしてくれたおかげで、胡桃にも幾分か余裕が出来たのだろう。だがそれも一時的になものに過ぎず、階段からまた新しい感染者がぞろぞろと上がってくるのが目に入る。

 それに先ほどの射撃でワンマガジンを使い切ったようで、空のマガジンを交換しながらこらが続くとキツイと言葉を漏らしていく。

 

「けど数をアイツが減らしてくれたからすげー助かr…『ヴァぁぁ』っておいおい…、勝手におかわり追加しやがって」

「流石にこれが続くとキツイですよ、弾も無限じゃないので……」ガチャ

 

 とはいえこの数をどうにかしなければジリ貧になってしまうのは明確、何かいい方法はないかと頭をフル回転させて考えていた椎名だったが何かひらめいたのかハッとした表情になる。

 胡桃もそれに気づいたようで何か閃いたのか?と尋ねると、頷きながら慈に一旦全員を放送室に入れましょうと提案。

 

ーけどコイツらを放置してたらいずれジリ貧に…、何か…何かいい方法は……っ!アレなら…!ー

「なんだ?なんかいい方法思いついたのか!?」

「はい!佐倉先生!一旦全員を放送室に…!!」

 

 何を考えているかは分からなかったものの、他に方法がないのは慈も分かっており、由紀に立てるかと尋ねながら立ち上がると滑り込むように放送室へと足を踏み入れた。

 

「はっはい!丈槍さん、立てる?」

「うっうん…!なんとか……」

 

 2人が中にはいったことを確認すると、それに続く形で胡桃と椎名も駆け足で放送室へと走り込むとそれなりに重厚そうな扉を勢いよく閉めた。

 

「よしめぐねぇと由紀も入った…、おい…お前も早く!」

「分かって…ますよ!」バタン!

 

 その後扉越しから響いてくる彼らのうめき声と扉を叩く音を横目に扉の前に動かせそうな重いもので応急的に塞ぐと、胡桃が次はどうすんだと尋ねる。

 少し待ってください、そう答えた椎名は手にしていた89式の安全装置を掛けてから床に下ろすと、背中に背負っていた豊和 M1500(特殊銃I型)ボルトアクションライフルを手に取っていく。

 

ダン!ダン!ダン!

ヴァぁぁ

「よし…!これでオッケー…!んで次はどうすんだ…!!」

「ちょっと待ってください…!」

 

 未成年である彼女が非常時とはいえ何処からこんなに銃を…そう思っていた慈を横目に、椎名はポケットからM1500の弾薬である7.62mm弾の入った小箱を取り出す。

 外が土砂降りなことや、できる限り戦闘に備え身軽に動ける荷物を持ってきたため、本来室内戦を想定して89式をメインとして持ってきている。 

 

 

 一応M1500を非常用として持ってきたといえど、弾薬は89式やP226をメインとしていたため、5発分しか持ってきてない。

 

ー確かポケットにM1500の弾薬が…あった!身軽に動けるかつ室内戦を想定して89式やP226の弾薬をメインにしてたから、5発しかないけど…ー

 

 だがそれでもやるしか他に手はないため、空の弾倉を本体から抜き取ると丁度5発分装填出来るマガジンに弾を込めていく。

 

 

 そうして弾込めが完了すると先にボルトハンドル(遊底を操作するための取っ手)を上に回してロックを解除して後方に引き込む。その後薬室(弾薬が装填される部分)が開放されたのを確認すると、たっぷり入った弾倉を再び装填。

 それからボルトハンドルを前方に押し込み弾薬が薬室に装填されたことを確認しながら、しっかりと下げてロックする。

 

ーよし…マガジンの弾込めは完了、後はこれを装填して…っとその前に薬室をオープンさせて…よしっ!ー

ガチャ

 

 もちろんその間にもドア越しに2階廊下に押し寄せていた感染者達は獲物を求めて突破しようと、うめき声を上げながら両手で叩き続けており、今でこそ扉と簡易バリケードと4人が抑えているがいつまで持つかといったところだ。

 

ー…よし!これでオッケー…!…けどあんま悠長してられないかも…ー

「せっ先生!このままじゃ……」

「なんとか耐えて2人とも…!ここが踏ん張りどころだから…!」

 

 その様子を見ながらもう少し踏ん張ってくださいと口にしつつ、窓際に近づくと校庭側の窓をオープン。まさか飛び降りる気かと尋ねる胡桃に違うと答えながら縁のレールにバイポッドを立てていく。

 

「すみません…!もう少し踏ん張ってください…!よっと…!」ガララ

「おっおい!急に窓なんか開けて…、まさかここから飛び降りろとかじゃ…」

「違います…!こんなとこから飛び降りても連中に喰われるだけです…!」

 

 じゃあどうする気なのかと内心そんなことを思いながら焦りを見せている胡桃を横目に、スコープを覗き込みながら何やら探していた椎名の瞳にとある車が目に留まる。

 

ーじゃあどうする気なんだ…、ここだって無敵じゃない。あの扉だっていつまで持つか…ー

「………見つけた」

 

 その車というのは学校の目の前にある通りを挟んだ駐車場に停まっている白色のワンボックスカー、隣にお弁当屋さんがあることからお店の配送車なのだろう。

 だがそれ以外はごく普通の車であり、特に彼女の目にとまったからといってスコープ越しで何か出来るという訳では無い。

 

 

 しかし彼女の狙いは車のフロントガラス。というのも現代の車は盗難防止装置が備わっており、車のガラスを割ったりヒビが入るとその衝撃をセンサーが検知して警報としてアラームが鳴る仕組みになっているのだ。

 つまり彼女の狙いは、ボルトアクションライフルで窓をぶち抜き、フロントガラスに衝撃を与えて警報を鳴らすことによって、感染者達の注意を引こうというもの。

 

 

 音で注意がいくことは既に知っていることであり、盗難防止アラームならバカでかい音が一帯に鳴るため、狙いを自分達から変えるには持って来いともいえる。

 

ー丁度いい感じに止まってる、これならフロントガラスがしっかり狙えるかも…。連中が音に反応するのは既に知ってること…、ならヒビを入れた衝撃で盗難防止アラームを作動させれば…ー

 

 もちろんすべての車種でガラスを割ったからといって盗難防止アラームが鳴るわけではなく、基本追加装備になっているため、一般的に標準システムでは鳴らない場合が多い。

 当然彼女が狙っている車も例外ではなく鳴らない可能性も十分にあり得る、がそれも考慮しての狙いだ。

 

ーっても基本標準システムには搭載されてないから…、あの車に付いてるかは分かんない…。でもそれを考慮しての目標…!ー

 

 というのも今狙っている車は某ト○タで人気のワンボックスカーとなっており、それ故盗難率も非常に高い車種となっている。

 つまり盗まれる率が高い車ならそのへんの盗難防止はしっかりしているだろう…、そう踏んで敢えてあのワンボックスカーを選んだらしい。

 

ーあの車種は人気ゆえに盗難率が高い…、ってことはそのへんの盗難防止はしっかりしてるはず…。つまりフロントガラスにもそれが…!ー

 

 距離としては300メートルあるかないかといったところ。正確な距離は測っていないためハッキリとはしないが、どのみち悠長に測定出来る猶予は自分…いや自分達には残されてない。

 正確な射撃をするにはスコープのゼロイン調整が必要ではあるものの、どのみち一回試射してみないとそれも出来ないため、ひとまず調整なしで初弾は撃つことに。

 

ー距離は300メートルあるかないか…、出来れば正確に測定したいけど…流石にその猶予はない。とりあえず試射も兼ねて一発…!ー

 

 トリガーに指をかけながら一息深呼吸して心を落ち着かせると、発砲する直前に放送室内にいる胡桃達にどでかい音が鳴ることを警告も兼ねて伝達。

 しかしいきなりそんなこと言われてもはいそうですかと従えるはずもなく、扉を抑えながらも慈がちょっと待ってと言いかける。

 

「ちょっとドでかい音なりますよ!」

 

 …が返答を待つほど猶予が残されていない椎名は警告を発した直後にトリガーを勢いよく引いて発砲。大音量の銃声が室内に響くと同時に、銃口から火薬の煙が噴き出しながら銃弾が放たれた。

 

「えっちょいきなりそういわr…「ダァァァン

!」きゃ!?」

 

 耳の鼓膜が張り裂けそうな衝撃音に思わず胡桃達は顔を顰めながら反射的に耳を塞ぐように両手で押さえるが、椎名だけは視線を逸らすことなく放たれた銃弾の行方を追っていく。

 

「ぐぉ…!?いきなり発砲かよ…!」

「耳の鼓膜が破れるよー…!!」

「……」

 

 もちろんロクな調整せずに発砲した銃弾は狙いであるフロントガラスに当たることなく、こちら側からみて右側にある建物の壁に命中。

 当然初弾から調整をしていない射撃で当たるとは思ってもない椎名は、外れた銃弾の着弾地点を参考に空薬莢をボルトハンドルを使い排莢、次弾を装填しつつゼロイン調整を行う。

 

「…今のでこっちからみて右側の建物壁…、ならそこからゼロインを調整すれば……」

 

 基本的に西側のゼロイン調整はメートル法ではなくヤード・ポンド法(インチやヤード)を基準にしていることが多く、スコープのダイヤル調整もMOA(Minutes of Angle)という角度の単位(100ヤード先で約1インチ)で行うことが多い。

 

 

 とはいえ元々学校の成績ではトップクラスに優秀だった上、ミリタリーオタクとして知られている彼女にとって、暗算で正確な数字を割り出すなど容易いことだった。

 

「大体ズレが右横10cm…、距離は300メートルぐらい。目標が大きいから近似値でもいけるかな?ってことはだいたい…」

 

 慣れた手つきでゼロイン調整を済ませると再び深呼吸で整えると、後ろから聞こえるうめき声や扉を叩く音、そして必死で扉を押さえる慈達の声を聞きながらフロントガラスに狙いを定めていく。

 

「よし…出来た、後はもう一回狙いを……(スゥ)…」

ダンダン!!

ヴァぁぁ!!

「っくそ!どんだけ外にいんだこれ!ってか銃声で寄ってきてねーか!?本当にこんなので…」

 

 いくら密室とはいえ銃声はそれなりに響くというもの、恐らく雨を嫌って室内に入ってきた彼らが音につられてやってきたというところだろう。

 これ以上は長引かせられない…、そう思いながらスコープを覗いた椎名の手は自然と少し震えているようにも見えた。

 

 

 無意識にここにいる全員の命運を握っているからというのもあるが、先ほどのボルトアクションライフルでの発砲に加え、その前に89式小銃で単射20発分の射撃をしていることもあって身体が限界なのかもしれない。

 最低でもあと撃てて2発、それで決める…心のなかで決心するようにそう思った椎名は覚悟を決めた表情でトリガーに指をかけていく。

 

ー…手が…、ってか今更だけど私がみんなの命運を…。それにこっちもそろそろ限界…、…どのみち…撃てても2発…、ならそれで…!ー

 

 その後土砂降りの雨が降りしきる中、スコープの中心部がフロントガラスのど真ん中をとらえた直後、迷わず再度発砲。

 

 

「Fire」

カチッ

 

 

 

 

 

 

ズガァァァァン!!《shake:1》《/shake》

 

 

 放たれた2発目の銃弾は先ほどとは違い迷わずフロントガラスのど真ん中…正確に言えば中心部から右にズレた位置に着弾した。

 

 

バギっ

 

 だがそれで手を止めることはせず、椎名は再び排莢をして新しい弾丸を薬室に装填し発砲。間髪入れずに放たれた弾丸フロントガラスを貫通。

 

 

 

 

 

ズガァァァァン!!《shake:1》《/shake》

 

 

 

 

 

 流石にボルトアクションライフルとはいえ2発で割れるほど車のフロントガラスは弱くなく、命中しても多少ヒビが入る程度。

 だがそれでも7.62㎜クラスの弾丸が連続で命中するとなれば、大きな衝撃と振動を発生するため、センサーと連動したアラームを鳴らすには充分過ぎるだろう。

 

 2発目の銃弾がフロントガラスを貫通してから間髪入れずにワンボックスカーの盗難防止装置が作動、それに連動したアラームが土砂降りの雨音に負けないほどけたたましく響き渡るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

ファーッ、ファーッ!

 

 

 

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