とまあそんな感じで今後の方針は纏ったことで椎名達は早速行動に移すために、出発の準備を少し慌ただしく進めることに。
というのも感染者の注意を引きつけている盗難防止アラームを鳴らす車がいつまで持つか分からないため、出来れば明日の出発を目指したいらしい。
テーブル上に手持ちの残弾がミニパトに積んであるのしかないM1500と残弾に多少余裕はあるものの、慈たちを助ける際に大盤振る舞いしたせいで心もとない89式を置きながら、室内での戦闘に優れるP226拳銃を簡単に整備していると、ふと隣でシャベルのメンテをしていた胡桃が案外違和感ないもんだな…とそんなことを呟く。
「えっと…残弾がほぼない…ってかミニパトに置いてきたM1500と、大盤振る舞いし過ぎた89式は控えて…室内戦に強いP226で…」
「…なんかこう、女子高生に銃ってアニメとかの話なのに…案外椎名が持ってると似合うもんだな」
確かに言われてみれば椎名が持ってると違和感なく全然むしろ似合っているため、他のメンバーも胡桃に賛同する形で確かに…と頷きながら、少し照れくさそうな椎名を見つめていく。
「まあ確かに言われてみれば…、案外違和感ないんだよなこれが…制服なのに」
「むしろハリウッド映画に出てくるプロのガンマンっぽいような…」
「私もー!りーさんが言ってたガンマンっぽいと思うよ!しーちゃんは!」
「あっ…あはは…、そんなことはないですよ…///」
すると慈がそういえば椎名が高校を卒業後何かやりたい職業はあるのかと、思い出したような表情を見せながら尋ねるように話しかける。
…まあと言ってもだいたい彼女の趣味や警察官の父親を持つとなれば、警察官か自衛隊になるというのがごくごく自然というもの。
実際椎名も例外ではなく、自衛隊も憧れてはいるものの警察官の父親の背中をみてきたこともあって、将来は警察官として誰かを護る仕事がしたい旨を明かす。
「…そういえば椎名さんって高校卒業したら何かしたいことってあるんですか?…まあ普段の趣味とかで限られるとは思いますけど…」
「まあ自衛隊とかじゃないか?無難に、ぶっ放してるの全然想像出来るし」
「まあ自衛隊も憧れてはいますけど…、どちらかというと今は警察官を目指したいとは思ってます。お父さんが警察官で…よくその背中を見てたので…」
普段のガンマニアからは想像出来ない発言に一同は驚いた表情を見せるが、それでも駐在所というお巡りさんが身近にいる家に住んでるとなればそうなるのも無理はないか…と納得の表情を浮かべていく。
するとそれを聞いた由紀が、ならお姉ちゃんの職業都一緒の道を目指すんだ!と目を輝かせながらそんなことを話したことで、一同の注目が彼女へと向けられる。
「あーそうか、椎名の家って駐在所だもんな。そりゃそうか」
「でも案外似合ってるんじゃないかしら?ガンマニアの警察官ってのはアレだけど…」汗
「…ってことは私のお姉ちゃんみたいになりたいってこと!?」ガバっ
「「ん?」」
とはいえ慈だけは知っていたらしくそういえば由紀のお姉さんは警察官でしたっけ?と少し前に補習で一緒にしていた際に聞いたことを思い出しながら、そんなことを話す
だが彼女に姉がいることや警察官をやってるなど想像出来ない胡桃や貴依は弄るような口調で話していき、由紀が本当だもん!と抗議していく。
「あっもしかしてこの前補習で話してた奴ですか?確か丈槍さんのお姉さんは警察官っていう…」
「…いやーびっくりしたぜ、まさか由紀にお姉さん居るどころかまさかの警察官っていう」
「全然想像できないな、というか本当に警察官なのか?普段の由紀からじゃありえないが」
「もー!2人共信じてよー!本当なんだから…!!」
すると椎名がどんなお姉さんなのかと尋ねたことで機嫌が戻ったのかえっへん!と自信満々な表情を見せながら、自分の姉がどんな人なのか話し始める。
「…ところでお姉さんってどんな人なんですか?」
「おぉ!よくぞ聞いてくれた…!!えっへん…!それじゃ自慢の私のお姉ちゃんを説明するね!」
ちなみに姉は自分とは対照的な性格で真面目で優秀、コミュニケーションを幅広く取れるらしく、それもあってその力を誰かのために使いたいということで警察官の道を目指すようになったようだ。
これを聞くだけなら歯車が噛み合わない両者性格のようにも思えるが本人曰く関係は良好、休みの日や仕事終わりでも一緒にゲームやら漫画を読んだり、勉強を教えて貰っているとか…
「…って感じ!全然性格は違うけど仲はいいと思うよ!よくゲームとか漫画読んだりしたり、勉強教えて貰ってるから!」
「…ふーむ、聞けば聞くほど対照的な性格だな。そのお姉さんからどうやって由紀が出来たのか不思議なもんだ」
まあ胡桃の言う通り優柔不断な性格と言わざる終えない不思議っ子な由紀が、そんな真面目な姉からどうやって誕生したのか気になるのは無理はない。
まだ信用してないでしょ…と不満そうな表情を浮かべる由紀だったが、ふと悠里が今お姉さんはどうしてるの…?と少し不安そうな表情で尋ねていく。
「んもー…、まだ信用してないでしょ…。本当なのにー」
「あははっ悪い悪いっ、ついな」
「でも…丈槍さん、その…これを聞くのはアレなんだけど…お姉さんは今どうしてるの?」
すると先ほどまで明るく話していた由紀の表情が一変、何とも言えないような雰囲気を浮かべながら少し顔を下げてしまう。
恐らくあまり聞かれたくないことなのだろう…そう咄嗟に判断した慈は悠里に対してそれ以上は…と告げ、彼女もハッとした表情を浮かべながら慌てて由紀に謝っていく。
「…あっえっ…その…それは…」
「…っ、若狭さん。それ以上は…」
「あっ…ごっごめんなさい、つい…」
だが悪気がないことは由紀も知っているため大丈夫だと答えながら、警察官の姉とは騒動以降連絡が取れていないことを明かす。
補習で遅くなるという報告をしたところまでは連絡がついていたのだが、その後は通信回線がパンクしたのか機能不全になったのか…電話やメールでのやり取りが不可能に。
姉からの最後の連絡は、自分も急に増加した事件の対応で帰りが遅くなるかも…今日はゲームとか一緒に出来ないから先にねててというものだとか…
「ううん、大丈夫。…実は街がこうなってから連絡がついてないんだよね……」
「……」
「補習があるから遅くなるって連絡をして、返答が返ってくるまでは連絡がついてたんだけど…それ以降は…」
「その返答ってのは…?」
「…確か、なんか事件が立て込んで起こってるからその対応で帰りが遅くなるって…だから先に寝ててっていう…」
それを聞いた椎名はお姉さんは何処の警察署で勤務しているのか分かるかな?と尋ねると、姉は巡ヶ丘西警察署に勤務していると由紀は答えていく。
確か巡ヶ丘西警察署って学校から少し離れた場所にある警察署だったよな?と胡桃が口にすると、貴依が防犯教室とかでよく来てたところか…と思い出したような表情を浮かべる。
「…えっと、お姉さんって何処の警察署に勤めてたか分かるかな?」
「…確か…巡ヶ丘西警察署…だったような」
「あそこか…、学校から少し離れた住宅地に面した警察署だっけ?」
「あー、防犯教室とか諸々でお巡りさんが来てたところか…。由紀のお姉さんそこで勤務してるのか…」
胡桃達がそんなやり取りをしている中、椎名はそういえば巡ヶ丘西警察署って巡ヶ丘市内の警察署では規模が一番少ないところであること、近くに市外と結ぶ巡ヶ丘橋があることも思い出す。
パンデミック系のドラマや映画、アニメなどでは規模こういった場合は橋などの外部とアクセス可能な場所を封鎖し、感染拡大を防ぐのが基本。
全国の警察機関トップである警察庁がどのような指示を出しているかは定かではないものの、もしその通りなら巡ヶ丘西警察署は橋の封鎖を行っている可能性は高い。
ー巡ヶ丘西警察署なら近くに巡ヶ丘橋があったはず…、どういう指示を県警本部が出してるかアレだけど…。パンデミック系の映画とかアニメ通りならその橋を封鎖してるはず…ー
だが橋ということは街の外へでたい生存者やそれにつられて押し寄せてくる感染者達でめちゃくちゃになっていることは用意に想像出来る、維持出来てるならまだいい方だがもし崩壊しているとなると…生存はかなり厳しいだろう。
とはいえ口が裂けてもそんなことを由紀に言えるはずもないため、断定が出来ないのならきっと生きてる…そう自分に言い聞かせながら彼女に安心してもらうためにそう話していく。
ーけど正直そうなると街の外へでたい生存者やらそれにつられた感染者もたくさん来てるはず…、維持出来てるならいいけど…もし崩壊してたら……っていやいや!そんなこと思っちゃ駄目!そんなんじゃこの先だって…ー
「…大丈夫、由紀さん。きっとお姉さんは生きてるよ、だって頼れるお姉ちゃん…なんでしょ?」
椎名にそう言われた由紀もそうだね…!と決心したような表情を浮かべながら、絶対にこの騒動を生き残ってお姉ちゃんと再会して、ゲームとか一緒にしたい!と口にしていく。
そんなこんなで落ち着いたタイミングで、胡桃が椎名に対してそろそろ行動するか?と尋ねていき、彼女もそうですねと答えながら立ち上がる。
「…うっうん!そうだね!妹なんだから信じないと…!この騒動生き残ってお姉ちゃんと再会したらたくさんゲームしてやるんだから…!」
「ははっ、相変わらずブレねーな由紀は…っととりあえずそろそろ行動するか?椎名」
「ですね」ゴトッ
当然その目的は警察車両に残された食糧やら弾薬などや無線機の回収であり、胡桃はシャベルを、椎名はP226を手に取り背中に89式を背負いながら生徒会室から廊下へと出ていく。
もちろんついていくことの出来ない非戦闘員組は机で作られたバリケードまでしかついていくことが出来ないため、そこまで来ると慈が2人に対して気をつけてくださいね…?と不安そうな表情でそう話す。
「っと、んじゃいってくるぜ」
「…気をつけろよ」
「わーかってるって貴依、ってかりーさんもそんな不安そうな表情すんなって」
「2人共…気をつけてくださいね?」
「大丈夫です先生、これはあくまで前哨戦ですから…」
待機組に見送られながらバリケードを超えてセーフエリア外へと降り立った2人は、軽く目を合わせながら互いをカバー出来る位置をキープしつつ、死角からの襲撃を警戒しながら昼間なのに少し薄暗い廊下を伝って左端に設置された階段から車のある一階に向けて降りていくのであった。
「っと…んじゃ行くぞ、死角とか注意しろよ。噛まれたら一発アウトだからな」
「わかってます……、互いにカバー出来る位置を…ですね?」
「あぁ」
キキッ
「また行き止まりか……」
学校の生存者組が動き始めたのと同時刻、その巡ヶ丘学院高等学校へ向けて車を走らせていた美乃里だったが、再び事故車によって塞がれた通りを目の当たりにするや思わず眉を細めてしまう。
かれこれ迂回したのはこれで十回目、時間は経つものの一向に学校につく兆しは見えず、思わずため息を零しながらきた道をバックで戻っていく。
「これで十回目よもう…、はぁ時間は経てど学校につく兆しは見えないし……とりあえずきた道戻ろう…」
その隣では優が真剣な表情で巡ヶ丘市内の地図とにらめっこしており、後部座席からは瑠璃が興味深そうな表情を見せながら覗き込んでいた。
まだ騒動から1週間経っていないはずだが、日が経てば経つほど通れない道が増えてきているようにも感じ、今でこそ感染者には遭遇してないが、遭遇するのも時間の問題なのは確か。
だがそれよりも問題なのはこのまま迂回しまくることで今後の移動で使う用のガソリンが使えなくなることであり、それなりに物資を載せているためいくらSUVとはいえど燃費の悪化は免れない。
「うーん…ここが駄目となると…次はこっち…?」
「まだ騒動から1週間経っていないはずだけど……、ここまで道路網が死んでるとなると…なかなか不味いかも…」
「ガソリンとはどうですか?」
「…現状はまだフルまである、けどこのまま迂回しまくるとなると…物資載せまくって燃費悪化してる状況だと今後に影響が……」
とはいえ学校に向かうためにはどうにかしなければならないため、ひとまず通れそうな道を片っ端から進んでいくしかないだろう。
なのでそう割り切った美乃里は十字路までバックで戻ってくると今度は右へと進路を変える形で曲がり、そのまま通りに沿って放置車や倒壊したコンクリートブロックを避けながら巡ヶ丘駅方面へと向かう駅前通りを2ブロックほど直進。
そのまま優の案内で左折するためにT字路を曲がろうとしたのだが……
「…まあ気にしてても仕方ないか…、優君。ナビゲーター頼める?」
「分かりました、そこを右に曲がって巡ヶ丘駅方面の通りを2ブロック直進してT字路左折してください」
「りょーかい、2ブロック直進で左折…」
突如としてコンクリート塀の影から飛び出すように1人の少女が道路の真ん中、車の前に飛び出るように姿を現したことで、美乃里は思わず目を見張ってしまう。
普段ならば右左折の際は警察官ということもあってしっかり確認はしていたが、騒動が始まってからなれないことばかりをしたせいで少し注意が散漫になっていたらしい。
…がそれでも反射神経は若い人ということもあってかなりしっかりしていたようで、咄嗟にアクセルを踏んでいた右足をブレーキペダルへリリース。
ABS(ブレーキを踏んだ際、タイヤがロック(回転が止まって滑る現象)するのを防ぐ安全装置)全開のフルブレーキングをかましなが、車内の同乗者がつんのめりになることおかまないなしに急停車していくのであった。
ザッ!
「!?」
ーえっちょ!?ここで人!?って不味いブレーキブレーキ!!ー
キキッ!!