お待たせしました
第2話でございます
あれからしばらく唖然としていた椎名だったが、なんとか落ち着きを取り戻したようでひとまず今出来ることをやることに。
具体的にはまず電話でおじさんが言ってきた通り、玄関や駐在所の出入り口などの扉を施錠していき、突破されないように適当に重いもので塞いで簡易的なバリケードを作成。
もちろん窓などもしっかり施錠しつつ、外に光が漏れないようにカーテンなどもしっかり閉めていく。
「…とりあえず言われた通りにしたけど」
しかしその後にお父さんとお母さんに無事を確認するために連絡を入れようとしたものの、電話が混線しているのか電話中という機械音声しか入らず、警察署・病院共に繋がらずにいた。
「結局あの後お父さんとお母さんには繋がらずじまい……、まあ警察署と病院なんて今の状況じゃ駆け込むし当たり前…か……」
とはいえ直接向かおうにもニュースなどの情報から察するに1人で出歩くのは危険そのもの、なので心配ではあるものの今はこうして籠城することが得策だろう。
「…それに直接確かめようにも今の状況じゃ気軽に出歩けない…、心配ではあるけど…ここは籠城しかないか……」
そんなことを考えながらリビングにあるソファーに腰掛けていると、誰かが駐在所の出入り口のドアを叩きながら呼びかける声が耳に飛び込んでくる。
もちろんその声は椎名にも聞こえており、慌てて対応しようと立ち上がるが直後電話でおじさんが言われたことを思い出す。
ダンダン!!
「お巡りさん!!居ないのか!?助けてくれ!変な奴らにダチが…!!」
「…!?誰か来てる…はいいm……『いいか?誰も入れるんじゃないぞ!!』っ…」
確かに父親が警察官ではあるものの、自分はそうではなく普通の女子高生。外の状況も分からない上に身も知らずの相手を入れるというのは得策ではない。
今叩いている人が善良な人ならまだいい、しかし相手がか弱い女子高生だけだからといって混乱に乗じて手を出された場合、こちらは抵抗する術がほぼないのだ。
「……どうしよう…、入れてはあげたいけど…外の状況も分からないし…混乱状態じゃ何されるか…」
するとしばらく叩いていた外の人間の仲間らしき声が聞こえてきて、何やらここの駐在所に関して誰がいるのかいないのかと話し始めていく。
それだけならまだいいのだがその会話の中に、もし居るのならあわよくば襲って拳銃やら警棒を奪えたんだが…という恐ろしい会話が聞こえてくる。
「おいっ!どうだ、誰かいそうか!?」
「駄目だ多分誰もいねー、この騒ぎだから出てるのかもな…表にミニパトねーし」
「くそっ!もしいればあわよくば襲って拳銃やら警棒奪えたんだが……」
もちろんそれを聞いた椎名は思わず顔を引き攣らせて後退りをしてしまうが、どうやらお目当ての警察官がいないなら駐在所には用事がないらしい。
「っえ……?」
「けど誰も居ないならついでにぶち破って漁りでも……」
「いや、警官がいないんじゃここには用事がねぇ。それよりもホームセンターいくぞ、ひとまず武器を確保しねーと」
「だな」タタタッ
そのまま立ち去っていくであろう駆け足の音が聞こえると、安堵したのか再びソファーにへたり込んでしまう。
「……はぁぁ…」ヘナヘナ
結果的には駐在所の出入り口を開けなくて良かったというものでもし開けていたら…と思うと考えたくはないというもの。
それにここの駐在所の出入り口扉は中が見えにくい木製の格子状と模様入りガラスが交互になっているため、バリケードを設置している室内の状況が見えないというのも災いしたともいえる。
しかし外の状況は相変わらずいいとは言えず、誰かの悲鳴やら緊急車両のサイレン…または警察官が応戦しているのか発砲音も微かに聞こえていく。
ウゥゥ……
ダァンダァン!!
きゃぁぁぁぁ!!?
「……とは言っても、外は相変わらずかぁ…」
ふとそんな外の状況に耳を傾けている最中に、クラスメイトの安否が気になった椎名は手にしていたスマホを操作してLI〇E(メッセージアプリ)で連絡を取ろうと試みる。
出来れば電話のほうがいいのだが、先程両親に繋がらなかったことを考えると電話線がパンク状態ではほぼ繋がらない。
それよりもメッセージアプリでのやりとりのほうが良いと判断したのだろう。するとやはりと言うか数分前にクラスメイトからメッセージが送られてきていたようで、彼女はその内容を確認しつつ返答を送っていく。
「…っとそれよりみんな大丈夫かな…、でも電話は使えないし…あっでもメッセージなら…!!」
(メッセージ)
『椎名は大丈夫!?今私はトイレに隠れてるんだけど…、学校はもうめちゃくちゃ…!人が人襲ってる…!とりあえず見てたら家の戸締まりはしっかしして!あと外には絶対でないで…!!』
「やっぱり…すこし前だけどメッセージなら通じそう……」
『こっちはとりあえず大丈夫…!それよりそっちこそ本当に大丈夫なの?今どんな感じ…!?』
だがメッセージが通じているとはいえどそれは相手が返信出来る余裕があればのこと、走り書きのような内容から察するに学校はかなり緊迫した可能性が高い。
なかなか既読がつかないことから察するに今は返信出来る余裕がないのだろう、無事を確認出来ない状況に椎名は思わずもどかしい表情を見せる。
「……既読がつかない、メッセージは届いてるはずだけど…。それだけ学校が緊迫してる状況…ってことなのかな……」
しかし今は自分が生き残ることが先決というもの、とりあえず長期の籠城に備えて家にある食料やら飲料水の量を確認することにした椎名は、携帯をテーブルに置きながらキッチンへと向かう。
「けど今は目先のことを考えるしかないか…、とりあえず長期の籠城に備えて食料とか確認しておかないと……」
幸いまだ電気は来ているようで、冷蔵庫などに入っている保存の効かない生モノなどの食べ物は腐る心配はない。
しかしこの状況下では電気どころか水道もいつまで持つか分からないので、ひとまずはそういった長期保存の効かない食べ物は先に消化しておいたほうがいいだろう。
「……幸い電気はまだ来てるから生モノは腐ってない、けどそれもいつまで持つか…。とりあえずそういうのは先に消化しておいたほうがいいかな」
その後生モノ以外で長期保存が効く食べ物やインスタント系、そして飲料水などといったものを一通り確認してみると合計で3週間分あることが確認出来た。
本来自分以外にも家族2人分も含まれているのだが、現在その2人がいないためその分かなり余裕が生まれている。
「…今あるので3週間分か、本来ならお父さんお母さんの分も含めると1週間ぐらいしかないけど…私しかいないし…」
一瞬そのことで複雑な表情になりかけた椎名だったが、首を振って気持ちを無理やり切り替えるとお腹が減ったこともあってかに消費しなければならない生モノや野菜とといったもので何か作ることに。
「……いやいや…!そんなこと気にしてる場合じゃ…(お腹が減る音)…そういえば日中おかゆとかお菓子しか食べてなかったけ、…なんか作ろ」
とはいえちょうどカレーを作れそうな具材が揃っていたことから、今夜はカレーライスにすることにしたようだ。
自炊自体はあまりしないものの、よくお母さんと一緒に作ったりしているため火の扱いやらには慣れているらしい。
一通り材料を揃えると、慣れた手つきでテキパキと野菜や肉をきったりしながら、合間を見て米なども準備していく。
「あっでもカレーの具材揃ってるし…、カレーでも作ろうかな」
外の状況に目をつぶれば普通に夕飯を作っているようにも見える光景、だが気分を紛らわすためには持って来いともいえる作業だろう。
やはり彼女自体手伝いとはいえどかなり手際がいいようで、先程作り始めたと思ったのに気づけばあっという間に出来上がっていた。
「……(料理中)よし…!こんなもんかな?」
もちろん味見をして問題ないことを確かめると、火を止めながら熱気を逃さないように一旦カレーの入った鍋に蓋をしていく。
というのもまだ米のほうが研ぎ終わったばっかりで炊飯器にすら入れておらず、これから炊いていくらしい。
そのため冷めないように一旦カレーの入った鍋に蓋をしておく必要があるのだ。
「んっ…味も問題なし…、とりあえず火を止めてから蓋をして…。あとはお米を炊くだけか……」
こうして米も準備出来て出来上がるまで時間が少しばかりあるため、椎名はスマホやテレビで今世界中で起こっている騒動に関して情報を集めることにするようで、リビングのソファーに腰掛けながらメモ帳片手に調べ始める。
結果、今わかるだけでこれだけの情報が得られた。
①『今世界中で流行している感染症に感染した場合、数時間以内に攻撃性が極端に増して、非感染者を見境なく襲っていく。ただし目はあまり見えず、その代わり異常に発達した聴覚で探し出す』
②『感染ルートは現時点では飛沫感染よりも接触感染がメインの可能性あり。感染者に噛まれたりするか唾液や血液が体内に入った場合、高確率で感染。尚、治療薬などの特効薬は未だ無し』
③『感染者を始末する場合、心臓ではなく脳を直接狙うこと。身体に当てて倒そうとする場合かなりの回数が必要だが、脳の場合は一撃で倒せる』
④『専門家の間ではこの騒動で流行している感染症はゾンビに関係しているのではないか…という見方がある』
つまり今流行っている感染症は一度なってしまえば完治することはなく、数時間以内に理性を失い凶暴化して非感染者を襲っていくということを意味。
しかも倒すには頭部を一撃で仕留める必要があり、身体に当てても異常な耐久力でかなり苦労するようだ。
まさに映画やゲームなどでよくあるゾンビパンデミックとも見て取れる情報に、椎名はまさかそんなことがリアルで起こるとは…とスマホ片手に呟く。
「ってことは一発でも感染したらアウトってことか…、でもこんなのまさしくゾンビじゃん……。映画とかゲームでよくある」
だが感染者(ゾンビ)に関して有力な情報を得られたことは間違いないため、もし対峙した場合には使えそうだということでメモ帳に今調べたことを書き出す。
それと同時に電気や水道みたいにネットもいつまで使えるか分からないため、巡ヶ丘市内を始めとした日本全土、そして世界中のニュースも一緒に調べ始める。
「けどこれは有力そうな情報だし…、もし対峙した場合には使えそう…。よしメモはしたから…、あとはネットが使えるうちに日本とか世界の状況も…」
すると先程ニュースで見ていた通り世界情勢もたった1日でかなり切迫した状況になっているらしい。人口が特に多い中国やインドなどといった国では大規模なパンデミックが全土で発生、軍による治安維持や掃討作戦が総動員で行われているとか
ヨーロッパでも中国やインドほどではないがパンデミックが発生しており、NATO(北大西洋条約機構)は既に海上に拠点を移し始めているそうだ。
ゾンビパンデミック以外にも暴動化した市民による略奪が横行しているようで、パリやローマといった市街地では警官隊と激しく衝突しているとか。
アメリカでも合衆国政府はホワイトハウスの政府機関を既に放棄、洋上に展開している空母にその機能を移転させるらしい。
それはそれで早すぎる判断ではないか…と思われがちだが既にワシントンは事態の収拾が困難になっており、手遅れになる前に…といったところだろう。
もちろんアメリカ全土でも事態は急速に悪化、アメリカ空軍は既に都市部の空爆も視野に準備しており、米陸軍は合衆国政府の指示で既に感染者の掃討に踏み切っているそうだ。
だがまだ安否が分かっている国はまだいいだろう、発展途上国などといった技術の進歩が未熟な国では既に連絡が途絶えている場所もあり、状況把握が困難になっている。
「……たった1日でここまで…」
日本も例外ではなく、神奈川県以外の主要都市が多くある県などはかなりパンデミックの規模が拡大しているらしい。地方などはまだそこまでといった感じだが今のペースで行けば時間の問題だろう。
ふとそんな中テレビを付けると丁度都内内で中継を行っていると思われる番組を見つけたため、椎名は思わずくぎ付けになっていく。
「……日本もほぼ主要都市は全滅か、地方はそこまでって感じだけど…このままいけば…」ピッ
『――政府はすでに緊急対策会議の設置。与野党問わず自衛隊による治安維持出動に向けて対応を協議していますが、騒動の沈静化の目処は未だ立っておらず――』
(神奈川県某所)
『――尚神奈川県内で現在流行している感染症の死者は10万人を超えたとの見方が出ています、既に知事による非常事態宣言が発令されており――』
やはり全国でも有数人口密集地域といえる神奈川県の被害はもなり大きく、専門家たちの間では既に感染症死者が10万人を超えている可能性が強まっているようだ。
現にリポーターの背後では忙しく救急隊員や警察官が行き交っており、既に亡くなっているであろう人間を入れた死体袋を担架で救急車で運び込んでいるのが見える。
…が知っての通りこの感染症はただの感染症ではない、それを知っている椎名はこのあと起こるであろう出来事が嫌と言うほど想像しており…
現にその予想が当たってしまい、突如としてテレビに映っている中継映像から発砲音が鳴り響いた。
「……やっぱ全国でここはかなり人口が多いからそうだよね、けどこの10万人がもし死んでるけど死んでないとしたら……」
ダァン!!
もちろんリポーターはその発砲音を耳にするや緊迫した声を上げて、カメラマンもその音がした方にカメラを向けていく。
するとそこに写っていたのは救急隊員が救急車へ運び込もうとしていた担架に乗っていた死体袋がゆっくりと起き上がっていく光景であり、救急隊員も慌てて退避している様子が写っていた。
『はっ発砲です!!ついに警官が発砲をしました…一体何に……』
パァンパァン
椎名は色々と情報を集められる余裕があるため、この感染症がゾンビに関係したものだと分かったものの、それが全員知っているとは限らない。
それに死体袋に入っていた死体がいきなり起き上がれば誰だってパニックになるのは当たり前だろう。
起き上がった死体袋に入っていた死体は即座に警官隊からの集中砲火で仕留められたものの、リポーターの悲鳴から察するにまだ終わっていないようだ。
『なっなんでしょうかあれは!?死体袋が起き上がって……なっなんですか貴方達!こっこっちに来ないで…!』
一体どこから現れたのかと言いたくなるほどの奴らが銃声を嗅ぎつけて押し寄せていたようで、何が何だか分からないリポーターやカメラマンはあっという間に餌食になってしまい、そのままカメラが地面に倒れる形で映像は途絶えてしまう。
『やめっ…きゃぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!?』
やっぱりさっき調べた情報通りだ…そんなことを思いながら見ていた椎名の視線の先では、中継先からスタジオへ切り替わったものの、背後でスタッフが慌ただしくしているのが聞こえてきた。
とはいえ番組を止めるわけにはいかないため、テレビに写っていたニュースキャスターが引き継ぐ形で続けていく。
「……やっぱり、調べた通りだ」
『げっ…現場で何か問題が起こったようです、ここからはスタジオよりお送り致します…』
やはり外を今出歩くのは危険なようで、リポーターも決して自宅の外に出ないこと、人が集まるよな場所には近づかないように念押しするように訴えていた。
ネットよりも得られる情報が少ないものの、恐らくはさらなる混乱を警戒しての情報統制だろう。
それにまだ確実ではない情報も多く、確証も得られないものを報じて余計に混乱しては事態の収拾が更に困難を極めてしまう。
『屋外は大変危険となっていますので、決して自宅から出ないようにしてください。そして人の密集しているエリアにも近づかないように』
「……でもネットよりも情報は少ない、やっぱさらなる混乱警戒してるのかなぁ……」
その後ニュースが一旦終わったタイミングでご飯が炊けた音がキッチンから鳴り響いてきたため、お腹も空いてきた彼女は夕飯を食べるために立ち上がりリビングを後にしていく。
ピーッピーッ
「おっご飯炊けたっぽい…、お腹も空いてきたし食べれるうちに食べちゃお」
彼女がリビングを後にしたあとしばらく速報のニュースが流れていたのだが、若干砂嵐が入ったと思ったらそのままテレビのスクリーンが砂嵐状態になってしまい、椎名が戻ってくるまで不気味な音をリビングに響かせるのであった。
ちなみに前回のニュース速報での爆発はラストオブアスの最初のパンデミック発生時のニュースが
今回のパンデミックニュースは学園黙示録の3話最初がモデルとなっています。
こういうパンデミック最初期の流れって…いいよね()