翌朝、多少雲がある程度で合間から日差しが差し込む中、私立巡ヶ丘学院高等学校の生徒会室では出発の準備を整えた椎名達が最終チェックを終えて教室を後にしていた。
まずは先に椎名と胡桃がバリケードの上や外へと降りた際に近くに感染者がいないことを確認すると、セーフエリア内で待機していた慈達に問題ない旨を伝えていく。
「よっと…(キョロキョロ)よし、こっちは問題なさそうだなそっちはどうだ?」
「こっちも問題ありません、相変わらず静かです」
「ならよさそうだな、おーいこっちに来ても大丈夫だぜー」
するとそれを聞いた慈達がバリケードの机を伝う形で降りてきて、全員が降りてきたことを確認すると胡桃と椎名を先頭に一同は校舎西側の階段へと教室を一つ一つ確認しながら歩みだした。
「わかりました…!それじゃみんな足元気をつけて」
「はーいっ」
「悠里、荷物持つよ」
「ありがとう御座います」
「よし…全員揃ったな。椎名行くぞ」
「了解です」
3階から階段を伝い2階、1階へと降りていく一同であったがやはりほとんどの感染者が外に吸い寄せられているうえに、この前の車両確保の際に残っていた感染者を始末したこたも相まって一体すら姿を確認出来ない。
「…ほとんどいませんね…、あの時がまるで嘘みたいに…」
「まあ大多数の奴らが外に釣られてるからなぁ…、残ってたやつもこの前あたしと椎名で駆除したし」
そうこう話しているうちに1階へと難なく到着した一同、その中で椎名が裏口の扉に手をかけながら外の様子を伺い足音がないことを確認。
その後開けますね…と周りに確認すると勢いよくオープンしながら後退、胡桃がシャベル両手に臨戦態勢を整えていつでも対処できるように身構える。
「………オッケーです、…胡桃さん開けますよ?」
「おう、いつでもオッケーだぜ」
「…っと!」バッ
タタタッ
もちろん椎名もバットを取り出して臨戦態勢を整えるが、扉越しで確認した通り西口周辺には感染者がいなかったらしく、開けても寄ってくる足音やうめき声は一向に聞こえる気配は感じられない。
オールクリアと確認が取れると、西口外の様子を簡単に確認し、問題がないことを確認すると2人を先頭に近くに止まっていたミニパト(スズキ 初代スイフト)とキャンピングカー(トヨタ 200系ハイエース)と駆け足で駆け寄っていく。
「……いなさそうだな」
「……チラッ、ですね…。外も問題ありません」
「だな…、めぐねえ。駆け足でみんなを車の方に!」
「はっはい…!」
スタタン
その後椎名はミニパトに、胡桃達5人目はミニクーパーではなくキャンピングカーに乗り込んでいき、扉を閉めると同時にそれぞれエンジンが始動。
車内で簡単なチェックを終えた椎名が、トランシーバーの無線機の電源をいれると、キャンピングカー側の胡桃たちと連絡を取り合う。
ボムっ
「よっと……よし問題なし(キュルル、ブオン)あとは…(ピッ)あーあー、聞こえますか?」
『こちら胡桃だ。ばっちり聞こえるぜ、感度良好だ』
それを確認すると改める形で外部探索に向けた行動の最終確認を椎名は執り行っていく、まず自分が校門から外に出たタイミングで銃声やらサイレンなどを駆使して付近にたまっている感染者の大群を誘導。
それによって道が開けたことを確認すると、慈の運転するキャンピングカーは学校の外へと脱出し、そのまま先に合流地点の駐在所へ。
椎名は学校から遠く離れ戻ってきにくいような事前に取り決めた誘導ポイントに誘導した後にすぐさま離脱、合流地点の駐在所へ向かうという形になっている。
「ひとまず作戦の最終確認をします、私が先に出て奴らの大群を誘導。その隙に学校を出て先に合流地点へ」
『りょーかいだ、そっちは誘導してから向かう感じ…だよな?』
「はい、事前に取り決めた誘導ポイントに誘導したらすぐに向かいます」
一通り作戦に関して説明を終えると胡桃を含めたキャンピングカー側のメンバーが、各々椎名を気にかけるような言葉を投げかけていき、最終的に慈が絶対無茶はしないでください…と念押し。
それを聞いた椎名ももちろんです…と答えながらトランシーバーの電源を入れたまま助手席に置いていき、ステアリングを握りながら視線を前へ向けていく。
『まあわかってるとは思うが、無理はすんじゃねぇぞ?なんかあったらすぐに連絡してくれ』
『気をつけろよ?アタシにとっちゃ命の恩人がくたばるのは困るからな』
『しーちゃん気をつけてね?無理は絶対駄目だよ?』
『また戻ってきたら一緒にご飯食べましょう』
『…何度も言いますが、無茶だけはしないようにしてください…ね?』
「ご心配ありがとう御座います…、ふぅ…」
それからギアをパーキングからドライブに入れていき、サイドブレーキを解除するとブレーキペダルをゆっくり離していき車を発進。
校庭を横切る形で車を走らせていき、校門の外へと出た瞬間停めていく。
ガコッ
ブロロロロ
「ひとまず校門の外に出て…、ここで停車っと…」
ここまではできる限り音を建てないように走らせてきたため、感染者達は椎名のほうには気づいておらず相変わらず盗難防止アラームが鳴り響いていたお弁当屋のワンボックスカーに群がっていた。
それを確認しながら助手席のパワーウィンドウをそーっと空けた椎名は、助手席に置いてあったM1500ライフルを取り出す。
「相変わらずたむろしてるなぁ…、まあいっか…どーせこの後それが私に向くんだから(ゴソゴソ)っと…」ガコッ
その際にボルトハンドルを前方に押し込み弾薬が薬室に装填されたことを確認しながら、しっかりと下げてロックしたことを確かめ、適当な一体に狙いを澄ませる。
後頭部に狙いを定め一つ深呼吸を澄ませると、意を決したようにトリガーを勢いよく引いて発砲。
周囲に銃声が響き渡ると共に放たれた弾丸が狙い澄ました感染者の後頭部に直撃、そのまま貫く形で貫通すると、撃ち抜かれた感染者はそのまま力が急に抜けたかのように倒れ込む。
「…ふぅ……っ!」カチッ
ダァァァァン!!
グシャ
ちなみに貫いた弾丸はそのまま止まることを知らずに前に屯していた感染者の後頭部を次々とぶち抜き、最終的に4体ほどが巻き込まれるかたちで倒されていく。
しかしその確認をほどほどに椎名はセンターコンソール付近に備え付けられたサイレンアンプを操作、赤色灯を点灯させながら学校近辺にけたたましいサイレンを吹鳴させた。
バタッバタッ
「…あとはコレを…こう!」
ピッ
ウゥぅぅぅぅ!!!
当然盗難防止アラームが止まっているワンボックスカーよりもけたたましサイレン音や銃声を響かせるパトカーの方に感染者達の意識は向けられるというもので、ぞろぞろと注意をそちらに向けて次々と歩み寄り始める。
それを確認しつつ2発ほど打ち込んだことを確認するとブレーキから足を離し、クリープでゆっくりと発進。
感染者の大群を引き連れる形で椎名の運転するミニパトは移動を開始していく。
ヴァぁぁぁ……
ーよーしっ引っかかってくれた…、あとは装填した弾倉の弾薬を打ち切って…っと!ー
ダァァァァン
ダァァァァン
ゴクッ
ブロロロロ
その後ある程度学校から離れたタイミングで椎名はトランシーバーで胡桃へ合図を送り、胡桃もそれを聞くとステアリングを握る慈に発進の合図を送った。
「これぐらいまで誘導出来れば……、(ピッ)胡桃さん!」
『あいよ!めぐねえ!車を出してくれ!』
『だから私はめぐねえじゃなくて佐倉先生です…!皆さん捕まっててくださいよ!』
相変わらず先生で呼んでくれない生徒に突っ込みをしながらサイドブレーキを解除しつつ、ギアをドライブに入れた慈は車を発進させていき、感染者がほとんどいなくなった校門から巡ヶ丘市内へと突入していく。
ゴクッ
ギュルルル!!
無事に発進したことを確認しつつ、椎名はかなりの数の感染者を引き連れた状態で、サイレンや時折銃声を響かせながら街中をゆっくりと走り抜けていくのであった。
ウゥぅぅぅぅ
ブロロロロ
ウヴぁぁぁ
ーよし胡桃さん達は外に出れた…あとはコイツらを引き連れれば…ー
ウゥぅぅぅぅ
ダァァァァン
「…!?」
それと同時刻、少し遠く離れた場所。かつて多くの人で賑わいを見せていたショッピングモール『リバーシティ・トロン』の駐車場へようやく到着した美乃里は聞き慣れたサイレン音などを耳にするとハッとした表情を浮かべる。
橋を脱出してから聞くことのなかったサイレン、しかもそれが警察車両…パトカーのサイレンであることを察した彼女は、開けていた運転席窓から音の聞こえた方向へ視線を向けていく。
ー今のサイレン……もしかして警察車両のサイレン…!?確かあっちの方から…ー
銃声は一旦止んだものの相変わらずサイレンは聞こえてきており、タイミング的に生存者がいるのはほぼ間違いはない。
…とはいえこの状況でサイレンを鳴らしているということはもしかすれば何かあって助けを呼ぶために鳴らしている可能性が高い、出来れば直接行って確かめたいが…
ー……けどタイミング的に何かあった…?まさか感染者に囲まれて助けを呼ぶためにサイレンを…ー
しかし自分にはそれよりも待っている目先の生存者を助け出さないといけないため、駆けつけてあげたい気持ちをぐっとこらえながショッピングモールを見上げつつ車内に視線を向けた。
もちろんサイレン音は3人にもしっかり聞こえており、美乃里の雰囲気を察した圭と優乃がアレは大丈夫なのか…と不安そうに尋ねる。
ー…っていやいや…!今はそれより圭ちゃんの友達を助けるのが先決…!!あのサイレンも気になるけど…!ー
「あっえっと…美乃里さん…、あれは大丈夫…ですか?」
「そっそうですよ、あのサイレン。タイミング的にSOSとかじゃ…」
だが今は圭の親友、美紀を助けるのが先決でありそれが終わり次第すぐにあのサイレンの元にも向かうから大丈夫だ…と2人を宥めながらショッピングモールの出入り口を凝視していく。
「大丈夫…圭さんのお友達を助けたらすぐに向かう…だから今は目先のことに…ね?」
ーとはいえ…どうやって助けるか…ー
遠くから聞こえるサイレン音によって何体か出入り口で屯していた感染者こそは外に出ては来てこそいるものの、恐らく中にかなりの数がいることには間違いない。
まあなんせショッピングモールなんて人が集まり易い場所の一つ、今回の騒動もそうだが感染症にとっては相性が最悪とも言えるだろう。
ー何体か音に釣られて出てきてはこそいるけと…中にもまだいるでしょうねぇ…、なんせショッピングモールなんて人が集まる場所だし…今回の騒動とは相性が最悪だし…ー
果たしてどうやって侵入しようか…そんなことを考えていると、ふと圭が従業員用通路を使うのはどうでしょうか?と提案ていく。
ー…どうやって侵入するが…ー
「あっあの…従業員用通路を使うのは…どう…でしょうか?」
「従業員用…通路?」
どうやら圭がショッピングモールから出る際に従業員用通路を活用したらしく、あのときのままなら感染者ともほとんど遭遇せずに出られたらしい。
確かにそこを使えば、ショッピングモール内を移動するよりかは安全に彼女の親友がいる最上階に向かうことが可能。
当然そのルートを活用しない手はないためお手柄…!と美乃里が褒めながら突入するための準備を整え始める。
「はっはい…!私もそこを使ったんですけど…、感染者と遭遇することなく出れたので…ショッピングモール内をを突っ切るよりかは…」
「ナイス圭さん!ならその通路を使いましょうか…!」
出来れば全員連れていきたかったが、そうなるともし何かあった際にカバーができなくなってしまうため、瑠璃と優乃を待機させて、圭と自分の2人で親友の救出に向かうことに。
もちろん何かあったらすぐに報告出来るように無線機と護身用の拳銃に加え、車の鍵を施錠出来るように車のキーも手渡していく。
「ごめんけどるーちやんと優乃くんはここで待ってて、あんまり人数多いと私一人じゃカバー出来ないから…。ひとまず車のキーと拳銃、あと無線機は渡しておくから」
「わかりました…、でもなるはやでお願いしますね。人どころか感染者にもまだ一発も撃ててないんで」
「わかってる、善処はするわ」
その後行ってくると伝えながら車をあとにした美乃里は、圭を引き連れてショッピングモール内に取り残されている親友を助け出すために89式を構えながら突入していくのであった。
「それじゃ行ってくるね、圭さん。いきましょう」
「はっはい…!!」
「気をつけてなのだー」
「ごっご無事を!」