学園生活部と銃マニアの女子高生   作:三坂

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第6話 混乱

 

 

 

 夜8時頃

巡ヶ丘市 巡ヶ丘橋にて

 騒動が更に悪化の一途を辿る中、橋ではなんとか警察官による封鎖が続いており、市民をなんとか抑え込むというギリギリの状態が続いていた。

 

 しかしそんな状況がずっと続くわけもなく、一部の市民が封鎖を行っていることに不満を爆発させたのか、抗議団体と化して騒ぎを起こし始める。

 

 

『けーさつの横暴を許すなー!!』 

『許すなー!!』

 

 

 まあそれだけならこんな状態じゃなくても抗議団体としてはよくあることではあるのだが、問題はその団体が今回の感染症が政府とアメリカが開発した生物兵器によるものだと騒いでいる点だ。

 もちろんそんな訳がないのだが、もはや陰謀論だけが先走りしている彼らには誰も止めるものがいるはずもなく、プラカードやら掲げながら大声で訴え続けていく。 

 

 

『我々はーっ!!政府とアメリカが開発した感染症の生物兵器の感染拡大隠蔽をー!!徹底的に抗議するー!!』

 

 

 そんな彼らの様子を警察署の食堂にいる給食担当が作ってくれたおにぎりを頬張りながらパトカーの影で見ていた美乃里は、思わずこの光景にため息を溢す。

 

 

「……はぁ……」

 

 

 ただでさえ封鎖で手一杯な状況で抗議団体によって騒がれでもしたらそれこそこっちの負担が増えかねない。実際昼間よりも感染症と思しき感染者が騒ぎを聞きつけてかかなり押し寄せており、このままの状況が続けばいつまでバリケードが持つかも分からないのだ。

 

 

「勘弁してよ…ただでさえ手一杯なのに…、抗議団体に暴れられたら…ってかそのせいか押し寄せる感染者まで増えてきてるし…」

 

 

 しかし今は自分に与えられた役目を果たす以外のことは出来ないので、抗議団体は機動隊が対処することにはっているため、とりあえず持ち場に戻ろうとした矢先。

 誰かの叫び声と共に発砲音が周囲に鳴り響いた

 

 

「…まあでも私がアイツらに出来ることはないし、とりあえず機動隊の人達が抗議団体出てきたら対処するとはなってるから…とりあえず持ち場n…『ダァァン!!』」

「うっうわぁぁ!!?」

 

 

 どうやら一部の感染者(ゾンビ)が警察官が経っているバリケード手前まで来ていたようで、それにパニクった警官が手にしていたリボルバー 拳銃を発砲した音のようだ。

 もちろん射撃許可は出ていないため署長が慌てる形で制止をするが、パニックになった警官は間髪入れずに発砲。

 

 近づいてきていた1人の警官ゾンビの脳天をぶち抜いて制圧、撃たれた感染者はそのまま仰向けで帽子を落としながら倒れてしまう。

 

 

「射撃は許可してないぞ!!」

ダァァン!!

 

 

 だが一体を制圧したところで背後からぞろぞろとゾンビの大群が押し寄せているためほぼ焼け石に水と言ってもいいもの、なので他の警官達も続く形で相次いで発砲。

 

 しかしお世辞にも射撃の精度がいいとは言えず、ほとんど地面に当たったりとあらぬ方向に着弾している始末。

 

 

ダァンダァンダァン!!

ヒュン!!

かきぃん!!

 

 

 当然感染者以外にも逃げ延びてきた生存者もいるため、今のままでは二次被害がでかねないのも事実。これには美乃里も不味いと思ったのか、慌てて射撃を止めさせようと彼らの元へ向かおうとしたのだが…

 

 突如女性の誰かであろう悲鳴のような叫び声が響き渡ったことで、彼女が止める前に発砲していた警官達の射撃がピタリと止んだ。

 

 

「ぁあもう!あんな撃ち方じゃ意味がない、ってかこのまま二次被害が出るから早く止めn…」

「やめてぇぇぇ!!」

 

 

 どうやらゾンビの集団の中にまだ感染していないひとがいたようで、彼らの視線の先には力なく項垂れる子供を抱えた母親が立っていた。

 しかし母親らしき女性はまだいいものの、子供の方はかなり重篤な状態らしく、それ故こそ必死の思いで助けを求めているのかもしれない。

 

 

「撃たないで…!この子も…私もまだ生きてる!!生きてるのよぉ…!」

「……」

「お願い…この子を…この子をぉ……」

 

 

 だがその様子を見ていた美乃里は子供の状態に異変を感じたのかまさか…という表情を見せる、だがそれに気づいていない母親は助けを求めるように精一杯の悲鳴をあげた直後…。

 項垂れていたはずの子供に首元を勢いよく噛み砕かれてしまった。

 

 

「…っ!」

ー待ってあの子様子が……っまさか!?ー

「この子を助けてt…「ヴァぁぁ!!」」ガブっ

 

 

 よく見ると噛んだ子供の目は感染者特有の白濁った色をしており、それを目撃した美乃里はやはりかという表情を見せながらも衝撃的な光景を目の当たりにしたことで思わず後ずさる。

 

 もちろん噛まれた母親はどうすることも出来ず、そのまま力が抜けたような声を上げながら首元から帯びたしい血を噴き出して立ち尽くす。

 

 

「っう……」

ーやっぱり…、嫌な予感が当たった……。ってか…流石にアレはキツイ…ー

「ぁあ……」ぶしゃぁぁ

 

 

 当然その光景を目撃したリポーターやデモ隊を含めた人たちはあ然とした表情で立ち尽くしており、警官隊も同様な雰囲気を見せていたが、1人の警官だけは違ったらしい。

 

 完全に感染してしまい、顔色どころか目の色もおかしくなってしまった女性をみて思わず歯ぎしりをしてしまうも、すぐに覚悟を決めた表情を浮かべる。

 

 

「ひっ…!?」

「へぇ?」

「……っ…、…くっ…」

 

 

 すると先程あらぬ方向に飛びまくるほどブレブレだった射撃が嘘のように、落ち着いた動きで銃口は女性だったものの頭部に定められていき、間髪入れずに発砲。

 当然感染者の弱点である頭部を撃ち抜かれたので、そのまま撃たれた反動で勢いよく地面に倒れ込んでしまった。

 

 

ダァァン!!

「はぁ…はぁ……」

 

 

 しばらくその光景をあ然としながら見ていた周囲の人たちであったが、デモ隊だけはその光景を目の当たりにしたことで再燃したのか再び騒ぎ出していく。

 

 

「我々はぁ!!警察による市民への発砲を許さなーい!!そしてぇ!政府とアメリカが開発した生物兵器を隠蔽しようとしていることにもだ!」

 

 

 その様子を見ていた女性リポーターであったが、背後から追い抜くように一人の警察官が通り過ぎたことに気づき、カメラマンにそちらの方へカメラを向けるように指示していく。

 

 

「………(スタスタ)っ!ねぇカメラあの人に向けて…!!」

 

 

 ちなみにその警察官の正体は西署署長であり、迷いもなく近づくとデモ隊のリーダー都思しき男性の肩を掴むように呼び止めた。

 もちろんその理由はひとつしかなく、いま盛り上がっているデモ隊を解散させて帰るように…という指示なのだが、すんなりと聞くわけもなく更にヒートアップする。

 

 

「申し訳ないですが、直ちに解散して帰りなさい」

「へぇ?」

「これが最終警告です、すぐに解散しなさい」

「誰が解散するかよ!!お前らこそ!帰れぇ!帰れぇ!!」

『『帰れ!帰れ!!』』

 

 

 だがそれを見てやむを得ないと判断したのだろう、上からの指示であった治安を護るためには何をしてもいいという内容。

 法律的にはグレーだろうがやらなければ事態は更に悪化することは目に見えている、だからこそ遅かれ早かれ誰かがこれをやらざるおえなかったのかもしれない。

 

 ホルスターから拳銃を取り出した署長はそのまま迷いもなくデモ隊リーダーの男の脳天に銃口を突きつけていく。

 

 

「…我々は治安を護るために必要な手段をとることを命じられている。…法律的には怪しいが…、命令は絶対だ」

 

 

 とはいえいきなり拳銃を突きつけられた男性がはへ?という先程とは打って代わり抜けたような表情を見せながら突っ立っていた。

 …が美乃里はその後の事態を想定していたのか慌てて駆け出すように署長の元へと向かおうとしたのだが、その動きを先輩に引き留められてしまう。

 

 

スチャ

「……へえ?」

「っ…!?」

ーまっまさか署長…!不味いそれだけは止めn…ー

「待て、丈槍巡査」

「せっ先輩!?」

 

 

 恐らく間に合わないと判断したのだろうが、そんな先輩が引き留めた理由を知らない美乃里は必死の表情を見せながら抗議するように訴えていく。

 …だがその直後、署長がデモ隊リーダーの脳天に向けてトリガーを引きながら発砲。

 

 もちろん近距離なので外れるわけもなく、脳天を貫かれた男性はそのまま腑抜けた亡骸のように地面へと倒れ込んでしまう。

 

 

「なっなんで止めるんですか!流石にデモ隊だからってアレは……(ダァン!!)ぁ……」

「……」バタン

 

 

 流石にこれにはデモ隊も騒ぎどころではなくなったようで、パニックになりながら逃げ回ったり撃たれたリーダーの元に向かったりしてかなりの混乱状態に発展。

 まさかこうなってしまうとは…そのショックか美乃里は少し足元をふらつかせながら、恐怖のあまりか後退りしかけるが…悲劇はコレだけでは終わらなかった。

 

 

「ぁ……え………っ…そん…な……」

「きゃぁぁぁ!!?」

 

 

 デモ隊に発砲したことで他の市民もパニックになってしまい我先にへと検問を突破しようと所構わず押し寄せてしてしまう。

 当然警察官達もなんとか抑え込もうと試みるが、結果的には感染者への対応が疎かになってしまい、避難民に紛れ込んだ感染者が次々と市民を片っ端に襲い始める。

 

 

「にっ逃げろ!!ここにいちゃ俺等までやられる!!検問さえこえりゃ安泰だ!」 

「あっおいこら!!まて!突破しようとするんじゃない!!」

「うるせぇ!!このままじゃアイツらどころかお前らまでに殺されそうになってんだy…「きゃぁぁぁ!!?」「こっち来るn…がぁぁ!!?」」

 

 

 もはや混戦状態ともいえる状況、流石にこれでは民間人にも被害が出るため警察や機動隊は思うように制圧を行うことが出来ない。

 だがそれが更に事態を悪化させていき、感染者に襲われてゾンビ化したものが別の人間を襲うという最悪の負のスパイラルと化してしまう。

 

 

「くそっ!こんな混戦じゃ制圧なんでできねぇ!!下手したら民間人に当たるぞ!!」

「何モタモタしてんだ!俺たちがやらないと被害がさらに増えるぞ!!」

「わかってるわそんなこと!けどこれじゃこっちだって動こうにも動けないんだよ!!」

 

 

 当然その中でもなんとか制圧しようと拳銃やら警棒などで応戦を試みる警察官も出てはくるものの、そのほとんどは思うように動けないせいで次々と感染者と化した元市民に襲われていく。

 

 

「このっ!こっち寄るんじゃねぇ!」ダァン!!

「やめっ!離せこのっ!(かぶっ)ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!??」

 

 

 地獄ともいえる惨状を目の当たりにした美乃里の先輩警察官は、怯えて固まっている彼女を横目にどうしたものかとあたりを見渡す。

 このままここにいれば自分たちも他の同僚や市民と同じように感染者に囲まれおいしく頂かれるのは目に見えて明らか。

 

 

「ぁ……ぁあ……」

「ちっ!」

ーくそっ!想定しうる最悪な事態になっちまった…!!ここまじゃ俺どころか丈槍巡査まで…!!ー

 

 

 しばらくあたりを見渡しているとふと他の車両と同じように止まっている1台の警察車両が目に留まる。巡ヶ丘西署で多目的パトカーとして使われているT31型エクストレイル(前期型)だ。

 

 

「とりあえず一刻も早くここから離れn……ん?あれは…うちの署の………」

 

 

 ところ狭しと止まっている警察車両とは違って、少し離れた位置に停車している上にエンジンがかかったままの状態なので開いているトランクを閉めればすぐに動かそうと思えば動かせそうではある。

 それを確認すると先輩警察官は後輩の右手を自身の左手で強く握ると駆け出すようにその場を後に走り出す。

 

 

「見たところエンジンかけっぱなしで鍵も開いてる…

比較的動かしやすいところにあるからすぐに出せそうだな…ならっ!」パッ!

「っ!?せっ先輩!?」

 

 

 いきなり駆け出したことで我に返ったのか、ハッとした表情を見せながら美乃里が先輩を見上げるようにどうしたのかと尋ねる。

 しかし悠長に話せる余裕もないため、先輩は単刀直入に話しながらここから逃げ出すぞと口にしながら走っていく。

 

 

「わりぃ!時間もないから単刀直入に話す、ここにいたら間違いなくやられるから逃げるぞ!」

 

 

 だが警察官たるもの市民や仲間を置いて逃げるわけにはいかないため、先程のショックを隠せないのか震える声でそれは駄目なのでは…と訴えかけた。

 もちろんそれは先輩も分かっていること、しかしこの状況になってしまえば事態の沈静化などもう不可能と言ってもいい。

 

 

「にっ…逃げるって!まだここには仲間や逃げてきた市民が………」

「わかってる…!けどもうこうなったら到底沈静化なんてできん…!!下手したらこっちがやられるぞ!」

 

 

 そんなことを話しながら走っていると、目の前に襲われてゾンビ化したであろう同僚らしき警察官が唸り声を上げながら血まみれで立ちふさがる。

 しかしここで立ち止まるわけにはいかないため、すまん…!と口にしながら開いていた右手で警棒を取り出すと、先輩はその勢いでゾンビの頭部を勢いよく強打。

 

 当然頭部が弱点な上に、感染すると足取りがおぼつかなくなってしまうことも加わってか、強打された元同僚はそのままの勢いで地面へと倒れ込んだ。

 

 

「ヴァぁぁ……」

「ひっ…!?もっもしかして〇〇先輩じゃ……」

「くそっ…!お前までやられたのかよ……!すまん…!!」がッ

「ヴァ……」バタリ

 

 

 そのまま完全に制圧したことを簡単にだが確認しつつも、先輩は美乃里を引き続き連れていきながら目的にしていた警察車両のところへと無事たどり着く。

 あとは乗ってこの場から立ち去るだけ…ではあったのだが、先輩が色々と準備している間にふと彼女が何かに気づいたのかはっとした表情を浮かべる。

 

 

「はぁ…はぁ…、とりあえずたどり着けた…あとは開いてるトランクとか閉めれば……」

「っ……んぇ?今の声って…」

 

 

 するとその瞬間子供の助けを求めるような悲鳴が聞こえてきたことで、美乃里は気づけば先程の雰囲気が嘘のように弾かれながら駆け出していく。

 もちろん先輩もそれに気づいて慌てて制止しようとこころみるが、その前に駆け出したので悪態をつきながらもその後を追っていくのであった。

 

 

「ひっひぃ!?こっこないで…!」

「!?」だっ

「あっおい!くそっ!こんな時に!」

 

 

 

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