学園生活部と銃マニアの女子高生   作:三坂

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第8話 出発 初戦闘

 

 

 

 

 騒動発生から3日が経ち…少し前まで賑やかに聞こえていた悲鳴やら銃声、サイレンなどは嘘のように静まり返った朝が訪れていた。

 そんな中巡ヶ丘市内某所にある駐在所のガレージではスイフトの後部座席のドアを開ける形で、椎名が遠征のため事前に準備した食料やらなんやらを詰め込んでいた。

 

「よっと……、とりあえずこんなもん…かな?」

 

 一応日帰りを予定しているとはいえ普段使っている巡ヶ丘学院までのルートが機能しているかもわからない以上、最低でも1、2日は日をまたぐことは覚悟しておかなければならない。

 

「一応日帰り予定してるけど…、いつものルートが使えるかもわからない以上野宿とかは覚悟しないとなぁ…」

 

 とはいえ準備自体はあっという間に終わったため、後部座席のドアを優しく閉めると一旦リビングへと戻る。

 弾薬や武器などはすべて持ち出したものの、万が一家族が帰ってきてもいいように食料などはある程度残していくことにしたらしい。

 

「…よし、こらで準備オッケー…あとは…」

ボムっ

 

 非常食用の棚に収容された食べ物や飲料水、そしてリビングのテーブルに置かれた書き置きを横目にこれでいいかな…とそんなことを呟く。

 

「とりあえずこれでいいかな…」

 

 出来ればもう少しこの家に留まって家族が戻ってくるのを待っていたかった。…が既に騒動から3日経とうとしていることを考えると、動けるうちに動いておきたいのだろう。

 しばらく書き置きの紙を見ていた椎名だったが、覚悟を決めたように行ってきます…と誰もいない家を駆け足で後にしていくのであった。

 

「………出来ればもう少し待ってたかったけど、…行ってきます」

ガタッ

 

 

 

『お父さん、お母さんへ

 

 非常食用の棚に残りの食料とか飲料水保管してます。もし戻ってきたそれを食べてください、私は少し学校に用事があるので家を留守にします。でも必ず帰ってくるのでここで待っていてください。

 

 それとお父さんへ、緊急用ロッカーに入ってた武器とガレージのミニパト借りていきます。勝手な行動だとは思いますが、どうしても必要なので許してください

 

 

雨宮椎名より』

 

 

 

 

 

 

 

 

 とまあそんな感じで準備を整えたものの、ガレージのシャッターを開けてすぐに出発…というわけにはいかない。

 外の状況が分からない上に開けた瞬間に無防備な状態で襲われたら目も当てられない。椎名は壁に付けられた開閉ボタンに左手を添えながら、右手で手にしたP226を構える。

 

「………」

 

 最初こそシャッターを開けるのに少し迷ったものの、開けなければ先に進むことが出来ないことを自分に言い聞かせながら、深呼吸で心を落ち着かせていく。

 その後決心した表情を見せながらシャッターのボタンを勢いよく押すと、まだなんとか通っている電気でシャッターがきしむ音を立てながらゆっくりと上へ巻き上げるように開き始める。

 

「……すぅ……よしっ…!!」ポチッ

ガガガガガ

 

 シャッターが動いたことを確認するや否や、ボタンに触れていた左手を離し両手で添えるように拳銃を握りながら構えていく。

 実物を触るのは初めてどころか撃ったこともないが、それでもガンマニアとして知識はしっかり持っているため、案外柔軟に動き自体は出来ているらしい。

 

ーふぅ…落ち着け…私、撃つときは両手でしっかり……構えて狙う感じで……ー

 

 その間にシャッターは金属が軋む音を立てながらも完全にシャッターが開いていき、彼女の視界には3日ぶりともいえる外の景色が広がっていた。

 …まあ案の定というか家の目の前にある通りもそれなりに荒廃しており、今のところ彼らこそ居ないものの襲われたであろう遺体やクラッシュした車などが手つかずの状態で放置されていた。

 

「………やっぱ家の前もこうなってるか……、ある程度予想はしてたけど……」

 

 だが今はそれよりも彼らが寄ってくる前にいち早く車を外に出してガレージのシャッターを閉じておく必要があるため、周辺観察はほどほどに運転席に乗り込もうとした椎名だったが…

 微かに聞こえてくる足音を耳にすると、ハッとした表情を見せながらドアハンドルに伸ばしていた手をピタリと止める。

 

「…いや、今は音で彼らが寄ってくるまえに車を出さなきゃ……(ザッ…ザッ)…っ!?」

 

 生存者にしてはこの状況下で動きがもっさりしている上に、時折聞こえるうめき声から察するに人間…いや既に人間だったモノなのは確か。

 まさかこんな早く試し打ちする機会が来るなんて…そんなことを思いながらも手にしていた拳銃を構え、銃口を音が聞こえた方向へと向けていく。

 

ー…足音的に生存者…って訳でもないか、どう見ても動きがもっさりし過ぎて『ヴヴヴ…』…まさかこんな早く試し打ち機会が来るなんて…ね…ー

 

 しばらく短いようで長い緊迫した時間が流れていた訳だが、足音が聞こえてから少しした辺りでコンクリート壁の奥から1人の男性が姿を現した。

 服が血だらけでボロボロな上に顔や目がかなり濁っており、足取りもかなりふらついているが服装から察するに何処かの会社で働いていた社員なのは間違いない。

 

「ぁ゙ぁ゙……」

ーけっこう服とかボロボロだし…目とか顔も濁っているけど……服装からしてどっかの会社員…かな…ー

 

 やはりというか近くで徘徊していた際にシャッターの開く音を耳にしたのか、姿を現すと迷いなく椎名がいる車庫の方向へ進路を向けた。

 目が白く濁っているとはいえ動体視力はかなり優れているようで、ゆっくりと歩み寄りながらその狙いを椎名を定めるように進行方向を微調整していく。

 

ー多分…、いや確実にシャッター開く音で反応したっぽい……あの動き方は…ー

「ヴヴヴ……ヴぁ゙ぁ゙…!!」

「…っ…」

ー…見つかった、…案外あの目でも視力はいいのか……ー

 

 当然彼らに襲われたらジ・エンドというのは分かっているため、椎名は心を落ち着かせながら銃口を感染者の弱点とされている頭部に向けて狙いを定める。

 一瞬その彼らが人間だった時の姿の家族とのやり取りらしき光景が唸り声と共にフラッシュバックで脳内を横切ったものの、意を決したようにトリガーを勢いよく引く。

 

「……落ち着け私、コイツらの弱点は頭部……そこを撃ち抜くd……」

 

 

(回想)

『それじゃ行ってくるよ』

『いってらっしゃーい!絶対夜早く帰ってきてよね!』

『わかってるよ、誕生日プレゼント期待しとけよ?父ちゃん奮発しちゃうから!』

『いいの!?わーい♪』

『貴方ほどほどにしなさいよ?』

『わかってるって』笑い声

 

 

「ヴヴヴぁ゙ぁ゙!!」

「…っ!!」カチャ

 

 既に拳銃(P226)の安全装置は解除されているため、トリガーを勢いよく引くと同時に発砲。銃声が一帯に鳴り響くのと同時に銃口から放たれた弾丸は、迷うことなく襲いかかろうとしていた彼らの脳天を生々しい音と共に貫いた。

 

ダァン!!

グチュ

 

 いくら不死身のような感染症であっても、生体活動を担っている頭部を破壊されてしまえばそれまでらしい。

 まるで壊れたブリキのおもちゃみたいなダンスを踊りながらしばらくふらついた後、貫かれた頭部から血を流しながら仰向けで勢いよく倒れ込む。

 

「ぁ゙ぁ゙……ぁ゙」ドスン!!

 

 出来ればこの流れで完全に制圧したか確認したかったが、先ほどの発砲音を聞きつけたであろう彼らの声が複数遠くから聞こえてきたためそれ何処ではなくなってしまう。

 

「……倒し…た?とりあえず確認を…『ヴヴヴ…』…、やば…さっきの発砲音に反応したか…」

 

 とりあえず倒した彼らの確認はほどほどにした椎名は急いでミニパトの運転席に乗り込んで、エンジンを始動させると車をガレージの外へ出すように動かす。

 

「とりあえず車出してシャッター閉めよう…、まだ声的に近くじゃないけど…流石に大人数で来られたら対応出来ない…」

キュルル

ブルン!!

ブロロロ

 

 その後外の壁に設置されたスイッチを操作しつつ開いているシャッターを閉めていくわけだが、ピシャリと閉まる訳ではないので、ノロノロと閉まるシャッターに少し苛立ってしまう。

 

ガララララ…

ーあーもう!こんな時に限ってイライラする…、普段なら気にならないのに…!!ー

 

 しかしなんとか彼らが寄ってくる前にガレージが閉じたため、スイッチのカバーを降ろして鍵を閉めると急いで車に乗り込んむ。

 その後動画やらゲームなどで得た知識を元にブレーキを踏みながらギアをドライブにいれるとアクセルを踏み込んで発進。

 

ガチャ!

ーよしっ!シャッターしまった!急いでここから逃げよう…!ーボム

ブロロロ

 

 それから大通りに出ると案の定銃声を聞きつけた彼らが数体ほどうようよしていたが、幸いにも数は多くなかったためミニパトの小柄な車体を活かしてその隙間を強行突破。

 もちろん彼らも気づいて方向転換していくが、その頃には車のとの距離が離れきっていたお陰で振り切ることには成功した。

 

ブォォォン

ギャン

ーやっぱ音を聞きつけて寄ってきてたか…、でもこの数ならコイツの小柄な車体を活かせば…!ー

「ヴヴヴ……」

 

 こうして家から無事出ることに成功した椎名は、目的地にしていた学校へ向かうために、崩壊した住宅街を横目に放棄された車などの合間を縫うように車を走らせていくのであった。 

 

 

 

 

 

 

ダァン……

「ん…?」

 

 雨宮が彼らに向けて一発発砲したのと同時刻、巡ヶ丘学院の屋上で周辺の見張りがてら日に当たりながら休憩していた3年生『恵飛須沢 胡桃』は住宅街から微かに聞こえてきた銃声に少し顔を上げる。

 最初こそ気の所為かと思っていたが、しばらくしてエンジンのサウンド音やタイヤの鳴る音を耳にするとハッとした表情を浮かべた。

 

「……なんか今なったような、気の所為…か?」

ウォォォン…

キュルル…

「…いや、気の所為じゃない…!もしかして……」

 

 これはみんなに共有しておかないと…そう思っていたタイミングで、後ろから見知った声が聞こえてきたため胡桃はツインテールの髪型を揺らしながらそちらに視線を向けていく。

 

「…とりあえずみんなにこれは共有して……」

「恵飛須沢さん、見張りの方はどうですか?」

 

 そこには濃紫色のロングワンピースを着た茶色の瞳で紫色のウェーブヘアーの女性、『佐倉 慈』の姿があった。巡ヶ丘学院高校で現代国文を担当していた若手よ女性教師、生徒に寄り添うことから『めぐねえ』というあだ名で親しまれていた。

 まさしくグッドタイミングともいえる状況に、胡桃は先ほど目の前の住宅街から聞こえてきた音のことを簡単にではあるが説明していく。

 

「あっめぐねえ!丁度良かった…!」

「んもう…めぐねえじゃなくて佐倉先生と呼んで…、それで何かあったんですか?」

「えっと実は……」

 

 生徒から経緯を聞いた慈はもしかしたら生存者が何処かにいるのかもしれませんね…と目を細めながら、胡桃が指差していた住宅街に視線を向けていく。

 騒動が始まってからというもの、学校周辺や校内にいた生徒や教師、近隣住民は瞬く間に彼らの仲間入りしてしまい、今や生き残っている生存者は4人しか残っていない。

 

「なるほど…、もしかしたら…生存者がまだ何処かにいるのかもしれませんね」

「……だといいけど、ここでさえ結局生き残ったのはアタシら4人だけ…。それも運が良かったからってのもあるし…」

 

 そんなやり取りをしている最中ふと慈の脳裏に、騒動当日に熱を出して休んだ少し変わった優等生『雨宮 椎名』のことが過ぎる。

 確か彼女の家…いや駐在所があの辺だったようなと思いながら、大丈夫だろうか?…と少し不安そうな表情を見せた。

 

「……」

ーそう言えばあの日休んだ雨宮さんのお家…いや駐在所って言ったほうがいいかしら…?あの辺だったわよね……大丈夫かな…ー

 

 するとそんな先生の表情に気づいたのか胡桃がどうしたのかと尋ねていき、慈も特に隠す理由もないため椎名のことについて説明していく。

 当然同じ高校3年生な上に優等生ながら生粋のガンマニアとして知られていた彼女のことを知らないはずもなく、それを聞いた胡桃はあーと苦笑いを見せながら納得する。

 

「ん?めぐねえなんか悩んでるけど、どうかしたか?」

「だからめぐねえじゃ……いやまあちょっと…(理由を説明)」

「あー、アイツか(汗)優等生な上にガンマニアだから陸上部でもその噂はよく耳にしてたよ」

 

 とはいえ騒動当日に体調を崩したのはハッキリいってラッキーと言えるだろう。実際学校にいた自分たちはこうして籠城するにも苦労しており、それに比べれば家にいるほうが余程のことがない限り安心と言ってもいい。

 それにガンマニアではあるが優等生な彼女ならきっと上手くやってるとと胡桃が口にすると、慈もそれに同意する形で返答していく。

 

「でもまあ、あの日に体調を崩したのは結果的に良かったんじゃないか?ここに比べたら家にいるほうがまだ安全だろ、ってかアイツのことならここでもやってけるか…」笑

「そう…ですね」ふふっ

 

 まあこんな話をしている時にアレではあるものの、呑気に人の心配を出来るほど余裕があるかと言われれば自分たちにはハッキリ言ってない。

 なにせ現状制圧出来ている場所が屋上と3階の生徒会室周辺の一部しかない上、生徒会室に備蓄されていた食料がもう残り僅か。

 

 一応量を減らしてできる限り持たせようとする努力はしたものの、非常用ではなく生徒会役員の間食用だったようでまだ騒動から3日目なのにかなりギリギリの状態なのだ。

 

「っても、人の心配出来るほど余裕はアタシらにはないけどな」

「えぇ…、生徒会室にあった食料も残りわずかですし……」

 

 このままでは底を尽きてしまうのも時間の問題なので、そうなる前にバリケードの外に出て未制圧のエリア…主に食堂や購買から食べ物を入手する必要がある。

 

「…完全に尽きる前にどうにか未制圧エリアから食料を入手する必要があるな……」

「…ですね、現状危険な手段ではありますが…。他に方法はないですし…」

 

 とはいえここで今後の食料に関して話していても答えが出てくるわけもないため、一旦3階の生徒会室に戻ることにした2人はゆっくりと歩きながら屋上を後にしていくのであった。

 

「まっここで話してもアレだし一旦生徒会室に戻ろっか、りーさん達の意見も聞きたいし」 

「そうですね、とりあえず戻りましょうか」

 

 

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