学園生活部と銃マニアの女子高生   作:三坂

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第9話 大破した輸送トラック

 

 

 椎名が学校を目指し出発したのと同時刻

 

 

 

 荒廃した巡ヶ丘市内の某コンビニエンスストア駐車場には、放棄された他の車とは違いまだ動けそうな白黒のエクストレイルパトカーが止まっていた。

 

 その車内には運転席やら助手席などを倒して簡単なフルフラットにした状態で寝ていた美乃里は小鳥のさえずりで目を覚ます。

 

チュンチュン

「ん……」

 

 どうやら昨日の巡ヶ丘橋騒動後、なんとか安全な場所であろう市内のコンビニまで車を走らせていたらしい。

 助手席に視線をやると、検問所で襲われそうになっていたところを今は亡き先輩と助けた少女がすやすやと寝ている。

 

「んん……」

 

 名前はまだ聞けていない…というかあまりにもショック過ぎる出来事の直後はそれどころではなかったものの、胸元に付いている名札のお陰で若狭瑠璃(8歳)というのは分かった。

 年齢からして小学3年生の低学年といったところだろう、そっと眠りについている瑠璃の頭を撫で下ろすと身体を起こし周囲を軽く見渡す。

 

「……」

ーにしても…小学生の低学年だから胸元に名札がついてて助かった…。あの状況じゃ名前なんて聞きづらいし…ー

 

 なんせここに逃げ込んだ時は日が完全に落ちていてライトや街灯で照らされていた所以外は何も見えない状況、まあコンビニ店内の電気が付いていただけ安心感は違ったのだが…。

 とはいえ安心感だけ貰っても周辺の確認が出来ないのは話にならない、幸い日が昇っているタイミングなので車内から確認をすることに。

 

ーでもそれより今は、この辺の状況確認か…。コンビニは電気ついてたから店内の様子が分かったけど…、後は真っ暗で見えなかったし…ー

 

 ひとまずフロントガラスにできる限りプライバシーを確保するためにつけた日よけをゆっくり外し、その際に飛び込んできた日差しに思わず驚きながらも、目の前の光景に目をやっていく。

 

ーとりあえず…まずは日よけの奴を取って……、わっ!?眩し…ー

 

 しばらくすると光に目が慣れてきたのか、コンビニの目の前を横切るように通っている道路や、その先の住宅街といった建物の状況が徐々に明らかになる。

 まあやはりというか、道路にはクラッシュして電柱やら家の壁を突き破ったり、放棄された一般の車が等間隔で停まっており、家の方も荒らされた形跡のある建物が何件か確認出来た。

 

ー…ようやく目が慣れて…ってやっぱ予想してた通り…か、この辺も結構酷い状況みたい…車なんかあらぬ方向に突っ込んで大破してるし…ー

 

 もちろん今いる駐車場のコンビニも例外ではなく、視線をそちらにやるとガラスがあちこち割れ、店内も食料目当てで乗り込んだ市民によってかなり荒らされていた。

 だが死体などや感染した彼らの姿は今のところ確認出来ないため、それが分かると少し安心したのか安堵した表情を浮かべる。

 

ー……まあここのコンビニも、やっぱり。そりゃこんな状況じゃ食料求めて押し寄せるよねぇ…、でも感染した連中は居ないみたい…なら少しは安心か…ーホッ

 

 …しかしかといって安泰かと言われればそんなことはなく、これからどうするのかを考えなければならない。

 いつまでも車上生活をするわけにもいかず、かといってしようものなら食料やらの問題も解決しないとならないだろう。

 

「…ってもこれからどうするか、いつまでも車上生活って訳にもいかないし…。何より食料の問題も…」

 

 とはいえそれらをどうこうする以前に、身を護るための装備が心許ないのも大きな問題だ。警察などの法律が機能しなくなったとなれば、感染者以外にも暴徒化した市民と遭遇する可能性も否めない。

 

ーまあそれ以前に身を護るための装備が心許ないのをどうにかしないと…、法律が機能してないこの状況じゃ…感染者以外にも暴徒化した市民と遭遇するだろうし…ー

 

 

 当然警察官とはいえ女性と女子供しかいない自分たちは格好の標的になることは用意に想像出来、もし捕まりでもすれば何をされるかなど考えたくもない。

 

ーいくら私が警察官っても女と女子供しかいないんじゃ暴徒化した連中には格好の的…、そんな奴らにもし捕まれでもすれば…。出来れば考えたくないわー

 

 だが今自分の手元にあるのといっても手錠と警棒、それと予備の弾がない5発装填のS&W サクラ M360Jのみ。

 もちろんこれでは自己防衛するにしては明らかに足りないため、美乃里はどうしたものかと…ダッシュボードにそれらを並べた状態で考え込む。

 

ー…ふーむ、予備弾なしの拳銃に警棒…、あと手錠か……まあ…全然足りない…わよねー

 

 すると横から声が聞こえたためそちらに視線を向けると、先ほどまですやすや寝ていた少女がようやく目を覚ましたらしい。

 相変わらず寝起きなので眠たそうにはしていたが、美乃里の顔が見えると目を擦りながらおはようと声をかけてきた。

 

「んぅ……」

「おっ?もしかして…」

「ぁ…おはよう…です…」

 

 そんな彼女に挨拶を返していた美乃里だったが、そう言えば自己紹介をしてなかったな…と思い出し、信頼を高めて安心してもらうためにもということで警察手帳を見せながら名前を名乗っていく。

 

「おはよう♪よく寝れたかしら?」

ーってそう言えば名を名乗ってなかったわね…、安心してもらうためには自己紹介しておかないと…ー

「っと自己紹介してなかったけど、私巡ヶ丘西警察署に勤務してる丈槍美乃里っていうの。よろしく!」

 

 昨日の出来事もあるためすんなりと受け入れてくれるか…という不安はあったものの、彼女が自分を助けてくれたという認識は瑠璃にあったようで、笑みを見せながら名を名乗ってくれた。

 

ー…昨日の騒動もあるし…、すんなり引き受けてくれるかは不安があるけど…ー

「私…若狭瑠璃っていうの…!るーちゃんってみんなから呼ばれてるんだ…!」

ー…この感じ大丈夫そう、よかった…いい印象を持ってくれて…ー

 

 これなら自分みたいな新米警官でも上手くメンタルケアすることが出来るかも…、そんなことを思っていると車内に何かが鳴る音が突然響き渡る。

 どうやらお腹をすかせた瑠璃が鳴らしたようで、お腹に手を添えながら少し照れくさそうな表情を浮かべていた。

 

ーあとそのほうがメンタルケアする側としては助かる…、私そういうの詳しくないから…ー

グゥゥ…

「おっ?」

「…えへへぇ…、お腹空いちゃった…」汗

 

 この子が最後にいつ食べたかは定かではないが、自分も含めてそう言えば昨日からご飯を食べてなかったな…そんなことを思いながら鳴り出した自分のお腹を擦っていく。

 

ーそう言えば…昨日の夜からご飯食べてなかったな…、って私もなんかお腹減ってきた…ー

 

 出来れば近くのコンビニでご飯を調達したいのだが、あの惨状を見る限り期待は出来ないだろうし、何より中の状態が不明な以上変に足を踏み入れたくないというのが本音。

 かといってこの車にも食料があるかと言われればないため、うーんと少し首をひねりながら考えていた美乃里だったが…

 

 何かに気づいたのかん?と声を漏らしながら顔を上げた。

 

ー出来れば丁度いい場所にあるコンビニで調達したいけど……流石にあの中には入りたくない…、かといってこの車に食料なんて…ー

「うーん……、ってお?」

 

 助手席にいた瑠璃は不思議そうな表情でどうしたのかと尋ねると、美乃里は車を動かすから座席を起こすのを手伝ってと依頼していく。

 そんな彼女の視線の視線の先、コンビニから少し死角になっている交差点付近には、クラッシュしたであろう大破した自衛隊の73式大型トラックが…。

 

「?どうかしたのだ?」

「…ちょっと車動かすから、座席起こすの手伝ってくれる?」

 

 損傷具合からして交差点で横から車に突っ込まれてその弾みで信号機に突っ込んだのかもしれない。

 キャビン自体はかなりへちゃげており生き残りがいるとは思えないが、荷室は見たところ無事なようだ。

 

 恐らく美乃里はこれを目撃してこの荷室に何かあるのかもしれないと踏んだようで、少しすると彼女が運転するエクストレイルがバックで現れ、荷室へと接近する形で停車した。

 

「っと……」キキッ

「おー…おっきいトラック…だ」

 

 その後拳銃片手に運転席からドアを開けつつ降りると、瑠璃に安全も考慮して車内で待機するように指示。

 最初こそ彼女と離れるのが不安だったのがあまりいい表情はしなかったものの、もし物資があれば運び入れるのを手伝ってくれたら助かる…!と言われると、自信げに分かったと答えていく。

 

「るーちゃんはここで待ってて、私はちょっとあの荷室見てくるから」

「……大丈夫…なの?」

「うん♪あっもし物資あったらるーちゃんに運び入れる手伝いしてくれたら助かるかも!」

「…ならるーちゃんに任せて!」

 

 そんな彼女にお願いね?と頼みながらその場を後にすると、唯一の護身用武器であるリボルバー拳銃を構えながら自衛隊のトラックに近づく。

 先ほどまでは気にしなかったものの、空の模様が崩れてきており今にも雨が降りそうな雰囲気を醸し出しており、美乃里も時折空の様子を気にしつつ周辺をクリアリングする。

 

「……」

ーさっきは気にしてなかったけど…空の模様が怪しい……、一雨降るかも…ー

 

 だが幸いにも感染者はトラック付近どころか周辺にも確認出来ないようで、安全だと分かった瞬間ホッと安堵のため息を零しながら拳銃をホルスターに収容。

 もちろんいつ何があってもいいように取り出せる状態をキープしながら、完全に潰れたキャビンの様子をうかがっていく。

 

ー…とりあえず大丈夫そう、ってももしなんかあってもいいように取り出せる状態にだけは…ー

 

 運転席と助手席には自衛隊員らしき人影が確認できたが、ぱっと見感染はしていないようだが事故の衝撃で即死したようだ。

 その様子を見ながら静かに手を合わせつつ黙祷を捧げていた美乃里だったが、突如大粒の雨が叩きつけるように降り始める。

 

ー…感染はしてないっぽい、事故の衝撃で即死ってところか……ー(黙祷)

ポツン…ポツン…

ザァァァア

 

 あまり悠長にしてられないな…雨に打たれながらそんなことを思い、駆け足でトラックの後ろに回って荷台の出入り口側のホロを開けていく。

 本人的には急いで開けたつもりだったが、想定していたよりもかなりの土砂降りということもあったため、着ていた警察官制服は肌にひっつくほどびしょ濡れになってしまう。

 

「よっと…!(ガタン)うひゃー…めっちゃびしょ濡れになった…、服が肌にひっついて気持ち悪い……」

 

 だが荷台にびっしりと積まれてある段ボール箱を見つけた途端、ビンゴと笑みを見せていく。

 

「……ビンゴ」

 

 大破した自衛隊トラックの荷台側面に災害派遣の横断幕が掲げられていたため、恐らく状況からしてそれに関係した物資を運んでいたのだろう。

 そう思ってた美乃里の予想は見事的中、箱を開けると乾パンや山○パン、インスタント系のラーメンや飲料水といった食料がびっしりと入っていた。

 

「……災害派遣の横断幕が荷台についてたから予想はしてたけど…、やっぱり…非常食とかパンが一杯…」

 

 恐らく避難所に届ける最中に事故に遭ったのだろう、だが彼女が橋に居たときも指定されていた避難所と連絡が取れなくなったという情報が何件か入っていたことを察するに、この自衛隊トラックが向かおうとしていた場所も恐らくもう…

 

 一瞬そんなことを思いかけた美乃里だったが、そんなことより今は自分が生き残るのが大事…!と首を振って自分に言い聞かせながら食料の入った箱を持ち上げた。

 

ー多分避難所に向かう途中で事故したんだろうな、…でも問題はその避難所が無事かってこと…。検問所にいた時連絡が取れなくなったところもあったから、もしかしたら…ー

「…っていやいや…!そんなことより今は自分が生き残ることを優先しなきゃ…!よしっ!」

 

 その後トラックの荷台の端まで何個かの段ボール箱を運び終えると、エクストレイルのトランクを開けていき、そこへ次々と食料などを積み込んでいく。

 もちろん瑠璃もただ見ているわけでもなく、段ボール箱を奥に詰め込む際に車内から押すのを手伝ったりと、できる限りのことをしていた。

 

「まずはこれを…るーちゃん、奥に押し込むの手伝ってくれる?」

「うん…!」

 

 とまあそんな感じで食料の積み込み自体はスムーズに事が運んでいたのだが、ある程度運び込んで段ボールの山が減ってきた道中、明らかに他の段ボールとは違った細長い木箱があることに気付く。

 

「ふぅ…、結構段ボールの山が減ってきて……ん?この箱って……」

 

 恐らく事故の衝撃だろうか?箱の蓋が僅かに空いており、そこから細長い鉄のようなものが飛び出ているのが確認出来た。

 自衛隊の輸送トラック、それに積んである鉄のようなものとなれば美乃里のような新米警官でもある程度想像がつくというもの。

 

ー蓋が空いてる…、多分事故の衝撃なんだろうけど…それよりこの細長い黒い鉄みたいなのって…ー

 

 そうこの細長い鉄のようなものこそ陸上自衛隊で広く採用されているアサルトライフル『89式5.56mm小銃』であり、食料の入った段ボールに埋もれる形で、他にも何丁か弾薬やマガジンなどを含めて入った箱が確認出来た。

 

ー…いや自衛隊のトラックに積んであるってことはそういうことか…、明らかに銃…だよね。他にも似たような奴が何個かあるし…ー

 

 実物自体テレビやネットなどで数える程度にしか彼女は見たことはなかったが、印象は強かったようで名前などはすんなり頭に思い浮かんだようだ。

 とはいえ身を護るための装備が少ない美乃里にとってはありがたい存在であり、ありがたく使わせてもらうことに。

 

ー確か89式…だっけ?名前とか実物はテレビとかで何度か見たことはあるけど…、でもこれはこれで使わせて貰おう…正直拳銃だけじゃ心許なかったのは事実だし…ー

 

 正直警察学校時代拳銃の扱いを教わった程度の自分に扱えるものなのかは不安ではあるが、そんなことを悠長に言える状況ではないのは確かだろう。

 

ー…まあ正直扱える気はしないけど、贅沢は言ってられないしね…ー

 

 そんなこんなしている間にトランクに詰める分だけ食料やら飲料水、銃火器一丁と弾薬やらを詰め込み終わると、トランクを閉めて相変わらず土砂降りの中滑り込むように運転席に乗り込む。

 

「っと!(ボムっ)ふぅ…めっちゃびしょ濡れになった……どうしてこんな時に大雨なんかが…」ハァ

 

 するとその様子を見兼ねたのかこれで拭いていいよと瑠璃が自分が持っていたハンカチを手渡し、美乃里もせっかくの善意を断るわけにはいかないためありがたく受け取って顔などの水気を取っていく。

 

「…よかったらこれで拭いていいのだ♪」

「あっありがと、助かるよ…♪」フキフキ

 

 最終的に入手出来たものは2人分で仮定した場合の食料、飲料水は2週間ほど…もう少し詰めれば2週間半いけるといったところ。

 弾薬に関しては89式5.56mm小銃300発といったところであり、入手する前に持ってた予備弾なしの拳銃よりかはかなり余裕が出てきたというところだろう。

 

 とはいえ前述した通り彼女はアサルトライフルクラスの小銃を扱った経験がないため、戦力として使うにはかなり練習しておく必要があるが…

 

「…ざっとだけど食料、飲料水は2人合わせて2週間か…まあ流石に全部は入らないよねぇ…。でもまっ護身用の銃が手に入ったのはよかった、…扱えるようになるまでは練習が必要だけど…」

 

 あとは籠城出来そうな建物さえあればといった感じではあるが、チラリと視線を向けた瑠璃の表情が空腹でもう限界と言わんばかりの雰囲気を見せていたため、一旦お昼を取ることに。

 

「あとは籠城出来る建物さえ見つかれば…(チラッ)…の前にご飯食べましょうか」汗

「うん♪」

 

 雨に濡れたせいで肌に服が張り付くのが気にはなるものの、流石に車内とはいえ丸見えの状態で服を脱ぐわけにもいかず輸送トラックで見つけたふかふかのタオルで服の合間から水気をふき取りながらも、瑠璃と久しぶりのご飯(パンなど)を美味しそうに食べていくのであった。

 

ー…うぅ…服が肌に張り付いて…、でも流石にここじゃ脱げないから…もう少し我慢我慢…ー

「美味しい…♪」

「うん♪」

 

 

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