ブルアカ貞操逆転兄妹(姉弟)もの 作:アカシア9
「あう…(知らない天井だ…)」
目が覚めると、見慣れない天井があった。
俺はどこにいるんだ? もしかして、事故にでも遭ったのか?
頭が混乱している。最後の記憶は、塾の帰り道だったはずだ。
「…あぁ、よかった。目を覚ましたのですね」
優しい声が聞こえてきた。視線を向けると、そこにいたのは少女だった。いや、少女というにはあまりにも綺麗すぎる。透き通るような白い肌、太陽の光を浴びて輝く、プラチナブロンドの髪。そして、頭上には白い光の輪が浮かんでいる。
(う、嘘だろ…)
彼女の姿は、まるで天使のようだった。そんな非現実的な光景に、俺は呆然と見つめることしかできない。
「少し、熱がありますね。まだ安静にしていましょう」
彼女はそう言って、俺の額に手を当てた。ひんやりと、そして柔らかい感触。それが心地よくて、俺は安堵のため息をついた。
「…だう(…も、もしかして、この人が俺の姉なのか?)」
その声は、まだ幼い声だった。そうか、俺はまだ子供なのか。いや、そんなことよりも、彼女の声がとても綺麗だった。まるで、どこまでも澄んだ水のような。
「ふふ。ナギサお姉ちゃんはここにいますよ〜」
ナギサは、ふんわりと微笑んだ。その笑顔は、あまりにも神々しくて、俺は思わず見惚れてしまった。
前世では、こんなに綺麗な人に出会ったことはなかった。まるで、この世のものとは思えない。
「あう…(姉さん…)」
俺はそう呟いて、ナギサの指をぎゅっと握った。まだうまく言葉にできない俺は、ただただ彼女の存在を確かめたかった。
この世界がどんな場所かは知らない。でも、こんなに優しい姉さんがいるなら、きっと大丈夫。
そう、根拠もなく信じることができた。
ナギサは俺の手を優しく握り返して、微笑んだ。
「大丈夫ですよ、あなたは私が守りますから」
その言葉は、俺の心を温かく満たしてくれた。
それが、俺と姉さんとの初めての出会いだった。
時が経ち、俺は少しずつ言葉を話せるようになっていた。
そして、外の世界を知ることになる。
最初は、ただの賑やかな街だと思っていた。でも、違った。銃声が、日常的に鳴り響いている。街中には、銃を持った女の子たちが歩き回り、時折、派手に撃ち合いをしている。
「あれ、なんだったんだ?」
テレビでニュースを見ていると、街の中心部で大規模な銃撃戦があったと報じられていた。映像には、建物が派手に崩壊し、火の手が上がっている様子が映っている。
「日常ですよ。キヴォトスでは、よくあることです」
ナギサは、何でもないことのように答えた。
「え、これ、日常なの!?」
俺は震えた。こんな危険な世界に、俺は転生してしまったのか?
俺の前世はただの、戦闘能力のない男子高校生だ。こんな世界で、どうやって生きていけばいいんだ?
「心配いりません。私があなたを守りますから」
ナギサは、いつもそう言ってくれた。
でも、俺は思った。このままでいいのか? いつまでも姉さんに守られていていいのか?
ナギサは、いつも俺の世話を焼いてくれた。ご飯を食べさせてくれるときも、お風呂に入れてくれるときも、いつも優しく微笑んでくれる。
「姉さん、ありがとう」
俺はそう言って、ナギサに抱きついた。
ナギサは、優しく俺の頭を撫でてくれた。
その手の温かさが、俺の不安を少しずつ溶かしていく。
「あなたがいてくれるだけで、私は幸せです」
ナギサはそう呟いた。その声は、どこか寂しげで、俺の胸が締め付けられた。
「…俺も、姉さんがいれば何も怖くないよ」
俺はそう言って、ナギサの肩に顔をうずめた。
本当は怖くて仕方ない。でも、俺が怖がってばかりいたら、姉さんまで不安にさせてしまう。
そう思って、俺は必死に強がった。
「姉さんは、俺のヒーローだよ」
俺はそう言って、ナギサの背中に手を回した。
ナギサは、俺の言葉に驚いたように目を丸くした。そして、ふわりと微笑んだ。
「……そうですか。私が、あなたのヒーロー…」
その言葉を、ナギサは何度も反芻するように繰り返した。
俺が何気なく言った言葉が、こんなにも姉さんを喜ばせるなんて。
それから、俺はナギサを褒めまくるようになった。
「姉さん、今日も綺麗だね」
「姉さん、料理が上手すぎる。天才だ!」
「姉さんの笑顔は、世界を救うと思うんだ」
恥ずかしいなんて、言ってられない。だって、俺が褒めると、ナギサは本当に嬉しそうに微笑んでくれるんだ。
その笑顔を見るだけで、俺の心は満たされていく。
「…ありがとうございます。あなたにそう言われると、とても嬉しいです」
ナギサはそう言って、俺の頭を優しく撫でてくれた。
その手の温かさが、俺の心を安堵で満たしていく。
ああ、この世界は怖い。でも、この手の温かさがあれば、きっと大丈夫だ。
俺は、ナギサにひたすら甘え、そして褒め倒すことで、現実から目を背けていた。
ナギサは、俺が大きくなるにつれて、ますます美しくなっていった。
プラチナブロンドの髪は、サラサラと指の間を滑り落ちるほど艶やかで、太陽の光を浴びると、まるで宝石のように輝く。
ナギサは、トリニティ総合学園という、由緒正しい学園に通うようになった。
俺は、ナギサがいない間、一人で留守番をすることが多くなった。
最初は寂しかったが、ナギサが帰ってくると、その寂しさはすぐに吹き飛んだ。
「ただいま。良い子で留守番していましたか?」
「おかえり! もちろん! 姉さんがいないと寂しいから、早く帰ってきてくれて嬉しいよ」
俺がそう言うと、ナギサは、ふわりと微笑んで、俺の頭を優しく撫でてくれた。
その手の温かさは、いつまでも変わらない。
俺は、そんなナギサに、ひたすら甘え続けた。
そして、ナギサもまた、俺に甘え始めた。
「…あなたがいなくて、寂しかったです」
ナギサは、そう言って俺の腕に縋り付いてきた。
その声は、どこか震えていて、俺の胸が締め付けられた。
「…ごめん。俺も、姉さんがいなくて寂しかったよ」
俺がそう言うと、ナギサは、俺の胸に顔をうずめて、小さく嗚咽を漏らした。
ナギサは、いつも冷静で、完璧な姉だった。
そんな姉が、俺に弱さを見せてくれたことが、俺は嬉しかった。
「大丈夫だよ。俺は、ずっと姉さんのそばにいるから」
俺はそう言って、ナギサの背中を優しく撫でてやった。
ナギサは、俺の言葉に安心したように、深く息を吐いた。
でも、この頃から、俺は違和感を覚え始めていた。
時が経ち、俺もトリニティ総合学園の高等部に進学した時のことだ。
ナギサは、俺が他の生徒と話していると、途端に不機嫌になるようになった。
「あの……その、もしかして、桐藤ナギサさんの弟さんですか……?」
「うん、そうだけど……」
「すごい……!噂通り、本当に可愛いんですね!きゃーっ、やっぱり男の子って、守ってあげたくなっちゃいます!」
そう言って、俺の手をぎゅっと握ってくる女の子。
俺は戸惑った。だが、ナギサと二人きりの生活に慣れすぎた俺にとって、外部の人間との交流は新鮮だった。
俺は嬉しくて、つい、ナギサにその日の出来事を話してしまった。
「今日ね、街で女の子に声かけられたんだ!なんか俺のこと、可愛いって言ってくれてさ!照れちゃったよ」
「……そうですか」
ナギサの声が、いつもより低い。
「……可愛い、ですか。あなたを……ですか」
ナギサは、俺が褒められるのを快く思わないようだった。それどころか、俺が他の女の子と話していることを知ると、ナギサは明らかに不機嫌になった。
「あなた、その子のこと、可愛いと思いますか?」
「え……?いや、別に……」
「……そうですか。よかった。あなたの隣にいるのは、私だけで十分ですから」
ナギサは、そう言って、俺の顔を覗き込んできた。
その目は、まるで獲物を狙う獣のように、鋭く光っていた。
「え、えっと、その…」
俺が答えに窮していると、ナギサは、何も言わずに俺の肩を抱き寄せた。
「…私だけを見ていればいいんですよ。他の子なんて、どうでもいいでしょう?」
その声は、いつもよりも低く、重かった。
俺は、ナギサのその言葉に、背筋が凍るような感覚を覚えた。
(あ、もしかして、姉さんって…)
その時、初めて、俺はナギサの独占欲に気づいた。
そして、俺は、ナギサに甘えすぎたことを後悔した。
俺は、このままじゃいけない。このまま、姉さんを依存させてしまったら、姉さんのためにならない。
そう思って、俺は少しずつ、ナギサと距離を置こうとした。
「…どうして、最近、私を避けるんですか?」
ナギサは、悲しそうな顔で俺に問いかけた。
「避けてなんかいないよ。ただ、俺も自分のことは自分でやらないと…」
俺がそう言うと、ナギサは、俺の言葉を遮るように、俺の腕を強く掴んだ。
「…嘘です。あなたは、私から離れようとしている。そうでしょう?」
ナギサの目が、涙で潤んでいた。その瞳は、まるで迷子になった子供のように、不安に揺れていた。
「…そんなことないよ。姉さんは、俺の大事な姉さんだから…」
俺はそう言って、ナギサの手を優しく握り返した。
その手の温かさは、いつものように俺を安心させてくれるはずだった。
でも、違った。
ナギサは、俺の手を、震える声で握りしめたまま、泣き出した。
「…私から、離れないで。あなたがいなくなったら、私はどうすればいいんですか?」
ナギサは、そう言って、俺に縋り付いてきた。
その声は、まるで世界の終わりを告げるかのように、絶望に満ちていた。
俺は、ナギサのその姿に、何も言えなくなってしまった。
俺が、姉さんを褒め、甘やかし続けた結果が、これなのか?
俺は、姉さんを救いたかったはずだ。
でも、いつの間にか、俺は姉さんを、俺なしでは生きられない存在にしてしまった。
「…大丈夫だよ。俺は、ずっと姉さんのそばにいるから」
俺は、そう言って、ナギサの頭を優しく撫でた。
その髪の感触は、いつまでも変わらない。
そして、俺が褒めるたびに、ナギサの依存は、さらに強固なものになっていく。
「…ありがとう。あなただけは、私を裏切らないでくださいね?」
ナギサは、そう言って、俺に微笑んだ。
その笑顔は、どこか歪んでいて、俺はゾッとした。
俺は、ナギサを救うどころか、奈落の底へと突き落としてしまったのかもしれない。
俺は、ナギサの依存を加速させている。
そして、ナギサは、俺の依存をさらに加速させている。
俺たちは、互いに依存し合う、共依存の関係に陥ってしまったのだ。
この関係を、どうすればいいのか分からない。
俺は、ナギサを救うために、必死に褒め続けた。
「姉さん、やっぱり最強だよ」
「姉さんは、世界で一番美しい」
「姉さんがいるから、俺は生きていけるんだ」
俺がそう言うたびに、ナギサの表情は、どこか満たされたものになっていく。
俺は、この関係から抜け出せない。
だって、俺がナギサから離れたら、ナギサは壊れてしまう。
そして、俺もまた、ナギサから離れることができない。
俺は、ナギサの存在なしでは、生きていけない。
「…俺はどこで間違えたんだ?」
俺はそう呟いて、ナギサの温かい手の感触を、ただただ感じていた。