メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話   作:XX(旧山川海のすけ)

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第100話 彼女が一番欲しい言葉は

 オヴィというユージフ女性を連れて、俺は何処か入れる場所を探した。

 

 この世界は差別は建前上は無くなったらしいが、元被差別種族の人間がそれなりの店に入るのはやはり抵抗がある。

 

 なので、少し距離はあったが……

 

「いらっしゃいませー」

 

 店に入ると、マリアがそう出迎えてくれた。

 いつも行く店。

 

 ……どうしてもここになるなぁ。

 

 蜜蜂のささやき亭。

 

 ここならユージフやパリパス、エルダ族が食事をしてても嫌な顔されないし、注目されることもない。

 

「果汁水と簡単な揚げ物ください」

 

 一応、軽いものを注文し。

 

 俺たち2人は席につく。

 

「……で、何のご用なんですか? 今どうしてるかを知りたいというお話でしたが……」

 

 少し不安げな様子を見せるオヴィさんに俺は

 

「ええ、実は」

 

 そっと囁くように

 

「今の惺教に満足されていますか?」

 

 そう言った。

 

 

 

「……満足とはどういうことですか?」

 

 すると彼女の目に力が篭もる。

 こちらを探るような、そんな力が。

 

 俺はそれを受け止めて

 

「いきなり一方的に、昨日まで真理だと教えられていたことが全て間違いだったと言われて満足ですかと訊いているんです」

 

 そう、大きくは無いがハッキリとした声で彼女に伝える。

 その言葉に、彼女は震えた。

 

 思うところがあるのかもしれない。

 

「……真惺教は、新しい戒律として十罪と、祝福される10の徳である十徳を中心とした教えに切り替わりました」

 

 そしてオヴィさんは、まるで経文を暗唱する修行僧みたいにそう口にした。

 

 ……ああ、そうか。

 

 おそらく本当はこの人は、納得いって無いんだな。

 なるほどな。

 

 俺は

 

「元々の惺教は、決して驕らず全てに頭を下げる心を持てという教えなんですよね?」

 

 あの人、リーフさんからの受け売りだ。

 俺の言葉にオヴィさんは頷く。

 

 俺は

 

「じゃあその十罪と十徳でしたっけ? ……それを教えてくださいよ」

 

 俺のその言葉に

 

「十罪は、神の冒涜、不信心、遺棄、侮辱、殺害、姦淫、窃盗、虚言、裏切り、破約」

 

 オヴィさんはそう返す。

 

 なるほど。

 10個の罪だから十罪か。

 

 だったら

 

「……驕らずに全てに頭を下げる行為のどこがその罪に触れるんです? 謙虚であれってことでしょ?」

 

 何も間違ってない。

 惺教の教えが間違いであると主張するのであれば、謙虚であるということが間違っていると教えている教義でないとおかしい。

 

 なのに、その真惺教の十罪はそういう内容じゃない。

 

「だったら惺教で良いでしょう。何も変える必要無いじゃないですか」

 

「……だけど!」

 

 オヴィさんは迷ってる。

 それが一目で分かった。

 

 やっぱり彼女も、納得いってないんだ。

 

 多分彼女は……

 

 あと一押し。

 それを求めてる。

 

 今を否定し、立ち上がるための言葉を。

 

 だから俺は

 

「ハイペリックという人も、今の惨状を見たら嘆くでしょうね」

 

 彼女がおそらく一番欲しいはずの言葉を口にした。

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