メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話 作:XX(旧山川海のすけ)
ハイペリックの名前を聞いたとき。
彼女の目の色が変わった気がした。
彼女は
「……あの人も、今の状況は無視しないと思うんですか?」
俺は頷く。
別に彼女を煽るために話を合わせているわけじゃない。
真面目にそう思うところがあるからだ。
ハイペリックは聖典に書かれていることを疑わず、忠実に守って来た人物なんだろう。
他の惺教の司祭たちが、現実や常識とある程度折り合いをつけて、柔軟に惺教を広めていたところに、あくまで聖典に拘った。
そんな人物が、到底納得できない理由で「今までの惺教は間違っていた」と断じ、聖典を焼き捨てる連中にそのまま従うと思えない。
きっと、その場合は歪んでしまった古巣を離れて、新しく自分の思う真理の集団を立ち上げたはずだ。
「僕はハイペリックという人物は聞いた話しか知らないですが……聖典に書かれていたことを絶対視していた人物だと思いました。そんな人が、真惺教を受け入れるとは思えません」
俺は自分の思うところをそのまま口にする。
それが決定打になったようだ。
「……そうですよね。あの人が、今の惺教を認めるわけが無いと思います」
オヴィさんの声音には覚悟が篭もってる。
「あの人は、私の母を殺しかけましたけど、救ってもくれたんです」
そして語り出す。
ハイペリックという人物が、オヴィさんとその母に対してしてくれたことを。
彼は、惺教に入信したいと言った彼女ら母子に、他の種族と変わらない扱いをしてくれたそうだ。
ユージフなんぞくだらない、とるに足らない種族。
それが世間の常識だったのに。
等しく惺教を信じる仲間としての居場所を約束してくれた。
彼女らはそれで安息を得ることが出来た。
代わりに、病になったときに適切な治療を受けられなかったという悲劇があったわけだけど。
それで受けた恩が全て消えてしまったわけじゃない。
「……決心しました。私、真惺教を辞めて、新しく本当の惺教を信じるグループを作ります」
そして最後に彼女はそんな決心を口にしてくれた。
こっちから提案するまでも無かったか。
「それが良いと思います。……貴女同様、真惺教に疑問を持ってる人はたくさん居るはずです。そういう人の受け皿になることは、絶対に良いことでしょう」
俺は彼女の決断に賛同する。
……これで、いいよな。
とりあえず。
彼女らのサポート手段はこれから急ピッチで考えて行かなきゃだけど。
そのとき
(あ、そうか。あの人も誘って貰えばいいのでは?)
ふと、俺の脳裏にマルティラの街で出会った、忘れられない人物と同じ顔を持った惺教徒の姿が浮かぶ。
あの人も、多分ついてきてくれるはず。
熱心な惺教信者だったわけだし。
「あの、リーフって名前の惺教信者はご存知ですか?」
「……リーフ?」
困惑する表情を浮かべるオヴィさん。
俺は
「クレマール族の女性で、眼鏡美人の……知りませんか?」
美人だから見たことあれば記憶に残るだろ。
そう思ったから割と熱心に外見を説明した。
知的な風貌だったとか。
年齢の割にシュッとしていたとか。
でもオヴィさんは
「……ごめんなさい分からないです。惺教の信者で地位が高くない者は、あの宿舎で生活しているはずなんですけどね……」
すまなさそうにそう言って来た。
そうか……
ユージフは他の種族と外見が違い過ぎるから、外見の区別が出来ないのかもしれないとちょっと思ったけど。
彼女はハイペリックという人物を見分けていたみたいだし。
そもそも「私は他の種族の顔の区別がつかない」とも言って無い。
ということは、本当に知らないのか。
俺はそれを残念だと思うと同時に
……何故だか「妙だな」とも思った。