メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話 作:XX(旧山川海のすけ)
「ニューラス、ちょっといいか?」
それは突然だった。
王城でのニューラスの私室で。
俺がニューラスに日本語を教えているところに、いきなり国王がやって来たんだ。
……明らかに苛立った顔で。
珍しい気がした。
この青年は、王として振舞うことが板についてて、感情を表に出すことを控えている印象があったから。
ニューラスもそれは同じようで
「どしたい陛下? えらく機嫌が悪いな?」
王の怒りを宥めるみたいに、その理由を訊ねる。
すると国王は
「……すまない。少し嫌な話を聞いてね」
王に即位して数年経つけど、僕はまだまだ未熟だ。
マイナスの感情を表に出すのは王としてあり得ない行動だ。
そう、自省の言葉を口にする。
まぁ、それはそうかもね。
王が苛立つと、周囲の人間はそれを無視するわけにはいかないし。
苛立たせた存在は何かとか。
その存在を処罰するべきじゃないかとか。
周りが対応で動くもんな。
それぐらい俺でもわかる。
だから王たるものがマイナスの感情を外に出してはいけないというのはその通りだろう。
だったら、何で彼は苛立っているのか?
よっぽどのことに違いないよな。
気にはなる。
で、それは……
「アロンゾが、僕に話を持って来たんだ」
アロンゾというのは国民議会の議員の名前で、議会の議長を務めるような有力議員らしい。
そんな人物が王城にやってきて、国王に謁見し。
政治の話と一緒に、こんな話を持って来たそうだ。
陛下、アンタの奥さんが浮気してるって噂を小耳に挟んだ。
そしてどうもこれは、本物の噂になりつつある。
そんな感じの、ご注進。
放置するとマズいから、早く対処しろと。
そういう意味合いなんだろう。
……まあ、分からなくもない。
性関係の醜聞って、女性の場合は相当印象悪い気がするしな。
あくまで印象だ。
前の世界でも、同時に10人の女性と恋人として付き合ってる奴がいたが。
そいつは特にお咎めなしだった。
そう、お咎めなしだったんだよ……
なんでだよ。
いや、ダメだろ。彼女がいて、他の女性と付き合うなんて。
でも女性が同じことをすると「とんでもないクソビッチだ!」と袋叩きにされただろう。
男女差別だと思うけど、こういうのは周りがどう思うかだしな。
平等の観点を持ち出しても意味が無い。
それにまあ、旦那としては嫁のそういう醜聞を「無責任な噂だ。気にするな」とは言い辛いだろう。
だから国王が解決に動こうとしたことは分からなくもない。
「浮気って、どういうことだい? 誰が浮気してるって? ヒュルケンベルグか? ジュナか?」
ニューラスが困惑気味にそう返す。
彼の中でも、そんなことはあり得ないと思っているのか。
国王直属の臣下として、固い結束で結ばれているのに。
その絆を壊すような真似を、仲間がするはずがないと。
国王は首を振る。
「……ユーファだよ」
「ハァァァッ?」
ニューラスの驚きと呆れの声が部屋に響いた。
そして国王は語り出す。
アロンゾという議員から聞いた話の詳細を。
それを全て聞き終えて、ニューラスは呟く。
「……そりゃあ、浮気ってもんじゃねえな。やってること、まるっきり謀反じゃねえか」