メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話 作:XX(旧山川海のすけ)
アロンゾという議員が持って来た噂話。
それはこんなものだった。
第一王妃のユーファジアは、夜な夜なベレーガ回廊という場所で集会を開いている。
そこでは国に不満を持つムツタリ族の男が集められ。
第一王妃はそこでこう演説しているらしい。
皆さん、我々ムツタリ族は9つの種族の間で最も優れた種族であるのに、長らく虐げられて来ました!
我らは第三の目で
魔法の才能も高い!
ただ、野蛮な争いの技術を磨いて来なかっただけ!
それなのに、ただ野蛮であることが得意なだけのクレマール族やルサント族が長らくこの地を支配し、一時は我々の信仰すらも潰そうとしました!
許されないことです!
人が猿に支配されるに等しい!
そこで私は考えたのです!
あの選挙魔法の戦いを迎えたときに!
ウイルというエルダ族とクレマール族の混血児が王を目指していると知ったとき、これは使える、と!
これは竜神様の導きであると!
この男は戦う強さと演説の強さは凄まじく高い!
ならばこの男に近づき、王妃の立場を確保すれば我々ムツタリ族がこの地を支配することになる!
そこに気づきました!
皆さん! もうすぐです!
最後の仕上げです!
私に純血のムツタリの御子を授けてください!
私が産む御子は次代のこの国の王です!
このユークロニア連合王国をムツタリ族のものに!
……ようは。
ユークロニア連合王国の第一王妃ユーファジアが実は選挙魔法の戦いの段階でこの国を乗っ取る野望を抱いてて。
第一王妃の立場を得た後に、国王の子を産まずに托卵で純血のムツタリ族の子供を産む。
そういう倫理観が凄まじく欠けた手段で、国の乗っ取りを企んでいる。
そういう話だ。
……まあ、国王が怒りを覚えるのは分かる。
やってること、外道というものじゃ済まないし。
自分の奥さん……つまり王妃がそんなクソ外道であるという噂。
平常心でいるのは難しいだろうさ。
国王の話ではそのあと何が起きるのかについての説明は無かったけど。
予想はつく。
ムツタリの男ばかり集めて演説してるんだし。
そういうことだろ。
「そういうわけだ。すまないが彼を借りて良いか?」
自分にとって不愉快極まりないに違いない話を語った後。
国王はニューラスにそう訊ねる。
俺を借りて行っていいか? と。
多分、この噂の発生源が高確率で旧世界の神々の手の者だろうから、俺を同行させた方がいいという判断だな。
それに関しては、当然の判断だと思う。
後で俺が現場を見ていることが効いてくるかもしれないんだから。
そしてニューラスは
「……しょうがねえな。ええと、良いか?」
そう言って、俺に目を向けた。
……これはさすがに、断れないな。
理屈の上でもそうだけど。
人としても、流石に。
で、その次の日に。
「全くとんでもない噂だわね」
第三王妃のジュナさんが、不愉快そうにその金色の長い髪を弄りながらぼやく。
俺たちは馬車の中に居た。
乗っているのは俺と、3人の王妃全員。
4人で馬車を使って、そのベレーガ回廊って場所に向かってるんだ。
鎧戦車だと国王が動いたことがバレるからね。
馬車で1日掛かる場所にあるそうだ。
ベレーガ回廊。
ベレーガ回廊は元々ユークロニア連合王国が成立する前に存在した小国。
そこの宮殿の一部らしいと言われてる場所で。
他にも色々言われているみたいだけど、実際のところは良く分かっていないらしい。
ただ、たまにモンスターが湧くので普通の人は用もないのに近づいたりしないようだ。
だから秘密の集会の場所になってるのかもしれないな。
「本当にそうだな。よりにもよってユーファを標的にするとは」
ヒュルケンベルグが頷く。
いつもの王室の正装ではなく、黒い戦闘服姿で。
胸の前で腕を組み、その長い足を組んで座る様は様になっている。
彼女は不愉快そうに
「我々2人が標的になるならまだ許せるとも言えるが、ユーファを狙うなど言語道断だ」
そう吐き捨てる。
で
「ゴロー、元々陛下の妃になる資格があったのはユーファで、我々はなりゆきなんだよ」
……馬車移動時間があるからか。
いきなりヒュルケンベルグは俺に話し出した。
どう言う経緯で、現王が妃を3人持つに至ったかについて。
……別に聞きたいとは思ってなかったけどさ。
まぁ、立場上聞くしかないよな。
女性は共感を欲しがる傾向が高いから。
こっちに基礎情報を渡そうとしているなら、受けないと。