メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話 作:XX(旧山川海のすけ)
「まさか……アンタは……」
俺の名前を正確に言った。
明智吾郎と。
俺はこの世界に来てからフルネームを他人に名前を名乗った覚えが無い。
名字を教えても意味が無いからだ。
面倒くさいだけだし。
なのに俺の名前を知っていた。
これは……
そんな俺の動揺が伝わったのか。
リーフ……いや、リーフと名乗っていた女は残酷に唇を歪めた。
そして
「そうよ……私は、お前に殺された……」
俺に冷たい目を向けて。
言ったんだ。
俺にとっては聞きたくなかった言葉を。
ハッキリと。
それは
「一色若葉よ!」
一色若葉。
俺が殺し屋として、一番最初に命を奪った女性……
人の精神世界と密接に関わる学問「認知訶学」の研究者で。
心の怪盗団のハッカーである少女・佐倉双葉の母親……
1人娘を愛する、普通の母親だった女性……
俺の罪のはじまりであり、忘れてはいけない存在……!
俺は動けなくなった。
「ゴロー、どうした!?」
「ゴロー!?」
2人の声がどこか遠い。
俺の様子が放置できなかったのか。
ガリカとストロールの視線が、リーフ……いや、一色若葉から外れた。
その瞬間に出来た隙。
その致命的な隙。
「2人とも! あのエルダ族の女が逃げたよ!」
ガリカの鋭い声でそれに気づいた。
俺に視線を向けるという、その隙に犯した致命的なミス。
俺は見ていたはずなのに。
気が付いたら、居なくなっていたんだ。
グルグルと考えて。
見えているはずの者が、見えていなかった。
ショック過ぎたんだ。
自分の罪の象徴が、目の前に現れたことが
「ダメ。見つかんない。どっかに行っちゃった」
ガリカが空から舞い降りて、首を左右に振る。
それを受けて
「……もう、どうしようもないな」
ストロールが呟く。
最終手段でガリカに空からもう1回探して貰ったが、どうしても見つけられなかったんだ。
あの意識の空白が生んだ隙が、致命的な隙になったみたいだ。
完全に逃亡を許してしまった。
犯人の捕縛失敗。
それを自覚し。
ストロールは眉根を寄せて、苦い声を出す。
これは絶対に良くはない。
これでこれからも通り魔が続き、さらに今度はより捕縛しにくくなることが確定だからだ。
だけど。
それよりも……
「なぁ、ゴロー」
ストロールは少し、俺に労わるような……いや、戸惑いを含んだ目を向け
「あの女……ええと、イッシキワカバとかいう、エルダ族の女が言ったことは本当なのか?」
少し言いにくそうに
そう、訊ねて来た。
お前は前の世界で、本当に人殺しに手を染めていたのか? と。
俺はそれに対して
「……本当です」
認めた。
ここで否定して、嘘を言うのは許されない。
そう思ったんだ。