メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話 作:XX(旧山川海のすけ)
「あの女性は、一色若葉という名前の……」
俺の言葉を一語も聞き洩らさない。
その思いが2人の顔に出ていた。
だからこちらも手を抜けない。
慎重に言葉を選びつつ、話した。
「学者……研究者です。僕は彼女の研究を奪い取るために、彼女の精神世界に入り込んで、精神の命を奪いました」
彼女の情報で、彼女の尊厳を傷つけないため。
本当に必要な情報を、選んで話す。
俺の言葉を聞き、ガリカが口を開いた。
「精神の命……? 普通に命を奪ったって何故言わないの?」
疑問点の確認。
まぁ、そうだよな。
俺は彼女の疑問について、答えを返す。
「精神世界に入り込んで、彼女の精神本体を殺害したからです」
殺害、という言葉を口にしたとき。
俺の胸が重くなる。
ガリカとストロールの顔色も変わる。
眉根が寄ったような気がした。
その視線に鋭いものを感じる。
だけど2人はそこはそれ以上追求せず……無視した。
無視して
「精神世界って?」
さらに疑問点について訊ねて来る。
俺は今まで精神世界の存在については話していなかったからね。
言えば話がややこしくなる上に、警戒されてしまう。
もしかしたら、今も俺に精神世界……認知世界に入り込むチカラはあって。
その気になれば他人の精神をねじ伏せて屈服させて洗脳したり、精神を殺して魂を消すようなことが出来るんじゃないか?
そう思われると思っていたから。
そしたら良いことなんて何も無いだろ?
だから言わなかった。
でも、それもここまでだ。
「人の心の中にある世界ですよ……本来は、僕のペルソナ能力はそこでしか使えないものでした」
俺のその告白に、2人の目が見開かれる。
そんな世界があるのか、ということと。
俺のチカラが本来はそういうものだったのか、という驚き。
俺は続ける。
核心について。
「僕は彼女の心の世界に入って、彼女の精神……自我にあたるものを抹殺して消したんです」
「研究を奪うために、心を殺したの?」
ガリカの問いには怒りがあるように感じる。
でも、それは無理のないことかもしれない。
「はい」
「……何故?」
俺の肯定に、そんな言葉が返って来たから。
彼女はこう言いたいんだ。
何も殺すことは無かったんじゃないの? って。
研究を奪うためなら、研究日誌でも盗み出せばそれでいいだろうと。
だから俺は
「心を殺しても、身体の方はすぐには死なず、一定期間生きています」
精神本体……シャドウを殺した場合に何が起きるのかを説明した。
その、外道極まりない理由を。
「そしてその間、精神世界で
俺の告白に黙り込む2人。
その表情には明らかな批判の意思があった。
「そうか……」
そしてストロールが俺に対して
「最低だな。……研究資料を盗み出すだけでは、研究を完全には奪えないから、そうしたのか」
そう言った。
その表情には、彼の熟慮が見えた気がする。
こう言うしかない。
そんな彼の気持ちが。
多分、ニューラスの振る舞いから。
研究者や技術者から、研究結果や発明を完全に奪うには。
研究記録を奪うだけでは不十分で、本人の協力が不可欠になる。
そこを理解しているんだろう。彼も。
そしてそれを成すには、精神を殺して操り人形にするしかないんだ、ということも。
だから俺はその言葉には
「……はい」
……こう言う以外、無かった。
本当に最低の行為だ。
彼女には彼女の人生があったのに。
俺は自分の都合で、それを潰したんだ。
許されるわけがない。
だから俺は
「彼女はそんな、俺の最低の行為の被害者なんです。そんな人間の、異世界転生した姿なんです」
視線を伏せながら。
俺はそんな自分が思う真実を口にする。
血を吐く思いがした。
俺は罵られるのを覚悟した。
処罰はされないだろうが、非難は別だ。
俺のしでかしたことの罪は消えない。
だけどストロールは
「……だから?」
その後に続けて言ったこの言葉の声音に。
今までとは別の色を乗せていた。
俺は驚き、顔を上げる。
そのストロールの顔には……
俺は、呆れを感じた