メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話   作:XX(旧山川海のすけ)

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第123話 父親が語る話

「あのさ」

 

 言い出すとき。

 流石に迷いを感じた。

 

 本当に言うべきなのか? って。

 

 俺の父親の視線が俺に向く。

 

 父親は寝巻代わりの薄手の簡素な上下で。

 俺もまあ、似たような格好だけど。

 

 そんな姿で、テーブルの席についていたよ。

 

「……何してんの?」

 

 寸前で俺は日和見した。

 

 俺の父親は俺に訝し気な視線を向けて

 

「別に何もしていない。……夜中に目が覚めて、なんとなく眠れずに、こうして日が昇るのを待っていただけだ」

 

「時間の無駄だろ」

 

「そうだな。……だが、今は多少はそういうことも許される」

 

 良くも悪くも、あの時は忙しかった。

 そりゃ、そうだな。

 

 そこで会話が途切れた。

 

 沈黙が訪れる。

 俺は向かいの席に腰掛けて。

 

「あのさ」

 

 もう一度、話を切り出した。

 そして

 

 父親の視線を感じながら

 

「一色若葉」

 

 その名前を出した。

 俺に、父親の動揺の感情が伝わって来る。

 

「……覚えてたか」

 

「当たり前だ」

 

 父親の答え。

 俺の父親は俺を見ずに

 

「あの女性の存在を知ったことが、俺の野望を実現するための突破口になったのだから」

 

 その表情には何も浮かんでいなかった。

 だけど

 

 その言葉には後悔と罪悪感が篭もってる気がした。

 

「……どうしてあんな荒唐無稽と言っていい学問に目をつけたんだ?」

 

 俺を手下に引き入れたとき。

 俺の父親はすでに認知世界というものの存在を知っていた。

 

 だから俺の能力をアッサリと信じて、重用するに至ったんだけど。

 

 だけど

 

 そもそもとして、よくそんなものの存在を信じることが出来たなと。

 それが前から疑問だったんだ。

 

 人間の精神は大きな別世界と接続されており、その別世界を通して大きな意味では人間は全て繋がっている。

 その世界には人間の精神の象徴が存在しており、その象徴に接触し、働きかけることが出来れば他者に影響を及ぼすことが出来る。

 

 ……確かそんなようなことを書いていた気がする。

 俺は元々、その別世界に入り込む力を持っていたからギリギリ理解して信じることが出来たけど。

 そんなものを持っていなかった俺の父親は、どうしてそんなものを信じることが出来たのか?

 

 それは……

 

 俺の父親は俺の言葉を受けて

 

「彼女の講演を聞きに言ったんだ。そのときに、興味を持った……」

 

 元々、心理学は齧っていたからな。

 政界でやっていくために、独学で学んだだけなんだが。

 

 彼女の言った「認知世界」という概念は、海外の他の心理学者が提唱していたものとよく似ていると思った。

 

 そしてそこから

 そんなことがあるはずがない、という先入観無く聞いてみれば、説得力を感じたんだ。

 

 ……それに彼女が、知的レベルの高い人間なのは実際に見て確信していたから。

 おそらく間違ってはいないと判断した……

 

 俺の父親は淡々とそのときのことを語る。

 

 

 

 そのときに。

 彼女の講演をコイツが聞きに行っていなければ。

 

 彼女は……佐倉双葉は母親を亡くすことは無かったのか。

 そのことを思って、俺の心に刃が刺さる。

 

 俺の父親は、一色若葉のことを語るとき。

 何の表情も浮かべていなかった気がした。

 

 父親の話が終わる。

 再び訪れる沈黙。

 

 そこで

 

「一色若葉もこの世界に転生している」

 

 俺はその話を切り出した。

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