メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話   作:XX(旧山川海のすけ)

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第126話 ちょっと待てよ

 一色若葉は、灰色の薄手の上下……この国での囚人服姿で。

 牢獄内で、ベッドに腰掛けていた。

 

「やあ、どうも」

 

 俺はまず、そう言葉を掛ける。

 同時に

 

「兵士の人を外して下さい」

 

「分かった」

 

 ニューラスに言って、ここまでついて来た女性兵士を帰らせてもらう。

 本音を言えばニューラスも帰って欲しいが、こっちは流石に無理。

 諦めるしかない。

 

 その場には、俺とニューラス。

 そして鉄格子の向こうに一色若葉。

 

 この3人だけが残された。

 

 俺は

 

「……どうして、この国の王室を攻撃するんですか?」

 

 まず、このことを訊ねる。

 するとだ

 

「王政なんて前時代的でしょ。民主政治に移行させるために、必要な事なのよ」

 

 こんな言葉が返って来た。

 

 ……頭悪いな。

 この人らしくない。

 

 言ったときの表情も、本気を感じなかった。

 建前だ。

 

「確かにこの国は、国王が政治的発言を自由にできるし、その意向に沿って議会が議論するという形式を取った国ですね。立憲君主制とは言い難く、民主的では無いかもしれませんね」

 

 俺はまず、真面目にそう返し。

 

 続けて

 

「でも、日本と比べてこの国それほど劣ってますか? 国王を国民のほとんどが敬愛してますし、大きな不満も見えないと思いますけど」

 

 日本だって色々あったよな。

 

 一度失敗したら二度と這い上がれないとか。

 下の他責は許されないのに、上の他責は全て許されるとか。

 善意や慈悲で受け取れるものを受け取ることに、一切感謝しないとか。

 

 こっちの世界が何から何まで全部、前の世界より劣ってて。

 前の世界が完璧に優れているなんて。

 

 俺には到底思えない。

 

 俺の言葉に一色若葉は一切言葉を返さない。

 ただ、冷たい笑みを浮かべて。

 

 足を組んでベッドに座っている。

 

 俺は

 

「……本音は? 旧世界の神々をこちらの世界に呼び込むためではないのですか?」

 

 直球でそう訊ねる。

 彼女はそれを

 

「何を根拠に?」

 

 一笑に伏すようにそう切って捨てるけど。

 俺は

 

「悪魔を召喚するワザは? 何故惺教教徒のフリを? 魔法を使えたのは何故ですか?」

 

 冷静に、彼女が前世と比較して明らかにおかしい部分を指摘した。

 前世の彼女はただの研究者であって、魔法使いでは無かったし。

 ついでに言えば宗教家でも無かった。

 

 そこから考えるとおかしいだろ。

 こんなの。

 

 ……誰かの力を借りたので無ければ。

 

「誰から力を借りたんですか? 協力すれば前の世界に戻してやるとでも言われましたか?」

 

 俺は淡々と問う。

 思いついた「彼女の理由」について。

 根拠はない。

 ただの思い付きだ。

 

 少し迷ったが、そのまま俺は

 

「……娘さんが居ますもんね?」

 

 このことに、佐倉双葉についてに触れた。

 

 心の腐った手だと思う。

 

 彼女が自分の娘を育て上げずに世を去ることになったのは、全部俺のせいだ。

 その俺が、こんなことを言う。

 

 絶対に激昂するだろ。

 

 お前がそれを言うのか、ってな。

 

 でも、それが目的なんだよな。

 激昂すれば思わず真実を口にしてしまうかもしれない。

 

 それを狙ったんだ。

 

 だけど

 

 俺は耳を疑った。

 

「……あの子はもう大丈夫でしょ。あの人が引き取ってくれたんだし。あの人も娘が出来たことで喜んでいるわ」

 

 そう、彼女は。

 一色若葉はベッドに腰掛けたまま、冷静にそう返して来たんだ。

 

 ……ちょっと待てよ。

 そんな返しって……!

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