メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話 作:XX(旧山川海のすけ)
お触れはすぐに出された。
レガリス大聖堂の前の演説台で、クレマール族の男が大声で
「皆、聞いてくれ!」
国の決めたその新しい法律について喋ってる。
こういうの、街頭演説って言うべきなのかね?
聴衆は目を向けて耳を傾けている。
「この度、新しい国教が定められることになったんだ」
その、大仰な身振りを交えつつ喋るクレマール族の広報担当の男……ええと、名前は確かバトリンだったっけ。
皮肉げな目をした痩せた男だ。
見た感じ、飄々として食えない感じだが……
国王曰く、あれで正義感が強くて熱い男なんだとか。
パッと見は、あまりそういう風に見えないけどな。
喋るという仕事に対して煩そうな顔はしてると思うけど。
彼は王都内では、公示人……アナウンサーとして有名なようだ。
自分で調べるのは簡単だったし。
ちなみに前に惺教が解散するというニュースをアナウンスしていたのも彼だ。
その有名アナウンサーの口にした新しいお触れの話を聞いて
「国教?」
「何が国教になるんだ? 第一王妃の故郷の宗教がそうなるのか?」
「俺、パリパス族だぞ? あの宗教、ムツタリ族しか相手にしてないんじゃないのか?」
聴衆たちはザワついている。
そりゃま、そうだろう。
前に国教が定められたときは嫌な思いをした人もたくさんいただろうし。
正直「国教? 勘弁してくれ」って思ってる人も多いんじゃないか?
その辺を理解してるのか、バトリンは首を左右に振る。
そして言った。
「全ての宗教だ」
その言葉に聴衆たちが困惑する。
「ハァ?」
「どういうことだよそりゃ?」
「意味わからねえ。説明してくれ」
まあ、理解できないよな。
そんな概念、無かっただろうし。
「ようは……例えば陛下はユークロニア連合王国の全ての王だろ?」
「そうだな」
「ああ」
バトリンの説明に、聴衆の相槌。
ユークロニア連合王国は「ユークロニア王国」「オセアナ公国」「モンタリオ公国」という3つの国を併合して誕生した国だけど。
一応、それぞれの国に王……領主が居る。
だけど、連合王国としての王はユークロニア王国の国王って位置づけなんだな。
多分、統合戦争のとき、敵国を完全に潰して併呑するより、誰がリーダーなのかをハッキリさせるだけで、他の王を処刑せずに国ごとの独自性を保証するようにした方が、実質的に統合した状態に出来て、反発も少ないという判断に至ってそうなったんだと思う。
「でも、オセアナ公国にもモンタリオ公国も領主が居るわけじゃないか。元々王族だった方々が」
「どういうことだってばよ?」
困惑を深める聴衆。
バトリンはそんな聴衆に「まぁ聞け」と言って続ける。
「別にそれぞれの国で自由にやっていて、独自の法律すら定めている場合もあるけど、ユークロニア連合王国全体としては、陛下が治めているわけだろ?」
「ええと、それはつまり」
「ユークロニア連合王国の宗教全てを代表する宗教を決めるってことか?」
バリトンの話を飲み込めたと思った聴衆が、内容をまとめてそんなことを口にした。
バリトンはそれに対して首を振る。
「それだと代表に選ばれなかった宗教が出てカドが立つじゃないか」
統合戦争のときは、血を流して誰が一番か決めたけどさ。
宗教でそれをしたら意味不明だろ。
そう、良く通る声で自信満々に喋る。
「じゃあどういうことなんだよ?」
「わけわかんねえぞ?」
再び分からなくなって、ブーイングめいた聴衆の言葉。
そこにバリトンは言った。
「だから、宗教共存を象徴する存在を新しく設定したんだ。この国の全ての宗教は、これからはその存在に一定の敬意を払うんだよ」
その、新しい神の名前を。
「共存神ルシファー様に」