メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話 作:XX(旧山川海のすけ)
俺には声の主が誰であるかは分からない。
だけどその声に、切羽詰まったものを感じた。
これを見過ごすと、1人の命が失われる……
その予感。
助けなきゃいけない。
俺たちがここに来たのは、人質を危険に晒さないためだ。
だけど……
目の前の議場大扉の前には、槍を持った禿頭のルサント族の男が2人居て。
見張りをしている。
真惺教の僧兵だな。
白い法衣みたいな衣装を着用し、ゴテゴテした鎧は着ていないけど。
防具はつけているだろ。
鎖帷子みたいな。
こいつらを瞬殺するのか……?
いや、出来るのか?
本当に殺すのであればおそらく可能だけど、多分国王はそういうやり方は望まない。
気絶させるような方法で、平和的に無力化させて瞬殺させなきゃいけないんだ。
どうする……?
迷っている時間は無い。
俺は……
飛び出した。
怪盗服を解除して。
こうすれば、ただのエルダ族の若造だ。
そしてこのままつっこめば、丸腰のエルダ族の若造が特攻してるだけにしか見えない。
……人質がヤバくなることは無いはず。
これが、俺の考えたこの場での最善の手だった。
「むっ、お前は誰だ!?」
「止まれ! もしや議員の1人か!?」
男たちは槍を俺に向けて来る。
同時にその穂先から迸る稲妻。
……槍型の魔導器……!
それぐらい予想していたから、俺は斜め前に飛んでそれを躱し。
同時に怪盗服を再度身に纏い、自分の身体能力を上げた。
エルダ族のただの若造から、黒い怪盗服を身に纏う怪盗に姿を変える。
底上げされた身体能力で俺は猫科の猛獣のように飛び出し。
腰に差していたサーベルで思い切り僧兵の男の1人に頭への峰打ちを。
もう1人には蹴りを入れた。
突然のことに対応できず、男たちはどうと倒れた。
……よし!
「見事だ」
後ろから俺の父親が駆け寄って来る。
見張りの僧兵はこの2人で。
今周辺には誰もいない。
中を覗いても問題は無いはず。
そっと、気づかれないように大扉を開く。
鍵は掛かっていなかった。
そこだけ少し心配していたからホッとする。
このユークロニア連合王国の国民議会の議場は、少し規模が小さかった。
イメージしたほどよりは。
広さは大きな体育館くらいを想像したが、だいたいちょっとした大広間くらいの広さで。
劇場のように、放射状に椅子と、対応する机が並んでいる。
その中心に大きな机と、玉座と思しき豪奢な机がある。
そんな中で……
10名を超える僧兵たちと、取り囲まれている数人の議員と思しき上等な衣装で身を包んだ男たちがいて。
そしてそれ以外の、同じような身なりの男たちもいた。
……議員の中で、拘束されているのと、そうでないものがいる……?
何故彼らは僧兵を倒そうとしないんだ?
人数の上では僧兵の方がずっと少なく、加えて背中を向けているヤツだっている。
隙だらけだ。
後ろから数人で掛かればなんとかなりそうなもんなのに。
議員たちに「国に迷惑を掛けてはいけない」という強い意識が無いのか、単に戦うのが恐ろしいだけなのか。
でも、さっき聞いた「裏切ったりしない」という言葉が気になった。
なんだか、そんな単純な理由では無いのでは……?
そんな気がしたんだ。
「強情を張っても無駄だアロンゾ議長よ。さぁ、この契約の魔導器に諦めて触れるがいい」
「これは温情なのだぞ?」
僧兵たちはそんなことを言っている。
契約の魔導器……?
なんだいそりゃ?
全く意味が分からない。
だけど……
そう言われている男……議長……ええと、確かアロンゾという男の顔を見ると、ただ事では無い気がした。