メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話 作:XX(旧山川海のすけ)
「どうしたゴロー?」
俺が議長の話を聞き、黙り込んだのを見て。
俺の父親がそう訝し気に声を掛けてきた。
俺は
「魂の世界……人を縛る……まるで認知世界みたいだな、って」
「認知世界だとぉ?」
俺の言葉に、俺の父親は俺同様困惑した声をあげた。
そして
「この世界に認知世界に入り込む技術があるというのか? ……スマートフォンが無いんだぞ?」
謎のスマートフォンアプリ・イセカイナビ。
人間の認知世界に入り込むための道具だ。
俺は前の世界でそれを持っていた。
だけどこちらの世界に来る際に、それは失われてしまった。
俺が失ったものを、こちらの世界で誰かが作るなんてことは考えにくい。
……普通ならね。
「でも、スマートフォンなしで認知世界の存在に気づいて、その世界を研究していた人は居たよね?」
俺のその言葉に、俺の父親の目が大きく開いた。
そう。
この世界には確かに存在していた。
かつて認知世界を研究していた研究者が。
一色若葉。
俺は何で彼女がこの世界に魂を複製されて呼び出されたのかが分からなかったけど。
もし、認知世界の知識を利用するために呼び出したのだとしたら……?
もし、その役目があらかた終わってしまったから、指名手配をしたときにアッサリ出頭するという真似をしたのだとしたら……?
なんとなく、繋がった気がしたんだ。
だから
「……俺、ちょっと触れてみようと思う」
「おい」
よせ、と言いたげな俺の父親の目。
俺はそんな目に
「……この魔導器の効果が、結果を知ってて触れた者を認知世界に連れ去るというものなら……」
俺たちのペルソナ能力を持ち込むことが出来る。
そして加えて言えば……
「中でネガイとやらを奪っている存在を、直接攻撃できるかもしれない」
そうすれば、洗脳を受けた人間を救うこともできるかもしれない。
俺がそう一気に思うところを口にすると
俺の父親は
「……気をつけろよ。絶対に無理をするな」
それだけ言った。
つまり、行けってことだ。
「……了解」
自分から言い出したことでそう返すのも変な気がするが。
俺は議場の玉座近辺の床に転がっている問題の魔導器を
拾い、触れた。
眩暈を感じた気がした。
あのときの感覚に似ている。
イセカイナビを起動し、認知世界に移動したときの感覚に。
気がつくと俺は王都の市街地に居た。
俺が普段ウロウロしている、王都のサンメルオ中央通りだ。
時間帯は夜。
空には赤い月が浮かんでいる。
……この雰囲気は間違いない。
認知世界だろう……。
見回すと、誰も存在していない。
アロンゾの話では、契約を結ばせる存在がいるという話だったが……?
ヨーロッパを彷彿とさせる街並みのその場所に
俺以外の人間は存在していない。
どこだ……?
油断なく周囲を確かめる俺に
「……何やら面妖な者が来おったな」
声が、上からした。
弾かれたようにそこを見る。
そこには……
「まぁ良い。人間よ、この場所に来たからには……」
巨大な人影がいた。
小惑星のような岩石の塊に、見目麗しいブロンド長髪の男性の上半身が生えている。
その手には鋭く細いナイフを握ってて
恐ろしく冷たい目で、俺を見下ろしていた。
宙に浮かぶその存在は、俺にこう宣言する。
ナイフを持つ手を振り上げながら
「この我、魔神ミトラスに捧げよ……ネガイを!」
……お断りだ!