メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話 作:XX(旧山川海のすけ)
第147話 降臨する神
レガリス大聖堂が消えた?
どういうことだ? それは?
気にはなったが、俺たちは国王臣下でも兵士でも無いし。
訊けない。
なので……
直接にそこに向かった。
レガリス大聖堂。
ユークロニア連合王国内で、重大な行事が行われる際に使われる施設。
演説台も近くにあり、ここで共存神ルシファーについての発表をしたり。
広場にその共存神ルシファーの像も造立された場所。
その形状は、本来は超巨大な逆ピラミッド。
巨大なピラミッドを、逆さにしたような形状なんだ。
……建築技術的に、これは安全な建物なのか?
そんなことが心配になる建物なんだけど。
これまで建物の崩壊のようなことは特に起きて無いらしい。
そんな謎めいた、王都の名物だった。
そう「だった」
……行ってみると。
そんな王都の名物が消失していた。
完全に何もかも無くなっていたんだ。
レガリス大聖堂本体だけでなく、広場も、門も、演説台まで。
崩壊だとか倒壊だとか、そんなんじゃない。
削り取られて消えたような。
後に残されていたのは、すり鉢状に抉れた土地。
その部分だけ、次元転移したみたいに消え去っていた。
「おい、どういうことだよこれは?」
「レガリス大聖堂は何処に行ったんだ?」
野次馬が集まってて、ざわついている。
「うちの人は何処に行ったの!?」
レガリス大聖堂に勤めていた職員の家族だろうか?
血相を変えている人も居た。
気の毒に思ったけど、どうしようもない。
俺だって訳が分からないから。
「これは……どういうことだ?」
俺の父親はすり鉢状に抉れた土地を睨んでいた。
可能性を頭の中で探ってるのか。
そういえば……
魔神ミトラスが言っていた。
他にも手を打っている、って。
それがこれってことなのか……?
一体、何のために……?
そのときだった。
『……新しい世界のニンゲンたちよ……』
その場に声が響いた。
男の声だった。
かなり年齢を重ねた、威厳を感じる声だ。
突如響いて来た声に、周囲に集まって来た人々がざわつく。
姿は全く見えない謎の声。
『お前たちは騙されたのだ』
声は続ける。
『現在のこの国の王は、旧世界の大魔王をお前たちに神として崇めさせ、そして生贄に差し出した』
この状況が何故起きたのか。
それを。
『その結果がこれだ』
『お前たちの仲間や家族は、大魔王の生贄となったのだ』
……ルシファーへの生贄に、国王は国民を差し出した。
その結果、こうなった。
声はそう言っていた。
……さすがに俺にも、いや俺たちにも分かった。
この声の正体が。
こいつは……
『我は法の神。旧世界を支配せし偉大なる神』
……やはり。
魔神ミトラスの言っていた「他の手」というのはこれなのか。
国民議会会館で起こしたテロに意識を向けさせて、その間にこのレガリス大聖堂の消失テロを実行する。
寧ろ、本命がこっち。
そして……
『我が栄光に満ちた、並ぶ者無き名を称え、ひれ伏すがいい』
このように、神としてその存在を示して
『お前たちの王は悪である。この結果はその罪に対する報いなのだ』
ウイル国王を貶め、自分への鞍替えを促す。
『今からでも遅くない。我が名を讃え、縋るがいい』
そんな狙いだったんだ。
薄汚い奴らだ……
クソ野郎が……!
俺に言えた義理じゃ無いかもしれない。
俺だって罪人で、数えきれない罪を犯した。
でも、許せなかったんだ。
ウイル国王の王としての在り方は素晴らしいと思っているし。
その臣下たちの忠誠心。
そしてこの国自体も平和で、普通に良い国だと思う。
そこに土足で上がり込み、自分のものにしようとする……
ふざけやがって。
怒りが吹き上がり、俺は
「ふざけるな!」
そのときだ。
ふざけるなと言おうと思ったとき。
その前に
女性の声が轟いたんだ。
俺は反射的にそちらに視線を向けた。
そこにいたのはパリパス族の女性で。
少し影のある雰囲気が印象的だったひと。
……日陰通りの店「蜜蜂のささやき亭」の女主人の、ファビアンヌさん……
「何が悪だ! 私たちの陛下がそんな真似をするわけがない!」
その人が、目を吊り上げていた。
激しく、怒鳴っていた。
姿の見えない声の主に向かって
「返せ! うちの子を返せ!」
その声には激しい憎悪と怒りがあった。
法の神の声が言ったことへの動揺なんて、微塵も無かった。
「どうせお前が攫ったんだろう! ふざけるな!」
俺はそこに、彼女の国王への信頼と。
同時に娘への深い愛情を見た。
だけどそれ以上に……
激しいショックを受けた。
……マリアが。
ファビアンヌさんの娘が……
これに巻き込まれたっていうのか……?