メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話   作:XX(旧山川海のすけ)

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第153話 神無き世界は混沌のみ

 集まっていた国民たちが逃げ去っていく。

 

 この、すり鉢状に抉れた土地……レガリス大聖堂跡地に残されたのは、俺たち4人のみ。

 これでもう、俺が身代わりであることを指摘されて事態がややこしくなることは避けられる。

 

「姿を現すがいい! 法の神よ!」

 

 俺の言葉に

 

『国王よ。我に従うのだ』

 

 ……まるで噛み合っていない返しが来る。

 話を聞いていないわけじゃないだろ。

 

 おそらく答える気が無い言葉を無視しているだけだ。

 

 この調子で同じことを繰り返してもいいかもしれない。

 そっちの方が時間稼ぎとしては上策だろ。

 

 だけど

 

 俺の中でそうしたくない気持ちがあった。

 

(コイツが正義の神、基準の神だというならば)

 

「法の神とやら!」

 

 なので俺は堂々と

 

「悪を成した人間が、正義を成すことは悪か!?」

 

 その言葉を叩きつける。

 

 俺の言葉に3人の王妃たちが何を言い出すんだという視線を向けて来る。

 言葉の文脈がメチャクチャだからな。

 異様だよ。そりゃそうだ。

 

 でも俺は、それに気づきながら続ける。

 

「どうした!? 答えて見せろ!」

 

 聞いてみたかったんだよ。

 仮にも法の神だ。

 

 コイツがどういう答えを返すのか。

 

 王妃たちは俺の言葉に口は挟まなかった。

 俺に口出しをすれば、おかしなことになるからだ。

 

 ……そこに少し負い目を感じたが。

 俺は突っ切る。

 

 法の神は俺の言葉に何と返すのか?

 突然何を言い出すんだと返答を拒否するのか。

 

 それとも……

 

『悪では無い』

 

 法の神は俺の言葉にまともにそう返して来た。

 そして

 

『我の定めた神の法に従い、正義を成すことは正義であり、それが誰であろうと関係ない』

 

『我はそんな法は定めておらぬ』

 

 悪行を成した人間が正義を成すことに、問題はない。

 それがこの神の言葉

 

 そして

 

『ただし、悪は悪』

 

『悪は滅ぼす。滅ぼさねばならぬ』

 

『それは正義の行いの外のことである』

 

『我が法は絶対であり、そこから逸脱するものは全て悪であるが』

 

『法の内側にあるものは、全て善である』

 

 だからといって、正義執行者の悪が帳消しになるわけではない。

 それがこの神の言葉ってことか。

 

 そこに

 

「そんなにヒトの社会は単純に割り切れるものじゃ無いと思うわよ?」

 

 ジュナさんが法の神の言葉に反論する。

 流石に耐えられなかったのか。

 

 彼女は自己主張が強いし、他人に自分の決定権を委ねることが嫌いだとも言っていた。

 独善的に、勝手に善悪を判定するこの神に反感があるんだろうな。

 

 だが法の神は

 

『そんなことは考慮に値せぬ』

 

『我の定めた絶対の法が無いのであれば、行きつく先は混沌(カオス)のみである』

 

 ……返しとしては狂ってる。

 お前の意見は関係ない。自分が正しいとしか言ってないんだ。

 こいつは。

 

 ジュナさんから反感の気配を感じた。

 きっとアーキタイプの鎧の中で、眉を顰めているに違いない。

 

 だけど……

 

 俺は内心、コイツの言ってることのある種の正しさに気づいてしまった。

 

 コイツは平等ではあるんだ。

 自分の定めたルールに対して二重基準を持っていない。

 

 法の神、というその名前に偽りがない。

 だから俺は

 

「確かに正しさの基準が無いなら公平な判断などできはしない」

 

 法の神向けて、そう言い放ち

 続けて

 

「人には人の数だけ正義があり、その正義を全て認めていたら社会の維持などできやしないさ」

 

 そう言った。

 

 だけど

 

 さらにこう続けた。

 

「……それでも、俺はお前の存在を否定する!」

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